LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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ドラゴンの咆哮

 

 

 

 

 

 

ついに完全に目覚めてしまった、光と闇を入れ替える超反転魔法ニルヴァーナ。

 

それを止めようと、連合軍の生き残りメンバーは、着々とニルヴァーナへと集結しつつあった。

 

そしてナツたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)も、ニルヴァーナの足を伝って本体に向かっているのだが……

 

 

「うぷ…」

 

 

「ちょっ…ナツ!!?」

 

 

「何してんだナツー!」

 

 

「ちょっと!!! しっかりしなさいよー!!」

 

 

「こ…これ……乗り物じゃねえのか……?」

 

 

「動いてるけど乗り物じゃねえ!!! そう思い込め!!!」

 

 

「キ…キモチ悪いィ…」

 

 

「ナツ!! これはタコの足だよ!!! ナツは生き物の上なら平気だよね!!!」

 

 

「タコは森にいねえし」

 

 

「こんな時に変なトコにこだわるんじゃないわよバカナツ!!!」

 

 

いつものごとく、極度の乗り物酔いによりすでにグロッキー状態に陥ってしまっているナツ。

 

 

ズリ…

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

すると、乗り物酔いのせいで力が抜けたのか、ナツは掴まっている足から段々とズリ落ち始めている。

 

 

「おおお…」

 

 

「ナツ!!!」

 

 

「バカ!!! 力抜くんじゃねえ!」

 

 

「おおおおお…」

 

 

そう言ってる間にも、ナツはどんどんズリ落ちていき……

 

 

「きゃああああっ!!!」

 

 

「ナツーーー!!!」

 

 

とうとうニルヴァーナの足から真っ逆さまに転落してしまった。

 

 

「スバル!!! ウィングロード!!!」

 

 

「ダメ!!! 今からじゃ間に合わないっ!!!」

 

 

そうこうしている間にナツがどんどん遠くなっていき、もうダメかと思われたその時……

 

 

 

キィィィン……ガシッ!!!

 

 

 

間一髪…猛スピードで飛んできたハッピーが、ナツの服を掴んで救出した。

 

 

「ハッピー!!!」

 

 

「ナイスキャッチよ!! ハッピー!!!」

 

 

「はあ」

 

 

「よかったぁ…」

 

 

「あい!!!」

 

 

それを見た他の四人は安堵の息を漏らす。

 

 

「かっこよすぎる…ぜ…ヒーロー」

 

 

「どう? ナツ、オイラと風になるのは気持ちいいでしょ?」

 

 

そう言うとハッピーは、ナツを抱えた状態で辺りを飛び回る。

 

 

「ああ、最高だ」

 

 

それに対しナツは、笑顔で答えた。

 

 

「ナツ、ハッピー、あんたたちはそのまま上に行きなさい」

 

 

「オレたちはそこにある穴から中に入ってみる」

 

 

「おう!!!」

 

 

「あいさー!!!」

 

 

ティアナとグレイは、ニルヴァーナの足の付け根にある穴を指差しながらそう言うと、ナツとハッピーは意気揚々と本体に向かって飛んで行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第六十五話

『ドラゴンの咆哮』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついにやったな!!! ブレイン!!! ニルヴァーナを手に入れたぞ!!!」

 

 

一方…ニルヴァーナの中心部では、念願のニルヴァーナを手に入れた事によりコブラが嬉しそうな声を出す。

 

 

「すげえ!!! これが古代人の遺産……キュベリオス、すげぇぞこりゃ」

 

 

そう言ってコブラは相棒の毒蛇であるキュベリオスと共に感動を分かち合う。

 

 

「見よ、コブラ。眼下に広がるこの世界を」

 

 

ブレインに言われ、現在立っている場所から下を見渡すコブラ。そしてそこには、だいぶ古ぼけているが、巨大な都市のような光景が広がっていた。

 

 

「古代人の都市、それこそがニルヴァーナの正体。この王の間において我が意志により、思いのままに動く都市だ」

 

 

「動く……って、どっかに向かってんのか? コイツは」

 

 

「ここからでは狙えんからな…〝あのギルド〟は」

 

 

「最初の標的か」

 

 

「光崩しの始まりの地とでも言っておこうか」

 

 

そう言うとブレインは杖を振るい、目の前に巨大な魔法陣を展開し始める。

 

 

「進め!!! 古代都市よ!!! 我が闇を光へと変えて!!!!!」

 

 

ブレインが両手を広げて高らかにそう言い放ったその瞬間……彼の目の前を、一つの影が通り過ぎた。

 

そしてその影は空中で折り返し、ブレインの方へと接近すると……

 

 

 

「オレが止めてやるァアアアアアッ!!!!!!」

 

 

 

そう叫びながら影…ハッピーに抱えられたナツは螺旋状の炎を放ち、王の間の床を破壊する。

 

 

「う…うぬは…!!?」

 

 

予想外の出来事にブレインが驚愕している間に、ナツは空中で旋回して、ブレインに向かってブレスを放つ。

 

 

「ぐおっ!」

 

 

そしてナツのブレスはブレインを攻撃するだけでなく、王の間にある床や柱などを片っ端から破壊していた。

 

