LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回はいつもよりだいぶ短いです。

短い分次の更新は早くしたいと思いますので、どうかご容赦ください。


感想お待ちしております。


堕ちる閃光

 

 

 

 

 

 

敵の拠点である〝ヴィネアの塔〟を守る、結界の魔水晶(ラクリマ)が置かれた9つの塔。そしてそれぞれの塔の魔水晶(ラクリマ)を守る為に1人ずつ配置された悪霊の札(デーモンカード)の四天王と無限の欲望(アンリミテッドデザイア)のナンバーズ。

 

その内の8つの塔では、ナツ、ティアナ、エルザ、エリオ、スバル、はやて、シャッハ、ミストガンの活躍によって立ち塞がる敵を各個撃破を果たした。

 

 

そして残る最後の塔……そこでは妖精の尻尾(フェアリーテイル)のフェイト・テスタロッサと、無限の欲望(アンリミテッドデザイア)のアルフが対峙していた。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……!!」

 

 

「フン」

 

 

しかし、既にフェイトはボロボロの体で息を乱しながら肩膝をついていた。対するアルフは余裕そうな笑みを浮かべながら、自身の鋭く尖った爪に付着していた血をペロリと舐める。

 

フェイトが劣勢をしいられているのは、火を見るよりも明らかであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第九十三話

『堕ちる閃光』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所詮は出来損ないの人形だねぇ。この程度じゃ、準備運動にもなりゃしないよ」

 

 

「くっ……!!」

 

 

フェイトは表情を歪ませながらバルディッシュを構えるが、その姿にいつもの覇気はなかった。

 

 

「(やっぱり私は、アルフとは戦いたくない……でも、このままじゃヴィヴィオやミラを助けられない……私、どうしたら……!!?)」

 

 

幼い頃の親友と戦いたくないという感情と、ギルドの仲間を助け出したいという想い……その2つがフェイトの中でせめぎ合い、彼女の動きを鈍らせていた。

 

 

「ほらほら、ボーっとしてるヒマあんのかいっ!!?」

 

 

「!!」

 

 

ガキィィン!!!

 

 

そう言って拳を構えて突撃してくるアルフ。それを見たフェイトは、咄嗟にバルディッシュを盾代わりにして、それを防御する。

 

 

「くっ……ハァ!!」

 

 

「!?」

 

 

フェイトはその受け止めた拳を受け流し、アルフの体制を崩させる。そしてそれを確認したフェイトは、すぐさまバルディッシュに大鎌のような金色の魔力刃を纏わせる。

 

 

「テェエエエイ!!!」

 

 

そしてそれを、アルフに向かって横薙ぎに振るう。しかし……

 

 

「っ………!!!」

 

 

その鎌は、アルフに当たる直前というところでピタリと止まってしまった。

 

 

「ぐっ……!!!」

 

 

「……フンッ!!!」

 

 

「あぁっ!!!」

 

 

葛藤するように歯噛みするフェイトに対して、鼻で笑いながら拳を振るって彼女を殴り飛ばすアルフ。

 

 

「アハハハ!! 敵に情けをかけるなんて、とんだ甘ちゃんだねぇ!!! あのまま攻撃してれば、アタシに手傷くらいは負わせられたのに……」

 

 

「……ち…がう……」

 

 

「あん?」

 

 

フェイトが呟いたか細い声に、眉を顰めるアルフ。

 

 

「情けなんかじゃ…ない……私は貴女を……アルフを傷つけたくないだけ……」

 

 

すると、倒れていたフェイトはゆっくりと起き上がりながら言葉を紡ぐ。

 

 

「だってアルフは……私の大切な…親友だから」

 

 

「!!」

 

 

フェイトの言葉に、アルフは大きく目を見開く。

 

 

「私にとってアルフは、ギルドのみんなと同じくらい大切な存在なんだ……だから私は、アルフを傷つけたくなんか──」

 

 

「黙りなぁ!!!」

 

 

「あぐっ!!!」

 

 

フェイトの言葉を遮るようにアルフが彼女の頬を殴り飛ばし、それによって再び地面に倒れるフェイト。

 

 

「さっきからアンタはいつの話をしてるんだい!? 今のアタシとアンタは敵同士なんだよ!!!」

 

 

「違う……たとえどんな立場になったって、私とアルフは──」

 

