LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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狙撃と双剣と振動破砕

 

 

 

 

 

 

「〝振動破砕〟」

 

 

仲間を守る為、新たに会得した魔法……振動破砕を発動したスバル。その影響からか、緑色だった彼女の瞳が金色に輝いている。

 

 

「なんだ……目が変わった?」

 

 

「変わったのは目だけじゃないよ。私の攻撃もさっきまでとは段違いだから、油断してると……負けるよ」

 

 

「ほざけっ!! スティンガー!!!」

 

 

スバルの言葉に激昂したチンクは、彼女に向かって何本ものスティンガーを投擲する。

 

 

「…………」

 

 

しかし、それに対してスバルは微動だにせず、ただリボルバーナックルを装着した右手のひらを前に向かって構えただけ。

 

ただそれだけなのだが……

 

 

バチィン!! バチィン!! バチィン!!!

 

 

「なに!!?」

 

 

なんと…スバルが構えた右手のひらにスティンガーが当たった瞬間……スティンガーは文字通り、粉々に砕け散ったのだった。

 

 

「(なんだ……何をした!!? いや…奴の体に何が起こっているんだ!!!?)」

 

 

それを見たチンクの表情に戦慄が走る。

 

 

「この状態は長く続かない……だから、速攻で終わらせるよ!!!」

 

 

そしてスバルは、金色の瞳を輝かせ、拳を構えてチンクへと駆け出していったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第九十一話

『狙撃と双剣と振動破砕』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガガガガガガガ!!!!

 

 

一方…スバルがチンクに対して反撃を開始した時を同じくして、ティアナもウェンディに対して反撃を開始し、お互いの魔法弾を魔法弾で相殺するという激しい銃撃戦が行なわれていた。

 

 

「ハァァアアア!!!」

 

 

「くっ…この……!!!」

 

 

しかし時間が経つにつれ、次第にウェンディが押され始めていた。

 

それもそのハズ。ウェンディがライディングボードの砲口から魔法弾を連射しているのに対し、ティアナはクロスミラージュの連射に加え、自身の周囲に魔法弾を生成して放つクロスファイヤーシュートも併用しているのだ。

 

どちらの連射性が優れているかは一目瞭然である。

 

 

「どうしたのかしら? 顔色悪いわよ」

 

 

「くぅ……なんスか急に!!? さっきまでアタシの攻撃に苦戦してたクセに!!!」

 

 

ティアナの皮肉の言葉を受けて、ウェンディはイラついたように叫ぶ。

 

 

「簡単な話よ。正直さっきまでの私は、タイムリミットとお腹の傷が開いたせいで少し勝ち急いでた。中遠距離タイプの私が、接近戦で挑むなんてバカな事をするくらいにね。

 

でも…あんたが戦闘機人? とやらの説明を長々としてくれたお陰で、頭を冷やす時間ができた。そして冷えた頭であんたの戦いっぷりを観察していたら、すぐに結論が出たわ。

 

あんたを短時間で倒して魔水晶(ラクリマ)を破壊する事くらいわけない…ってね」

 

 

「っ…!! 舐めるなっス!!!」

 

 

ティアナのそんな言葉を受け取ったウェンディは声を荒げながらそう言うと、撃つのを止め、横に思いっきり飛んでティアナの魔法弾の嵐を回避する。

 

そして受身を取りながらライディングボードを構えなおし、砲身をティアナへと向ける。

 

 

「アタシのライディングボードは魔法弾しか撃てないと思ったら大間違いっスよ!!!」

 

 

そう言うと、ライディングボードの砲口にエネルギーが集束される。

 

 

「エリアルキャノン!!!」

 

 

そしてそのまま、高威力の砲撃が発射された。

 

 

「その言葉……そっくりそのままアンタに返すわ」

 

 

しかしそれに対してティアナは特に慌てた様子もなく、クロスミラージュを構えなおす。そして……

 

 

「ファントムブレイザー!!!!」

 

 

クロスミラージュの2つの銃口から、オレンジ色の砲撃が発射され、ウェンディの砲撃と衝突した。

 

 