 

「コブラ!!! ここで暴れさせるな!!!」

 

 

「おう!!! キュベリオス!!!」

 

 

これ以上破壊されてはかなわないと判断したブレインは、コブラにそう指示を出し、それを聞いたコブラはキュベリオスと共にナツたちの方へ向かった。

 

 

「がっ!」

 

 

「うわっ!」

 

 

キュベリオスの体当たりを食らったナツとハッピーは後方に飛ばされる。

 

 

「んなもの…全部オレが燃やして…!!」

 

 

ナツがそう言っている間に、コブラはキュベリオスを伝ってナツの所まで跳んで行き……

 

 

「うわー!」

 

 

強力な打撃によって、ナツとハッピーをさらに後方まで飛ばすが、ハッピーがギリギリ空中で踏み止まる。

 

 

「サンキュー、ハッピー」

 

 

「あい」

 

 

「!」

 

 

ハッピーに礼を言うナツだが、コブラとキュベリオスに視線を移した瞬間、目を見開いて驚愕した。

 

何故なら…コブラの相棒である毒蛇のキュベリオスの背に羽が生えて飛んでいたからである。

 

 

「ぬあ!!!」

 

 

「ヘビが飛んでるよ!!!」

 

 

その光景に驚愕するナツとハッピー。

 

 

「テメェ…オレの聴こえた話じゃ、乗り物に弱いと言われてなかったか?」

 

 

「ハッピーは乗り物じゃねえ!!!」

 

 

「そうだー!!!」

 

 

「なるほど…だから常に飛んでいると言う訳か。乗り物(ニルヴァーナ)に立つ事はできないから」

 

 

仲間であるハッピーを乗り物呼ばわりされ、憤慨するナツ。対してコブラは、納得したような表情をする。

 

 

「どけよ!!! オレはこのデカブツ止めるんだ!!!」

 

 

「やれるモンならやってみやがれ、ブレインには近づかせねえ」

 

 

そう言ってナツの前に立ちはだかるコブラ。

 

 

「あいつが動かしてんのか」

 

 

「来いよ、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)

 

 

「おっしゃ……と見せかけて、狙いはアイツだ!!!」

 

 

そう言うと同時にコブラを無視してブレインの方へと向かって行くナツ。完全にコブラの意表をついたと思うナツだが……

 

 

バチッ!

 

 

「んが!」

 

 

キュベリオスの尾によって阻まれ、そのまま吹き飛ばされるナツとハッピー。

 

 

「軌道を読まれた…」

 

 

「え?」

 

 

まるでナツが不意をつくとわかっていたかのようなコブラの行動に、ナツは訝しげな表情をする。

 

 

「聴こえてんだヨ、テメェの動き」

 

 

それを聞いたナツは、鋭い目付きでコブラを睨みつける。

 

 

「そうだ、それでいい。遊ぼうぜ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃…ニルヴァーナの都市の端っこでは、化猫の宿(ケット・シェルター)のメンバーが集まっていた。

 

 

「はあ、はあ、はあ」

 

 

「大丈夫?」

 

 

「ごめんねシャルル、無理させちゃって」

 

 

「私の事はいいの」

 

 

苦しげに息を荒げるシャルルを気遣うエリオとウェンディだが、当のシャルルはそう言って起き上がる。

 

 

「フリードもお疲れ様」

 

 

「キュク!」

 

 

キャロは小さくなって腕の中にいるフリードに労いの言葉を掛け、それに対しフリードは大丈夫と言いたげにひと鳴きして答える。

 

 

「それよりアンタたち…こんなトコまで来てまでどうするつもりなの」

 

 

「「「…………」」」

 

 

シャルルの問い掛けに、3人は言葉を詰まらせる。

 

 

「まだジェラールってのを追って……」

 

 

「違っ!!! あ…えと……それも、ちょっとはあるけど……私…なんとかしてこれを止めなきゃって!!」

 

 

「そうだよ!! 私たちにも何か出来ることがあるハズだよ!!」

 

 

「そうね」

 

 

ウェンディとキャロの言葉を聞いて、少し笑みを浮かべながら頷くシャルル。

 

すると……

 

 

「ん? これは……!」

 

 

突然エリオが鼻をクンクンと動かして周囲を見渡す。

 

 

「どうしたの? エリオ君」

 

 

「……近くに、ナツさんの匂いがする」

 

 

「え? あ、本当だ」

 

 

エリオに言われ、ウェンディも鼻をクンクンと動かして確認する。

 

ナツと同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるエリオとウェンディは、常人以上に嗅覚が利くのである。

 

 

「匂いが空中で止まってるのと、ハッピーの匂いが引っ付いてるから、ナツさんは空中にいるのかな? しかもナツさんの近くに別の匂いもする。これは……六魔将軍(オラシオンセイス)のコブラ!!?」

 

 

エリオは現在ナツの近くにいる匂いの正体がコブラだと断定する。

 

 

「キャロ!! フリードを貸して!!!」

 

 

「キュク!?」

 

 

「え!? どうするの!!?」

 

 

突然エリオにそう言われ、キャロは驚きながらも問い掛ける。

 

