LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回からオリジナル編に入ります。

ネタバレになるのはあれなので、しばらく章の表示は『???編』にします。しばらくしたらちゃんとしたタイトルを入れますので。

オリジナルはあまり得意ではありませんので、ストーリーがおかしくなったり、グダグダになったりしてしまうかもしれない上に更新も遅くなると思いますが、どうかご了承ください。

感想お待ちしております。できれば辛口コメはなしの方向で……


聖王編
ベルカの街


 

 

 

ウェンディやエリオ、キャロたちが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士となり、そしてなのはが面倒を見ている記憶喪失の少女…ヴィヴィオが来て早くも一ヶ月が経った。

 

そんなある日の事……

 

 

「ま…まだつかねーのか……おぶ」

 

 

「もうすぐだから我慢しなさい」

 

 

「ナツおにーちゃん、だいじょうぶ~?」

 

 

「気にしなくてもいいのよヴィヴィオ、いつもの事だから」

 

 

「あい」

 

 

「ヴィヴィオ、今のナツ君はそっとしておいてあげようね?」

 

 

「はーいママ♪」

 

 

「ったくこのクソ炎は毎度毎度…そんなに苦しいなら乗るな! 走れ!!」

 

 

「はしれー♪」

 

 

そんな会話をしながら、ナツ・ティアナ・ハッピー・ルーシィ・グレイのいつものメンバーに加えて、なのは…そしてヴィヴィオを乗せた魔導四輪は、どこかの山道を走っている。

 

 

「おいお前たち……見えてきたぞ」

 

 

魔導四輪を運転しているエルザの言葉を聞いて、一同は窓の外を覗き込む。

 

 

そして窓の向こうには……まるで砦のような城壁にグルリと囲まれた街が見えていた。

 

 

「あれが今回の仕事先の『ベルカの街』。そして……」

 

 

グレイの言葉に続くように、なのはがポツリと呟くように口を開く。

 

 

 

 

 

「ヴィヴィオの……故郷」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七十六話

『ベルカの街』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は…数日前に遡る。

 

 

「ミッド地方のベルカの街…ですか?」

 

 

「うむ」

 

 

場所はギルドの酒場にあるカウンター席。

 

栗色の長い髪を白いリボンで二つに結い、白いドレスのような服を身に纏った妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士…高町なのはの問い掛けに、ギルドマスターであるマカロフはパイプを吸いながら静かに頷く。

 

 

「……先日の定例会で、その街が闇ギルドによる大規模な襲撃に遭ったという情報が入ってのう。しかし、ベルカの街は大陸の片隅にある辺境の街……何故そこが闇ギルドに襲われたのかは分からん。そして今朝方、そのベルカの街にある〝聖王教会〟という所から、ある依頼が出されたのじゃ」

 

 

「依頼?」

 

 

そう言うとマカロフは1枚の依頼書をなのはに手渡し、受け取ったなのははそれを読み上げる。

 

 

「えっと……『捜索願。闇ギルド襲撃の際にいなくなった小さな女の子を捜しています。報酬は20万J』……これがどうかしたんですか?」

 

 

依頼書を読み終えたなのはは、首を傾げながら問い掛ける。それに対し、マカロフはパイプを吸い、ふぅーっと煙を出しながら口を開いた。

 

 

「ワシはその行方不明の女の子が、ヴィヴィオの事ではないかと睨んでおる」

 

 

「!!?」

 

 

その言葉を聞き、なのはは目を見開く。

 

 

「その街が襲撃にあったのは1ヶ月と少し前……お主がヴィヴィオを拾った日と重なる。可能性は高い」

 

 

「ヴィヴィオの……」

 

 

そう呟くなのはの顔は嬉しそうだが……同時に少々悲しそうでもあった。

 

 

「どうじゃ? 依頼ついでに確かめに行ってみるか?」

 

 

「……はい!! 私はヴィヴィオを、ちゃんと元の親の場所に帰してあげるって決めましたから!!!」

 

 

なのはは、迷いの無い真っ直ぐとした目でそう言い放った。

 

 

「そうか、わかった。じゃが、ここからベルカの街へ行くには最低でも数日は掛かる。ヴィヴィオをつれて1人で行くにはキツかろう。他に何人か連れて行く事を薦める」

 

 

「わかりました!!!」

 

 

こうして……なのははナツやグレイたちに同行を頼み、ヴィヴィオをベルカの街へと連れて行く為に旅立ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ここから先は山道が厳しく、魔導四輪では進めん。ここからは歩くぞ」

 

 

エルザがそう言うと、他のメンバーは荷物を纏めて魔導四輪から降りる。

 