そして2つの砲撃は、激しい衝突の末…互いに消滅した。

 

 

「な…なっ……!!」

 

 

「ほら、ボーっとしてる暇はあるのかしら?」

 

 

渾身の砲撃を相殺されたウェンディは呆然としていたが、ティアナの声にすぐに我に返る。そしてその間にティアナは、自身の周囲に複数の魔法弾を生成していた。

 

 

「クロスファイヤー……シュート!!!!」

 

 

「うわぁあ!!!」

 

 

そしてそれを一斉にウェンディに向かって発射する。対するウェンディは悲鳴を上げながらもすぐさまライディングボードの影に隠れて魔法弾を防いだ。

 

 

「チッ……意外と硬いわね」

 

 

「ライディングボードの耐久力を甘く見るんじゃないっス!!!」

 

 

ティアナの攻撃を防ぎきったウェンディはそう言う。

 

 

「(とは言え、射撃の腕や砲撃の威力は…悔しいっスけどあっちの方が上っス。アタシは近距離じゃ戦えない……だったら!!!)」

 

 

そう考えたウェンディは、ライディングボードに足を乗せる。

 

 

「IS発動!!『エリアルレイヴ』!!!」

 

 

そのままウェンディを乗せたライディングボードは空中へと浮かび上がり、ウェンディはそれをまるでスノボーのようにコントロールしながら空中を走り始める。

 

そして一しきり飛んだあと、空中で停止し、ライディングボードの上からティアナを見下ろすように視線を向ける。

 

 

「空中ならお前の攻撃も届かない……このライディングボードとISがある限り、アタシに負けはないっスよ。悔しかったら、お前も飛んでみるっス!!」

 

 

ティアナを見下ろしながら得意気にそう言い放つウェンディ。

 

しかしそれに対してティアナは「ふぅ…」と嘆息すると、口元に小さく笑みを浮かべる。

 

 

「その必要はないわよ。だってあんたは既に………袋のネズミなんだから」

 

 

そう言うと同時に、ティアナはパチンッと高らかに指を鳴らす。

 

 

その瞬間……ウェンディの周囲に大量の魔法弾が出現した。

 

 

「…………は?」

 

 

ウェンディは自身の周囲……上下左右360度をくまなく見渡すが、そこにあるのは自身を取り囲んでいる優に100は越えるであろうオレンジ色の魔法弾のみ。

 

 

「な…なんスかこの魔法弾の山は!!? 一瞬でこんなに造りだせるなんて…ありえないっス!!!」

 

 

「そう…ありえないわ。いくら私の得意魔法が射撃系だとしても、一瞬で100を越える魔法弾の生成なんて不可能よ」

 

 

「ならどうやって……!!?」

 

 

「さっきのあんたとの銃撃戦……その時に魔法弾を撃つフリをして、少しずつ仕込んでおいたのよ。もちろん、気づかれないように幻影魔法でカモフラージュしてね。そしてわざわざあんたを空中へと誘い込んだのも、確実に仕留めるため」

 

 

「空中に……誘い込んだ……!!?」

 

 

「そうよ。射撃や砲撃じゃ私に敵わない事を悟らせたら、あんたは勝つ為に別の手を考えると思ったわ。でもあんたの戦闘スタイル的に近距離戦は論外。なら残されたあんたの戦法は……空中戦のみ。思惑通り、まんまと私の仕掛けた罠に嵌ってくれたわ。因みに空中に誘い出した理由は、地上と違って上下左右全方向から攻撃できるからよ」

 

 

「………………!!!」

 

 

自分の思考や行動が完璧に見透かされていた事に絶句するウェンディ。そして何とか搾り出した震える声で、ティアナに問い掛ける。

 

 

「な…なんで……アタシの考えをそこまで……!!!」

 

 

「……あんたみたいな単純な思考回路を持つ奴の相手には慣れてるのよ。ま、そいつはもっと単純でバカだけどね」

 

 

そう語るティアナの脳裏には、いつも彼女を振り回す少年や少女の顔が浮かぶ。

 

 