 

「ナツさんの手助けに行く!!! 僕に何が出来るかわからないけど、ナツさんの力になりたいんだ!!!」

 

 

力強くそう言い放つエリオに、キャロは深く頷いた。

 

 

「わかったよ、エリオ君。フリード、お願い!!」

 

 

「キュク!!」

 

 

キャロの言葉にフリードは頷くと、フリードはエリオの背中に張り付いた。

 

 

「一人分だと……このくらいの大きさかな」

 

 

キャロが呟くようにそう言うと、エリオの背中に張り付いたフリードは光に包まれ、少しだけ大きな姿へと変化した。

 

 

「キュルル……」

 

 

そしてフリードはエリオの背中に張り付いた状態で、その白翼を大きく広げた。

 

 

「おおっ!」

 

 

「ハッピーちゃんとシャルルちゃんをヒントにしてやってみたんです。どうですか?」

 

 

「スゴイよキャロちゃん!!」

 

 

「うん! これなら空中戦でも思いっきり戦える!!」

 

 

キャロの機転にウェンディとエリオは賞賛の言葉を口にし、キャロは恥ずかしそうに頬を染める。

 

 

「じゃあ…行ってくるよ」

 

 

「気をつけてね、エリオ君!」

 

 

「頑張ってね!!」

 

 

「無茶はしないようにね」

 

 

「うん!! 行こうフリード!!!」

 

 

「キュクーー!!!」

 

 

ウェンディとキャロとシャルルに見送られながら、エリオはフリードと共にナツのもとへと飛んで行った。

 

 

「ホント…火竜(サラマンダー)の事になるとエリオも必死ね」

 

 

「あはは…エリオ君はずっとナツさんに憧れてたから……」

 

 

「きっとどうしても力になりたいんだよ」

 

 

「まったく……男ってのはバカな生き物ね」

 

 

溜息混じりにそう呟くシャルル。すると……

 

 

「!」

 

 

突然目を見開き、何かに気がついた。

 

 

「!?」

 

 

「シャルルちゃん?」

 

 

そんなシャルルに首を傾げるウェンディとキャロだが、シャルルは体を震わしながら、端に向かって歩いていく。

 

 

「ま…まさか偶然よね!? そんな事あるハズ…この方角…このまままっすぐ進めば…」

 

 

シャルルは信じられないと言いたげな表情をし、ニルヴァーナの進む方向を見据えながら、声を震わせて言い放つ。

 

 

 

化猫の宿(わたしたちのギルド)があるわ」

 

 

 

「「え?」」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「くっそー、邪魔だなアイツ」

 

 

「チームワークなら、オイラたちだって負けないよ」

 

 

「ククク」

 

 

空中で睨み合う、ナツ&ハッピーとコブラ&キュベリオス。

 

 

「コブラ、奴を始末しろ」

 

 

「あいよ!!! キュベリオスのエサに丁度いい!!」

 

 

ブレインの指示を聞いて、キュベリオスの背に乗ったコブラはそのままナツとハッピーに向かって突進する。

 

 

「わっ!」

 

 

「おっと」

 

 

二人を食おうと大口を開けて襲い掛かってくるキュベリオスを何とか避けて、距離を取るナツとハッピー。

 

 

「火竜の…鉄拳!!!!」

 

 

そして炎を纏った拳を振るい反撃に出るが、コブラとキュベリオスはまたもその攻撃が来るのを分かっていたかのように軽々と避ける。

 

 

「ぐほっ!」

 

 

そしてそのままキュベリオスの尾によって叩かれるナツ。

 

 

「言っただろ? テメェの動きは聴こえている。オレに攻撃は当たらねえ」

 

 

コブラがそう言うと、キュベリオスは再び尾でナツとハッピーを攻撃する。

 

 

「落ちろォ!!!!」

 

 

「ぐあああああ!」

 

 

その攻撃により地面に向かって吹き飛ばされるナツとハッピー。

 

 

「ハッピー!!!」

 

 

「わかってる!!!」

 

 

そう言うとハッピーは地面スレスレのところで体制を建て直して地面との直撃を回避した。

 

 

「キシャアアア!」

 

 

「わ!」

 

 

「うおっ!」

 

 

地面に降りてきたキュベリオスは鳴き声を上げながら2人に襲い掛かり、ナツとハッピーはピューっと、キュベリオスから逃げるように都市の建物の中へと入り込む。

 

 

「待てハッピー」

 

 

「え?」

 

 

ナツの静止の言葉にその場で立ち止まる…いや、飛び止まるハッピー。

 

 

「(そこに、隠れて、不意打ちするぞ!!)」

 

 

「(あい!!)」

 

 

ナツはジェスチャーで作戦を伝え、それを理解したハッピーは物陰に隠れる。

 

 

すると、2人が隠れている建物の壁にみしっと、ヒビを入った。

 

 

「来たぞ」

 

 

それを追ってきたコブラとキュベリオスだと判断したナツは、物陰から2人が出てくるのを見計らう。

 

 

ドコォッ!

