LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

75 / 240

今回も無駄に長いです。アニメ沿いでやるとどうも長くなってしまいますね。

リリカルキャラ設定にエリオとキャロを加えました。

興味がある方は、以下のURLからご確認ください。


http://id26.fm-p.jp/322/bakatesu555/index.php?module=viewbk&action=ptop&stid=3


感想お待ちしております。


虹の桜

 

 

 

桜の季節のマグノリア。

 

そして舞台は、そのマグノリアに存在する魔導士ギルド…妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「よいか皆の者!! 魔導士たるもの日々鍛錬を怠らず、技を磨き、依頼に応じて仕事をこなし、明日の糧を得るのが習わし。晴れの日もあらば、また雨の日もあり、労せずして仕事を終える日あらば、苦闘の末に成し遂げる日もある。じゃが、いずれにせよ明日はまた必ずやってくるものじゃ。そしてまた我等は魔導士として、歩み続ける」

 

 

酒場のカウンターに威風堂々と立ち、目の前に集結しているギルドのメンバーたちに教えを説いている、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドマスター…マカロフ。

 

 

「それこそが!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士である!!!!」

 

 

『オオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 

マカロフの言葉に、メンバー全員が大いに歓声を上げる。

 

 

「皆、この1年よーく頑張ってくれた!!! その労をねぎらうべく、明日はいよいよ……超お楽しみの花見じゃーー!!!」

 

 

マカロフがそう宣言すると同時に、またもやメンバーたちから歓声があがる。

 

 

「今日は前祝じゃ!!! 飲めぇ!!! 飲めぇい!!!」

 

 

その言葉を最後にお祭り騒ぎを始めるギルドメンバーたち。そしてその様子を遠目から見ていたガジルは……

 

 

「イカレてるぜ」

 

 

と、鉄のボルトを口にしながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七十五話

『虹の桜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、本番は明日なんだからほどほどにね?」

 

 

「ふーんだ、花見だから飲め飲めって、ちょっと騒ぎすぎじゃないの?」

 

 

「カナちゃん、酒樽抱えたまま言うても説得力ないて」

 

 

「しかし、我等のギルドは年中花見みたいなものですからね」

 

 

酒樽を抱えたまま文句を言うカナに苦笑しながらそう言うはやてとリィンフォース。

 

 

「漢なら花見だ!!! なぁザフィーラ!!!」

 

 

「漢は関係ないが、楽しみではあるな」

 

 

叫ぶエルフマンに、微笑を浮かべてそう答えるザフィーラ。

 

 

「年に一度のお花見だし、明日は久しぶりに私が腕を振るっちゃおうかしら?」

 

 

「やめろシャマル!!! それだけは絶対にやめろ!!」

 

 

「折角の花見の席を台無しにする気か!!?」

 

 

「それどういう意味!!?」

 

 

「「そのままの意味だ!!!」」

 

 

明日の花見で料理を作ろうとしているシャマルを、シグナムとヴィータが必死に止めていた。

 

 

「ママ、花見ってなぁに?」

 

 

「マグノリアの公園に咲く桜の花をみんなで見る事だよ。桜の木の下でご飯を食べたり、大騒ぎしたり……そうだ、ビンゴっていうゲームもするんだよ」

 

 

「びんご~?」

 

 

「そうだよ。しかもそのビンゴで一等賞だった人は、豪華賞品が貰えるんだ。私が一等賞だったら、ヴィヴィオにプレゼントしてあげるね♪」

 

 

「ホント!!? ママ頑張ってね!!!」

 

 

「任しといて!!!」

 

 

ヴィヴィオの声援に、なのはは満面の笑顔でそう答える。

 

そしてその近くの席では、レビィたちシャドウ・ギアの3人がビンゴの事で話していた。

 

 

「去年もその前もダメだったからな~…よーし!!! 私もビンゴがんばろっ!!!」

 

 

「どうやって頑張るんだ?」

 

 

「気合じゃねーの?」

 

 

意気込むレビィにジェットとドロイがそうツッコミを入れたのであった。

 

 

「理解に苦しむぜ。ったくみんなして浮かれやがって……たかが花見だろ?」

 

 

「そうか? アタシ等は初めての花見だから結構楽しみだぜ。なぁルールー?」

 

 

「……うん、楽しみ」

 

 

依頼板(リクエストボード)の近くでそんな会話をしているのは…浮かれ気分のメンバーたちを見て呆れているガジルと、楽しそうな表情を浮かべているアギト、そしていつも通り無表情のルーテシアである。

 

 

「依頼主たちもわかってるのが多くってよー」

 

 

「あん?」

 

 

話しかけてきたナブに視線を向けるガジル。

 

 

「この時期の妖精の尻尾(フェアリーテイル)は浮かれてて仕事にならねえからって、依頼が少ねぇんだ」

 

 

ナブの言う通り、リクエストボードに張られている依頼書の枚数がいつもに比べて大分少なかった。

 

 

「おーホントだ。さすがナブ、伊達に一日中リクエストボードの前に突っ立ってるだけあるぜ」

 

 

「うぐっ」

 

 

アギトのさり気ない一言(悪気なし)に、小さく唸るナブ。

 

 

「ん? どうしたジュビア?」

 

 

すると、ガジルは近くで暗く落ち込んでいるジュビアに気がついた。

 

 

「あぁ…グレイ様が…グレイ様が仕事に行ってしまって~……グレイ様がいないギルドがこんなに寂しいなんて~」

 

 

「そりゃ仕方ねーだろ。ギルドの魔導士である以上、仕事はしねーといけねぇんだからよ」

 

 

涙声でそう語るジュビアに、アギト溜息混じりに答える。。

 

 

「だって……ジュビア置いていかれてしまって……」

 

 

「グレイはナツたちとチーム組んでんだからしょうがねぇだろ?」

 

 

「でも~ウェンディとエリオとキャロは連れてってもらったのに~!!」

 

 

化猫の宿(ケット・シェルター)から移って来て間もないし、うちの仕事に慣れてもらう為だろ?」

 

