LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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久しぶりの更新です。

相変わらずのグダグダ感丸出しですが、一生懸命書きました。

感想お待ちしております。


預言者の著書

 

 

 

 

 

ベルカの街を襲撃して来た闇ギルド〝悪霊の札(デーモンカード)〟との防衛戦を終え、その戦いで負傷したナツたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)は、街の自警騎士団本部である『聖王教会』の医務室で治療を受けていた。

 

 

「いてててっ!!!」

 

 

「ほらグレイ!! ジッとして!!」

 

 

「っつう~……ウェンディかシャマルが居りゃあ、治癒魔法をかけてもらえんだけどなぁ」

 

 

「この場にいない者の力を求めても仕方あるまい」

 

 

なのはに包帯を巻いてもらいながら、この場に治癒系の魔法を使えるウェンディとシャマルが居ない事を悔やむように愚痴るグレイ。そんなグレイに言い聞かせるようにそう言うエルザ。

 

 

「ティアナ…お腹のキズ、大丈夫?」

 

 

「平気……とは言い難いわね」

 

 

「急所を外したとはいえ、割と深く刺されていますからね。止血はしてありますが、安静にしないとまたキズが開いてしまいますので注意してください」

 

 

ガワラによって腹部に重傷を負ったティアナを心配するように声をかけるルーシィ。そしてそんなティアナのキズを治療していた自警騎士団の副団長…シャッハが安静にしておくように言い聞かせる。

 

 

「くっそー!! あいつらぁ……次会ったら今度こそぶっ倒してやる!!!」

 

 

その近くで悔しそうにそう叫びながら、自身の手のひらに拳を打ち付けるナツ。

 

 

「でも…あいつらの強さは半端じゃないよ」

 

 

悪霊の札(デーモンカード)の四天王……確かに奴等は強い。特に最後に出てきたあのオルバというメガネをかけた男……奴からはただならぬ気迫を感じた」

 

 

ハッピーの言葉に、エルザはオルバから感じた凄まじい殺気を思い出しながらそう告げる。

 

 

「だが分からないのは奴等の目的の意図だ。奴等がこの街を襲った理由は、金髪で赤と緑の虹彩異色を持った子供……その特徴からして……」

 

 

「ヴィヴィオ……だね」

 

 

エルザの言葉に続くようになのはが口を開く。

 

 

「この街がヴィヴィオの故郷ならばこの街を襲った理由がつくが……」

 

 

「しかし、前回の奴等の襲撃の際…私たち自警騎士団が住民の避難を迅速に済ませましたので、逃げ遅れた者や行方不明になった者は1人も出ませんでした」

 

 

「となると……この街がヴィヴィオの故郷だっつう線はねぇな」

 

 

シャッハの説明を聞いて、グレイがそう結論付ける。

 

 

「ベルカの街を襲った理由……ヴィヴィオを狙う理由……そしてこの街とヴィヴィオの関係……ええい!!! 分からん事だらけだっ!!!!」

 

 

立て続けに浮かび上がってくる謎に、エルザは苛立たしげに言い放つ。すると……

 

 

 

「それは私がお答えします」

 

 

 

『!!!』

 

 

突然部屋に響き渡る声……その声に反応して全員がそちらへと視線を向けると……

 

 

「騎士カリム!!!」

 

 

「カリム殿……」

 

 

自警騎士団団長……カリム・グラシアが医務室の入り口前に佇んでいた。

 

 

「まずはこの街を守ってくださって、ありがとうございました」

 

 

「いえ……魔導士ギルドとしての仕事を全うしただけです」

 

 

カリムが妖精メンバー一同に深々と頭を下げて感謝の言葉を述べる。すると、ティアナが思い出したように口を開いた。

 

 

「そう言えば……奴等が攻めてくる前、あなたは何かを知っているような口振りでしたね」

 

 

「えぇ……私は全てとは言いませんが、あなた方が疑問に思っていることの大半を理解しております」

 

 

ティアナの疑問に対し、特に隠すような素振りも見せずに淡々と言葉にするカリム。

 

 

「ですがその話をする前に……あなた方にもう一つお願いがあります」

 

 

「? なんだ?」

 

 

エルザがそう問い掛けると、カリムは一呼吸置いたあとにゆっくりと口を開き……

 

 

 

 

 

「私とシャッハを…妖精の尻尾(フェアリーテイル)に連れて行ってください」

 

 

 

