LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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反撃開始

 

 

 

 

 

バトル・オブ・フェアリーテイルが始まって、すでに一時間が経過した。そしてギルドでは、新たな情報が表示されていた。

 

 

【リーダスVSフリード】

【勝者:フリード】

 

【ザフィーラVSフリード】

【勝者:フリード】

 

 

「リーダスとザフィーラがやられた!!」

 

 

「くぅ……やるなぁフリード!!!」

 

 

「のんきな事言ってる場合じゃないよ!!! リーダスは石化を解く薬を取ってくるハズだったんだ」

 

 

石化を解く最後の希望を打ち砕かれ、マカロフは悔しそうに顔を歪める。

 

 

「治す事ねえよ。どうせハッタリだから」

 

 

「ハッタリだと思ってんのか?ナツ」

 

 

「「!!!」」

 

 

「ラクサス!!!」

 

 

声がした方へ視線を向けると、そこにはラクサスが立っていた。

 

 

「思念体だ!」

 

 

「つーか何でオメーがここにいんだよ、ナツ」

 

 

「うっせぇ!!! 出られねえんだ!!!」

 

 

「ラクサス…貴様……」

 

 

マカロフがそう呟きながらラクサスを睨みつけるが、ラクサスは余裕の笑みを浮かべている。

 

 

「仲間…いや、アンタはガキって言い方してたよな。ガキ同士の潰し合いを見るに堪えられんだろ? あ~あ…ナツやエルザ…なのはやフェイトも参加できねえんじゃ、雷神衆に勝てる兵はもう残ってねえよなぁ」

 

 

「……………」

 

 

「降参するか?」

 

 

「くぅ……」

 

 

ラクサスの言葉にマカロフは小さく唸る。すると、ハッピーが口を開く。

 

 

「まだグレイがいるよ!!! ナツと同じくらい強いんだ!!! 雷神衆になんか負けるもんか!!?」

 

 

「オレと同じだぁ!? アイツが?」

 

 

「だってそうじゃん」

 

 

「グレイだぁ? ククッ、あんな小僧に期待してんのかヨ」

 

 

「グレイをみくびるなよラクサス」

 

 

ラクサスを睨みつけながらそう断言するマカロフ。

 

 

しかし……

 

 

 

 

 

【グレイVSビックスロー】

【勝者:ビックスロー】

 

【グレイ:戦闘不能】

【残り28人】

 

 

 

 

 

目の前に表示されたのは、余りに酷な知らせであった。

 

 

「ふははははっ!!! だーから言ったじゃねーか」

 

 

「嘘だっ!!! 絶対何か汚い手を使ったんだよっ!!!」

 

 

「ぬぅ…」

 

 

その知らせを見て、ラクサスは高笑いをし、ハッピーは知らせを認めずに叫び、ナツは唸った。

 

 

「あとは誰が雷神衆に勝てるんだ? クク……」

 

 

「シグナムだ!!!」

 

 

「シグナムゥ? ああ…そこに表示されている奴の事か?」

 

 

「「「!!?」」」

 

 

ラクサスが指差す先には、また新たな情報が表示されていた。

 

 

【シグナム:23人抜き】

 

 

「「「23人!!?」」」

 

 

その情報を見て、ナツたちは驚愕する。

 

 

「スゲェよなぁ…たった一人でギルドの四分の一を倒しちまった。だが、同時に相当の魔力を使ってるハズだ。そんなボロボロの状態で雷神衆に勝てるかねぇ?」

 

 

ラクサスは笑みを浮かべながらそう語る。

 

 

「さて、まだ雷神衆に勝てそうな奴はいるか?」

 

 

「ガジルだっ!!!」

 

 

「残念~!! 奴は参加してねーみてーだぜ。元々ギルドに対して何とも思ってねえ奴だしな」

 

 

「オレがいるだろーが!!!」

 

 

「ここから出れねーんじゃ、どうしようもねーだろナツ」

 

 

ナツとラクサスがそんな言い合いをしている間に、マカロフは考えるように目を伏せ……

 

 

「わかった、もうよい。降参じゃ。もうやめてくれ、ラクサス」

 

 

「じっちゃん!!!」

 

 

マカロフはラクサスに対して降参宣言をする。しかし……

 

 