 

「もう二度と…乗り物には乗らん……うぷ」

 

 

「はいはい、それもう聞き飽きたわよ」

 

 

「あい」

 

 

ナツの言葉に呆れながら溜息をつくティアナと、相槌を打つハッピー。

 

 

「それにしても、とうとうヴィヴィオとお別れか~…あたし的には妹ができたみたいで嬉しかったのにな~」

 

 

「あぁ…マスターやギルドの連中もヴィヴィオを可愛がっていたからな。そう考えると、少々名残惜しいものだ」

 

 

「2人とも、まだベルカの街がヴィヴィオの故郷だって決まった訳じゃないよ?」

 

 

名残惜しそうに言うルーシィとエルザに、なのはは苦笑する。

 

 

「そういえばなのは、ヴィヴィオの記憶の方はどうなの?」

 

 

「まだ何とも……もしベルカの街がヴィヴィオの故郷だったら、それを切っ掛けに何か思い出すかもしれないし」

 

 

「なるほど、それも込みで確かめに行くのね」

 

 

「そう言う事になるね」

 

 

ルーシィの問い掛けにそう答えながら、なのはは少し前を歩いているグレイとヴィヴィオへと視線を移す。

 

 

「パパ!! だっこ!!」

 

 

「だからパパ言うな。ちゃんと自分の足で歩け」

 

 

「じゃあおんぶ!」

 

 

「人の話聞いてんのか? ダメだ」

 

 

「やーっ!!」

 

 

「やじゃねえ!!」

 

 

「やーーっ!!!」

 

 

結局、ヴィヴィオの駄々に根負けしたグレイは彼女をおんぶする事になった。

 

 

「~♪~~♪」

 

 

「ったく…何でオレがこんな事……」

 

 

ご満悦の様子で鼻歌を歌うヴィヴィオと、ブツブツと文句を呟きながら彼女をおぶって歩くグレイ。

 

 

「パパの背中ひろーい!!」

 

 

「おいちゃんと掴まってろ、落っこちても知らねーぞ」

 

 

「はーい♪」

 

 

そんな2人の様子を見て、ルーシィはコソっとエルザとなのはに話しかける。

 

 

「何だかんだ言って、グレイって結構ヴィヴィオに甘いわよね」

 

 

「そうだね。パパって言うなって怒ってる割には、ちゃんとヴィヴィオの相手をしてあげてるしね」

 

 

「そう言えば、この前グレイとヴィヴィオがマグノリアの公園で一緒に遊んでるのを見かけたな」

 

 

そう言うと、それを聞いていたティアナが思い出したように口を開く。

 

 

「公園と言えば、あんたたちもヴィヴィオと遊んでたわよね?」

 

 

「おお、オレとハッピーもヴィヴィオと遊ぶ時あるぞ、なぁハッピー」

 

 

「あい! 時々ウェンディにエリオにキャロも一緒にね」

 

 

「ティアもスバルと一緒にヴィヴィオと遊んでたじゃねーか」

 

 

「遊んでたと言うより、2人の元気に振り回されていたって言った方が正しいわね」

 

 

この会話を皮切りに、ヴィヴィオが誰と一緒に居たという話が始まる。

 

 

「オイラ、ビックスローがヴィヴィオと人形で遊んでたのを見かけたよ。あとリーダスと一緒にお絵かきしてたのとか」

 

 

「あたしは、レビィちゃんがヴィヴィオに絵本を読んであげてたのを見たわ」

 

 

「私はヴォルケンリッターの連中とヴィヴィオと一緒に鬼ごっこやかくれんぼ等をしたぞ。ふふっ、あの時は久しぶりに童心に返ったものだ」

 

 

「そういやガジルのヤローがヴィヴィオと話してるのを見かけたな。やっぱあいつロリコンだったのか」

 

 

「私もそう言うのを何度か見かけたわね。フェイトさんやエルフマンもヴィヴィオを仲良くしてたし、マスターも、あの子を孫のように可愛がってたわね」

 

 

「こうして聞くと……ヴィヴィオもだいぶ妖精の尻尾(フェアリーテイル)に馴染んでたんだなぁ」

 

 

そんな会話で盛り上がっていると、なのはがポツリと呟いた。

 

 

「それもとうとうお別れとなると……やっぱり寂しいね」

 

 

「なんで? また遊びに来りゃいいじゃねーか」

 

 

「バカナツ、距離を考えなさい」

 

 

「あい、さすがにマグノリアからベルカの街へは遠すぎるよ」

 

 

「そうか?」

 

 

