LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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孤独な雷鳴

 

 

 

 

 

 

マグノリアの街の中心部。

 

そこでは天輪の鎧に換装したエルザが、空中に数十本の剣を出現させていた。

 

 

「このマグノリアの地を守る為に……剣たちよ、私に力を貸してくれ」

 

 

そう呟くと、エルザは上空に浮かぶ魔水晶(ラクリマ)を破壊するための準備を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第五十五話

『孤独な雷鳴』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方…カルディア大聖堂では、ナツとティアナがラクサスと戦闘を繰り広げていた。

 

 

「どらぁっ!!!」

 

 

「ハァァ!!!」

 

 

ナツは炎を纏った拳を放ち、それに続くようにティアナがダガーモードにしたクロスミラージュでラクサスに切り掛かる。

 

しかし、2人の攻撃はラクサスに軽々と防がれる。

 

 

「ティア!! 手ぇ出すなっ!! ラクサスを倒すのはオレだっ!!!」

 

 

「そんな事言ってる場合じゃないでしょバカナツ!!!」

 

 

そんな言い合いをしながらも、ラクサスに攻撃を加えるナツとティアナ。

 

そんな2人に対し、ラクサスが怒鳴るように言い放つ。

 

 

「テメェらにだってわかるだろ、ナツ!!! ティアナ!!! 今、このギルドがどれだけふぬけた状況か!!! オレはこのギルドを変える!!! その為にマスターにならなきゃいけねェんだよ!!!」

 

 

そう言い終えると、ラクサスは横目で神鳴殿発動の残り時間を確認する。

 

 

【神鳴殿発動まで】

【あと1分30秒】

 

 

「何してやがんだジジィは!!! 街がどうなってもかまわねえのかよ!!!!」

 

 

「そんなにあせんなよ、ラクサス」

 

 

「どうせ何も起きやしないわ」

 

 

「何だと?」

 

 

どこか焦るように怒鳴るラクサスに、冷静にそう言い放つナツとティアナ。

 

 

「街を壊したって、アンタには何の得もないわ。でも発動してしまった手前、もう引くに引けなくて焦ってるんでしょ?」

 

 

ティアナにそう言われ、ラクサスの表情が強張る。

 

 

「大丈夫…エルザさんが止めてくれる」

 

 

「意地を通すのも楽じゃねえな!!!! ラクサス!!!!」

 

 

「テメェらが知ったような口を……!!!!」

 

 

そう言いながらも、再び残り時間を確認するラクサス。

 

 

【神鳴殿発動まで】

【あと45秒】

 

 

そんなラクサスの頭部に、ナツの蹴りが炸裂する。

 

 

「何も起きねえ!!!」

 

 

「黙れ…」

 

 

続けてティアナの銃撃が、ラクサスの腹部に直撃する。

 

 

「エルザさんがきっと止めてくれる!!!」

 

 

「黙れぇえ!!!!」

 

 

ラクサスが吼えるような雄叫びを上げたその時……

 

 

 

 

 

ドガガガガガガガガッ!!!!!

 

 

 

 

 

教会の外で、数十回もの爆発が起こった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

時は少々遡り…マグノリアの中心部。

 

 

「198…はぁはぁ……199…」

 

 

そこではエルザが息を切らしながらも、すでに100を越える剣を空中に展開していた。

 

 

「同時に破壊するには…まだ……」

 

 

200にも及ぶ剣を準備するエルザだが、それでもまだ神鳴殿を全て破壊するには至らないのである。

 

 

「くっ……もはや魔力ももたんか…時間もない…どうする……」

 

 

魔力が底をつき掛け、とうとう膝をつくエルザ。

 

 

「あと100…はぁはぁ……あと100本の剣がなければ同時には……!!!」

 

 

すでに発動までの残り時間は1分を切り、上空に浮かぶ魔水晶(ラクリマ)は今にも雷を放とうとしている。

 

万事休すかと思われたその時……

 

 

 

《おい!!! みんな聞こえるか!!? 一大事だ!!! 空を見ろ!!!》

 

 

 

「!!」

 