 

「わかってるけど……わかってるけど……」

 

 

ナブの言葉を聞いて納得しつつも渋るジュビア。

 

 

「そんなに寂しいならなのはの所でも行って来いよ。お前の数少ない友達だし、あいつなら多少の愚痴くらいは付き合ってくれんだろ。つーかこれ以上ウジウジされてまた洪水起こされんのもイヤだしな」

 

 

「うぅ…アギト酷い……でもそうする」

 

 

アギトの辛らつな言葉に若干ヘコみながらも、ジュビアはトボトボとなのはのもとへと歩いていったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方こちらは……ハコベ山。

 

 

「『う~!!! あたしったらまた薄着でここに来ちゃった!! 寒すぎる~!!!』と申しております」

 

 

召喚した時計座の星霊…ホロロギウムの中に入り、言葉を彼に代弁させながら雪山の道を進んでいくルーシィ。

 

今回彼女を含めたナツ・ティアナ・ハッピー・グレイ・エルザのいつものチームに加え、化猫の宿(ケット・シェルター)から移って来たウェンディ・シャルル・エリオ・キャロの計10名は、仕事でこのハコベ山へと来ていた。

 

因みにハコベ山は、たとえ夏季であろうと1年中雪が降り注ぐ極寒の雪山である。

 

 

「ささ…寒いねキャロちゃん……」

 

 

「うん…スゴイ吹雪だね…」

 

 

「何よこれくらいで、だらしないわよ。エリオを見習いなさい」

 

 

自身の体を抱き締めながら震える声で話すウェンディとキャロに、そう言い放つシャルル。

 

 

「『ウェンディとキャロもおいでよ、風邪引いちゃうよ』と申しております」

 

 

「そうですか? じゃあお言葉に甘えて」

 

 

「エリオ君とシャルルちゃんは?」

 

 

「僕はいいよ。このくらいの寒さなら大した事ないから」

 

 

「私も全然平気よ。寒さなんて、心構え一つでどうとでもなると思うけど」

 

 

ルーシィの厚意に甘え、ウェンディとキャロもホロロギウムの中に入り込む。

 

 

「あったか~い!」

 

 

「星霊って凄いんですね!」

 

 

「は…早く帰りた~い……」

 

 

ホロロギウムの中で寒さを凌ぐウェンディとキャロ、そして毛布に包まって震えるルーシィ。

 

 

「空模様も落ち着いてきたな」

 

 

「そうですね、この天候だとしばらく吹雪は止むと思います」

 

 

「腹減ったなぁ~…どっかに火でもねぇかな?」

 

 

「くそっ、こんだけ積もってると歩きづれえな」

 

 

「グレイさん、それ以前に服を着てください」

 

 

「うおっ!?」

 

 

そんな会話をしながら雪道を突き進む一行。

 

 

「ねぇナツ、そんな便利な薬草って本当にあるのかな?」

 

 

「さぁな~、依頼書に書いてあったんだから、きっとあんだろ」

 

 

「だってさ、お茶に煎じて飲んだり、ケーキに練りこんで食べれば、魔導士の魔力が一時的にパワーアップするなんて…オイラは眉唾物だと思うんだ。ほら『うまい魚には毒がある』って言うでしょ?」

 

 

「それを言うなら『うまい話には裏がある』よ」

 

 

ハッピーの間違ったことわざを、そう言ってティアナが正す。

 

 

「効果はともあれ、依頼はこの山にある薬草の採取だ。ついでに多めに取れたら、明日のビンゴの景品にしよう。みな喜ぶぞ」

 

 

「あっ、ビンゴって明日の花見の催し物ですよね? 僕、花見って初めてだから楽しみです!」

 

 

エルザの話に出てきたビンゴと聞いて明日の花見を思い出し、笑顔でそう言うエリオ。

 

 

「おぉーい薬草!!! いたら返事しろー!!!」

 

 

「するかよバーカ」

 

 

「んだとコラァ!!!」

 

 

グレイの一言に突っかかるナツ。

 

 

「思った事なんでも口に出しゃいいってもんじゃねーだろ。しかもテメェのは意味わかんねえのばっかだし」

 

 

「ほーう、やる気かよこのカチコチパンツ王子!!!」

 

 

「うぜーんだよこのダダ漏れチョロ火野郎!!!」

 

 

そう言ってゼロ距離で睨み合い、一発触発の雰囲気になる2人だが……

 

 

「やめんか!!!!」

 

 

「「あい!!!」」

 

 

「はぁ~……」

 

 

「あはは……」

 

 

エルザの一喝によりその場は収まり、ティアナはそれを見て深く溜息をつき、エリオは苦笑いを浮かべていた。

 

 

「はぁ…早く仕事終わらせて帰りたいなぁ。明日のお花見の準備したいのに……」

 

 

「私もすごく楽しみです!!」

 

 

「マグノリアの桜ってどんな感じなんですか?」

 

 

「すんごい綺麗なんだよ、マグノリアの桜ってね!! しかも夜になると、花びらが虹色になるの!! それはもうチョー綺麗でぇ!!!」

 

 

「虹色の桜ですかぁ!!」

 

 

「うわぁ、想像しただけで綺麗!!」

 

 

「でしょでしょ!!?」

 

 

「……と、申しております」

 

 

ホロロギウムの中で、明日の花見の話題に盛り上がるルーシィ、ウェンディ、キャロの3人。

 

 

「でねでね!! みんなでお弁当とか作って持って行って、その虹色の桜の木の下に行って、一日中眺めて、みんなでワイワイお花見するのよ!!! あぁ、明日が待ち遠しい!!! だから今日は仕事を早く終わらせて、急いでマグノリアに帰って、それからそれからクッキーとか作って、それからそれから明日着ていく服選んで、それからそれから今日は小説書かないで早く寝て、それからそれから髪も可愛くセットして、それからそれから!!!」

 

 

「あれ?」

 

 

ルーシィが興奮したようすで長々と話していると、ウェンディがある事に気がついた。

 

 

「ルーシィさん、去年のお花見も行ったんですか?」

 