「あはは……まぁ二度と会えないって訳じゃないけど……そう頻繁に会う事はできないね」

 

 

首を傾げるナツに、なのははそう言いながら苦笑を漏らす。すると、ティアナが何かを考えるかのように口を開く。

 

 

「あの、なのはさん。少し気になったんですけど……ヴィヴィオの年齢って、いくつですか?」

 

 

「え? えーっと…見た目は大体8歳~10歳って所かな?」

 

 

「じゃあ、少なく見てもロメオの少し上くらいって事ですよね?」

 

 

「そうだけど……それがどうかしたの?」

 

 

「それにしてはあの娘……少し精神面が幼すぎませんか?」

 

 

「どういうこと?」

 

 

そう尋ねるルーシィを筆頭に、全員が疑問符を浮かべている。

 

 

「あの年頃の子供は遊び盛りなのはわかりますけど……いくらなんでも絵本を読んでもらったりして喜ぶ年じゃないと思うんですよ」

 

 

ティアナのその言葉に、ルーシィとなのはとエルザは「確かに…」という表情をするが、ナツだけは未だに?を浮かべている。

 

 

「つまりティアナは、ヴィヴィオの精神面の年齢と肉体面の年齢が一致しない…と言いたいんだな?」

 

 

「はい…まるで精神面はそのままに、体だけが成長したような……」

 

 

「考えすぎじゃないの?」

 

 

「だといいんだけど……」

 

 

ルーシィの一言によりこの話は終了したが、ティアナはずっと考え込むような表情をしていた。すると、ナツたちより少し前を歩いていたグレイが声を上げた。

 

 

「おいお前ら何してんだ、早く来い。見えてきたぜ」

 

 

そう言ってグレイが指差す先には、城壁に囲まれている街への入り口と思われる城門が見えていた。

 

 

「すごい城壁……街というより、ちょっとした国みたいね」

 

 

「1ヶ月前に闇ギルドの襲撃に遭ってから、かなり街の警備が強化されたって話よ」

 

 

「グレイ、ヴィヴィオは?」

 

 

「寝ちまった」

 

 

そんな会話をしながら街の入り口へと近づいて行く。そして城門の前へとやって来たその時……

 

 

「止まりなさい!!」

 

 

『!!』

 

 

女性の声が響くと同時に、突如ナツたちの前に鎧を着た兵隊達が立ちはだかる。

 

 

「んだテメェら?」

 

 

「バカ、この街の警備兵よ。ややこしくなるから挑発するんじゃないの」

 

 

警備兵たちを睨みつけるナツを、ティアナが宥める。すると…警備兵たちの中から、1人の女性が現れた。

 

 

「我々はこの街の自警団の者です。あなた方はこの街にどういったご用件でしょうか?」

 

 

丁寧だが、疑うような女性の言葉を聞き、ナツたちを代表してエルザが一歩前に出る。

 

 

「私たちは魔導士ギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者だ。この街へはギルドへの依頼でやって来た。決して怪しい者ではない」

 

 

「魔導士ギルド……では、紋章を見せてください」

 

 

女性にそう言われ、ナツたちはそれぞれの体に刻まれたギルドの紋章を見せる。

 

 

「確かに……あなたたちは下がってください」

 

 

『はっ!!!』

 

 

女性がそう言うと、周りにいた警備兵はその場から離れ、自分たちの持ち場へと戻って行った。

 

 

「大変失礼をいたしました。私は自警騎士団副団長のシャッハ・ヌエラと申します」

 

 

女性…シャッハは深々と頭を下げながら、エルザたちに謝罪する。

 

 

「いや…この街は先日闇ギルドの大規模な襲撃を受けたと聞いている。それを考えれば、当然の対応だ」

 

 

「そう言って頂けると助かります。それで、この街からの依頼というのは?」

 

 

「えっと…〝聖王教会〟っていう所からの依頼なんですけど……」

 

 

「聖王教会?」

 

 

それを聞くと、何故かシャッハは少々驚いたような表情を見せる。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

「いえ……わかりました、それでは私が教会までご案内させていただきます」

 

 

「いいのか?」

 

 

「はい。こう見えても私、その教会のシスターでもあるんです」

 

 

そう言うと、シャッハは妖精の尻尾(フェアリーテイル)一行を、聖王教会への案内を始めたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ここが、聖王教会になります」

 

 

その後…シャッハの案内により聖王教会へとやって来た一同。そんな彼らの目の前には、カルディア大聖堂にも負けず劣らずの立派な建物があった。

 

 

「うわぁ~…」

 

 

「デッケェなぁ」

 

 

「あい」

 

 

「ここって、お城かと思ってたけど…教会だったのね」

 