「戦闘機人は人類を超越したって言ってたけど……こうやって思考を読まれて罠に嵌められてるうちは、まだまだ普通の人間同然ね」

 

 

そう言ってティアナはウェンディに背を向けると、ゆっくりと右手を上げる。

 

 

「クロスファイヤー……」

 

 

「ちょっ!! ちょっと待っ──」

 

 

「フルバースト」

 

 

ウェンディの静止の声も虚しく、ティアナは上げた右手をすぐに真下へと下ろした。

 

 

その瞬間……全ての魔法弾がウェンディを襲った。

 

 

「うわぁぁああああああああ!!!!」

 

 

ズドドドドドドドドド!!!!

 

 

360度全方向に設置されていた100を越える魔法弾を一斉に喰らい、ウェンディの断末魔が響き渡った。

 

そしてそれを喰らったウェンディはライディングボードと共に地面に追突し、「きゅぅ~…」っと目を回しながら気絶したのであった。

 

 

「それと……ナンバーズはバケモノ集団とも言ってたけど…残念ね。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の方がバケモノ揃いよ」

 

 

そう言うとティアナは、腹部の傷を抑えて「痛たたっ…」と呟きながら魔水晶(ラクリマ)のもとへと向かったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてもう一方、セインと戦闘を繰り広げているシャッハはと言うと……

 

 

ドガァァン!!! ドガァアアン!! ドガァァアアアン!!!

 

 

「くっ……!!!」

 

 

先程よりも激しくなった地面からの爆撃に対して、顔をしかめながら回避していた。

 

 

「大層な事言ってた割には、あたしのディープ・ステルス・ボムに手も足も出てないじゃん。次の一撃で終わらせるんじゃなかったの?」

 

 

そんなシャッハを眺めながら意地の悪い笑みを浮かべているセイン。すると、それを聞いていたシャッハも、口元にクスリと笑みを浮かべた。

 

 

「終わらせますよ。あなたを倒す程度、一撃あれば十分です」

 

 

「……言ってくれんじゃん。恩返しだか何だか知らないけれど、この戦いに参加した事を後悔させてやるよ!!!『ディープダイバー』!!!」

 

 

そう言うと、セインは自身のISを使用して、爆弾魔水晶(ラクリマ)を仕掛けるために地面の中へと潜り込む。

 

 

「(恩返し……確かに彼らへの恩を返したいという気持ちもあります。ですが、本当の理由は……騎士カリムのあの言葉)」

 

 

その時…シャッハの脳裏には、彼女の上司であり、騎士団団長のカリム・グラシアとの会話が浮かぶ。

 

 

 

 

 

『え? 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に協力……ですか?』

 

 

『ええ。貴女には、彼らを戦力的にバックアップしてほしいの。お願いできるかしら?』

 

 

『ま、待ってください騎士カリム!! 私たちはベルカの街の自警騎士団の団長と副団長ですよ!! 組織のトップ2人が長く留守にするなんて……もし街に何かあったら!!!』

 

 

『大丈夫よ。悪霊の札(デーモンカード)はすでに目的を達してるからもう街を襲撃する事なんてないでしょうし、あんな辺境にある小さな街を襲おうなんて盗賊もそうそういないわ』

 

 

『しかし……!!』

 

 

『それにねシャッハ、彼らは仕事とはいえ私たちの街を必死に守ってくれたのよ。それに対して私たちは彼らのギルドを守れなかった……これで帰ったら後味悪いでしょ?』

 

 

『そ、それはそうですが……』

 

 

『あと、これは個人的な理由だけど……私、あのギルドが気に入ったの』

 

 

『え?』

 

 

『1人が笑えば全員が笑い…1人が悩めば全員で悩み…1人が怒れば全員が怒る…楽しい事も悲しい事もみんなで共有している。まるで本当の家族のように……それを見ていたら何となくだけど、手を貸してあげたくなっちゃったの。でも私に戦う力はない……だから貴女に頼んでるのよ、シャッハ』

 

 

『騎士カリム……』

 

 

『それにね……私、妖精の尻尾(かれら)の結束力なら、たとえどんな敵が相手でも負けはしないって思ってるのよ』

 

