LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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気がつけばもう97話目です。100話あたりでオリジナル編完結できたらいいなと思います。なので少々駆け足気味になると思いますが、ご容赦ください。

感想お待ちしております。


初めての決断

 

 

 

 

 

ヴィネアの塔にて繰り広げられるグレイとマスターゲイルによる激しい戦いの中、グレイはゲイルの魔剣デカログスの前に苦戦を強いられる。

 

そんなグレイの前に現れたのは……ナンバーズのドゥーエの不意打ちにより重傷を負わされたハズの、なのはであった。

 

 

「なの…は……?」

 

 

「にゃはは……来ちゃった♪」

 

 

呆然とするグレイに可愛らしい笑顔を浮かべながらそう言うなのは。そんななのはに対しグレイは……

 

 

ゴチンッ!!!

 

 

容赦ない拳骨を振り下ろした。

 

 

「いったぁ~い!! 何するの!!?」

 

 

「何するのじゃねえ!!! 逆に何してんだこんなトコで!!?」

 

 

「ヴィヴィオを助けに来たに決まってるじゃない!!!」

 

 

「お前は重傷のクセに無茶してんじゃねえ!!!」

 

 

「グレイだってボロボロじゃない!!!」

 

 

「オレのケガなんざお前に比べたら掠り傷もいいトコだ!! それにお前は絶対安静だろうがっ!!!」

 

 

「ポーリュシカさんに無理言って痛み止めの薬をもらったから大丈夫なの!!!」

 

 

「やっぱ無茶してんじゃねえか!!! 大体どうやってここまで来やがった!!?」

 

 

「マスターたちに気づかれないように転移魔法に紛れ込んだに決まってるよ!!!」

 

 

「胸張って言うことじゃねえ!!!!」

 

 

グレイとなのはは声を荒げながら言い争いを繰り返し、ひと段落着くとお互いに「ぜえぜえ…」と息を乱しながら睨み合う。

 

すると、グレイは諦めたように肩を竦めながら口を開く。

 

 

「まぁいい、来ちまったモンはしゃーねえ。そん代わりあんま無茶すんじゃねえぞ」

 

 

「その言葉、そっくりそのままお返しするの」

 

 

そう言うと、グレイとなのははデカログスを肩に担いで佇んでいるゲイルへと視線を移す。

 

 

「コントは終わったか?」

 

 

「待っててくれるなんざ、ずいぶん親切じゃねえか」

 

 

「フン…女との最後の会話くらい楽しませてやろうと思ってな」

 

 

「言ってくれんじゃねえか」

 

 

「そんな余裕、すぐに崩してあげるの」

 

 

ゲイルの言葉を聞き、身構えるグレイとレイジングハートを構えるなのは。

 

 

「なのは、分かってるとは思うが……」

 

 

「グレイが前衛で、私が後方支援……いつも通り、私とグレイの必勝パターンでしょ?」

 

 

「へっ」

 

 

なのはの言葉にグレイは口元にニッと笑みを浮かべると……

 

 

「行くぞぉ!!!」

 

 

目の前のゲイルに向かって、駆け出していったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第九十七話

『初めての決断』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉぉぉおおお!!!」

 

 

雄叫びを上げ、手のひらに拳を乗せた構えのままゲイルへと突撃していくグレイ。

 

 

氷聖剣(コールドエクスカリバー)!!!!」

 

 

そしてその途中で、ゲイルのデカログスにも劣らない程の氷の大剣を造り出し、それをそのままゲイルへと振り下ろす。

 

それに対しゲイルは悠々とデカログスを構え、ガキィイインっと甲高い音を立ててグレイの氷の大剣を防ぐ。

 

 

「魔剣には聖剣…ってな」

 

 

「フン……」

 

 

グレイの言葉に対し鼻を鳴らすゲイル。

 

 

「アクセルシューター……シュート!!!」

 

 

「ぬっ!?」

 

 

すると、グレイの後方からなのはが発射した5発の魔法弾がゲイルへと向かって行く。

 

 

「チッ…ぬぅん!!!」

 

 

ゲイルは舌打ちをしながらグレイの大剣を押し返し、すぐさまデカログスを振るい、全ての魔法弾を切り裂く。

 

 

「隙だからけだぜ!!!」

 

 

「!!?」

 

 

その際ゲイルに出来た一瞬の隙……グレイはそこを見逃さず、氷の大剣を横薙ぎに力強く振るった。

 