 

聖王教会を見て、上からルーシィ・ナツ・ハッピー・ティアナが感嘆の声を上げる。

 

 

「街の教会にしては、ずいぶんと大きな建物だな」

 

 

「はい、聖王教会はこの街の自警騎士団の本部でもありますので」

 

 

「教会と自警団を兼任してるって事?」

 

 

「そういう事になります。どうぞこちらへ」

 

 

エルザとなのはの問い掛けに答えながら、シャッハは一同を教会の中へと招き入れる。

 

 

「教会が所々壊れてんのは、やっぱこの間の襲撃のせいか」

 

 

グレイの言う通り、教会の外装にも内装にも、壊されたような形跡が多々あった。

 

 

「はい。街の復興が最優先に行なわれたので、ここの修復はこれから行なわれる予定なのです」

 

 

「へぇ~」

 

 

「あの…ところで私たちは今、どこに向かってるんですか?」

 

 

ルーシィはシャッハが自分たちをどこに案内しているのかを尋ねる。

 

 

「私どもの騎士団長のもとです。先ほど通信用魔水晶(ラクリマ)で連絡したところ、あなた方にお話があると言っておられましたので」

 

 

それを聞いて、質問したルーシィを含めた一部の面々はおそらく仕事の話だろうと察した。

 

 

そんな会話をしながら教会の廊下を歩いて行くと、シャッハがとある一室の扉の前で歩みを止めた。

 

 

「少々お待ちください」

 

 

そう言うと、シャッハは扉をコンコンっとノックする。

 

 

「騎士カリム…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆様をお連れしました」

 

 

『はい、どうぞ』

 

 

扉の向こうから返事が返ってきたのを確認し、シャッハは扉の取っ手に手をかけ、ゆっくりと扉を開く。

 

そんなシャッハに促され、ナツたちは部屋の中へと足を踏み入れた。

 

 

「では、私はこれで」

 

 

そう言うと、シャッハは部屋には入らずそのまま扉を閉めて去って行った。

 

 

「ようこそいらっしゃいました、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さん」

 

 

そう言って一同を迎えたのは、腰まで伸びた金髪にカチューシャを身に着けた女性であった。

 

 

「聖王教会責任者、及び自警騎士団団長のカリム・グラシアと申します」

 

 

自己紹介をしながら頭を下げる女性…カリムに、代表してエルザが口を開く。

 

 

「私はエルザ・スカーレットだ。よろしく頼む」

 

 

「はい、妖精女王(ティターニア)のエルザさんですね。お噂はよく耳にしております」

 

 

「いえ…そんな……」

 

 

カリムの言葉に照れ臭そうにそう言うエルザ。

 

 

「エルザさんだけではありません。後ろにおられる火竜(サラマンダー)のナツさん…幻銃士(ミラージュガンナー)のティアナさん…エース・オブ・エースのなのはさん。皆様の(あざな)は本当によく耳にしております」

 

 

カリムはナツ、ティアナ、なのはの顔を見ながらそう言っていく。そしてふと…グレイとルーシィの顔を見た途端、言葉が詰まった。

 

 

「えーっと……申し訳ありません、そちらのお2人に関しましては……」

 

 

「あ…あははは!! いいんですよ!! あたし、ギルドに入ってまだ1年も経ってない新人ですから!!!」

 

 

申し訳無さそうな表情をするカリムに慌ててフォローの言葉を口にするルーシィ。その後ろでは、ナツとハッピーとティアナがヒソヒソと会話をしていた。

 

 

「ルーシィはともかく、そう言えばグレイの二つ名って聞いたこと無いよね?」

 

 

「確かにそうよね? 私たちの中で一番長くギルドにいるのに……」

 

 

「ぷぷっ、ダセー奴」

 

 

「聞こえてんだよクソ炎!!!」

 

 

バカにしたように笑うナツに怒鳴るグレイ。しかし、その話題にエルザとなのはも食いついた。

 

 

「言われてみれば、確かにグレイの(あざな)は聞いた事がないな」

 

 

「そうだよね、ガジル君は〝鉄竜(くろがね)〟…ジュビアちゃんは〝大海〟…フェイトちゃんは〝金色の閃光〟…入ったばかりのウェンディとキャロにも二つ名があるし……最近になってエリオも〝雷竜(いかずち)のエリオ〟って異名で呼ばれるようになったのに……何でグレイにはないの?」

 

 

「知るかっ!!! 気にしてんだから穿り返すなっ!!!」

 

 

「気にしてたんだ……」

 

 

異名が無い事を意外と気にしていたグレイに、ルーシィが呟く。

 