 

 

と言い放ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七十九話

預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後……妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「テリャァアアア!!!」

 

 

「ギヒッ」

 

 

ギルド前にあるオープンカフェでは、エリオとガジル……2人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が素手での組手をしていた。

 

 

「雷竜の……鉄拳!!!」

 

 

勢いよく駆け出したエリオは、雷を纏った拳をガジルの顔面目掛けて放つ。

 

 

火竜(サラマンダー)の真似事かよ? そんなんじゃあオレには勝てねえぜ」

 

 

対してガジルはその拳をパシッと軽々と片手で受け止める。

 

 

「オラァ!!!」

 

 

「うわぁぁあ!!!」

 

 

ガジルは掴んだエリオの拳をそのまま振り回し、思いっきり投げ捨てる。

 

 

「くっ……!!」

 

 

何とか空中で体制を立て直し、地面に着地するエリオ。

 

 

「どうした小僧、その程度かよ。鍛えて欲しいっつーからわざわざ相手してやってんだぜ? ちったぁオレを楽しませろよ!!!」

 

 

「まだまだぁ!!!」

 

 

ガジルの挑発めいた言葉を聞き、再び彼に向かって突進していくエリオ。

 

 

そんな2人から少し離れた所では、シグナムとザフィーラとフェイトの3人。ルーテシアとアギトの元ファントム組の2人……そしてウェンディとキャロとシャルルの3人……計8人がオープンカフェの席に座りながら観戦していた。

 

 

「ふむ……やはり武器なしの素手での戦いはレッドフォックスの方が分があるか」

 

 

「エリオは槍術と雷魔法を組み合わせて戦う魔導士だからな、普段素手で戦いなれているガジル相手では仕方あるまい」

 

 

「でも滅竜魔法は本来、自分の体にその属性を付加(エンチャント)して破壊力を上げる魔法だから、武器なしでも戦えるようになりたいって言うエリオの考えは間違ってないよ」

 

 

ガジルとエリオの組手を観戦しながらそう評価するシグナム、ザフィーラ、フェイトの3人。

 

この3人はそれぞれエリオに『武器での戦い』と『格闘での戦い』と『雷魔法の応用』を教えている3人である。因みに武器での戦いは、エルザにも教えてもらっている。

 

 

「つーか、同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だからってガジルに鍛えてくれって頼むなんて、エリオの奴も度胸あるよなー」

 

 

「エリオ君、このギルドに入ってから強くなろうと頑張ってるから…」

 

 

「それに私もそうだけど…自分と同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と出会える事なんて滅多にないから、戦い慣れしてる滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が2人もいるのはエリオ君にとっては絶好の機会なんだよ」

 

 

「ホント…男ってのはバカな生き物ね」

 

 

「……………」

 

 

その傍らでは…アギト、キャロ、ウェンディ、シャルルがそんな会話を繰り広げ、ルーテシアは無言で2人の組手を傍観していた。

 

アギトとルーテシア…そしてエリオとウェンディとキャロの5人は全員12歳の同い年。その為、この5人はギルドの中では比較的仲が良いのである。(ルーテシアは変わらずガジルにベッタリだが……)

 

 

「うわぁぁぁあああ!!!」

 

 

その間に……エリオはガジルの一撃により、地面に倒れてしまった。

 

 

「そこまで。勝者ガジル」

 

 

「ギヒッ」

 

 

それを確認したザフィーラが止めに入り、勝利者を告げた。

 

 

「あいたたた……」

 

 

「エリオ君!」

 

 

「大丈夫?」

 

 

「うん、平気だよ。やっぱり強いなぁガジルさん」

 

 

「一応あいつはファントム最強って呼ばれてたから当然だろ。けどまぁ、頑張った方じゃねーか?」

 

 

ウェンディとキャロは起き上がったエリオに駆け寄り安否を確認し、アギトはエリオに賞賛の言葉を送る。

 

 

「どうだレッドフォックス? エリオと戦った感想は?」

 

 

「……フン。ラクサスに比べりゃあ、あの小僧の電撃なんざ静電気みてーなモンだ。全然たいした事ねーよ」

 

 

「ラクサスと比べるのは……さすがに酷なんじゃ……」

 

 

シグナムに戦った感想を求められ、鼻を鳴らしながらそう評価するガジル。それを聞いて苦笑いを浮かべるフェイト。

 

 