 

突然頭の中に誰かの声が響き、エルザは目を見開く。

 

 

「ウォーレン!? 念話(テレパシー)か…」

 

 

その声の正体は…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員であり、念話(テレパシー)の魔法を得意とする『ウォーレン・ラッコー』であった。

 

 

《くたばってる奴は起きろ!!! ケンカしてる奴はとりあえず中止だ!!!》

 

 

この口ぶりから察するに、どうやら彼はマグノリアにいるギルドの魔導士全員に語りかけているようだ。

 

 

《あの空に浮かんでる物をありったけの魔力で破壊するんだ!!!! 一つ残らずだ!!! あれはこの街を襲うラクサスの魔法だ!! 時間がねえ!!! 全員でやるんだ!!!!》

 

 

《何だとぉ!?》

 

 

《あれがラクサスの……》

 

 

神鳴殿のことを聞き、驚愕するギルドメンバーたち。

 

 

「ウォーレン、お前…なぜ神鳴殿のことを…」

 

 

《その声はエルザか!? 無事だったか!?》

 

 

エルザの問いに答えたのはウォーレンの声ではなく、グレイの声であった。

 

 

「グレイ!? そうか…お前が…」

 

 

《ウォーレンを偶然見つけてな》

 

 

《オイ…エルザが無事って事は、他のコたちは》

 

 

《レビィは…!!?》

 

 

そう言って石化されたメンバーの安否を心配するジェットとドロイ。

 

 

《無事みたいだぜ。リィンフォースがエバーグリーンを倒したからな!》

 

 

《主や他の者たちの石化は解けている、安心してくれ》

 

 

《ビスカもギルドにいるわ》

 

 

そんな2人と他のメンバーを安心させるために、ヴィータとリィンフォース、そしてミラがそう答えた。

 

 

《すまねえ、オレの念話(テレパシー)はギルドまでは届かねえ。とにかくこれが聞こえてる奴だけでいい!! あの空に浮いているものを……》

 

 

《ウォーレンてめぇ……オレに何したか忘れたのかよ》

 

 

《マックス!!!》

 

 

そう…このバトル・オブ・フェアリーテイルで強制的にとは言え、ウォーレンはマックスと戦い、倒してしまったのである。

 

 

《あん時はすまなかったよ…だって、女の子を助ける為に必死で……》

 

 

《オウ!! そうだ!! 聞こえるかアルザック!!》

 

 

《テメェもだ!! ニギー!! ちくしょう!!》

 

 

《さすがにトノは許せねえぞ!!!》

 

 

《そうだそうだ!! 聞こえてっかシグナム!!!》

 

 

《ヴィータ…シグナムはギルドで療養中だと言っていただろう》

 

 

この会話を皮切りに、念話(テレパシー)越しにケンカを始めるギルドメンバーたち。

 

 

 

《ケンカなら後でやれ!!!!》

 

 

《《《お前が言うな!!!!》》》

 

 

 

そんなメンバーに一喝するグレイだが、逆に言い返されてしまった。それでもグレイは負けじとメンバー達に叫ぶ。

 

 

《今は時間がねえ!!! 空に浮いてんの壊せ!!!!》

 

 

「よ…よせ、あれには生体リンク魔法が…」

 

 

メンバーたちを止めようとするエルザだが、すでに全員動き出していた。

 

 

《決着はあれ壊した後だーーー!!!》

 

 

《ビジター、テメェそこ動くなよォ!!!》

 

 

《マカオ、おめぇにゃ無理だ、寝てな!!!》

 

 

《んだとぉワカバ!!! ジジィのくせにハシャギすぎだよ!!!》

 

 

《とっととあれ壊して、ギルドに帰るぞ!!!》

 

 

《あぁ、主たちが心配だからな》

 

 

《空への飛行は私がサポートしよう。行くぞお前たち!!!》

 

 

《行くよハッピー!!》

 

 

《本気ルーシィ、痛いよ》

 

 

《痛くてもやるのっ!!》

 

 

《それに、痛いだの何だの言ってる場合じゃないしね!!》

 

 

「お前たち……」

 

 

仲間たちの声を聞き、やがてエルザは意を決したような顔付きになる。

 

 

「北の200個は私がやる!!! 皆は南を中心に全部撃破!!!」

 

 

〈一コも残すなよぉ!!!!〉

 

 

 

 

 

 

ドガガガガガガガガッ!!!!!