 

「えっ!? えーっと……」

 

 

「確かルーシィさんって、ギルドに入ってからまだ1年経ってないって聞いたような……」

 

 

ウェンディとキャロの疑問を聞いて、ルーシィは思い出したように「あっ…」と声を漏らした。

 

 

「……そういえば今年が初めてかも……」

 

 

「「えっ?」」

 

 

あれだけ熱く語っていたにも関わらず、まさかのギルドの花見は未経験という事実に、ウェンディとキャロは目を丸くした。

 

 

「あ…あはははは!! あたしってば、あんまり楽しみすぎて妄想してたかもー!!!」

 

 

「ふふっ、本当に楽しみなんですね。私たちもとっても楽しみです!!」

 

 

「ギルドの皆さんとお花見って、すっごく楽しそうです!!!」

 

 

「でしょでしょ!? 一緒に楽しもう!! 初めて同士!!!」

 

 

3人がそんな会話をしていると……

 

 

「時間です。ではごきげんよう」

 

 

ポウンと音を立てて、ホロロギウムは星霊界へと帰ってしまった。

 

 

「「「寒い~~~!!!」」」

 

 

「おいおい……」

 

 

「お前たちもちゃんと探さないかっ!!!」

 

 

再び襲ってきた寒さにルーシィとウェンディとキャロは身を寄せて抱き合い、そんな3人を見たグレイは呆れ、エルザは怒鳴った。

 

 

「だってぇ~!!!」

 

 

「花見が楽しみなのはわかるけど、ちゃんと仕事に集中しないと痛い目にあうわよ」

 

 

渋るような声を出すルーシィにそう言い放つティアナ。すると……

 

 

「おっ、匂うぞ!!! これぜってぇ薬草のニオイだっ!!!」

 

 

鼻をクンクンと動かしていたナツが、薬草と思しきニオイを嗅ぎつける。

 

 

「え?……確かに草のニオイがしますけど……ナツさん、薬草にニオイを嗅いだ事あるんですか?」

 

 

「いや、嗅いだ事ねぇけど間違いねえ。行くぞハッピー!!!」

 

 

「あいさー!!!」

 

 

そう言うと、ナツはハッピーと共にニオイがする方へと一目散に駆け出していった。

 

 

「ちょっとナツ!!! ったくもう、あのバカ…せっかちなんだから」

 

 

「とにかく着いて行く事にしよう。あいつの鼻は侮れないからな。エリオ、薬草のニオイがする所まで案内してくれ」

 

 

「薬草のニオイかどうかはわかりませんが、了解です」

 

 

「気のせいかしら? すごくイヤーな予感がするんだけど……」

 

 

「シャルルの勘はよく当たるもんね」

 

 

そんな会話をした後、一同はナツの跡を追いかけていった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うおおおおお!!!!」

 

 

「うおー!!!」

 

 

雄叫びを上げながら意気揚々と雪の山道を駆け上がっていくナツとハッピー。そしてそのまま山頂に到着すると、そこには依頼の品である薬草が生えていた。

 

 

「あったー!!!」

 

 

「うぱー!!!」

 

 

「早っ」

 

 

「速ぇ事はいい事だ……」

 

 

「相変わらず運がいいというか何というか……」

 

 

「本当に薬草のニオイだったんですね」

 

 

「さすがだな」

 

 

「ナツさんすごーい!」

 

 

「やっぱりケモノね」

 

 

「あはは……」

 

 

まさか本当に見つかるとは思わなかった一同は、一部を除いて苦笑いを浮かべている。

 

 

「おーし、さっさと摘んで帰んぞー!」

 

 

「あいさー!」

 

 

そう言ってナツとハッピーが薬草を摘み取ろうとしたその時、2人の頭上を大きな影が覆った。

 

 

「「!!」」

 

 

それを見たナツとハッピーはすぐさま上空を見上げる。そこに居たのは……

 

 

「グォォォオオオオ!!!!」

 

 

巨大な白い体をした飛竜(ワイバーンが)飛んでいた。

 

 

「あれは……ブリザードバーン!!?」

 

 

「ブリザードバーン?」

 

 

「はい。通称〝白ワイバーン〟と言って、雪山などに生息する飛竜(ワイバーン)です」

 

 

飛竜(ワイバーン)に詳しいキャロがルーシィにそう説明している間に、ブリザードバーンはナツとハッピーに向かって大きく翼をはためかせた。

 

 

「「うわぁあああ!!!」」

 

 

その風圧により吹き飛ばされるナツとハッピーだが、ナツはすぐさま体制を立て直して着地する。

 

 

「気をつけてくださいナツさん!!! ブリザードバーンは見かけによらず草食で、特に薬草などの草が大好物なんです!!!」

 

 

「なにー!!?」

 

 

「独り占めする気だ!!!」

 

 

キャロの言葉にナツが驚愕している間に、すでにブリザードバーンは地に降り立って薬草を食べようとしていた。

 

 

「確かこういうのを一石二鳥とか棚ボタっつーんだよな? 白いワイバーンの鱗は結構高く売れるって知ってっか?」

 

 

「うおーし、薬草ついでにこいつの鱗全部剥ぎ取ってやんぞ!!」

 

 

「どっちにしても、今のこいつは仕事の邪魔。さっさと片付けるわよ」

 

 

「僕も戦います」

 

 

そう言って、ナツとグレイとティアナ、そしてエリオはすでに戦闘態勢に入っている。

 

 

「ここは私たちに任せて、ルーシィたちは下がってろ」

 

 

エルザはそう言うと、自身の鎧を〝雷帝の鎧〟へと換装させる。

 

 

「私たちがアレの注意を引き付ける。その隙を窺って、ルーシィたちは薬草を採取するんだ」

 

 

「はい!」

 

 

「わかりました!」

 

 

「仕方ないわね」

 

 

「えー…何か一番危険なポジションではないかと……」

 

 

活気のある声で返事をするウェンディとキャロとは対照的に、渋るように言うルーシィ。

 

 

「頼んだ!!!」

 

 

「は…はい!!! やります喜んで!!!」

 

 

しかし、エルザの威圧するかのような頼みに、ルーシィは慌てて承諾した。

 

 

「行くぞ!!! お前たち!!!」

 

 

「「おうよっ!!!」」

 

 

「「はいっ!!!」」

 

 

そして5人はそれぞれの魔法と武器を駆使して、ブリザードバーンとの戦闘を開始した。

 

 

「「「ひぃぃいい!!!」」」

 

 

「急いで急いで!!!」

 

 

「情けない声出さないの!!」

 

 

その間に、ルーシィたちが目的の薬草へと向かってく。

 

 

「火竜の煌炎!!!!」

 

 

「グオォォオ!!!」

 

 

ブワァァァアア!!!!