 

『……またお得意の予言ですか?』

 

 

『予言じゃないわ。これは希望……予言と違って何の根拠もない希望よ。シャッハ……貴女には感じないかしら? 妖精の尻尾(フェアリーテイル)から溢れている……希望の力を』

 

 

 

 

 

「……騎士カリム……貴女の言う事にはまったくもって──」

 

 

そう言いながらシャッハは、ゆっくりと片手に持ったヴィンデルシャフトを頭上に掲げて……

 

 

「──同感です!!!」

 

 

そのまま地面に向かって振り下ろした。

 

 

 

ドガァァアアアアン!!! ガラガラガラガラッ!!!!

 

 

 

その一撃は地面を打ち砕き、粉々となった地面は瓦礫となって自身と共に下の階へと落下していく。

 

 

「なっ!? そんな!!? 地面を!!?」

 

 

当然、地面の中に潜んでいたセインも、その姿があぶり出される。

 

 

そして両者共に瓦礫と一緒に落下していく。

 

 

「(自棄になってあたしと一緒に落下して道連れにする気か!!? だけど失策だね。あたしには『ディープダイバー』がある。このまま落下して地面に潜れば、あたしは無傷で済む!!)」

 

 

シャッハの起こした行動に対してほくそ笑むセイン。すると……

 

 

「言ったハズです……次の一撃で終わらせると」

 

 

「!!?」

 

 

セインは聞こえてきた方向へと視線を向けると、そこには崩れて落下している瓦礫を足場にして―タンッタンッタンッ―っと瓦礫から瓦礫へと飛びながらセインへと接近していく。

 

 

「(瓦礫を伝って!!? マ、マズイ!!!『ディープダイバー』で回避を……!!!)」

 

 

そう思い至ると同時に周囲を見回すセインだが、彼女の周りには潜り込める様な瓦礫は1つもなかった。

 

 

「そ…そんな……!!!」

 

 

「これで終わりです!!!」

 

 

絶望の表情を浮かべるセインに向かって、シャッハはヴィンデルシャフトを構えながら渾身の力で最後の瓦礫を蹴る。そして……

 

 

 

「一撃……必殺!!!!」

 

 

 

セインの腹部に強烈な一撃を……叩き込んだのであった。

 

 

「うわぁぁぁあああああああ!!!!」

 

 

ドガァァァアアアン!!!!

 

 

シャッハの攻撃を喰らったセインは、その威力も相俟ってかなりのスピードで地面に落下して行き、地面と大激突した。

 

 

そしてシャッハは再び瓦礫を伝って上へと飛び上がっていき、その階に残された僅かな足場に着地した。

 

 

「ふう……」

 

 

一息ついたシャッハはそっと、崩れた足場から下の階を覗き込む。

 

その下の階には、セインが「うぅ~…」と唸りながら目を回して気絶していた。

 

 

「(私は少しの間ですが、彼らと行動を共にしていて分かった事がある。彼らは性格も…人柄も…相性も…全てがバラバラですが……たった1つだけ共通しているモノがある。

 

 

それは──仲間を…家族を助けたいと思うその心!!!)」

 

 

シャッハはくるりと体を反転させて、その先の通路へと歩みを進める。

 

 

 

「そんな彼らの手助けをする為に……私はここにいる」

 

 

 

その言葉を最後に…シャッハは魔水晶(ラクリマ)のある部屋へと向かって行った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は戻り……スバルとチンクが戦っている塔。

 

 

「うおりゃあああああ!!!」

 

 

「くっ!!」

 

 

ズドォォォオオオン!!!!