 

 

 

 

 

そして…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちによる一斉攻撃により、空に浮かんでいた神鳴殿は跡形もなく消え去った。

 

 

「やった…か」

 

 

神鳴殿の消滅を確認し、笑みを浮かべるメンバーたち。

 

だが次の瞬間……

 

 

《んがああああっ!!!!》

 

 

《ぐあああああっ!!!!》

 

 

《ぎゃあああーー!!!!》

 

 

《ひぃぃぃーーー!!!!》

 

 

《痛えーーーーー!!!!》

 

 

生体リンクによるダメージが、メンバーを襲ったのであった。

 

 

「み…みんな…無事…か……?」

 

 

《お…おーう……なんとか…な…》

 

 

《だが…さすがに効いたな……》

 

 

《あぁ…しばらく動けそうにない…》

 

 

《《《…………》》》

 

 

エルザの問いに答えたのはヴィータ、ザフィーラ、リィンフォースの3人だけで、あとのメンバーからの返事はなかった。

 

 

「まったく…お前たちは何という無茶を」

 

 

《お互い様……って事で》

 

 

《へへ…けどよぉ、アタシらって本当…いいギルドだよな》

 

 

《あぁ…そうだな……》

 

 

《ラクサスが反抗期じゃなかったらもっとな》

 

 

《あははは、言えてらぁ》

 

 

《アルザック、大丈夫か?》

 

 

《ドロイ? う…うん、ありがとう》

 

 

そんな念話(テレパシー)越しの楽しげな会話が、マグノリアの街に響いていったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

【神鳴殿】

【機能停止】

 

 

「な」

 

 

「心配…なかったでしょ?」

 

 

目を見開き、絶句しているラクサスにナツとティアナがそう言う。

 

 

【エルザ200個】

【グレイ4個】

【リーダス1個】

【アルザック1個】

【ヴィータ3個】

【ザフィーラ2個】

【リィンフォース5個】

【ナブ1個】

【ワン1個】

【ジェット1個】

【ドロイ1個】

【ワカバ1個】

【マカオ1個】

 

 

次々と誰が何個破壊したのかが表示され、それを見たラクサスはさらに驚愕する。

 

 

「ギルドを変える必要なんてない。ギルドとは1つの輪……みんなその輪の中にいるの」

 

 

「その輪の中に入ろうとしねェ奴が、どうやってマスターになるんだ!? ラクサス」

 

 

肩を震わせているラクサスに、そう言い放つナツとティアナ。だが次の瞬間……

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 

ラクサスは咆哮にも似た雄叫びを上げながら全身から雷を放つ。その余りの激しさに、彼が羽織っていた上着はどこかへと吹き飛び、耳に装着していたヘッドフォンは粉々に砕け散った。

 

そしてギロリとナツとティアナを睨みつけると……

 

 

 

「支配だ」

 

 

 

と…言い放った。

 

 

「いい加減にしなさいよラクサス……妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもうアンタのものなんかにはならないわ」

 

 

「なるさ…そう…かけひきなど初めから不要だった……全てをこの力にまかせればよかったのだ!!!! 圧倒的なこの力こそが、オレのアイデンティティーなのだからなァ!!!!」

 

 

そう言うとラクサスは再び全身から雷を放ち、周囲の地面を砕いた。

 

 

「そいつをへし折ってやれば、あきらめがつくんだなラクサス!!!!」

 

 

そう言うとナツは腕に炎を纏って殴り掛かる。

 

 

「火竜の鉄拳!!!!」

 

 

そしてそのまま拳をラクサスの顔面に叩き込む。しかしそれを喰らったラクサスは、特にダメージを負ったようにも見えず、ただ不気味にニヤリと笑った。

 

 