 

 

「えっ!?」

 

 

「ナツさんの炎が!!!」

 

 

「風圧ではね返された!!?」

 

 

ナツがブリザードバーンに向かって放った巨大な炎の球体は、ブリザードバーンの力強い羽ばたきによって巻き起こった風圧にはね返され、そして……

 

 

「「「きゃあああああ!!!!」」」

 

 

そのままルーシィたちの方へと落ちていき、3人は悲鳴を上げながらもそれを何とか回避する。

 

 

「アイスメイク…〝円盤(ソーサー)〟!!!」

 

 

続いてグレイが回転ノコのような氷を造りだし、ブリザードバーンを攻撃するが、またもや羽ばたきの風圧によって吹き飛ばされ……

 

 

「きゃあああ!!?」

 

 

そしてまたもやルーシィの眼前へと着弾した。

 

 

「クロスファイヤー…シュート!!!」

 

 

今度はティアナが数十個もの魔法弾をブリザードバーンに向かって一斉に放つが、やはり羽ばたきの風圧によってはね返され……

 

 

「「「ひゃああああ!!!!」」」

 

 

ルーシィたち3人は雨のように降り注ぐ魔法弾から必死に逃げていた。

 

 

「これならどうだ!!!」

 

 

そう言ってエルザは手にしている槍から雷を放ち、ブリザードバーンを攻撃する。

 

しかし、ブリザードバーンは雷が当たる直前に大きく空へと舞い上がってそれを回避する。そして、その雷の行く先にはナツとグレイの姿があった。

 

 

「おいおい……!!」

 

 

「待てコラ!!」

 

 

自分たちに迫り来る雷を見て、ナツとグレイは顔を青くする。そして雷が直撃するかと思われたその時……

 

 

「任せて下さい!!!」

 

 

「「エリオ!!?」」

 

 

2人の目の前にエリオが飛び出し……

 

 

「この雷……いただきます!!!」

 

 

そう言ってエリオはエルザが放った雷を吸い込むように喰い始めた。

 

 

「おおっ!!」

 

 

「ナイスだエリオ!!!」

 

 

「ぷはっ……ごちそうさまです」

 

 

ナツとグレイがエリオに賞賛の言葉を送っているいる間に、エリオは雷を完食する。そして……

 

 

「雷竜の……放電!!!!」

 

 

雷を溜めた右手を前に突き出し、そのままブリザードバーンに向かって電撃を放った。

 

 

「グオォォォオオオ!!!」

 

 

それの直撃を受けたブリザードバーンは悲鳴に似た雄叫びを上げ、電撃で少々痺れたのか段々と飛んでいる高度が落ちている。

 

 

「今だ!!!」

 

 

それを見たエリオはストラーダを構えて一直線に駆け出し、そのまま勢いをつけてブリザードバーンと同じ高さまで飛び上がり……

 

 

「雷竜槍・十字閃!!!」

 

 

雷を纏ったストラーダを振るい、ブリザードバーンの片方の翼を十字に切り裂いた。

 

 

「グオォォォオオ!!!」

 

 

それを喰らったブリザードバーンは雄叫びを上げながら地面へと墜落した。

 

 

「エ…エリオって、こんなに強かったの!?」

 

 

ブリザードバーンが墜落した際に発生した風圧から身を守りながら、ルーシィはエリオの戦いに驚愕していた。そんなルーシィに、同じく風圧から身を守っているウェンディとキャロが説明する。

 

 

「エリオ君、化猫の宿(ケット・シェルター)にいた頃からずっと、魔法や槍術の練習を欠かしませんでしたから」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってからも、フェイトさんに雷魔法の応用を教えてもらってたり、エルザさんと武器の打ち合い練習をしたりしてるんですよ」

 

 

「そ…そうなんだ……」

 

 

2人の説明を聞いて、ルーシィはそう声を漏らす。

 

 

「(よーし、あたしだって負けてられない!!!)」

 

 

ギルドに入ったばかりのエリオが努力している事を聞いて、ルーシィの中に小さな対抗意識が芽生えた。

 

 

「ぬおっ!!」

 

 

一方、地面へと墜落したブリザードバーンは自棄になったのかメチャクチャに暴れ始め、その巨大な足でグレイを踏み潰そうとする。それに対しグレイはブリザードバーンの足を力ずくで受け止め……

 

 

「ぬぅぅう…どらぁぁああ!!!」

 

 

そのまま力を込めてブリザードバーンの足を凍らし、ブリザードバーンの動きを封じた。

 

 

「今だお前ら!!!」

 

 

「おう!!!」

 

 

「行くわよっ!!!」

 

 

「はいっ!!!」

 

 

「任せろ!!!」

 

 

グレイの言葉を聞き、他の4人はすぐさま攻撃態勢に移る。

 

 

「クロスファイアー……フルバースト!!!」

 

 

まずはティアナが先程よりも多くの魔法弾を生成し、一斉にブリザードバーンへと放ち、全弾命中させる。

 

 

「雷帝・閃柱の槍(サンダーデトネーション)!!!!」

 

 

「雷竜槍・落雷!!!!」

 

 

それに続くようにエルザとエリオが雷を帯びた槍を振るい、激しい稲妻をブリザードバーンに落とす。

 

 

「火竜の…鉄拳!!!!」

 