 

 

高らかな雄叫びと共に振るったスバルの拳による一撃。それを横に大きく飛んで回避したチンクだが、彼女の背後にあった壁は、まるで抉れたように陥没した。

 

それを見たチンクは、目を見開きながら驚愕する。

 

 

「(たった一撃で壁が陥没した!!? 奴の攻撃が段違いに向上したというのはウソではないらしいな……だが、それでもよく見て行動すれば、かわせないスピードでも──)」

 

 

「でぇぇぇええええい!!!」

 

 

「──ないっ!!!」

 

 

「!!?」

 

 

再びスバルが振るった拳を、今度は体を捻りながら回避するチンク。そしてそんなチンクの手には、1本のスティンガーが握られていた。

 

 

「(さっきは防がれたが……今度は背後から、直接急所を狙えば……!!!)」

 

 

チンクは回避した際に体を反転させ、スバルの背後に立つ。そしてそのまま、スバルの首を狙って、自身の手に握ったスティンガーを振るった。

 

しかし……

 

 

パァァアン!!!

 

 

「!!?」

 

 

そんなチンクの攻撃は、何かによって弾かれた。

 

 

「(払われた訳でもないのに…弾かれた!!?)」

 

 

スバルは未だ正面を向いたままで、チンクの方を見ていなければ、何か攻撃をした訳でもない。

 

 

「!!」

 

 

嫌な予感がしたチンクは、すぐさまスバルから十分な距離を取り、弾かれた自身の手を見つめる。その手はチンクの意思とは反して、ビリビリと震えていた。

 

 

「(皮膚が痙攣して……いや、これは振動か? 奴の全身が振動しているのか……振動…全身……〝振動破砕〟……!!!?)」

 

 

その瞬間、チンクの脳裏に衝撃が走り、その顔を驚愕に染めた。

 

 

「(まさか……奴の魔法は!!?)」

 

 

「……気づいたみたいだね、私の魔法の正体に?」

 

 

「あぁ…貴様の言う魔法〝振動破砕〟は……己の全身に全魔力を循環させ、自身の体を超振動させる魔法だ」

 

 

そう問い掛けるスバルに対し、チンクは冷静な口調で答える。

 

 

「言葉で表すのは簡単だが…とんでもない魔法だ。全身を超振動させているという事は、体の内部……筋肉をも振動させている。そしてその振動をポンプにして、血液の流れを加速させている。それによって身体能力は跳ね上がり、振動による破壊力はそのまま攻撃にも防御にも直結する。

 

だが当然リスクもある。血液の流れを加速させれば、当然血圧も跳ね上がる……それこそ心臓が張り裂けるようにな。実際、その魔法は長くは続かないのだろう?」

 

 

「うん、まぁね。全身の血管を魔力でコーティングしてるとはいえ、この状態を維持できる時間は……持って5分くらいだよ」

 

 

「正直その魔法を使用するお前の神経を疑うな。その魔法は一種のドーピング……命を削る魔法だ」

 

 

スバルを見据えながら、ハッキリとそう言い放つチンク。しかしスバルは、それに対して力強い眼差しでチンクを見据え返しながら言い返す。

 

 

 

「仲間や家族を守る為なら……どんな事だってしてやる!!!」

 

 

 

「!!?」

 

 

スバルの強い覚悟を孕んだ叫びを聞き、チンクは大きく目を見開く。

 

 

「……それで死んだとしてもか?」

 

 

「死なないよ!! 私を含めて1人でもが死んだら意味がない……ヴィヴィオとミラさんを助けて、全員そろってギルドに帰るんだ!!!!

 

この魔法は命を削る魔法なんかじゃない!!! みんなの為に…生き残る為の魔法だっ!!!!」

 

 

チンクの問い掛けに対して、再び力強くそう言い放つスバル。それを聞いたチンクはしばらく目を見開いたあと、目を伏せながら「フッ…」と口元に笑みを浮かべた。

 

 

「なるほど……道理で手強いわけだ」

 

 

そう呟くと、チンクは両手に数本のスティンガーを構える。

 

 

「最後に……貴様の名を聞かせてくれ」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士……スバル・ナカジマ」

 

 

スバルの名を聞いたチンクは、満足そうに「そうか」と呟くと……

 

 

「来いっ!! スバル・ナカジマ!!! 貴様のその覚悟に敬意を表し、最後まで相手をしてやる!!!!」

 

 

チンクのその言葉を聞いたスバルは一瞬呆気に取られるが、すぐに口元にニッと笑みを浮かべ……

 

 

「おうっ!!!!」

 

 