 

「ぐっ……!!」

 

 

咄嗟に後方に飛んで回避したゲイルだが、完全に避け切ることは敵わず、彼の腹部に僅かな切傷が刻まれる。

 

 

「グレイ!! どいて!!!」

 

 

すると後方からなのはの声が響き、グレイはすぐに横へと飛んでゲイルから距離を取った。

 

 

「ディバインバスター!!!!」

 

 

その瞬間、レイジングハートから発射される桜色の凄まじい閃光。それは真っ直ぐへとゲイルへと向かって行く。

 

 

闇壁(ブラックウォール)!!!」

 

 

それを見たゲイルは魔法で漆黒の壁を出現させ、なのはの砲撃を闇で飲み込もうとした。

 

しかし……

 

 

「撃ち抜けぇぇええ!!!!」

 

 

桜色の閃光は闇に飲まれる事無く、漆黒の壁を貫いた。

 

 

「なにっ!!? ぐおぉぉおおおお!!!!」

 

 

予想外の出来事にゲイルは驚愕する。そしてその閃光は、そのままゲイルへと直撃した。

 

 

「流石だな、なのは」

 

 

「当然だよ♪」

 

 

グレイはなのはに賞賛の言葉を送り、それに対してなのはは得意気にえっへんと胸を張りながら答える。

 

 

「調子に乗るなよ小僧ども」

 

 

「「!!」」

 

 

直後……聞こえてくるゲイルの一段と低い声。見るとそこには多少のダメージを受けてはいるが、平然と立ち上がっているゲイルの姿があった。

 

 

「圧縮砲撃魔法か……その若さでこの威力とはたいしたモンだ──普通の魔導士相手ならな」

 

 

「「っ……!!!」」

 

 

ゲイルの言葉に息を呑むグレイとなのは。目の前にいる男はバラム同盟にも劣らない勢力を持った闇ギルド〝悪霊の札(デーモンカード)〟を束ねるギルドマスターなのだと…改めて認識した。

 

 

「なのは……もう一度行くぞ」

 

 

「うん!」

 

 

なのはが頷いたのを確認すると同時に、再び氷の大剣を手にしてゲイルへと向かって行くグレイ。

 

 

「おおおおおらぁ!!!!」

 

 

氷の大剣を力一杯振るい、ゲイルへと斬りかかるグレイ。それに対してゲイルもデカログスを構えて、その刀身を氷の大剣と衝突させて金属音を響かせる。

 

 

「アクセルシューター!!!」

 

 

そして先ほどと同じように、なのはは自身の周囲に生成した魔法弾をゲイルへと放つ。先ほどと違うと言えば、魔法弾の数が5発から10発近くへと増えた事である。

 

 

「……さっきと同じ攻撃が通用すると思われるとは……ナメられたものだな」

 

 

「!!?」

 

 

ゲイルがそう言うと、グレイと鍔迫り合っているデカログスの形状が再び変化し始める。しかもその変化は先ほどまでとは違い……1つの刀身が2つへと分かれていく。

 

 

双竜の剣(ブルー=クリムソン)!!!!」

 

 

そしてそれは炎と氷をそれぞれ纏った2対の剣となり、氷の剣でグレイの大剣を押し返し…炎の剣でなのはの魔法弾を全て焼き払った。

 

 

「ぐあぁぁああ!!!」

 

 

「グレイ!!!」

 

 

力強く押し返された事により吹き飛ばされ、地面に強く打ち付けられるグレイ。そんなグレイに駆け寄ろうとしたなのはだが……

 

 

「後方にいれば安全だとでも思ったか?」

 

 

「!!?」

 

 

ゲイルはそう言うと同時に、元の形状に戻ったデカログスの剣先をなのはへと向ける。すると再びデカログスの形状が変わり……

 

 

真空の剣(メル・フォース)!!!!」

 

 

「きゃあああああ!!!」

 

 

剣先から放たれた突風がなのはを吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。

 

 

「ぐっ…くそっ……!!!」

 

 

「うぅ……!!!」

 

 

体中に走る痛みに耐えながらも、ゆっくりと起き上がり、立ち上がるグレイとなのは。

 

 

「……あと15分か」

 

 

「あ?」

 

 

すると、ゲイルがおもむろに呟いた言葉に対し、聞き返すグレイ。

 

 

「スカリエッティが始めたゲームのタイムリミットだ」

 