 

 

「そこだ!!!」

 

 

壁が壊れたのを見計らって一気に飛び出し、炎を纏った拳で攻撃しようとするナツだが……

 

 

「「あれ!?」」

 

 

そこにコブラとキュベリオスの姿はなかった。

 

 

「聴こえてるぜ!!!」

 

 

「んがっ!」

 

 

すると、背後からのコブラの膝蹴りで逆に不意打ちを喰らったナツとハッピーは壁に叩きつけられた。

 

 

「くそっ!」

 

 

「なんでだーっ!?」

 

 

こちらの攻撃が一切通用しないことに苛立ち、毒づくナツとハッピー。

 

 

「ん? ほう…こいつはおもしれえ」

 

 

すると、コブラは何かに気がついたかのように笑みを浮かべる。その瞬間……

 

 

 

ビィイン!

 

 

 

「もらった!!」

 

 

「「エリオ!!?」」

 

 

電撃のような閃光と共に、エリオが姿を現し、コブラの背後を取った。

 

 

「ハァァアア!!!」

 

 

そしてそのまま電撃を纏ったストラーダで突きを繰り出すが……

 

 

「聴こえてたぜ、テメェが近づいてくる音がヨ」

 

 

「なっ!!?」

 

 

「おらっ!!」

 

 

「ぐああああっ!!!」

 

 

コブラはその攻撃を体を捻るようにかわし、そのまま裏拳をエリオに叩き込んだ。そしてそれを喰らったエリオは吹き飛ばされ、建物の外へと放り出された。

 

 

「くっ…フリード!!」

 

 

「キュルー!」

 

 

外に待機させていたフリードを呼び、エリオは地面に叩きつけられる前に空へと回避した。

 

 

「そういや森でテメェ等の会話も聴こえてたぜ、お前も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なんだってなぁ、ガキ」

 

 

「だったらなんですか!! 雷竜の…」

 

 

そう言うとエリオは頬を大きく膨らませ…

 

 

「咆哮!!!」

 

 

雷のブレスをコブラ目掛けて放った。

 

 

「無駄だ!!」

 

 

しかし、それも軽々と避けられる。

 

 

「くっ、だったら……フリード!!」

 

 

「キュー!!」

 

 

エリオの言葉を聞いたフリードは翼を広げてコブラとキュベリオス目掛けて飛んでいく。

 

 

「雷竜閃!!!」

 

 

「ふん」

 

 

雷を纏ったストラーダを横薙ぎに振るい攻撃するが、コブラはそれも屈んで回避する。

 

 

「まだだ!!」

 

 

「ん?」

 

 

「フリード、ブラストフレア!!!」

 

 

「キュクー!!」

 

 

そのままフリードは口から火球を放ち、コブラに攻撃する。

 

 

「おっと、そうはさせねえぜ。キュベリオス!!」

 

 

しかしコブラはその攻撃は避ける事はせず、キュベリオスの尾で火球を叩き落して消滅させる。

 

 

「そんな……!」

 

 

「オレに攻撃すると見せかけて、火竜(サラマンダー)にその飛竜の炎を食わせて体力を回復させる。聴こえてるんだよ、その考え」

 

 

「ぐっ……」

 

 

自身の考えを完璧に読まれ、悔しそうに歯噛みするエリオ。すると……

 

 

「テメェ……オレを無視してんじゃねえぞぉ!!!」

 

 

「ん? おっと」

 

 

コブラの背後から拳に炎を纏ったナツが攻撃するが、やはり軽々と回避される。

 

 

「ナツさん!!」

 

 

そんなナツのもとにエリオは飛んで近づいていくが……

 

 

「テメェもだエリオ!!! 何オレを無視してやる気になってんだコラァ!!!」

 

 

「え…えぇ!!?」

 

 

突然ナツに理不尽に怒鳴られ、エリオは面を食らう。

 

 

「ナツ、そんな事言ってる場合じゃ……」

 

 

「うるせえ!! あいつと先に戦ってたのはオレ!! つまりオレの戦い!!! 横取りすんじゃねえ!!!」

 

 

「し、しかし!! 相手は六魔将軍(オラシオンセイス)……強敵ですよ!! いくらナツさんでもたった一人じゃ……」

 

 

「関係ねえよ!!! あいつはオレが倒すんだ!!!」

 

 

「ナツ、言ってる事子供みたいだよ」

 

 

「何だと!!?」

 

 

「子供みたいだよ」

 

 

「2回言うな!!!」

 

 

「ちょっ…ナツさんもハッピーも、ケンカしてる場合じゃ……!」

 

 

敵の目の前であるにも関わらず、騒ぎまくるナツたちを見てコブラは……

 

 

「ったく…ギャーギャーと騒がしい連中だぜ」

 

 

と、呆れた目でナツたちを見ていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃…ニルヴァーナ本体の潜入に成功したグレイ、ルーシィ、ティアナ、スバルの4人。

 

 

「なんだここは?」

 

 

「街みたいね」

 

 

「うん。でもこの建物、ずいぶん昔の作りだよ」

 

 

「そうね、街…というよりは、まるで巨大都市ね」

 

 

ニルヴァーナ本体の街並みを見渡しながら口々そう言うティアナたち。すると……

 

 