 

そして最後に、ナツがとどめと言わんばかりに炎を纏った拳を振るい、ブリザードバーンを殴り飛ばしたのであった。

 

 

「採ったーー!!!」

 

 

その傍らでは、いつの間にか薬草のもとへと到達していたルーシィが、採取した薬草を高々と掲げていた。

 

 

「見て見て!!! あたしだって、妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チームの1人なんだからー!!!」

 

 

薬草を掲げながら誇らしげにそう言うルーシィだが……

 

 

ゴゴゴゴ……

 

 

「ん?」

 

 

そんな彼女の耳に、何やら地響きのような音が入る。何の音かと思い、ルーシィは音がする方へと視線を向けて見ると……

 

 

 

「雪崩れーーー!!!?」

 

 

 

そう、先ほどのナツたち5人とブリザードバーンとの戦闘で起きた衝撃により、山の雪が一気に崩れて雪崩が起こってしまったのだ。

 

 

ナツたち5人は咄嗟に倒したブリザードバーンの体にしがみ付き、多少流されたがその巨体のお陰で何とか雪に埋もれずに済んだ。因みにウェンディはシャルルに、キャロはハッピーに抱えられ空へと避難していた。

 

 

「みんな、無事か!!?」

 

 

「うぷ……」

 

 

「何故か酔ってるバカ以外は全員無事ですね」

 

 

「しかし、いきなり雪崩が起きるなんて……」

 

 

「そりゃま、あんだけ暴れりゃあこうなるか」

 

 

「やっぱりケモノね」

 

 

エルザの声に反応し、全員が無事を知らせる。

 

 

「あれ? ルーシィさんは?」

 

 

すると、ウェンディがルーシィが居ない事に気がつく。

 

 

「ルーシィどこー?」

 

 

ハッピーがルーシィの名を呼びかけると、近くの雪の中から薬草を持った手が出てくる。

 

 

「あっ、あそこです!」

 

 

キャロが指差す先には、雪に埋もれて震えているルーシィの姿があった。

 

 

「さ…さ…さぶい……!!!」

 

 

ルーシィは寒さのあまり震える声で、そう呟いた。

 

 

何はともあれ、こうしてナツたちの依頼は達成されたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

翌日…待ちに待った花見の日。

 

ナツとティアナ、そしてハッピーの3人はルーシィを迎えに彼女の自宅へとやって来ていた。

 

 

「え? 行かねーのかルーシィ?」

 

 

しかし、当のルーシィは花見には行かないと言った。

 

それもそのハズ……今のルーシィは苦しげに息をしており、声は鼻声、顔は熱を帯びたように真っ赤、そして寒そうに掛け布団に包まっている状態。早い話が、風邪を引いてしまったのである。

 

原因はもちろん、昨日のハコベ山での出来事である。

 

 

「マグノリアの花見はキレーだよ」

 

 

「い…行きたい…グズ……楽しみにしてたのにぃ……」

 

 

「バカ、よく見なさいハッピー。どう見ても行ける状態じゃないでしょ? 大丈夫ルーシィ?」

 

 

「うぅ…風邪引いたぁ~~」

 

 

悲しそうな声を出すルーシィに、ナツたちは気まずそうな表情をする。

 

 

「ゴメンね…あだし……寝るぅ」

 

 

「お…おう……」

 

 

「仕方ないわね……」

 

 

「お大事に」

 

 

そう言ってフラフラとした足取りでベッドに向かうルーシィを見た後、ナツたちはルーシィの家を出て行った。

 

 

「なんだよ、つまんねーなぁ」

 

 

「風邪じゃしょうがないよ」

 

 

「でも気の毒ね……あんなに楽しみにしてたのに、当日に風邪を引くなんて」

 

 

そう言いながら花見会場へと向かうナツとティアナとハッピー。

 

ルーシィはギルドの中で誰よりも今回の花見を心待ちにしていた。特にマグノリアの虹の桜を絶対に見ようと楽しみにしていたのだった。

 

 

「不憫な奴だなぁ」

 

 

「さすがに可哀想ね」

 

 

楽しみにしていたルーシィの顔を思い出しながら、そう口にするナツとティアナ。

 

 

「……あの人に…相談してみようかしら」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そして…花見会場であるマグノリアの公園は、すでに妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドメンバーたちが花見を楽しんでいた。

 

 

「さあみんな!! どんどん食べてね♪」

 

 

「料理はまだまだあるからな~♪」

 

 

そう言って料理を配り歩いているのは、看板娘のミラジェーンと料理が得意なはやてである。

 

 

「おーいはやて!!! ミラ!!! こっちにおかわりくれー!!!」

 

 

「はーい♪」

 

 

「いっぱい食べや、ヴィータ」

 

 

「おうよ!! はやてとミラの料理はギガウマだしな!!!」

 

 

はやてから料理を受け取りながら、子供っぽい笑顔を浮かべるヴィータ。

 

 

「じゃあヴィータちゃん、私の料理も……」

 

 

「いや、それはいらねえ」

 

 

「うぅ…シャマルさん悲しい……」

 

 

ヴィータの即答に、シャマルはがっくりと肩を落としたのだった。

 

 

「これは私のだからね!!!」

 

 

「アルベローナ…樽ごと持ってきたのか」

 

 

「心配せずとも、誰も取りはしない」

 

 

ギルドから持ってきた樽ごと酒を飲んでいるカナに、呆れたようにそう言いながら、自身もコップに入った酒を煽るシグナムとリィンフォース。

 

 

「花見は……漢だぁ!!!」

 

 

「意味がわからんぞ、エルフマン」

 

 

相変わらず『漢』の使い方を間違っているエルフマンに酒を煽りながらツッコミを入れるザフィーラ。

 

 

「えへへ~…フリード~♪」

 

 

「お…おい待てフェイト!! もう酔ってしまったのか!!? というか、何故オレににじり寄って来る!!?」

 

 

「にゃー♪」

 

 

「うおおおお!!!?」

 

 