「だがまぁ…その…なんだ……筋は悪くねぇんじゃねーの?」

 

 

「フッ……そうか」

 

 

「フフッ……」

 

 

後頭部をガシガシと掻きながらそう言うガジルを見て、シグナムとフェイトは思わず笑みを零した。

 

 

「……む?」

 

 

すると、ザフィーラが鼻をクンクンと動かしながら何かに気がついた。

 

 

「どうやら、帰ってきたようだな」

 

 

「え?」

 

 

『?』

 

 

ザフィーラがギルドの門の方へと視線を向けながらそう呟き、それをフェイトが首を傾げ、他の面々もザフィーラの視線を追うように門へと視線を移す。

 

すると、少し遠くの方から何人かの人影が見えた。

 

 

「あっ……あれはっ!」

 

 

その人影が誰のものなのか確認したエリオは顔を綻ばせ、それに気づいたフェイトやウェンディたちも笑みを浮かべた。

 

 

「ただいまー!!」

 

 

「ただー!」

 

 

「ただいまー!!!」

 

 

そしてその人影の正体……ナツとハッピーとヴィヴィオを筆頭に、ティアナ、グレイ、ルーシィ、エルザ、なのはの8人が仕事から帰還した。

 

 

「皆さんおかえりなさい!!」

 

 

「ずいぶんボロボロですけど…大丈夫ですか?」

 

 

「へーきへーき!! こんなモン掠り傷だ!!!」

 

 

「あい」

 

 

「あんたはそうでも、私は結構重傷なんだけどね……ウェンディ、悪いけど後で治癒魔法かけてもらえるかしら?」

 

 

「はい!! 任せてください!!」

 

 

キャロの問い掛けに元気に答えるナツとは裏腹に、腹部に刺し傷を負ったティアナはウェンディに治癒魔法をかけてもらうように頼む。

 

 

「おかえりなのは、グレイ、ルーシィ、ヴィヴィオ」

 

 

「ただいま、フェイトちゃん!」

 

 

「おう」

 

 

「ただいまー」

 

 

「フェイトさん! ただいまー!!」

 

 

笑顔で迎えてくれるフェイトに、同じく笑顔で答える4人。

 

 

「ヴィヴィオがいるって事は……ベルカの街はヴィヴィオの故郷じゃなかったの?」

 

 

「うーん…それなんだけど……」

 

 

「ちょっとなぁ……」

 

 

「色々と複雑な状況になっちゃってね……」

 

 

「?」

 

 

苦笑を浮かべながらそう答えるなのはとグレイとルーシィに、フェイトは首を傾げたのであった。

 

 

「おかえり、スカーレット」

 

 

「あぁ、今戻った」

 

 

「仕事の方はどうだった?」

 

 

「その話も含めて、彼女達から少し話がある」

 

 

シグナムとザフィーラの問い掛けに答えながら、エルザは後ろにいるカリムとシャッハの2人に視線を向ける。

 

 

「マスターは今おられるか?」

 

 

「あぁ、ギルドの中におられる」

 

 

「ならば丁度いい、今から少し大事な話がある。悪いがギルドの連中をできるだけ酒場に集めてくれないか?」

 

 

「「?」」

 

 

エルザのそんな頼みに、シグナムとザフィーラは疑問符を浮かべながらも了承したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「はい、これでもう大丈夫よ」

 

 

「ありがとうございますシャマル先生、ウェンディも」

 

 

「えへへ♪」

 

 

シャマルとウェンディの治癒魔法による治療を受けたティアナは、ウェンディの頭を撫でながら2人にお礼の言葉を言う。

 

 

「でもまだ完璧に治ったわけじゃないから、あんまり激しく動き回るとキズが開いちゃうかもしれないから気をつけてね」

 

 

「はい!」

 

 

シャマルの注意の言葉を聞いて頷くティアナ。そしてすぐに、その視線をギルドのカウンターの方へと向ける。

 

その視線の先には、マカロフを含めたナツやグレイにルーシィ…エルザになのはにフェイト…さらにはヴォルケンリッターなどのギルドメンバーたちに囲まれながら、カリムとシャッハの姿があった。

 

 

「初めまして。ベルカの街の聖王教会責任者、及び自警騎士団団長のカリム・グラシアと申します」

 

 

「同じく聖王教会シスター、及び自警騎士団副団長のシャッハ・ヌエラと申します」

 

 