「その通りデス。幻想都市ニルヴァーナ」

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

背後から聞こえてきた声に、4人は一斉に振り返る。

 

 

「そなた達もここにいたとは、心強い」

 

 

「リオンとこのオッサン!」

 

 

「……と、六魔将軍(オラシオンセイス)!!?」

 

 

「ええ!!?」

 

 

「どうして2人が一緒に!!?」

 

 

そこにはジュラと、本来敵であるホットアイが並び立っており、その光景を見た4人は驚愕する。

 

 

「案ずるな…彼は味方になった」

 

 

「世の中愛デスネ」

 

 

「うそぉ!!?」

 

 

「あの人、結構カネカネ言ってた人だよね!!?」

 

 

「あのオッサン悟りの魔法でも使えんのか!!?」

 

 

「……なるほど、ニルヴァーナの影響ね」

 

 

敵であるホットアイが味方になった事にグレイたちは驚愕し、ティアナはただ一人冷静に事情を察した。

 

 

「ここはかつて、古代人ニルビット族が住んでいた都市デス。今からおよそ400年前、世界中でたくさんの戦争がありました。中立を守っていたニルビット族はそんな世界を嘆き、世界のバランスをとる為の魔法を作り出したのです。光と闇をも入れ替える超魔法。その魔法は〝平和の国ニルヴァーナ〟の名が付けられましたデスネ」

 

 

「皮肉なモンだな……平和の名をもつニルヴァーナが今…邪悪な目的の為に使われようとしているなんてよォ」

 

 

「でも…最初から〝光を闇に〟する要素をつけなきゃ、いい魔法だったのにね」

 

 

「そうすれば、六魔将軍(オラシオンセイス)に狙われる事もなかったし、そもそも闇ギルドも存在しなかったかもしれないね」

 

 

「仕方あるまい…古代人もそこまで計算していなかったのかもしれん」

 

 

「そうね……強力な魔法には、それ相応の副作用が付き物だってよく聞くわ」

 

 

ホットアイからニルヴァーナの説明を聞いて、5人はそれぞれの考察を口にする。

 

 

「とにかく、これが動いてしまった事は大変な事デス。一刻も早く止めねばなりませんデスネ」

 

 

「当たり前だ」

 

 

「うん!」

 

 

「当然!」

 

 

「それで、止める方法は分かってるの?」

 

 

ホットアイの言葉にグレイ、スバル、ルーシィが頷き、ティアナが止める方法を問い掛ける。

 

 

「ブレインは中央の『王の間』からこの都市を動かしているのでしょう。その間、ブレインは魔法を使えません。たたくチャンスデス」

 

 

「動かすって、どこかに向かってんのか?」

 

 

「おそらくは……しかし私は目的地を知りませんデス」

 

 

グレイの問い掛けにホットアイが首を横に振って答える。すると……

 

 

「そうさ、父上のボクしか知らない」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

「ミッドナイト!!?」

 

 

突然聞こえてきた方向へと視線を向けると、そこには六魔将軍(オラシオンセイス)の一人……ミッドナイトが建物の上に座っていた。

 

 

六魔将軍(オラシオンセイス)か!?」

 

 

「ずっと眠ってた人だ!!」

 

 

「ホットアイ、父上を裏切ったのかい?」

 

 

「違いマスネ!! ブレインは間違っていると気がついたのデス」

 

 

「父上が間違っている……だと?」

 

 

ホットアイの言葉を聞いたミッドナイトは座っていた建物の上から地面に降り立ち、ギロリとホットアイを睨みつける。

 

 

「人々の心は魔法で捻じ曲げるものではないのデス。弱き心も、私たちは強く育てられるのデスヨ」

 

 

ホットアイがミッドナイトに諭すようにそう言った瞬間……

 

 

スパァァアン!!!

 

 

「「「!!!」」」

 

 

ミッドナイトが腕を横薙ぎに振るって攻撃し、その衝撃により周囲にあった建築物は真っ二つに切り裂かれ倒壊した。

 

 

「な…何が起きたんだ?」

 

 

「あいたー」

 

 

「ひえー」

 

 

「ホットアイ殿が地面を陥没させ、我々を助けたのだ」

 

 

「おかげで私たちは、真っ二つにならずに済んだって訳ね」

 

 

間一髪……グレイたち5人はホットアイの魔法により陥没した穴の中に落とされ、難を逃れたのだった。

 

 

「あなた方は王の間に行ってくださいデス!!! 六魔同士の力は互角!!! ミッドナイトは私に任せてくださいデス!!!」

 

 

そう言ってホットアイは柔らかくした地面をミッドナイトにぶつける。

 

 

「君がボクと勝負を?」

 

 

しかし、ミッドナイトに目立ったダメージはなかった。

 

 

六魔将軍(オラシオンセイス)同士で潰し合いだと?」

 

 

「なんか、すごい展開になってきたわね」

 

 

「でも、すっごく心強いよね!!」

 

 

「えぇ。変な奴だけど、六魔将軍(オラシオンセイス)の一角を担っているだけあるわ」

 

 

「ホットアイ殿…」

 

 

まさかの六魔同士が戦い合う事態になるとは誰も予想してなかった為、困惑の声が上がる。

 