酒に弱いフェイトはすでにできあがってしまい、そんな彼女にフリードは現在進行形で襲われていた。因みにそんなフリードを、同じ雷神衆のビックスローとエバーグリーンは……

 

 

「あらあら、これは」

 

 

「できてる」

 

 

と…面白そうに眺めていたのだった。

 

このように、ギルドのメンバーたちは各々で花見の席を楽しんでいた。

 

 

「あ? 風邪引いたって?」

 

 

「酷いんですか?」

 

 

「んー」

 

 

「まぁね」

 

 

「鼻はグショグショ、顔は真っ赤でそりゃもう」

 

 

グレイとジュビアの問い掛けに、どこか上の空のナツとティアナの代わりにハッピーが答える。

 

 

「ルーシィおねーちゃん…かわいそう……」

 

 

「そうだね、あとでお見舞いに行ってあげようか?」

 

 

「うん……」

 

 

なのはの言葉に頷くヴィヴィオだが、その表情は少々暗かった。

 

 

「なぜ風邪を引く?」

 

 

「気づいてないのね……」

 

 

「間違いなく、昨日の仕事で…ですよね」

 

 

なぜルーシィが風邪を引いたのか素で疑問に思っているエルザに、シャルルは呆れながら、エリオは苦笑しながらそう口にする。

 

 

「ルーシィさん、あんなに楽しみにしてたのに……」

 

 

「ねぇウェンディちゃん、ウェンディちゃんの魔法でルーシィさんの風邪は治せないの?」

 

 

「もうかけてあるよ。明日にはよくなると思うけど……」

 

 

「うーん…明日かぁ」

 

 

ルーシィが治る頃にはもう花見どころか虹の桜も終わっている。それを知ったハッピーは、残念そうに呟いたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃…風邪を引いてしまったルーシィは冷却シートを額に張り、ベッドで横になっていた。

 

 

「はぁ…お花見……みんな今頃楽しんでるんだろうなぁ…行きたかったなぁ……うぅ~」

 

 

楽しみにしていたお花見に行けなくなり、ルーシィは誰もいない部屋でただ一人、布団を深く被って唸る。

 

 

コンコン……

 

 

すると、突然自宅の入り口のドアからノック音が聞こえてきた。

 

 

「ん…お客さん? 誰だろ?」

 

 

コンコン……

 

 

「はぁ~い……」

 

 

重たい体をベッドから起こし、布団に包まった状態でフラフラとドアへと向かうルーシィ。

 

そして、ガチャリとドアを開けるとそこには……

 

 

「やっ、ルーシィ」

 

 

「ユーノさん!!?」

 

 

今はお花見会場にいるハズの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士…ユーノ・スクライアの姿があった。

 

 

「ど…どうしてここに?」

 

 

「ルーシィが風邪を引いたってティアナから聞いてね、様子を見に来たんだ。あがってもいいかな?」

 

 

「あ、はい……どうぞ」

 

 

「お邪魔します」

 

 

そう言ってユーノを家の中へと招き入れるルーシィ。

 

 

「あっ…何か飲み物でも」

 

 

「いや、いいよ。君は病人なんだから、そんな事せずにベッドで寝た寝た」

 

 

「は…はい」

 

 

そう言ってユーノに背中を押され、再びベッドに横になるルーシィ。

 

 

「あの…ユーノさん、お花見に行かなくていいんですか?」

 

 

「うん。ギルドのお花見は毎年やるから、一回くらい欠席しても問題ないよ」

 

 

ルーシィの問い掛けに、笑顔を浮かべながらそう答えるユーノ。その表情に、後悔の色はなかった。

 

 

「それに……ルーシィの事が心配だったから」

 

 

「え?」

 

 

ユーノの一言に、ルーシィは別の意味で顔を赤くする。

 

 

「ほら、ルーシィは今回のお花見すごく楽しみにしてたでしょ? それで落ち込んではいないかと心配になってね。病は気からって言うし」

 

 

「あ…そうですか……」

 

 

自分が思ったような意味ではなかった事に、少し落ち込むルーシィ。

 

 

「あ、もしかして迷惑だったかな?」

 

 

そんなルーシィの様子を見て、迷惑だったのではないかと懸念するユーノ。

 

 

「いえそんな事は!!! 来てくれてすごく嬉しいです!!!」

 

 

「そう? よかった……」

 

 

首をブンブンと横に振りながらそう答えるルーシィに、ユーノは安堵したように笑った。

 

 

「さてと……」

 

 

「え? ひゃっ!!」

 

 

突然自分の頬にユーノの手が添えられ、ルーシィは小さく悲鳴を上げる。

 

 

「んー…37度8分って所かな? ウェンディの治癒魔法が効いたみたいだね、そこまで熱は高くないよ」

 

 

どうやらそれは熱を測る為の行為だったらしく、冷静にそう告げるユーノ。ただルーシィの体温は別の理由で上昇しているが……

 

 

「ルーシィ、もう何か食べた?」

 

 

「いえ…食欲がなくて、今朝起きてからまだ何も……」

 

 

「じゃあとりあえず何か食べた方がいいね。軽い病人食でも作るから、キッチン借りてもいいかな?」

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

「ありがとう」

 

 

ルーシィにお礼を言うと、ユーノはキッチンに立って料理を始めた。

 

 

「うーん…食欲が無いとなると、比較的に食べやすいスープでも……」

 

 

何を作るかブツブツと呟きながら料理を開始するユーノ。そんな彼の姿を、ルーシィはベッドから少し体を起こして眺めていた。

 

 

「(ユーノさんがウチに来てくれてあたしの看病……お花見には行けなくなったけど、これはこれでラッキー♪)」

 

 

と…ルーシィは内心でガッツポーズをしていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「それではこれより、お花見恒例のビンゴ大会を始めまーす♪」

 

 

「「「ビンゴー!!!」」」

 

 

「ほっほっほ!! 今年も豪華な景品が盛り沢山じゃ!!! みな気合入れてかかって来ーい!!!」

 

 

「「「オオォォオオ!!!」」」

 

 