「!!」

 

 

「っ…ナツ!! 下がりなさい!!!」

 

 

「まずは貴様だ。くくく…」

 

 

不気味に笑うラクサスを見て、何か嫌な予感がしたティアナはナツに向かってそう叫ぶが、時すでに遅く……

 

 

 

「かかってこい妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!!! オレが全てをのみ込んでやる!!!!」

 

 

 

強力な雷を、ナツに向かって放った。

 

 

「ぐはぁぁぁぁああああっ!!」

 

 

「ナツ!!!」

 

 

「フハハハハハッ!!!」

 

 

雷を喰らったナツは吹き飛ばされ、同時にラクサスも高笑いを上げながらナツのもとへと向かう。

 

 

そこから…ラクサスが猛攻が始まった。

 

 

一方的に殴り…蹴りを入れ…地面に叩き落し…そしてトドメと言わんばかりに雷を放った。

 

 

「うがぁ!!!」

 

 

それを喰らったナツは吹き飛ばされ、地面に倒れる。

 

 

「ナツ!!!」

 

 

「次は貴様だ」

 

 

「っ!!? きゃあああっ!!!」

 

 

そんなナツのもとに駆け寄ろうとしたティアナだが、突然目の前にラクサスが現れ、そのまま殴り飛ばされた。

 

 

「ぐっ……クロスファイヤー…シュート!!!!」

 

 

吹き飛ばされながらも、ティアナは負けじと数十発もの魔法弾をラクサスに向かって放つ。

 

 

「んなモンが効くかぁ!!!!」

 

 

しかし、ラクサスの雄叫びと共に雷が放たれ、ティアナの攻撃は全てかき消されてしまった。

 

 

「所詮ティーダの片割れ……この程度かぁ!!!」

 

 

「ぐあぁっ!!!」

 

 

そう言って再びティアナを殴り飛ばすラクサス。

 

 

「テメェの兄貴はこんなモンじゃなかったぁ!!! ギルドの中で唯一オレのライバルと呼ぶに相応しい、ティーダの奴とはなぁ!!!!」

 

 

「ごほっ……でもその兄さんは……もういないわ……」

 

 

「そうだっ!! ティーダの奴はもういねぇ!!! あいつが死んでから、全てに張り合いが無くなったぁ!!! 弱ぇギルドの連中…レベルの低いクエスト…全てにだっ!!! だからオレは妖精の尻尾(フェアリーテイル)を最強のギルドにする!!! あの張り合いのある日々を取り戻すためになぁ!!!!」

 

 

「ふざ…けるな……!!!」

 

 

ラクサスの言葉を聞き、ティアナは怒りの表情を浮かべながらゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

「アンタの自己満足の為の理由に……兄さんの名前を使うなぁぁあ!!!!」

 

 

 

そう叫びながら、ティアナはクロスミラージュを構え、銃口に魔力を集束する。

 

 

「ファントム…ブレイザァアア!!!!」

 

 

そして、ありったけの魔力を込めた砲撃をラクサスに向かって放った。

 

 

しかし……

 

 

「スパーキンブリッド!!!!」

 

 

ラクサスの手から放たれた強大な雷が、それをいとも容易く飲み込んだ。

 

 

「ぐっ…きゃあああああっ!!!!」

 

 

そしてそれは砲撃を飲み込んだだけでなく、そのままティアナを襲い、ティアナはナツの近くに吹き飛ばされた。

 

 

「つ……強ぇな……やっぱり……」

 

 

「えぇ…そうね……」

 

 

何とか立ち上がろうとする2人だが、ダメージが大きく、立ち上がることが出来ない。

 

そんな2人を見下ろすように、砕けた柱の上に立っているラクサスは……拳を高々と天に掲げる。

 

 

「鳴り響くは召雷の轟き……」

 

 

「やべぇ…体が……」

 

 

「動か…ない……」

 

 

魔法の詠唱を口にするラクサスを見て、何とか動こうとするナツとティアナだが、やはりダメージが大きく動くことすら困難になっていた。

 

 

「天より落ちて灰燼と化せ」

 