 

「さあ!! 早く行くデスネ!!! そして、私の本当の名は『リチャード』デス」

 

 

そう言ってホットアイ…いや、リチャードは優しい笑顔を向けて、自身の本当の名を明かした。

 

 

「真の名を敵に明かすとは……本当に堕ちたんだね、ホットアイ」

 

 

こうして、誰も予想しなかった六魔VS六魔の戦いが始まったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「オラァ!!!」

 

 

「テェェイ!!!」

 

 

一方…結局共闘する事になったナツとエリオは炎を纏った拳と雷を纏ったストラーダをコブラに向かって振るうが、相変わらずコブラはそれを分かっていたかのように避ける。

 

 

「くそー!! 何で当たらねえんだ!!!」

 

 

「まるで、僕たちの動きを読んでるみたいです!!」

 

 

「あいつ…動きを読む魔法なのか?」

 

 

「いや……〝聴く〟魔法さ。心の声が聴こえるから、動きがわかる」

 

 

「心の声……つまり、僕たちが考えている事は全て筒抜けって事ですね」

 

 

コブラの説明を聞いて、納得したように呟くエリオ。

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

すると、突然ナツは黙ってコブラを睨みつけ、それに気づいたコブラもナツを睨み返す。

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

そうしてナツとコブラがしばらく睨み合っていると……

 

 

「ぷっ」

 

 

いきなりコブラが吹き出し、笑い始めた。

 

 

「く…くそ!!! 意外に面白ェギャグじゃねーか、うははははっ!」

 

 

「どうやら本当みてーだぞ、ハッピー、エリオ」

 

 

「心の中で何言ったのーナツー!?」

 

 

「果てしなく気になるんですけど!!?」

 

 

腹を抱えて爆笑するコブラを見て、エリオとハッピーは一体ナツが心の中でどんなギャグを言ったのか気になって仕方なかった。

 

 

「しかし、厄介だな」

 

 

「オイラにいい考えがあるよ」

 

 

そう言ってハッピーはひそひそとナツに耳打ちをするが……

 

 

「右に行くって考えながら左から攻撃」

 

 

「「!!?」」

 

 

ハッピーのその考えはコブラにはお見通しであった。

 

 

「無駄だ、その思考のプロセスを聴けるんだぜ。テメェ等に勝ち目はねえ」

 

 

「くぅ~~…」

 

 

「お! 色々考えてるな? 3つ…4つ…悪くねえ作戦もあるが、筒抜けだ」

 

 

「ズリィぞテメェ!!!」

 

 

自分の思考をことごとくコブラに聴かれ、ナツは苛立ちながら怒鳴る。

 

 

「だったら……」

 

 

「おっと…移動はその飛竜に任せてオレに動きを読ませないって作戦か?」

 

 

「!!?」

 

 

「確かにオレはその飛竜の声は聴こえねえが、結局攻撃するのはお前自身だ、お前の声だけ聴こえれば攻撃は避けられる。悪くねえ作戦だが、残念だったな」

 

 

「くそっ……!!」

 

 

「キュー…」

 

 

コブラに作戦を見破られたエリオは毒づき、フリードは項垂れる。

 

 

「こうなったら正面から行くしかねえっ!!!!」

 

 

「あいさ!!!」

 

 

「ちょ…ナツさん!!? ハッピー!!?」

 

 

するとナツとハッピーは作戦らしい作戦は立てずに、ただ単純にコブラに向かって突撃した。

 

 

「右フック、左キック、返しの右ストレート」

 

 

しかし、やはり相手の考えを聴いているコブラにはナツの攻撃はことごとくかわされる。しかし……

 

 

シュッ

 

 

「!」

 

 

なんと、最後の右ストレートだけ、コブラの頬を掠めた。

 

そして次の瞬間……

 

 

「いぎぃ!!!!」

 

 

ナツの拳は、完璧にコブラの顔面に直撃した。

 

 

「あ…当たった!!?」

 

 

「何!!? ぐはっ!」

 

 

攻撃が当たった事にエリオが驚愕している間に、ナツの次の攻撃もコブラの腹部に直撃した。

 

 

「(バカな……!!!!)」

 

 

「うおおおおおおおお!!!!」

 

 

「(こいつ…何も考えてねえっ!!!!)」

 

 

何も考えずに、目の前にいる敵をただ殴る……そんなナツの攻撃は先ほどまで回避されていたのがウソのように次々とコブラに直撃していた。

 

 

「つああああぁあぁ!!!!」

 

 

ガッ!!!