 

「影薄いんじゃねーの?」

 

 

「よーし表に出ろナツ、今日こそボッコボコにしてやる」

 

 

ナツの一言で、グレイは頭に怒りマークを浮かべる。

 

 

「ダメだよグレイ、まだヴィヴィオが寝てるんだから」

 

 

「ぐっ…チィッ……」

 

 

なのはの言葉でグレイは、まだ自分の背中でヴィヴィオが寝息を立てているのを思い出し、舌打ち混じりに怒りを収めた。

 

 

「あの……」

 

 

「あぁ、すまない。見苦しい所を見せてしまったな」

 

 

「いえ、楽しそうなギルドですね♪」

 

 

エルザの謝罪をカリムは微笑みながら受け止める。

 

 

「どうぞお掛けになってください」

 

 

カリムに促され、エルザとなのはは部屋の中心を陣取っているソファに腰を据え、ナツたち他の面々はその後ろに立った。

 

そしてカリムも、テーブルを挟んで向かいにあるソファにゆっくりと腰を下ろした。

 

 

「さて……それでは本題に入りましょう」

 

 

「あぁ、今回の依頼……闇ギルド襲撃の際にいなくなった少女の捜索だったな。実はそれに関して少々聞きたい事が──」

 

 

そう言いかけたエルザだが、カリムはその言葉を遮って衝撃的な一言を言い放った。

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんが、私たちはギルドに依頼申請をした覚えはありません」

 

 

 

 

 

『はっ!!?』

 

 

当然その言葉に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)一同は驚愕する。

 

 

「どーいう事だよそりゃあ!!?」

 

 

「依頼申請をした覚えがないって……事実私たちのもとには依頼書が届いているんですよ?」

 

 

カリム言葉に対してナツが怒鳴り、なのはは荷物の中から今回の依頼書を取り出してテーブルの上に置く。

 

 

「確かに依頼主は聖王教会になっていますが……本当に私たちは身に覚えがないのです」

 

 

カリムはその依頼書を手に取り、ジッとそれを眺めたあとそう言って、さらに言葉を続ける。

 

 

「1ヶ月前のあの日……この街は突然の襲撃に遭いましたが、住民の避難は迅速に済ませたので、逃げ遅れた者や行方不明になった者は1人もいませんでした。被害に遭ったのは街と、応戦した我々騎士団の者たちだけです」

 

 

「じゃあ……オイラたちのギルドに届いたこの依頼って何なの?」

 

 

「おそらく……何者かの罠でしょう」

 

 

ハッピーの問いにカリムは間髪入れずにそう言った。それに対し、今度はルーシィが驚愕した様子で問い掛ける。

 

 

「罠って……どういう事!!?」

 

 

「この依頼書はあなた方妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士……もしくはその中の特定の人物を誘き出す為のものという事です」

 

 

淡々とそう言ってのけるカリムに対し、エルザとなのはは疑わしげな視線を送る。

 

 

「何故そう言い切れる? まるで何か知っているかのような口振りだな」

 

 

「そうだよね、それに知らないのにわざわざ私たちをここに招くのもおかしい。普通だったら門前払いするハズなの」

 

 

なのはは静かにそう言い…エルザは射抜くような眼光を向けるが、カリムは特に物怖じした様子もなく口を開いた。

 

 

「えぇ……私はあなた方がここに来るのが分かっていました」

 

 

『!!?』

 

 

カリムのその言葉に、再び驚愕する一同。

 

 

「いえ、違いますね。正確に言えば、あなた方がここに来るかもしれないと予想していたのです」

 

 

「そんな事はどうでもいい!! それは一体どういう事だ!!?」

 

 

「それは──」

 

 

エルザの問い掛けに答えようとカリムが口を開こうとしたその時……

 

 

カーン!! カーン!! カーン!! カーン!!

 

 

『!!?』

 

 

突然外から、まるで警報のような鐘が鳴り響いた。

 

そしてそれと同時に1人の騎士が慌てた様子で部屋の中へと入ってきた。

 

 

「騎士カリム!! 南西の見張り部隊から報告!! 闇ギルドの部隊が、この街に向かって接近中です!!!」

 

 

「!!! そのギルドの紋章は!!?」

 

 

「確認済みです!!! 先日、我等の街を襲撃して来たギルドと同じ──」

 

 

騎士は一呼吸置いてから、その闇ギルドの名を高らかに言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝悪霊の札(デーモンカード)〟です!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




最後に出てきた闇ギルドの名前……分かる人には分かる!!!


でもまぁ、それとまったく一緒って訳ではありませんけどね。

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