「ダメだなァ……天下の妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターともあろう者が、こんな事で負けを認めちゃあ。どうしても投了(リザイン)したければ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターの座をオレに渡してからにしてもらおう」

 

 

ラクサスは意地の悪い笑みを浮かべながらそう要求してきた。

 

 

「汚ーぞラクサス!!! オレとやんのが怖えのか!!?ア!!?」

 

 

「貴様……初めからそれが狙いか……」

 

 

「女の石像が崩れるまであと1時間半。リタイアしたければ、ギルドの拡声器を使って街中に聞こえるように宣言しろ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターの座をラクサスに譲るとな。よーく考えろよ。自分の地位が大事か、仲間の命が大事か」

 

 

そう言い残して、ラクサスの思念体は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第五十話

『反撃開始』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!!! オレと勝負もしねえで、何が最強だ!!! マスターの座だ!!!」

 

 

「マスターの座など、正直どうでもよい」

 

 

「いいのかよ!!!」

 

 

「だが…ラクサスに妖精の尻尾(フェアリーテイル)を託す訳にはいかん。この席に座るにはあまりにも軽い…信念と心が浮いておる」

 

 

「でもこのままじゃ……みんなが砂になっちゃう」

 

 

「えーい!!! 誰かラクサスを倒せる奴はおらんのかっ!!!」

 

 

「オレだよオレ!!!」

 

 

「ここから出れんのじゃ、どうしようもなかろう」

 

 

ナツとマカロフがそんな口論していると……

 

 

ガサゴソ……

 

 

「誰!?」

 

 

突然バーカウンターの方から物音が聞こえ、全員の視線がそちらに移る。そしてそこには……

 

 

「ガジガジ……」

 

 

「……………」

 

 

「よ…よぉ……」

 

 

鉄製の食器を食べているガジルと、いつも通り無表情のルーテシア、そして申し訳無さそうな表情をしているアギトの姿があった。

 

 

「お前らーー!!!」

 

 

「食器を食べんなー!」

 

 

「も…もしや……行ってくれるのか?」

 

 

「あの野郎には借りもある。まあ、任せな」

 

 

「おおっ!!!」

 

 

そう言ってラクサスを倒すため、出口へと向かうガジル。

 

 

しかし……

 

 

ゴチーン!

 

 

ナツと同じく、術式の壁に阻まれた。

 

 

「「「お前もかーーーっ!!!」」」

 

 

「な…何だこれはーー!!!」

 

 

「ど…どうなってんだ? ここから出られないのは、80歳以上と石像だけだろ?」

 

 

「………ガジル…おじいちゃん?」

 

 

「んなわけねえだろ!!!」

 

 

何故ナツやガジルが外に出ることが出来ないのか戸惑う一同。

 

 

「つーか、オメェらは行かねえのか?」

 

 

ナツがルーテシアとアギトにそう問い掛けると、ルーテシアはフルフルと首を横に振って拒否した。

 

 

「……あの人……怖い……」

 

 

小さくそう呟いたルーテシアの体は、小刻みに震えていた。

 

 

実を言うとルーテシアは、以前ガジルに容赦なく暴行を加えたラクサスに対して恐怖の念を抱いてしまったのだ。

 

 

「ルールー……」

 

 

そんなルーテシアをアギトが心配そうな表情で見ていると、マカロフがルーテシアの頭の上にポンッと手を置く。

 

 

「安心せい。いくら何でもお主のような子供を戦わせるような事はせんわい」

 

 

「………おじいちゃん」

 

 

ニカッと笑いながらそう言うマカロフに、ルーテシアはどこか安堵したような表情になる。

 

 

しかし……そうこうしている間にもバトル・オブ・フェアリーテイルは続き、ついには……

 

 

 

【残り3人】

 

 

 

となった。

 

 

「残り三人だけじゃと!!?」

 

 

「何でお前まで出れねーんだよ! マネすんじゃねー!!」

 

 

「知るか」

 

 

「ハラ減ってきたじゃねーかコノヤロウ!!」

 

 

「それは本当に知らんわ!!!」

 

 

「三人?」

 

 

マカロフはふと、口喧嘩をしているナツとガジルに視線を移す。

 

 

「こいつ等とシグナムだけじゃとーーっ!!?」

 

 