 

「黙れって言ってんだ!!!」

 

 

またもやフェイトの言葉を遮るようにそう叫ぶと、アルフは自身の周囲に数個もの雷を帯びた小さな魔力の球体を作りだし……

 

 

「フォトンランサー!!!」

 

 

その球体から一斉に槍のような魔法弾をフェイト目掛けて発射した。

 

 

「うあぁああああっ!!!」

 

 

地面に倒れていたフェイトにそれを回避する術はなく、殆どの魔法弾が彼女に直撃した。

 

 

「アタシとアンタが親友? ハッ、ちゃんちゃら可笑しいね。アタシはただプレシアに頼まれて相手をしてやってただけさ。そうじゃなかったら、誰が好き好んで人形を相手になんかするかい」

 

 

ボロボロの姿で地面に倒れ伏しているフェイトに向かってそう吐き捨てるように言い放つアルフ。しかしそれでも、フェイトの考えは変わらなかった。

 

 

「たとえ…そうだったとしても……私にとってアルフが…大切な存在である事には変わら…ないんだ……」

 

 

「っ……いい加減にしなぁ!!!」

 

 

そんなフェイトに対して、アルフは激昂したようすで怒鳴り声を上げる。

 

 

「さっきから人の事を親友だの大切だの、気持ち悪いったらないんだよ!!! アタシはアンタに対してそんな事を思った事なんて一度もないっ!!! この際だ、ハッキリ言ってやるよ!!! アタシは昔っからアンタの事なんか──大っ嫌いなんだよ!!!!!」

 

 

言葉の通り、フェイトに向かってハッキリとそう言い放ったアルフ。

 

それを聞いたフェイトは、悲しそうに顔を歪ませる。そして小さく「そう…」と呟いた後……

 

 

 

「それでも私は……貴女の事が大好きだよ……アルフ」

 

 

 

と、優しく微笑みながらそう言った。

 

 

「!!?」

 

 

刹那……アルフの頭にズキリと鈍い痛みが走り、片手で頭部を押さえるアルフ。

 

 

「ぐっ…アンタのバカさ加減に頭痛までしてきやがったよ。アンタの戯言はもうたくさんだ……殺してやる」

 

 

殺意の籠った声でそう言うと、アルフは鋭く尖った爪を突き立てながらフェイトに歩み寄る。

 

 

「精々バカな幻想を抱いたまま……ムゴったらしく死になぁっ!!!」

 

 

そして倒れているフェイトに向かって、爪を振り下ろした。

 

 

「くっ……!!」

 

 

これから来るであろう痛みを覚悟して、フェイトが目を閉じたその時……

 

 

 

ガシィッ!!!

 

 

 

誰かの手が、アルフの振り下ろそうとした手を掴んで止めた。

 

 

「!!?」

 

 

それを見たフェイトは、驚愕で目を大きく見開いた。何故なら、その手を掴んだ人物とは……

 

 

 

「アル…フ…?」

 

 

 

なんと……その人物とは攻撃を加えようとしていたアルフ自身であった。

 

アルフは歯を食い縛りながら、振り下ろそうとした手とは反対側の手で、自分自身の手首を掴んで押さえ込んでいた。

 

 

「な…なんだいコレは……!!?」

 

 

アルフ自身、自分が何をしているか理解できないでいると、彼女の頭に先程よりも鈍い痛みが走った。

 

 

「う…ぐっ……がぁあああああああああああああああ!!!!」

 

 

「アルフ!!?」

 

 

頭部に走るあまりの痛みに、アルフは頭を抱えるように押さえ、周囲に響き渡るような叫び声を上げた。

 

 

「うぐっ……フェイ…トォ……!!!」

 

 

すると、アルフは苦しげな声でフェイトの名を呼ぶと、そのまま言葉を続ける。

 

 

「まさか…せっかくのアンタとの再会が…こんな形…とはね……」

 

 

「アルフ……アルフなの!!?」

 

 

それを聞いたフェイトは、痛む体を無理矢理起こし、アルフへと駆け寄る。

 

 

「フェイト……アタシが正気である…うちに……早く…アタシを……うぐっ!!」

 

 

「アルフ!!! もしかしてアルフは、操られて……!!」

 

 

先ほどまでとはまるで違うアルフの様子に、フェイトは1つの可能性を脳裏に浮かべる。

 