 

「ゲーム?」

 

 

1人事情を知らないなのはに、グレイが口頭で簡潔に説明する。

 

 

「──って訳だ」

 

 

「ふーん……ヴィヴィオを使ってゲームだなんて……ふざけてるね」

 

 

グレイの説明を聞き終えたなのはは、いつもより少し低めの声でそう呟いた。

 

 

「転送の魔水晶(ラクリマ)が作動するまで残り15分……もう貴様らに勝ち目などない」

 

 

「勝手に決めんじゃねえよ……ゲームってのは最後まで何があるか分かんねえだろ?」

 

 

「強がりを……残った15分でオレを倒せるというのか?」

 

 

「勘違いすんじゃねえ。テメェ相手にたった15分で倒せるなんて思うほど自惚れちゃいねえ」

 

 

「ほう? まるで時間があればオレを倒せるような物言いだな」

 

 

「そう言ってんだよ。テメェを倒して、ヴィヴィオを助ける……それは変わらねえ」

 

 

「だから魔水晶(ラクリマ)の破壊は他のみんなに任せる……でしょ? グレイ」

 

 

「ああ」

 

 

グレイとなのはの言葉を聞き、鼻で笑うゲイル。

 

 

「愚かな。貴様らが破壊した9つの結界の魔水晶(ラクリマ)とは一味違うぞ」

 

 

「関係ねえよ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士は壊すのが得意なんだ。その気になりゃあ、この塔ごとぶっ壊してくれるさ」

 

 

「だから私たちはあなたと戦うの……仲間を信じて、最後まで全力全開でっ!!!!」

 

 

「テメェを倒す為になっ!!!!」

 

 

そう言い放つのと同時に、グレイとなのはは再びゲイルへと攻撃を仕掛けたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「これか」

 

 

「えぇ、そうみたいね」

 

 

「あい」

 

 

一方、転送の魔水晶(ラクリマ)を探し回っていたナツ、ティアナ、ハッピーの3人は、ようやく目的の魔水晶(ラクリマ)を発見した。

 

 

「つーかティア、よく魔水晶(ラクリマ)の場所がわかったな」

 

 

「これだけ大きな魔水晶(ラクリマ)だもの、設置する場所もそれなりに広い部屋だと目星をつけておいたのよ」

 

 

「あい、さすがティアナ!!!」

 

 

魔水晶(ラクリマ)の場所を割り出したティアナに、賞賛の言葉を送るハッピー。

 

 

「んじゃあ、さっそくぶっ壊すか」

 

 

「そうね」

 

 

そう言うと、ナツは大きく息を吸い込んで頬を膨らまし…ティアナはクロスミラージュを構え、砲口に魔力を集束する。

 

 

「火竜の咆哮!!!!」

 

 

「ファントム・ブレイザー!!!!」

 

 

そして2人は同時に、灼熱のブレスと強力な集束砲を放った。

 

 

「行っけーー!!!」

 

 

ハッピーの声援を他所に、一直線に魔水晶(ラクリマ)へと向かって行くブレスと砲撃。しかし……

 

 

 

バチィイン!!!

 

 

 

「なに!!?」

 

 

「!!?」

 

 

「え?」

 

 

2人の攻撃は魔水晶(ラクリマ)に当たる前に、何やらバリアのような障壁に阻まれてしまった。

 

 

「お…おい!! どうなってんだこりゃあ!!?」

 

 

「……結界よ。最初にこの塔を覆っていた結界が、この魔水晶(ラクリマ)にも張られているのよ」

 

 

「なんだとぉ!!?」

 

 

「だとぉ!!?」

 

 

ティアナの言葉に驚愕するナツとハッピー。

 

 

「迂闊だったわ……まさかこんな仕掛けが施してあるなんて……!!!」

 

 

悔しそうに歯噛みしながらそう呟くティアナ。

 

 

「とにかく、この結界を張ってる魔水晶(ラクリマ)を壊せばいいんじゃない!!?」

 

 

「時間があればその手もアリだったでしょうね。でも今はもう時間がない上に、その魔水晶(ラクリマ)の場所も、個数すらも不明……残った時間でこのデカい塔の中を隅々まで探すなんて出来ないわ」

 

 

「んじゃあ、結界ごとぶっ壊せばいいんじゃねえか!?」

 

 