 

 

そしてナツが繰り出した渾身の炎の拳を……コブラは片手で受け止めた。

 

 

「こんな奴は初めてだぜ。なるほどな…小細工じゃどうにもならんか」

 

 

コブラがそう言うと同時に、突然ナツの拳の皮膚が軽く溶け始めた。

 

 

「うわっ、痛えっ!!!」

 

 

「ナツさん!!!」

 

 

そう言ってナツは咄嗟に拳を引っ込め、そんなナツにエリオが駆け寄る。

 

 

 

「毒竜のコブラ。本気で行くぜ」

 

 

 

そう言うコブラの両腕は、まるで竜の鱗のようなモノに覆われていた。

 

 

「こいつ……まさか……!!?」

 

 

「僕とナツさんと同じ……!!!」

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!!!?」

 

 

コブラが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だということに驚愕するナツとエリオとハッピー。

 

 

「かーーーっ!!!!」

 

 

そんなナツたちに向かって、キュベリオスに乗ったコブラは突撃してくる。

 

 

「うおっ!」

 

 

「わっ!」

 

 

両手が鱗に覆われた事により鋭くなった爪を振るうコブラの攻撃を回避するナツとエリオ。

 

しかし、そんなナツの行動を分かっていたかのようにコブラは足を振り上げて、毒を纏った蹴りをナツの顔に叩き込む。

 

 

「ぐほ! ぐあああああ!」

 

 

そして攻撃を喰らったナツの顔には、蹴りの痛みだけでなく、皮膚が溶ける痛みも同時に襲ってきた。

 

 

「毒竜の一撃は全てを腐敗させ滅ぼす!」

 

 

「ぐっ!!」

 

 

それを見たエリオをは小さく唸りながら、コブラに向かって突撃した。

 

 

「雷竜槍・貫穿(かんせん)!!!」

 

 

そしてそのままコブラに向かって雷を纏ったストラーダを突き出して攻撃する。

 

 

「毒竜突牙!!!」

 

 

それに対しコブラは牙のような毒の塊を放ち、ストラーダと衝突させる。

 

 

「おおぉぉぉおおお!!!!」

 

 

エリオは雄叫びを上げながらそれを貫こうとするが……

 

 

ドゴォォォオオン!!!

 

 

「ぐああああああ!!!!」

 

 

「キューーー!!!」

 

 

衝突していた雷と毒が爆発を起こし、エリオとフリードは吹き飛ばされる。

 

 

「エリオ!! フリード!!!」

 

 

「っ……大丈夫です!!!」

 

 

「キュルー!!」

 

 

そう言ってギリギリ空中で体制を立て直すエリオとフリード。それを見たナツは小さく一息つくが……

 

 

「人の心配してる場合かよ?」

 

 

「!? ぐっ! ぐおっ! うあっ!!」

 

 

そのスキをついたコブラの猛攻よって、今度はナツとハッピーが吹き飛ばされる。

 

 

「キュベリオス!!」

 

 

すると、コブラの声に反応してキュベリオスが口から霧のようなモノを吐き出す。

 

 

「毒の霧だ!!」

 

 

「うおおっ! お?」

 

 

キュベリオスが吐き出した毒の霧はナツたちの方へは行かず、コブラの方へと吸い込まれていく。

 

そしてコブラはその毒の霧をまるで食べ物のように頬張り始める。

 

 

「ど…毒竜だから、毒を食べてる…んでしょうか?」

 

 

「か…体に悪そうだな」

 

 

「お腹壊しそうですよね……」

 

 

ナツとエリオが暢気にそんな会話をしている間に、コブラは毒の霧を食べ終え。プハァっと一息つく。

 

 

「毒竜の…」

 

 

「ブレス!!?」

 

 

「マズイ!!!」

 

 

息を大きく吸い込み、頬を膨らますコブラを見て、急いで回避しようとするナツとエリオだが……

 

 

 

「咆哮!!!!」

 

 

 

「ぐあああああああ!!!」

 

 

「「うわああああああ!!!」」

 

 

「キュルーーーー!!!!」

 

 

その回避行動は間に合わず、ブレスを受けたナツとハッピー、そしてエリオとフリードは大きく吹き飛ばされる。

 

 

「く…」

 

 

「うぅ…」

 

 

そして何とか体制を立て直そうとするナツとエリオだが、突然ガクンっと高度が下がった。

 

 

「フリード!!?」

 

 

「どうしたハッピー!!!」

 

 

いきなり高度が下がり、2人は空中戦の要であるハッピーとフリードに声をかけるが、見るとハッピーもフリードもヘロヘロであった。

 

 

「しっかりしろって!!! オイ!!!」

 

 

「オイラ……なんだか…体が上手く動かなくて…」

 

 

「キュ…ルル……」

 

 

苦しげな声を上げながらフラフラと飛ぶハッピーとフリード。

 

 

「言われてみれば…僕も……力が上手く入らない……」

 

 

「気にすんなっ!!! オレもだから!!!」

 

 

「「気にしよーよ(しましょうよ)そこは!!」」

 

 

ナツの発言に対して同時にツッコミを入れるエリオとハッピー。

 

 

「毒竜のブレスは体にウイルスを染みこませる。そして徐々に、体の自由とその命を奪う」

 

 

「うぐぐ…」

 

 

「くうう…」

 

 

「このブレスをくらった瞬間、テメェらの敗北は決まって…!!!」

 

 

コブラがそう言いかけたその時……

 

 

「火竜の翼撃!!!」

 

 

「雷竜閃!!!」

 

 

毒をくらって動く事も困難になっているにも関わらず、ナツとエリオはコブラに攻撃を仕掛ける。

 

だが、その攻撃は軽々と回避される。

 

 

「テメェらの動きは聴こえてる」

 