 

「そんな事…よりも……早く…アタシが…アタシである内に……!!!」

 

 

「で、でも私にアルフを傷つける事なんて……」

 

 

「お願いだよ、フェイト……もうこれ以上……アタシに…アタシの大好きなフェイトを…傷つけさせないでおくれ」

 

 

「っ……アルフ」

 

 

アルフの涙ながらの言葉を聞いたフェイトは、意を決したような顔付きになり、落ちていたバルディッシュを拾い上げる。

 

 

「バルディッシュ、ザンバーフォーム」

 

 

そしてバルディッシュを大剣型のザンバーフォームへと変形させて、ゆっくりと構える。

 

 

「そうだ…それでいいんだよ……フェイト」

 

 

「アルフ……ッ!!!」

 

 

アルフの言葉を聞きながら、バルディッシュを高々と掲げるフェイト。そして……

 

 

「アァァアアアアアア!!!! ジェットザンバー!!!!」

 

 

悲痛が入り混じった咆哮を上げながら、フェイトは電光を纏った刃を、アルフへと振り下ろす──

 

 

「──ッ……!!!!」

 

 

 

──ビタァッ!!!

 

 

 

「!!?」

 

 

しかし……その刃はアルフに届く寸前で、ピタリと止まってしまった。そしてフェイトは、カタカタと震える手でバルディッシュを握り締めながら、目に涙を浮かべる。

 

 

「やっぱり……出来ないよっ……アルフを傷つけるなんて…私には……!!!」

 

 

「フェイト……うっ…ぐがぁぁああああああああ!!!!」

 

 

「アルフ!!!」

 

 

すると、再びアルフが頭部を抱えて苦しげな声を上げる。

 

 

「うぐぅ…やめろ…来るなっ……これ以上アタシにフェイトを……傷つけさせるなぁ……!!!」

 

 

そして次の瞬間……アルフが身に着けている首のチョーカーから、妖しい輝きを放つ紫色の魔力が溢れ出す。

 

 

 

「ヤメロォォオオ!!! プレシアァァァアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

必死に抵抗するかのごとき咆哮も虚しく、溢れ出した紫色の魔力に全身を支配されるアルフ。

 

 

「アルフ──がっ!!!」

 

 

そして、近くに居たフェイトの首を鷲掴みにし、そのまま立ち上がりながらゆっくりとフェイトの体を持ち上げる。

 

 

「アリシアの人形……コロス…コロス……」

 

 

ブツブツとそう呟くアルフの瞳は、先ほどの魔力と同じ妖しい紫色に輝いており、自我を完全に失っていた。

 

 

「コロス!!!!」

 

 

「うぁああ!!! ぐぅっ!!!」

 

 

そのままアルフに投げ飛ばされ、地面に叩きつけられるフェイト。

 

 

「リングバインド」

 

 

「!!?」

 

 

そして倒れているフェイトをリング状の拘束魔法で捕縛し、動きを封じるアルフ。それだけでは終わらず、アルフは更なる魔法を発動させる。

 

 

「フォトンランサー・ジェノサイドシフト」

 

 

そう呟くと同時に、アルフの周囲に複数の魔力の球体が生成される。しかもそれは10や20ではなく、目測だけでも50は超えていた。

 

 

「これは……母さんの魔法……!!?」

 

 

それを見たフェイトは拘束されながらも、驚愕で目を見開いた。

 

 

「死ねェェエエエエエ!!!!」

 

 

そしてついに……50を越える魔力の球体から、一斉に魔法弾が発射された。

 

 

「くっ……!!!」

 

 

何とか回避しようとするフェイトだが、拘束魔法によって縛られている為、思うように動く事ができない。そうして足掻いている間にも、無数の魔法弾はフェイトを迫る。

 

 

「(アルフどころか、ヴィヴィオやミラも助けられない何て……私のせいだ……私が甘いせいで……!!!)」

 

 

迫り来る無数の魔法弾を前にして、フェイトは後悔の念を抱く。

 

 

「ごめんなさい……」

 

 

フェイトは、ポツリと呟く。

 

 

 

 

 

「みんな……ごめんなさい」

 

 

 

 

 

ズドドドドドドドドドッ!!!!!

 

 

そしてそんなフェイトに、無数の魔法弾が雨のように降り注いだのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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