「さっきの攻撃は私とナツの全力の攻撃だったのよ。それが簡単に防がれたという事は、並大抵の強度じゃないわ。少なくとも、私とナツの2人だけであの結界を破るのは不可能よ」

 

 

「じゃあどうすりゃいいんだよ!!?」

 

 

「それを今考えてるんでしょ!!! ちょっと黙ってなさいバカナツ!!!!」

 

 

ティアナはナツにそう怒鳴ったあと、すぐに頭をフル回転させて思考する。

 

 

「(あの結界を破るには私とナツの魔法だけじゃ力不足……塔の前にいる他のメンバーを集めるのも…無理ね、行って帰ってくるまでに時間が掛かりすぎる。いっそ魔水晶(ラクリマ)を放置して、今すぐヴィヴィオを助け出して脱出するのは…ダメ、それもどれくらい時間が掛かるかわからない。一体どうしたら……)」

 

 

そうしてティアナが必死に思考を巡らせていると……

 

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

 

「!!?」

 

 

突然聞こえてきたナツの雄叫びに、ティアナは思考を中断してナツの方を見た。そこには、炎を纏った拳を結界に叩きこんでいるナツの姿があった。

 

 

バチィン!!!

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

しかしその拳は呆気なく結界に弾かれ、ナツは地面に転がる。

 

 

「何やってんのよナツ!!?」

 

 

「うるせえ!!! これを壊さねえとオレたちに勝ち目がねえんだろ!!?」

 

 

「だから!! 私とナツの2人だけじゃ無理だって言ってるでしょ!!!」

 

 

「無理だろーがなんだろーがやるしかねえだろ!!! 今ここにいるオレたちがやらねえで、誰がやるっつーんだよ!!!? オレは諦めねえ……諦めてたまるかぁっ!!!!」

 

 

「ナツ……」

 

 

ナツの諦めないと言う叫びを聞いたティアナは、呆れたように肩を竦めたあと、クロスミラージュを構えた。

 

 

「そうね……方法を考えるなんて言って何もしないより、最後の最後まで足掻いたほうが全然確立があるわよね。やるわよナツ!!!」

 

 

「へっ……そうこなくっちゃな!!!」

 

 

そう言って2人は目の前の魔水晶(ラクリマ)を見据えながら、炎の拳と双銃を構える。

 

そして2人が今まさに動き出そうとしたその時──

 

 

 

 

 

「待てよ……方法がない訳じゃねえぜ」

 

 

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

突然背後から聞こえてきた声に、ナツとティアナとハッピーは一斉にそちらへと振り返り視線を移す。するとそこに立っていたのは……

 

 

「さっきぶりだなぁ……ナツ」

 

 

「ノーヴェ!!?」

 

 

「あいつらは……!!?」

 

 

「ナンバーズ!!?」

 

 

ノーヴェを筆頭にした…チンク、ウェンディ、セインの4人のナンバーズであった。

 

 

「この大変な時に!!!」

 

 

「待てティア」

 

 

「ナツ?」

 

 

ティアナは警戒してクロスミラージュを構えるが、それをナツに制され、首を傾げる。そしてナツは一歩前に出て、ノーヴェに問い掛ける。

 

 

「何しに来たんだ?」

 

 

「決まってんだろ……借りを返しに来たんだよ」

 

 

「!!」

 

 

その言葉を聞いて身構えるナツだが、ノーヴェの言葉は一拍置いてからまだ続いた。

 

 

 

「借りを返す為に……お前たちに協力する」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

その言葉を聞き、ナツたちは目を見開いて驚愕する。

 

 

「お前らが……オレたちに協力!!?」

 

 

「どういうことよ!!?」

 

 

ナツとティアナがそう問い掛けると、再びノーヴェが口を開く。

 

 

「ナツ……お前と戦うまでは、生みの親であるマスターの命令通りに生きていくしかないってずっと思ってた。そんな自分に嫌気が差しても、アタシは戦闘機人だからこうするしかないんだって言い聞かせて。

 

でもお前に教えられた……戦闘機人だとか関係ない、アタシはアタシなんだ!!! こうして〝命〟を持って生まれたからには、いつまでも(マスター)の言う事を聞いてるだけじゃダメなんだ……ちゃんと自分の意志で考えて…決断して…生きていかないといけないんだって!!! そう教えられた……」

 

 

「……………」

 

 

ノーヴェの言葉を黙って聞いているナツ。

 

 

「アタシは今……自分の意志でここにいる、お前たちに協力する為に。それがアタシの…生まれて初めての決断だ」

 