 

「くそォ~」

 

 

コブラを睨みつけながら悔しげな声を上げるナツ。

 

 

「しかし、オレの毒をくらってまだこれほど動けるとは、旧世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)にしてはやるじぇねーか」

 

 

「旧世代だァ?」

 

 

「どういう…意味…?」

 

 

コブラの口から放たれた〝旧世代〟という言葉に眉を顰めるナツとエリオ。

 

 

「オレは自らの体内に竜の魔水晶(ラクリマ)を埋め込む事によって、竜殺しの力を手に入れた新世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)

 

 

「ナツさんたちが言っていた……滅竜魔法が使える…魔水晶(ラクリマ)

 

 

「ラクサスと同じだ!!! こいつ…本物の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)じゃないよ!!」

 

 

「本物? 元々(ドラゴン)のみが修得しているという滅竜魔法を人間が修得する術はねえ。オレから言わせれば、テメェらの方が怪しいぜ。この世界に(ドラゴン)なんていねえんだからな」

 

 

「イグニールはいるっての!!!!」

 

 

「ボルテウスだって、ちゃんと存在しています!!!」

 

 

「いねえよ!!!! (ドラゴン)は絶滅したんだァ!!!!!」

 

 

ナツとエリオの言葉を否定しながら突撃してくるコブラ。そして……

 

 

「毒竜双牙!!!!」

 

 

「ぐああああああっ!!!!!」

 

 

「うああああああっ!!!!!」

 

 

毒を纏った両腕を交差させる様に振るい、2人をさらに上空へと打ち上げた。

 

 

「か……体が……」

 

 

「動かねえ!!!」

 

 

「毒が全身に回ったんだ。そのまま死ねえ」

 

 

毒か完全に回り、動けなくなったナツとエリオにそう言い放つコブラ。

 

 

「ナツーーー!!!」

 

 

「キューーー!!!」

 

 

叫びながら何とか空中で踏み止まるハッピーとフリード。

 

 

「ハッピー、オレを落とせ!!!」

 

 

「え?」

 

 

「ナツさん!?」

 

 

「キュッ!?」

 

 

「!」

 

 

すると、突然のナツの言葉に、ハッピーだけでなくエリオとフリードも驚愕する。そしてコブラも、何かを感じ取る。

 

 

「何……言ってんのナツ……さっき、体…動かない……って…」

 

 

「だからこそ、これで決める」

 

 

「何をするつもりですかナツさん!!?」

 

 

ナツの考えが理解できず、困惑するハッピーとエリオ。

 

しかしこの中でただ一人、コブラだけがナツの考えを聴き取っていた。

 

 

「(『フルパワーの火竜の咆哮』!? バカめ!! テメェの考えは聴こえてるぜ)」

 

 

ナツの作戦を理解したコブラは笑みを浮かべる。

 

 

「ハッピー!!! 今だ!!!」

 

 

「あい!!!」

 

 

ハッピーは意を決して掴んでいたナツを手放し、ナツはそのままコブラ目掛けて落下していく。

 

 

「(無心で攻撃される方が厄介だった)

 

終わったな」

 

 

「火竜の……」

 

 

「(無駄だ!!! 聴こえてるぜっ!!!! 狙いは〝拡散〟どこに避けても当てる気か)

 

だが後頭部までは届かねえ!!!!」

 

 

そう言うと、何とコブラは落下してきたナツの後頭部を掴み、そのまま背中に飛び乗った。

 

 

「その頭を砕いてやる」

 

 

「ナツーーーー!!!!」

 

 

「ナツさーーーん!!!!」

 

 

「キュクーーーー!!!!」

 

 

竜の爪を立てるコブラを見て、ハッピーとエリオとフリード悲痛な叫びを上げる。そしてナツ自身も、悔しげな叫び声を上げる。

 

 

「くっ…そぉオオォ────────!!!!」

 

 

ビリビリ…

 

 

「!」

 

 

ナツの断末魔にも似た大声は段々と大きくなり、コブラは自身の耳に何やら違和感を感じた。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

空気を…大地を…ニルヴァーナ全体をも揺るがすような叫び声が響き渡る。

 

 

「ドラゴンの……咆哮……!!!」

 

 

エリオはナツの叫び声に耳を塞ぎながら、そう呟いた。

 

 

「耳があああああああああ!!!! ぎゃあああああああ!!!! アァア…ア……」

 

 

そんなナツの叫び声を至近距離で聴き…しかもおそろしく耳が言いコブラにとってはこの上ない大ダメージで、コブラは耳を塞ぎながら悲鳴を上げ、ニルヴァーナへと墜落していった。

 

 

「あ?」

 

 

ズドォオン!!

 

 

そしてナツが正気に戻るのと同時に、地面に激突したコブラは気を失っていた。

 

 

「すごい叫びだったね」

 

 

「お……おう。み…耳が良すぎるのも考えモンだな。作戦どーり!! わはははは…」

 

 

「偶然のくせに」

 

 

何はともあれ……こうして、六魔将軍(オラシオンセイス)のコブラを倒す事に成功したナツとハッピーであった。

 

 

 

 

 

つづく


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