「これはどうもご丁寧に。ワシは妖精の尻尾(フェアリーテイル)三代目ギルドマスター、マカロフじゃ」

 

 

頭を下げながら自己紹介をするカリムとシャッハに対して、マカロフも自身の名を告げながら頭を下げる。

 

 

「して…カリム殿。エルザの話によれば、彼女たちが行ったこのニセモノの仕事はお主は『何者かの罠』と言い、さらにはエルザたちがベルカの街へやって来るのも分かっていたと断言した」

 

 

「正確に言えば、彼女たちがベルカの街に来るかもしれないという予想ですが」

 

 

「どういう事か……説明していただけますかな?」

 

 

マカロフの問い掛けに、カリムは「わかりました」と言って頷くと、懐からお札のような紙の束を取り出す。そして縛っていた紙の紐をゆっくりと解くと、札は光を放ちながらカリムを中心に円を描き始めた。

 

その光景に、マカロフを含めたギルドメンバーが驚愕する。

 

 

「こ…これは!!?」

 

 

「これは私の魔法……〝預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)〟です」

 

 

預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)じゃと!!?」

 

 

カリムの魔法の名前を聞き、マカロフは驚愕を露にするが、周囲の面々はどんな魔法かわからず首を傾げている。すると、はやてが代表して問い掛けた。

 

 

「マスター、何やの? その…プロフェ…何とかいう魔法?」

 

 

預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)……簡単に言えば、未来を予言する魔法じゃ」

 

 

「予言?」

 

 

マカロフの答えにさらにはやてが疑問符を浮かべていると、今度はカリム自身が説明する。

 

 

「この魔法は最短で半年…最長で数年先の未来。それを詩文形式で書きだした予言書の作成を行う事が出来る〝失われた魔法(ロストマジック)〟の一種です」

 

 

失われた魔法(ロストマジック)!!?」

 

 

失われた魔法(ロストマジック)の一種と聞いて、驚愕するフェイト。

 

 

「ただ…月の魔力が高まる満月の日でないと発動出来ませんから、発動は月に1度。書き出される文字も難解な古代文字の上に、術者の周囲で起こる事件をランダムに書き出すだけですので、あまり使い勝手のいい魔法とは言えません。解釈ミスも含めれば的中率や活用性は…割と良く当たる占い程度です」

 

 

失われた魔法(ロストマジック)って言っても、全部が全部便利な魔法とは限らないのね」

 

 

カリムの説明を聞き、あまり便利とは言い難い魔法だと理解するルーシィ。

 

 

「では、私たちの街への来訪がわかったと言うのも、その魔法の予言の通りなのか?」

 

 

エルザの問い掛けにカリムは頷くと、彼女の前に予言が書かれた一枚の札が浮かび上がり、それを読み上げる。

 

 

「『古き文明の地。偽りの使命と聖なる王に誘われし妖精の民が彼の地に舞い下りる。妖精の民…古き地を侵攻し、聖なる王を手に入れんとする悪霊の民と対立せし』」

 

 

「???」

 

 

「あの……よくわからないんですが」

 

 

カリムの読み上げた予言の内容が理解できず、ナツはこれでもかと言うほど首を傾げ、ティアナは小さく挙手しながらわからないと告げた。

 

 

「順を追って解釈しますと、まず『古き文明の地』は私たちの街…ベルカの街を指しております」

 

 

「ベルカの街は…今でこそ大陸の片隅にある辺境の街と言われていますが、約400年前には聖王が統治していた巨大な国家だったのです。その聖王様を信仰して作られたのが、聖王教会なのです」

 

 

「なるほど、だから古き文明の地は…ベルカの街だと解釈できると言うわけですね」

 

 

カリムとシャッハの説明を聞いて、エリオが納得したように声をもらす。

 

 

「となると、『妖精の民』は私たち妖精の尻尾(フェアリーテイル)…『偽りの使命』がニセモノの依頼というわけか」

 

 

そう言ってエルザは予言の文を自分なりに解釈する。すると、グレイがある事に気がつく。

 

 

「おい、ちょっと待てよ……この古き地を侵攻する『悪霊の民』ってのはあいつら……悪霊の札(デーモンカード)の事だよな。だったら、この『聖なる王』ってのは……」

 

 

「!! ヴィヴィオ!!?」

 

 

「ふえ?」

 

 

予言に出てきた『聖なる王を継ぐ者』の事がヴィヴィオだと思い至り、なのはは驚愕し、彼女の側にいたヴィヴィオは首を傾げている。

 