 

「……そっか」

 

 

ノーヴェの話を聞き終わったナツは、ニカッと笑みを浮かべた。そしてノーヴェに向かって自身の拳を突き出す。

 

 

「んじゃ、よろしく頼むぜ……ノーヴェ」

 

 

「っ……おうっ!!!」

 

 

それに対してノーヴェも自身の拳を突き出し、ナツの拳とぶつけ合わせたのだった。

 

 

「……何があったのよあの2人」

 

 

「あい、色々あったのです」

 

 

それを見ていたティアナとハッピーがそんな会話をした後、ティアナは他のナンバーズへと視線を向ける。

 

 

「で…そこの3人も、ノーヴェだっけ? その子と一緒の考えなの?」

 

 

「ふっ…当然だ。妹が変わろうとしているのだ、姉である私が変わらない訳にはいくまい」

 

 

「このまま帰っても任務失敗って事で、あたしたちタダじゃ済まないだろうしね~。ま、乗りかかった船って奴?」

 

 

「それに何だか反逆ってのもオモシロそうじゃないっスか!!!」

 

 

ティアナの問いに対し、チンク、セイン、ウェンディの順でそう答える。

 

 

「おいおいウェンディ、何言ってんだよ。反逆じゃねえ──反抗期だ」

 

 

そう言ってノーヴェは心底楽しそうにニッと口角を吊り上げて笑った。

 

 

「まぁ反逆でも反抗期でも何でもいいわ。よろしく頼むわね」

 

 

「え?」

 

 

「……何よ?」

 

 

「いや…ナツはともかく、まさか他の奴にまでそう言われるとは思ってなくて……」

 

 

「別にアンタたちを信用した訳じゃないわよ。ただ…ナツはバカだけど人を見る目はある方なの。そのナツが信用してるって言うんなら、私はそのナツを信じる……それだけよ」

 

 

「……そっか……ありがと」

 

 

そう言い放つティアナに、ノーヴェはボソリとだが、感謝の言葉を口にした。

 

 

「それよりアンタさっき言ったわよね? 方法がないわけじゃないって」

 

 

「あぁ。見ての通りあの装置には結界が張られている。しかもその結界を張っている魔水晶(ラクリマ)は、あの装置の中に内蔵されてんだ」

 

 

「つまり、あの結界を解除して装置を壊すのは不可能って事ね」

 

 

「そうだ。それにあの結界はスッゲェ頑丈でよ、魔導集束砲ジュピターって知ってるか? あれ1発でようやく壊れるレベルだ」

 

 

「……マジ?」

 

 

ファントム戦の時にマスタージョゼが使用した凄まじい破壊力を持った魔導兵器……それでようやく破壊できるほどの強固さと聞いて、ティアナは顔をしかめる。

 

そしてノーヴェの説明を受け継ぐように、今度はチンクが口を開く。

 

 

「それだけではない。あの結界は修復能力も持っていてな、たとえ結界を破壊しようと魔水晶(ラクリマ)を破壊しない限り結界は何度でも自動修復される」

 

 

「……………」

 

 

それを聞いてさらに絶望的な表情を浮かべるティアナ。

 

 

「大丈夫だ、さっきも言ったが方法はある。まぁそれにはあの結界を1度破壊するってのが前提だけどな」

 

 

「……聞かせてもらおうじゃない」

 

 

ティアナはノーヴェの言う方法に耳を傾ける。

 

 

「5秒だ。結界が破壊されて、完全修復されるまでの時間が5秒……その5秒の間にあの装置を破壊するしかないんだ」

 

 

「……なるほど、シンプルだけどそれしかなさそうね」

 

 

そう言うと、ティアナは少し考える素振りを見せたあと、再び口を開く。

 

 

「じゃあこうしましょう。まず1人を除いた全員が自分の最大魔法で結界を攻撃して破壊……そのあとすぐ、残った1人が修復される結界内に突入して最大魔法で装置を破壊。これでいいかしら?」

 

 

「ああ」

 

 

「異論はない」

 

 

「賛成っス」

 

 

「いいんじゃない」

 

 

ティアナの立案した作戦に、賛同するナンバーズ。

 

 

「となると……装置を破壊する役割はナツ、あんたよ」

 

 

「オレ?」

 

 

「そう。あれだけ大きな装置を一撃で破壊できるとしたら、あんたの滅竜魔法が適役なのよ。任せたわよ」

 