と…返事を返したのち、チンクとの戦闘を再開した。

 

 

そこから2人の戦闘はさらに激化する。

 

チンクのスティンガーによる投擲や爆発攻撃を掻い潜りながら、超振動を纏った拳や蹴りを放つスバル。

 

対して、一撃必殺に近い破壊力を持ったスバルの攻撃を回避しながらスティンガーを投擲…およびISによる爆発攻撃などを繰り出すチンク。

 

そんな激しい攻防の中……両者の顔には、絶えず笑みが浮かんでいた。

 

 

「(私は今まで、ドクターの命令の下で様々な任務や戦闘を行なっていた。感情を持たず、ただただ言われた任務を実行する。それに疑問を感じた事はなかったし、それが私を生み出してくれたドクターへの恩義…そして我らのギルドの為だと思っていた。

 

だがしかし……今はもう、ドクターも任務もどうでもいい!!!

 

今はただ……こいつの覚悟に、全力で応えるだけだ!!!!)」

 

 

そしてチンクは、全身全霊を持ってスバルとの激闘を繰り広げる。

 

 

「ぐっ……!!!」

 

 

すると、スバルの体がガクンっと倒れそうになり、それをギリギリで踏み止まる。

 

 

「どうやら体の限界が来たようだな」

 

 

そう…スバルの振動破砕の発動限界時間が近づいてきたのだ。

 

 

「まだ…まだぁぁああ!!!!」

 

 

それでもスバルは諦めず、チンクに向かって駆け出す。

 

 

「やはり向かってくるか……だが!!!」

 

 

「!!?」

 

 

するとチンクは数本のスティンガーを投擲し、スバルの目の前の地面に突き刺す。当然スバルはそれによって咄嗟に足を止める。

 

その瞬間……それを狙っていたチンクが続けざまに10本近くのスティンガーを投擲する。しかしそれはスバルには当たらず、全て彼女の周囲の地面に突き刺さる。

 

 

「これで終わりだ!!! 最大出力……ランブルデトネイター!!!!」

 

 

ドガァァァアアアアアアン!!!!

 

 

そして……この戦いで起きた爆発の中でも一番の爆発が起こった。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……!!」

 

 

息を乱しながら、巻き起こる爆煙を見据えるチンク。

 

 

「……ォォォオ……」

 

 

「!!?」

 

 

「オォォォォォオオオ!!!!」

 

 

その時……その爆煙を掻き分けて、スバルがその姿を現す。

 

そしてその金色に輝く瞳は未だに光を失っておらず、今も尚チンクの姿を捉えていた。

 

 

「くっ……!!!」

 

 

何とか距離を取ろうとしたチンクだが、スタートが遅れた上に、スバルのマッハキャリバーの機動力を考えれば、逃げられる距離ではなかった。

 

 

「一撃必倒……!!!」

 

 

そしてスバルは、リボルバーナックルを装着した拳を構え……

 

 

 

「リボルバーキャノン!!!!!」

 

 

 

魔力と超振動を纏った最大の一撃を……チンクに叩き込んだ。

 

 

「ぐあぁぁあああああああ!!!!」

 

 

スバルの渾身の一撃よってチンクは断末魔を上げながら吹き飛び、そのまま壁に大激突した。

 

 

「が…ぐっ……!!」

 

 

「ハー…ハー…ハー……!!!」

 

 

地面に倒れて呻き声を上げるチンクと、息を切らしながらそんな彼女を見据えるスバル。その際に魔法を解いたのか、彼女の瞳が金色からいつもの緑色へと戻る。

 

 

「……フフ…私の……負けだ。もう体が…ピクリとも動かん」

 

 

うつ伏せに倒れながらも、どこか満足気な表情を浮かべているチンク。

 

 

「行け……通路を道なりに進んでいけば、魔水晶(ラクリマ)がある部屋に辿り付ける」

 

 

「うん…わかった」

 

 

チンクの言葉を聞いて、通路の方へと歩いて行くスバル。すると、その途中でスバルは再びチンクへと視線を向け……

 

 

「ありがとう!! チンク!!!」

 

 