 

「そ…そんなバカな事あるわけないじゃない、ヴィヴィオが王様だなんて……」

 

 

「いえ……そうでもないかもしれないわ」

 

 

ありえないと否定するルーシィを、ティアナが更に否定する。

 

 

「そう考えてみれば、この予言はかなり当たっているわ。私たちは『ニセモノの依頼』と『ヴィヴィオの故郷探し』を切っ掛けに『ベルカの街』へ行った。そしてそこで、ベルカの街を襲い…何故かヴィヴィオを狙っていた『悪霊の札(デーモンカード)』と戦った……」

 

 

「確かに……予言通りだ」

 

 

「じゃあ、本当にヴィヴィオは王様って事!!?」

 

 

「おーさま?」

 

 

ティアナの説明にエルザは納得し、ルーシィは驚愕し、ヴィヴィオは疑問符を浮かべている。

 

 

「じゃあこの…聖なる王というのは、そもそも何なんですか?」

 

 

「聖なる王とはおそらく、私たちの教会が信仰する聖王様のことでしょう。教会の文献によると、聖王様は赤と緑の虹彩異色の両目が特徴的な女性だったと記されていますから」

 

 

「……特徴まで一緒となると、もう疑う余地はねえな」

 

 

カリムの説明を聞いて、聖なる王=ヴィヴィオだと言う事を断定せざるを得なくなった。

 

 

「そしてその聖王様を継ぐ者という事は、聖王様の子孫……と言う事になるのですが……」

 

 

ウェンディの問い掛けに答えながらそう説明するカリムだが、途中で言葉の勢いを無くして口ごもり…その続きを代わりにシャッハが説明する。

 

 

「教会にある聖王様に関する文献によると、聖王様……『オリヴィエ・ゼーゲブレヒト』は子孫を残すことなく血筋は根絶されたと記されています」

 

 

「ふむ……じゃが、過去の文献が全て真実とは限るまい。表の歴史があれば、裏の歴史もある……いずれにせよ、その聖王とヴィヴィオに何らかの関係があるのは確かじゃ」

 

 

「そうですね……その関係性については私にもわかりません。しかし……これであの子がこの予言に大きく関わっている事は明確になりました」

 

 

カリムはマカロフの言葉に頷きならそう言うと、再び彼女の手元に予言が記された札が出現する。

 

 

「これは最近書き記された新たな予言です」

 

 

そう前置きをしたあと、カリムはその予言が記された札を読み上げる。

 

 

「『悪霊の魂と無限の欲望が交わる地。妖精・悪霊・戦乙女が彼の地に揃いし時、聖なる王を巡りし戦の幕が上がる。全ての鍵は……白と蒼の魔導士のもとに』」

 

 

「……こりゃまた、よくわかんねー予言だな」

 

 

カリムの予言を聞き、グレイが顔をしかめる。

 

 

「この予言については、私たちも全て解読できたわけではありません。ただ、聖なる王を巡って大きな戦いが起こるくらいしか……」

 

 

「聖なる王を巡るって事は……ヴィヴィオを巡る戦いって事だよね?」

 

 

「妖精と悪霊と戦乙女……妖精と悪霊はわかるけど、この戦乙女って何を示しているのかしら?」

 

 

「それに、全ての鍵となる蒼き翼と白き翼って……?」

 

 

「うーむ……不確定な単語が多すぎるな」

 

 

「無限の欲望……まさか……!?」

 

 

上からカリム・ルーシィ・ティアナ・なのは・エルザ・フェイトが口々にそう言いながら疑問符を浮かべていると……

 

 

 

「だーーーーー!!! めんどくせーーー!!!!」

 

 

 

『!!!』

 

 

突然ナツが叫びを上げ、ギルドにいた全員の視線がナツへと集中する。

 

 

「予言がどーだとかゴチャゴチャめんどくせえ!! 要は簡単な事だろうが!!!」

 

 

そう言ってナツは自身の手のひらに拳を強くぶつけながら言い放つ。

 

 

 

「あいつらはヴィヴィオを…オレたちの仲間を狙ってる!!! だったらオレたちはその仲間を守る為に戦う!!! ただそれだけだろーが!!!!」

 

 

 

ナツのその言葉を聞き、全員が唖然としていたが……やがてマカロフが笑みを浮かべながら口を開いた。

 

 