 

「おっしゃ!!! 燃えてきたぞ!!!」

 

 

ティアナの言葉を聞き、文字通り燃え上がるナツ。

 

 

「でももう1つ問題があるわね……ナツを除いた私たち5人で、あの強固な結界を破れるかしら?」

 

 

「ふむ…そこが一番の難点だな」

 

 

「そもそもあたしは戦闘タイプじゃないしね~」

 

 

そう言って再び頭を悩ませるティアナとナンバーズ。すると……

 

 

 

「だったら私たちも手伝うわ」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

突然聞こえてきた声に、一同がすぐさまそちらへと視線を移すと……

 

 

「ミラさんにエルフマン!!?」

 

 

「シグナム!! ヴィータ!!」

 

 

「ディエチ!!?」

 

 

そこにはミラジェーンとエルフマン、シグナムとヴィータ、そしてナンバーズのディエチが立っていた。

 

 

「話は全て聞かせてもらった。まさか敵であるこいつらを味方にするとは、さすがだなドラグニル」

 

 

「昨日の敵は今日の友!!! これぞ漢!!!!」

 

 

「まだ1日も経ってねーよ。けどまぁ、こういう展開もいいんじゃねえの?」

 

 

シグナム、エルフマン、ヴィータが笑みを浮かべながらそう言い放つ。

 

 

「ディエチ……お前……」

 

 

「うん、大丈夫……私も協力する。私も…妖精の尻尾(かれら)の為に……」

 

 

ディエチもイノーメスカノンを手に、ノーヴェにそう言う。

 

 

「もちろん、私もやるわよ♪」

 

 

「でもミラ……ミラは魔法が……」

 

 

「大丈夫♪ちょっと色々あってね……」

 

 

ハッピーの言葉に対してそう言うと同時に、ミラジェーンは魔法を発動させ、悪魔のような姿へと変わった。

 

 

「昔みたいに魔法を使えるようになったのよ♪」

 

 

「おお…サタンソウルか……目にするのは久しぶりだな」

 

 

「スゲェ!!! 魔人ミラジェーンの復活かよ!!!」

 

 

サタンソウルとなったミラジェーンの姿に、シグナムは目を見張り、ヴィータは目を輝かせる。

 

 

「いけるよっ!!! この面子なら結界を壊す事ができる!!!」

 

 

ハッピーのその言葉に、ティアナが同意するように頷く。

 

 

「えぇ!!! 残り時間は僅か5分……二度目はないわよ!!!!」

 

 

「おしっ!!! 行くぞぉ!!!」

 

 

「「「おおっ!!!」」」

 

 

ナツとティアナの号令を合図に、全員それぞれが今持てるだけの最大の魔法攻撃を放ちにかかる。

 

 

獣王の魂(ビーストソウル)!!! ぬおぉぉぉぉぉおおお!!!!」

 

 

獣の姿となり、その豪腕の力をもって結界に拳を叩き込むエルフマン。

 

 

「イビルエクスプロージョン!!!!」

 

 

その悪魔の両手から放たれる凄まじい光線を結界へと放つミラジェーン。

 

 

「イノーメスカノン、エネルギーフルパワー……発射ァ!!!!」

 

 

イノーメスカノンに蓄えたエネルギーを一気に放出し、強力な砲撃を放つディエチ。

 

 

「行くっスよ!!! エリアルキャノン!!!」

 

 

構えたライディングボードから渾身の砲撃を発射するウェンディ。

 

 

「ありったけの爆弾魔水晶(ラクリマ)……喰らえぇぇえ!!!」

 

 

自身が所有する爆弾魔水晶(ラクリマ)の数々を結界に向かって投擲するセイン。

 

 

「IS発動……ランブルデトネイター!!!!」

 

 

投擲した何十本のもスティンガーを、自身のISで大爆発を起こすチンク。

 

 

「行くぞアイゼン!!! 轟天撃滅!!! ドラグーンフォウスト!!!!」

 

 

ヴィータは自分の何十倍もの大きさとなり、さらにはドリルが付け加えられているハンマー…グラーフアイゼンを渾身の力で振り下ろす。

 

 

「レヴァンティンのもう一つの姿……ボーゲンフォルム!!! 翔けよ隼……シュツルムファルケン!!!!」

 

 

剣と鞘…両方の組み合わせで弓の形態となったレヴァンティンを構え、業火に燃える矢を放つシグナム。

 

 

「ハァァァアア!!! 出力全開!!! リボルバー・スパイク!!!!」

 

 

ジェットエッジの機能と出力をフルに使った渾身の蹴りを叩き込むノーヴェ。

 

 

「幻魔一閃!!! ファントム・ブレイザー!!!!!」

 

 

最初に放った砲撃よりも、さらに魔力を込めた強力な砲撃を放つティアナ。

 

 

 

ドガァァァアアアアアアアアアアン!!!!!