「!!」

 

 

スバルの言った言葉にチンクは目を見開く。そして言った本人であるスバルは通路の奥へと消えて行った。

 

 

残されたチンクはしばらくしてから、口角をゆっくり吊り上げて笑みを浮かべ……

 

 

「それはこちらのセリフだ」

 

 

と…呟いたのであった。

 

 

 

「(面白い奴だ…スバル・ナカジマ……いや──妖精の尻尾(フェアリーテイル)…か)」

 

 

 

 

 

つづく




特別依頼!!
『LYRICAL TAILの謎を解明せよ!!』


ティアナ
「今回はもう巻いていくわ」

ルーシィ
「はい?」

ティアナ
「だからもう今回はコントやあんたの無駄なツッコミもなしで巻いて行くわよ」

ルーシィ
「いやそれはいいんだけど…どうしたの急に?」

ティアナ
「作者のネタ切れよ」

ルーシィ
「包み隠さずハッキリ言った!!?」

ティアナ
「それじゃあ最初の質問よ」


カサブタ様からの質問

・ナツとスバルはよく二人でギルドで仲良しですが、二人はどこで気が合うですか?


ティアナ
「バカ同士だから。以上」

ルーシィ
「簡潔!!?」


・これは個人的に聞きますが、ルーシィはユーノとは……でぅきてるんですか?


ティアナ
「できてないわよ。今後も一生」

ルーシィ
「ちょっとぉ!!?」

ティアナ
「冗談よ。まぁ、ルーシィの頑張り次第でしょ」


・フェイトは仕事に行かない時は、一日どうしてますか?


ティアナ
「フェイトさん答えて!!」

フェイト
「えっ!? あ、えっと……買い物したり、ギルドでなのはやはやて達とお茶したり…かな」

ティアナ
「はい、ありがとうございました」

ルーシィ
「巻きだからフェイトの対応も雑になってるわね……」

ティアナ
「次の質問よ」


紅鮭様からの質問

・「IS」は魔法を使わない魔法ですけど、何を動力としてます?コーラ?際限なしに力を使えるのですか?


ティアナ
「ISの説明についてはその内作者から詳しい設定が公開されると思うわ。あとどさくさにまぎれて某海賊ネタを放り込んでこないで」

ルーシィ
「ティアナ、巻くのは別にいいんだけど言葉遣いはちゃんとしないといけないと思う!!」


・戦闘機人は読んでる限り、普通の人間と比べて身体能力、耐久性が増してると思いますが、ガジェットみたいにビームやIS以外の特殊能力ありませんか?


ティアナ
「あるわけないでしょ。作者が考えたのはこの世界における戦闘機人の成り立ちの設定だけで、基本的な構造はリリなのの原作と同じよ。基本的に作者は原作に忠実だし」

ルーシィ
「ティアナみたいにオリジナル設定が足されている人もいるけど、基本的には同じよね」

ティアナ
「そうね。違うといえば、ヴォルケンリッターのみんなが人間って事と、スバルやギンガさんが戦闘機人じゃないって事くらいね」

ルーシィ
「それ…ここで言っていいの?」

ティアナ
「いいのよ」


・塔で戦っている妖精の尻尾以外のメンバーもそろそろ出番ありませんか?キャロもギルドに着いた頃でしょうに。あと、なのはも。


ティアナ
「あるとだけ言っておくわ。はい終わり」

ルーシィ
「今回は本当に速かったわね」

ティアナ
「巻いたからね。あぁそれと……しばらくこのコーナーはお休みよ」

ルーシィ
「えぇ!!? なんで!!?」

ティアナ
「作者のネタ切れって言ったでしょ。とりあえずは聖王編が終わるまでお休みするらしいわ」

ルーシィ
「うぅ…あたしの見せ場がぁ……」

ティアナ
「そのうち本編で出番があるから我慢しなさい。それでは、またこのコーナーが再開する日まで……」


ティアナ・ルーシィ
「「さようなら~!!」」



と言う訳で、しばらくこのコーナーはお休みします。

私的な理由でまことに申し訳ありませんが、どうかご了承ください。

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