マカロフの言葉を聞き、ビンゴカード片手に大いに歓声を上げるギルドメンバーたち。

 

 

「みんな用意はいい? それじゃ、真ん中の穴を開けてください。レッツビンゴ♪」

 

 

「まずは一発目じゃ」

 

 

ミラジェーンとマカロフがそう言うと、魔法式のビンゴマシーンが回りだし、そこから『24』の文字が小さな花火のように飛び出す。

 

 

「24番!」

 

 

「やった!! いきなり来たよ!!」

 

 

「む、私もだ」

 

 

「マジで!? カナちゃんとシグナム運ええな~」

 

 

「大丈夫だってはやて!! まだまだこれからだ!!!」

 

 

そしてそれからも花見の目玉企画であるビンゴは続いた。

 

 

「続いて5番!」

 

 

「うおおお!!! 開いたぁ!!! 漢だぁ!!!」

 

 

「漢は関係ねーだろ」

 

 

「うむ…しかし、中々開かぬものだな」

 

 

ようやく一つ開いたエルフマンとツッコミをいれるガジル。そして未だに一つの穴も開いていないザフィーラ。

 

 

「……あ、私リーチ」

 

 

「ホントに!!?」

 

 

「マジで!!? ルールーすげぇ!!!」

 

 

そしてすでにリーチがかかったルーテシアと、それに驚いているレビィとアギト。

 

 

「ナツとティアナはビンゴしないの?」

 

 

「そうだよ、楽しいよ?」

 

 

「んー」

 

 

「そんな気分じゃないの」

 

 

ハッピーとスバルの問い掛けに、何か考えるように答えるナツとティアナ。

 

 

「68番!」

 

 

「ビンゴだー!!!」

 

 

始まって数分、最初にビンゴ宣言をしたのはエルザであった。

 

 

「エルザさん、ノリノリなの」

 

 

「だな」

 

 

「いいなーエルザおねーちゃん」

 

 

そんなエルザに苦笑いを浮かべているグレイとなのは、そして羨ましそうに見ているヴィヴィオ。

 

 

「初ビンゴはエルザね」

 

 

「運も修練の賜物だ~♪で、け…景品はなんだ?」

 

 

ワクワクと擬音が聞こえてきそうな様子で尋ねるエルザ。

 

 

「はーい、これ! 一時的に魔力をアップさせると噂の薬草でーす!!」

 

 

「なにぃ!!? これは私たちが取ってきた物!! しかもすでに枯れている……」

 

 

ミラジェーンが差し出したのは、昨日エルザたちがハコベ山で採取した薬草であった。しかもその薬草は、すでにクシャクシャに枯れていた。

 

 

「急に暖かい所に持って来たからかのう」

 

 

「私の……ビンゴが……」

 

 

「あらあら」

 

 

せっかくの初ビンゴで手に入れた景品がまさかの枯れた薬草だった事に、エルザはその場で膝をついて項垂れたのであった。

 

 

そしてそれからもビンゴは続き……

 

 

「ビンゴー!!!」

 

 

「マジでカナちゃん!!? 私全然来ぉへんねんけど!!!」

 

 

「アタシもリーチが3つもあんのにそれっきりだ」

 

 

「私も似たようなものだな」

 

 

カナがビンゴになった事にショックを受けるはやてと、リーチがいくつもあれどビンゴにはならない事に肩を竦めるヴィータとシグナム。

 

 

「絶対当たらない気がする」

 

 

「シャルルちゃんの予感はよく当たるけどね……」

 

 

「私たちの中でビンゴになったのはエリオ君だけだね」

 

 

「うん。でも…これ使い道あるのかな?」

 

 

エリオがビンゴで手に入れたのは『実録!! モテ男になる秘訣!!!』と書かれたタイトルの本であった。正直、まだ幼いエリオには不要なものである。

 

 

「はぁ…景品がそろそろ無くなっちゃうよ。せめてルーシィにお土産でもって思ったのに」

 

 

「んー……」

 

 

「…………」

 

 

そう言って溜息をつくハッピーと、未だに何かを考え込んでいるナツとティアナ。

 

 

「115番!」

 

 

「「「「「ビンゴー!!!」」」」」

 

 

次に名乗りを上げたのは、エルフマン・スバル・レビィ・ジュビア・なのはであった。

 

 

「「「「「あれ?」」」」」

 

 

「あらあら」

 

 

「これは珍しい、5人も同時か。じゃあ一発芸で一番面白い奴に景品をやろうかの」

 

 

「「「「「一発芸!!?」」」」」

 

 

いきなりの一発芸披露という無茶振りに、5人はギョッとする。

 

 

「景品はなんと、アカネリゾートの高級ホテル2泊3日のペアチケット!!」

 

 

「すごい!!」

 

 

「「ペアで旅行!!?」」

 

 

「アカネリゾートか! 姉ちゃんにプレゼントしてやる!!」

 

 

「私もギン姉を誘って一緒に……いやいや、ここはギン姉にプレゼントしてリオンさんと一緒に行かせてあげた方が……」

 

 

「グレイ様と2人っきり…2泊3日……ジュビア、まだ心の準備が……」

 

 

「じゃあ私はグレイとヴィヴィオの3人で行こうかな♪ヴィヴィオ1人分くらいの代金なら安くて済むし」

 

 

景品の内容を聞いてやる気を出し始める5人。すると……

 

 

ボギョーン

 

 

「一発芸……それは一度きりギリギリの戦い……つまりオレの出番って事さ、相棒」

 

 

「いえー」

 

 

いつかの取材の時のような白スーツを見に纏い、下手なギターを弾いているガジルとタンバリンを持ったルーテシアが乱入した。

 

 

「「またお前か!!!」」

 

 

「引っ込め!!! つか、リーチもしてねーだろオメェは!!!!」

 

 

当然認められず、ブーイングと共に強制的に退場させられた。

 

 

「ナツ…ティアナ……」

 

 

「んー」

 

 

「…………」

 

 

そんな騒動の中でも、やはり何かを考え込んでいるナツとティアナ。

 

 