 

 

 

それぞれの最大攻撃が一斉に結界へと衝突し、凄まじい轟音が響き渡る。

 

 

ピキッ…ピキピキ……

 

 

すると、結界に小さいが亀裂が入った。

 

 

「結界にヒビが入ったぞ!!!」

 

 

ピキピキピキ……

 

 

その亀裂は段々と広がっていき、大きくなっていく。

 

 

「もう少しよ!!! みんな頑張って!!!!」

 

 

ティアナは全員に声援を送りながら、自身も砲撃にさらなる魔力を込める。

 

 

しかし……

 

 

ピキッ…ピキッ……

 

 

その亀裂は割れる事無く、ある程度大きくなった所で止まってしまった。

 

 

「くそっ!!! ヒビが止まっちまった!!!」

 

 

「そんな……これだけの攻撃を叩き込んでもまだ足りないっていうの!!?」

 

 

「だったらオレが!!!」

 

 

「ダメだよナツ!!! ここでナツが出たら、誰が最後に装置を破壊するのさ!!!」

 

 

ノーヴェとティアナの言葉を聞いて飛び出そうとするナツだが、それをハッピーの止められる。

 

 

「くっそぉ……!!! これ以上…力でねぇぞ……!!!」

 

 

「我ら全員の攻撃が……通じぬとは……!!!」

 

 

そう言葉を口にするシグナムとヴィータ。他の面々も限界なのか、険しい表情を浮かべている。

 

 

「ダメなのか……もう一押し……あともう一押しなのによっ!!!」

 

 

「せめてあと1人……強力な魔導士があと1人いたら……!!!」

 

 

全員の限界が近い中、そう呟くノーヴェとティアナ。

 

すると……

 

 

 

 

 

「ったく…イカれてるぜ」

 

 

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

「せっかくひと暴れしてやろうと思って乗り込んだってのに、肝心のエモノが1人も居やしねえ。オマケにバタバタと喧しい所に来てみれば、変な状況になってるしよぉ」

 

 

そう言いながら歩み寄ってくる1人の人物……全員の視線がその人物へと集中する中、ナツとハッピーがその人物の名を叫ぶ。

 

 

「「ガジル!!?」」

 

 

その人物とは……妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士であり、鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)……鉄竜(くろがね)のガジルであった。

 

 

「ったくアホくせぇ……こんなモンぶっ壊すのに手間ぁかけてんじゃねぇ!!!!」

 

 

ガジルは装置を見据えながらそう言い放つと同時に、勢いよく飛び上がる。

 

 

 

「滅竜奥義!!! 業魔・鉄螺旋(ごうま・てつらせん)!!!!」

 

 

 

そして両足を鋼鉄のドリルへと変形させ、その切っ先を的確に結界の亀裂に叩き込み、螺旋回転させた。

 

 

ビキビキビキビキ……!!!!

 

 

ガジルの加入によって止まっていた亀裂が勢いよくさらに広がり始める。そして……

 

 

パリィィィィイイイン!!!!

 

 

ついに結界がガラスのように粉々に砕け散った。

 

 

「今よっ!!!」

 

 

「決めろナツ!!!」

 

 

「おうっ!!!」

 

 

ティアナとノーヴェの叫びを受けて、全魔力を使って生成した炎を両腕に纏いながら、一直線に装置へと走り出すナツ。

 

 

「滅竜奥義!!!!」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「紅蓮爆炎刃!!!!!」

 

 

 

 

 

ナツが渾身の力で放った強大な炎の刃が……装置を飲み込み、そのまま爆散させたのであった。

 

 

 

 

 

つづく




今回原作にはない色んな必殺技が登場しましたので、一応どこから持ってきたのか説明しておきます。

ミラジェーン→PSP版のゲームより抜粋。

ヴィータ→リリなのイノセントより抜粋。

ガジル→アニメオリジナル『ダフネ編』より抜粋。

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