「オイラは頭数に入ってなかったのかーーー!!!」

 

 

「アタシとルールーも入ってねえのかよっ!!?」

 

 

残っているのがココにいるナツとガジル、そして未だ外で戦っているシグナムだけだと言う事実に、マカロフは驚愕し、自分たちが頭数に入っていないことにハッピーとアギトは軽いショックを受けた。

 

 

「(同士討ちや雷神衆の手によって妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士が全滅したというのか。まだ外で戦っているシグナムも、雷神衆に勝てるほどの魔力が残っているとは思えん……つまり戦える魔導士はもういない……ここまでか……)」

 

 

マカロフが諦めかけたその時、ナツが信じられない言葉を口にした。

 

 

「仕方ねえ、エルザを復活させるか!!!」

 

 

「「「「何!!?」」」」

 

 

ナツの言葉にその場にいた全員が驚愕する。

 

 

「あーあ、せっかくエルザを見返すチャンスだったのになァ」

 

 

「ちょ、ちょっと待たんかいっ!! お前…どうやって……!!?」

 

 

「燃やしたら溶けんじゃね?石の部分とか」

 

 

「やめーーーーい!!!!」

 

 

とんでもない事をさらりと言ってのけるナツを必死に止めようとするマカロフだが、ナツはすでに行動を開始していた。

 

 

「やってみなきゃわかんねえだろ」

 

 

「わかるわバカ!!! エルザを殺す気かテメェ!!!」

 

 

「ナツ!! 火でこするでないっ!!!」

 

 

「つーか…てめ……手つきエロいぞ…」

 

 

マカロフとアギトの制止を振り切って石となったエルザの体を火でこすり始めるナツ。すると……

 

 

 

パキ…

 

 

 

「「「「……………!!!」」」」

 

 

なんと、エルザの体にヒビが入った。

 

 

「しまったー!!! 割れたー!!! ノリだノリ!! ハッピー! ノリーーー!!!」

 

 

「あいさー!!!」

 

 

「バカヤロウ!! そんなんでくっつくか!!? オレの鉄をテメェとアギトの炎で溶かして溶接するんだ!!!」

 

 

「アホか!! 何の解決にもなってねえよっ!!!」

 

 

「貴様らーーーーっ!!!」

 

 

一同がドタバタしている間にも、エルザのヒビがどんどんと広がる。

 

 

「ひぁーーーーっ!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!」

 

 

ヒビ割れゆくエルザに向かって必死の謝罪を繰り返すナツ。そして……

 

 

 

バキィン!

 

 

 

と言う音ともに、エルザの石化が解けた。

 

 

そして突然のエルザ復活に一同は呆然とする。

 

 

「熱い…お前かナツ」

 

 

そう言ってエルザはゆっくりと立ち上がり……

 

 

「何をするかーーー!!!」

 

 

「ぐほぉ!」

 

 

「ギヒャ!」

 

 

ナツを近くにいたガジルもろとも殴り飛ばした。

 

 

「「エルザが復活したーーー!!!」」

 

 

それを見て歓喜の声を上げるハッピーとアギト。

 

 

「エルザ…しかしなぜ…」

 

 

「それが私にも……もしかしたら、この右目のおかげかもしれませんが…」

 

 

エルザは奴隷時代に右目を潰され、現在はポーリュシカが精巧に作った義眼を埋め込んでいるのである。

 

今回はその眼が幸をそうし、エバーグリーンの魔法の効果を半減させたのである。

 

 

「おいエルザ…今の状況わかるか?」

 

 

「ああ……全て耳に入っていた」

 

 

「(いける!!!反撃の時じゃ!!!!)」

 

 

マカロフの心にようやく希望の光が見えてきたその時……

 

 

 

「ハァ…ハァ…マス……ター……」

 

 

 

『!!!』

 

 

出入り口の方から掠れた声が聞こえ、全員の視線がそちらへと向く。そしてそこにいたのは……

 

 

「シグナム!!?」

 

 

「お前…大丈夫か!!?」

 

 

体中がボロボロになり、レヴァンティンを杖代わりにしてようやく立てる状態となっているシグナムであった。

 

 

「シグナム!!!」

 

 

そんなシグナムに、マカロフは急いで駆け寄る。

 

 