「なぁティア……」

 

 

「えぇ……あんまりやりたくないけど、やっぱりあの手しかなさそうね」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ケホッケホ」

 

 

「大丈夫かい、ルーシィ?」

 

 

「はい……」

 

 

あのあと、ユーノが作ってくれた軽い病人食を食べたルーシィはもう一度横になり、そんな彼女をユーノはベッドの隣に椅子を持っていて、それに腰掛けながら見守っていた。

 

 

「ん~……」

 

 

「? どうしたの?」

 

 

ルーシィは風邪にうなされている訳ではなく、何か考えるように唸り、ユーノは首を傾げて問い掛ける。

 

 

「いえ……よく考えたらあたし、ギルドに入ってだ1年も経ってないんだなぁって」

 

 

「……そう言われてみればそうだね。ルーシィが加入したて頃なんかもうずいぶん昔の事みたいに思えてくるよ」

 

 

「あはは……家を飛び出して…憧れの妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ろうとして…ナツやティアナと出会ったんだよね。そしてギルドに入って、ユーノさんに出会って……何か、あっという間」

 

 

「ルーシィはこの短い間に、色んな事に巻き込まれたからね」

 

 

「はい……鉄の森(アイゼンヴァルト)の一件や無断で行ったS級クエスト……それにファントムとの抗争や…あたしのパパとの一件……本当に短い間に色んな事がありました」

 

 

それだけでなく…楽園の塔でのゲームと称した命懸け戦い…ラクサスが引き起こしたバトル・オブ・フェアリーテイルという仲間同士の戦い合い…バラム同盟の一角である六魔将軍(オラシオンセイス)との死闘……それらを思い出したルーシィは少々青ざめながら苦笑を零した。

 

 

「いやぁ…我ながら色々頑張ってると思うな…うん」

 

 

「あはは……確かにね」

 

 

そんなルーシィに釣られて、ユーノも苦笑する。

 

 

「何度も心が折れそうになって…とんでもないピンチもあったし、信じられないような強敵もいたけど…でも、そこにはいつもナツやティアナ、それにユーノさんたちギルドのみんがいてくれて……泣いて…笑って…色々と……まぁ、本当に色々あったけど」

 

 

そう言うと、ルーシィは自分の右手の甲に刻まれたギルドマークを見つめる。

 

 

「みんな、本当はそれぞれ大変な事を抱えているのに……それでも、みんな前に進もうとしてるんだよね。それが……妖精の尻尾(フェアリーテイル)なんだよね」

 

 

「……そうだよ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)のみんなは色んな何かを抱えている。キズも…痛みも…悲しみも……だけど、それを仲間と一緒に乗り越える…そして仲間と一緒に前へ進む……それが…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士なんだ」

 

 

「あたしたちって、本当にいいギルドに入ったんですね」

 

 

「うん。妖精の尻尾(フェアリーテイル)は、最高のギルドさ」

 

 

そう言って、ルーシィとユーノはお互いに優しい笑みを浮かべて笑い合う。

 

 

そんな話をしている間に、窓の外はすでに日が落ちかけていて、綺麗な夕日がマグノリアの街を照らしていた。

 

 

「クシュッ…」

 

 

「あ、長話しすぎたね。そろそろ寝た方がいいよ」

 

 

「そうですね、そうしま…す……」

 

 

ユーノの言葉に従い、ルーシィは布団を深く被ると、すぐにまどろみの中へと身を任せて意識を手放したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

ガヤガヤ……

 

 

「ん…んん? 何だろう? 外が騒がしい……」

 

 

ルーシィが眠ってから数時間…日もすっかり落ちて夜になった時間帯。

 

にも関わらず、何やら家の外が騒がしく、それによってルーシィは目が覚めてしまった。

 

 

「あ、ルーシィ。ちょうどよかった、今起こそうと思ってた所なんだ」

 

 

「ユーノさん……ずっと付き添ってくれてたんですか?」

 

 

「うん、まぁね」

 

 

自分が眠ってからもずっと付添ってくれていたと言うユーノに、ルーシィは嬉しくなる。

 

 

「それより、窓の外を見てご覧」

 

 

「外?」

 

 

ユーノにそう言われて、ルーシィはベッドから体を起こしてゆっくりと窓を開け、騒ぎになっている原因を確認する。

 

 

「あっ……!!!」

 

 

それを見たルーシィは言葉を失った。何故なら……

 

 

 

 

 

花見会場にあるハズの虹の桜の木が…巨大な植木鉢に入った状態で小船に乗せられ、虹色の花弁を舞い散らしながらルーシィの家の前を通っていたのであった。

 

 

 

 

 

「ユーノさん……これって……!!?」

 

 

「あれが君が見たがっていたマグノリアの名物……虹の桜だよ」

 

 

困惑の表情を見せているルーシィに、そう答えるユーノ。

 

 

「でも…どうしてこんな所に……!!」

 

 

「さあ? たぶん、お節介な3人組の魔法使いの仕業じゃないかな?」

 

 

「!!」

 

 

ユーノにそう言われ、ルーシィの脳裏にはすぐさまこんあ無茶なしそうなメンバーの顔が浮かぶ。それと同時に、ルーシィは嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

 

「それで、どうだいルーシィ? 虹の桜を見た感想は?」

 

 

「はい……とっても綺麗です」

 

 

ユーノの問い掛けに、ルーシィは目の前を通る虹の桜に見惚れながらそう答える。

 

 

「ユーノさん……」

 

 

「ん?」

 

 

すると…ルーシィは一呼吸置いて……

 

 

 

 

 

「あたし……このギルドに入って本っっ当によかったです!!!」

 

 

 

 

 

と…虹の桜にも負けない綺麗な笑顔を浮かべながら、そう言い放ったのであった。

 

 

 

 

 

翌日…ルーシィの風邪はすっかり回復し、すぐにギルドへと復帰した。

 

 

そしてこれは余談だが、その日は何故かナツとティアナとハッピーが、マカロフに盛大に叱られていたのであった。

 

 

 

 

 

つづく


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。