 

そんな2人にも、ラクサスは一切の情けも見せず……

 

 

 

「レイジングボルト!!!!」

 

 

 

強大な雷を……落としたのであった。

 

 

「フフ…フハハハハハッ!!!」

 

 

不気味な笑い声を上げながら、先ほどの雷により抉れた地面を見据えるラクサス。そこにナツとティアナの姿は……ない。

 

 

「ナツぅ、ティアナぁ、このギルド最強は誰だ?」

 

 

目の前に向かってそう問い掛けるラクサス。当然、返答はない。

 

 

「ハハハハッ、粉々になっちまったら答えられねーか!!!」

 

 

再び高笑いを上げるラクサス。すると……

 

 

「仲間……じゃなかったのか? それを消して喜んでるとァ、どうかしてるぜ」

 

 

「ア?」

 

 

背後から聞こえてきた声に振り返るラクサス。

 

 

「まあ、消えてねえがな。コイツを消すのはオレの役目だからよォ」

 

 

「……ギリギリセーフ」

 

 

そこに居たのはぐったりとしたナツを掴んでいるガジルと、ティアナを抱えている召喚蟲のガリュー…そしてその召喚者であるルーテシアであった。

 

 

「ルーテシア…」

 

 

「ガジル…んがっ!」

 

 

突然手を離され、地面に落ちるナツ。

 

 

「また獲物が一匹、ククク……消えろ消えろォ!!! オレの前に立つ者は全て消えやがるがいいっ!!!」

 

 

ガジルとルーテシアを見て、笑みを浮かべながらそう吼えるラクサス。

 

 

「ラクサスはオレがやる。ひっこんでろ……」

 

 

痛む体に鞭打ちながら起き上がるナツ。そんなナツに、ガジルが口を開く。

 

 

「コイツには個人的な借りがあるんだヨ。だが、奴の強さは本物のバケモンだ。マカロフの血を引いてるだけの事はある。気にいらねえが、やるしかねえだろ」

 

 

そう言って、ガジルはある提案を出した。

 

 

「共闘だ」

 

 

ガジルの提案に、当然ナツは反論する。

 

 

「じょ…冗談じゃねえ!!! ラクサスはオレが倒すんだ!!! つーかオマエとなんか組めるかよ!!!」

 

 

「よく見ろ、あれがてめえの知ってるラクサスか?」

 

 

ガジルにそう言われ、ナツはラクサスを見る。

 

 

「ハハハ…消えろ…消えろ……」

 

 

まるで狂ったかのようにそう言い続けるラクサスを見て、ナツは言葉を失う。

 

 

「あれはギルドの敵だ!!!! ギルドを守る為に、ここで止めなきゃならねえ!!!! 他の奴等は神鳴殿の反撃で全員動けねえ。今ここで奴を止めねえと、どうなるかわかってんのか!?」

 

 

そう言われて、ナツは考え込む。

 

 

「お前がギルドを守る?」

 

 

「守ろうが壊そうがオレの勝手だろーが!!!」

 

 

ナツの指摘にそう怒鳴るガジル。

 

 

「この空に竜は二頭もいらねえんじゃなかったか?」

 

 

「いらねえな。だが、こうも雷がうるせえと空も飛べねえ」

 

 

「今回だけだからな」

 

 

「当たり前だ!! テメェとはいずれ決着をつける!!」

 

 

言い合いをしながらも、とりあえずは共闘するという形で話は纏まった。

 

 

「ごめんナツ……私はまだ…体が……」

 

 

「気にすんな、ティアは休んでろ」

 

 

ガリューの抱えられながら申し訳なさそうにするティアナを見て、ナツはそう言う。

 

 

「ルーテシアはガリューとその小娘を連れてどっか隠れてろ」

 

 

「うん……ガジル、頑張って」

 

 

そう言い残すと、ルーテシアはガリューとティアナを連れて近くの物陰へと隠れる。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「「行くぞ!!!!」」

 

 

 

 

 

火竜と鉄竜…2頭の竜の共闘が始まった。

 

 

 

 

つづく


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