「マスター……申し訳…ありません……ラクサスと雷神衆を見つける事が出来ず……私は多くの仲間を……!!」

 

 

「よい、気にするな。よく戻って来た、今はゆっくりと安め」

 

 

「いえ……それは出来ません……」

 

 

シグナムはマカロフの言葉を拒否すると、ボロボロの体でゆっくりとアギトに歩み寄る。

 

 

「アギト……頼む…私と融合(ユニゾン)してくれ……」

 

 

「なっ!!?」

 

 

シグナムの頼みに、アギトは目を見開く。

 

 

融合(ユニゾン)すれば、雷神衆にも勝てるかもしれん!!頼むアギト!!!」

 

 

「バ…バカ言うな!!! 融合(ユニゾン)はただでさえ融合者の身体にかなりの負担をかけるんだ!!! そんなボロボロの状態で融合(ユニゾン)なんてしたら……お前死ぬぞ!!!」

 

 

『!!?』

 

 

死と言う言葉に全員が驚愕し、体を強張らせる。

 

 

「だが……今の状態の私では……雷神衆に勝つことなど……」

 

 

それでも自分の意見を曲げないシグナム。

 

 

―大丈夫だ……将……―

 

 

「っ…誰だ!!?」

 

 

その時、突然どこからか声が聞こえ、全員がその声の出所を探す。すると……

 

 

 

キィィィイイン!!

 

 

 

「や…夜天の書が……!!」

 

 

石化したはやてが持っていた夜天の書が、突然輝きながらはやての下を離れてナツたちの前に浮遊する。それを見ながら呆然としていたシグナムは、口元に笑みを浮かべる。

 

 

「そうか……まだお前がいたな……」

 

 

シグナムがそう呟いた瞬間、夜天の書が開き、そこから一筋の光が飛び出してくる。そしてその光から現れたのは……

 

 

 

「リィンフォース」

 

 

 

ヴォルケンリッター最後の一人…リィンフォースであった。

 

 

「リィンフォース…お主、なぜ夜天の書から……」

 

 

マカロフの問い掛けに、リィンフォースは小さな笑みを浮かべながら答える。

 

 

「夜天の書を管理する一族である私は、夜天の書の内部に入り、その力を制御・コントロールする事が可能なのです。そして我が主が石化されてすぐ、私は夜天の書の中へと入り込み、内部から主の石化を解除しようと思ったのですが……残念ながら夜天の書本体の石化を解くのが精一杯でした……」

 

 

「そうか……では、夜天の書から出てきたと言う事は……」

 

 

「はい……私も…このバトル・オブ・フェアリーテイルに参戦します」

 

 

リィンフォースはマカロフを真っ直ぐと見据えながら、ハッキリとそう宣言をした。

 

 

「リィンフォース……」

 

 

「っ……将……」

 

 

そんなリィンフォースに、シグナムが声をかける。

 

 

「主はやてを……頼んだぞ」

 

 

「……あぁ、任せろ」

 

 

リィンフォースの言葉を聞き、シグナムは安堵したように「ふっ…」と笑みを浮かべると、そのまま意識を手放し、ゆっくりと倒れた。

 

 

「「「シグナム!!!」」」

 

 

「安心せい。気を失っとるだけじゃ」

 

 

倒れたシグナムを見て、彼女に駆け寄るナツ、ハッピー、アギトを安心させるように、マカロフがそう言う。

 

 

【シグナム:戦闘不能】

【残り4人】

 

 

「私とリィンフォースが加わった事で、残り人数も律儀に変わると言うわけか。凝った事を……」

 

 

「この4人はナツとガジルとエルザとリィンフォースの事だね」

 

 

表示された情報を見て、エルザとハッピーがそう呟くと……

 

 

 

【残り6人】

 

 

 

「!!」

 

 

「二人増えた」

 

 

「誰だ!!?」

 

 

「皆…石のままじゃ。一体……」

 

 

突然残り人数が二人も増えた事に、全員が戸惑っていると、エルザがクスリと笑いながら口を開いた。

 

 

「どうやらあの二人も参戦を決めたか」

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)…二人の最強候補。

 

 

 

 

 

ミストガンとクロノ・ハラオウン。

 

 

 

 

 

今ここに…反撃の狼煙が上がった。

 

 

 

 

 

つづく


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