「そうじゃな……今ではヴィヴィオもワシらギルドの仲間じゃ。仲間に手ェ出そうってんなら、そやつらを叩き潰してやるまでじゃわい」

 

 

マカロフがそう言うと、グレイやティアナたちも笑みを浮かべる。

 

 

「まったく……バカナツのくせに」

 

 

「こんな時にだけ核心を突きやがる」

 

 

「だが……ナツの言う通りだ」

 

 

「にゃはは♪ ナツ君らしいよね」

 

 

「そうよね!! あたしたちがヴィヴィオを守ってあげないと!!」

 

 

「あい!!!」

 

 

上からティアナ・グレイ・エルザ・なのは・ルーシィ・ハッピーがそう言うと、それを聞いていた他のギルドメンバーたちも名乗りを上げた。

 

 

「僕も手伝います!! 修行の成果を見せる時です!!!」

 

 

「私も!! ヴィヴィオちゃんを守る為にがんばります!!!」

 

 

「私もです!!!」

 

 

エリオ、ウェンディ、キャロの幼少3人組……

 

 

「ぬおおおお!!! 漢ならぁ!!! 仲間を守るのは当然だぁーー!!!」

 

 

そう言って雄叫びを上げるエルフマン。

 

 

「私も手伝うよ。個人的に気になる事もあるしね……」

 

 

何かに対する疑惑を抱きつつも、そう名乗りを上げるフェイト。

 

 

「仲間が狙われるって聞いたら、私らも黙ってられへんな」

 

 

「そうですね、我が主」

 

 

「バラム同盟に匹敵する力を持つ闇ギルド……ふふっ、腕が鳴るな」

 

 

「オメーはそればっかだな」

 

 

「あら、今は頼もしいじゃない♪」

 

 

「……ふっ」

 

 

はやてが率いる最強チーム・ヴォルケンリッターもやる気を見せている。

 

 

「そうと決まれば……よいかガキども!!! 敵はワシらの仲間…ヴィヴィオを狙っておる!!! 目的はわからん……しかし!! それを黙って見過ごすワシらではない!!! たとえどんな敵が相手であろうとも、ヴィヴィオを守るのじゃ!!!!」

 

 

『オォォォオオオオ!!!!』

 

 

マカロフの言葉に、その場にいたギルドメンバー全員が腕を突き上げて雄叫びを上げた。

 

 

「……ふふっ…いいギルドね、シャッハ」

 

 

「そうですね……とても仲間想いで、暖かいギルドです」

 

 

その光景を見て、カリムとシャッハは微笑ましく笑みを浮かべていた。

 

 

「ねぇ…ママ」

 

 

「? なぁにヴィヴィオ?」

 

 

「ヴィヴィオ……わるい人たちにねらわれてるの?」

 

 

「!」

 

 

さすがに今までの話を聞いていれば、幼いヴィヴィオでもある程度の内容は理解できてしまったようである。そんなヴィヴィオを、なのはは優しく抱き締めた。

 

 

「大丈夫だよヴィヴィオ……ママがちゃんと守ってあげるから」

 

 

「……パパも?」

 

 

「パパもそうだし、何よりこのギルドのみんながヴィヴィオを守ってくれるよ。ヴィヴィオはもう、このギルドの一員なんだから」

 

 

「……えへへ♪ そっか!!」

 

 

なのはの言葉を聞いたヴィヴィオは嬉しそうに笑顔を浮かべ、それを見たなのはも釣られて笑顔を浮かべた。

 

 

「なのはー!! ちょっと来てくれないかしらー?」

 

 

すると、酒場のカウンターの方からミラジェーンが呼んでいるのが聞こえた。

 

 

「あ、はーい! ちょっと行って来るね」

 

 

「うん!」

 

 

ヴィヴィオにそう断りを入れてから、なのははミラジェーンのもとへと歩み寄る。

 

 

「何ですか? ミラさん」

 

 

「ごめんね……ちょっとなのはにお願いがあるのよ」

 

 

「お願い? 何ですか?」

 

 

「実はね、貴女にはちょっと───」

 

 

ミラジェーンはそう言って一呼吸置いたあと、再び口を開き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでほしいの♪」

 

 

と……狂気的な笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

「え──?」

 

 

 

ズバァァァァアアン!!!!

 

 

 

次の瞬間……なのはの身体には大きな赤い切り傷が刻まれ……真っ赤な鮮血が飛び散ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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