LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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妖精の法律

 

 

 

 

 

ここは…マグノリアから少し離れた『東の森』そこでは二人の人物が会話をしていた。

 

 

「本当にもう大丈夫なんですね?」

 

 

「うむ…心配をかけた。スマンな、迎えに来てもらって」

 

 

「いえいえ、貴方の頼みですから。断る理由がありませんよ。まぁ、突然呼ばれた時は驚きましたけど……」

 

 

「お主が〝念話〟を使えてよかったわい。本当にお主は多才じゃのう」

 

 

「あはは…僕の魔法のレパートリーは広く浅くですからね。では、そろそろ行きましょうか?」

 

 

「そうじゃな……頼むぞ」

 

 

二人の会話が終わると、その二人の身体を翡翠色の光が包み込んだ。

 

 

 

 

 

そして光が消えると、二人の姿も消えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三十話

『妖精の法律』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉぉぉぉおお!!!」

 

 

炎の融合(ユニゾン)魔導士……剣精アギトと融合したシグナム。シグナムはその力で目の前の敵…マスタージョゼを倒すためにレヴァンティンの刃に炎を纏わせ、一気に駆け出した。

 

 

「ふん」

 

 

それを見たジョゼは鼻を鳴らし、先ほど紫電一閃を防いだ時と同じように防御魔法で防ごうとした。しかし……

 

 

―燃えやがれぇぇえ!!!―

 

 

「なに!!?」

 

 

なんと、レヴァンティンが纏っていた炎がジョゼの防御魔法を燃やし尽くした。

 

 

「くっ!」

 

 

それを見たジョゼはすぐさま後ろへ飛び、ギリギリで刃から逃れる。そして忌々しげにシグナムを睨み付ける。

 

 

「魔法で魔法を燃やすとは……!!」

 

 

「すごいな……これほどとは……」

 

 

―見たか! これが烈火の剣精! アギト様の力だ!!―

 

 

シグナムが感嘆の声をもらすと、アギトが得意げに言う。

 

 

「調子に乗るなよ小娘がっ!!!」

 

 

すると、ジョゼはそう叫びながら片手に怨霊のような魔力を集中させる。

 

 

「デッドウェイブ!!!」

 

 

それを地面に走らせ、シグナムを狙う。

 

 

―避けろ!!―

 

 

「わかっている!!」

 

 

シグナムは高く跳躍してそれをかわす。

 

 

「逃がすか!!」

 

 

そんなシグナムに向かって再び魔法を放つジョゼ。

 

 

「レヴァンティン!!」

 

 

それに対しシグナムは、レヴァンティンをシュランゲフォルムへと変え、炎を纏った連結刃を自分の周囲に螺旋状で纏わせ、それを防いだ。

 

 

「喰らえっ!!!」

 

 

そしてそのまま連結刃を振るい、ジョゼに斬りかかった。

 

 

「チィッ!!」

 

 

ジョゼは舌打ちをしながら後退し、それを避ける。

 

 

―シグナム! 一気に決めるぞ!!―

 

 

「あぁ!!」

 

 

「―うおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!―」

 

 

二人は雄叫びを上げながらレヴァンティンに魔力を注ぎ、強大な炎を纏わせる。

 

 

「これで終わりだ! ジョゼ・ポーラ!!!」

 

 

「くっ……!!」

 

 

膨大な魔力を見て、顔を歪めるジョゼ。

 

 

―剣閃!!―

 

「烈火!!」

 

 

そしてシグナムはゆっくりと燃え盛るレヴァンティンを振りかぶり……

 

 

 

「―火竜一閃!!!―」

 

 

 

ジョゼに向かって強力な炎の斬撃を放ったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃…白天王と戦っていたなのはとはやて。そんな二人のもとに、妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女候補最後の一人……『フェイト・テスタロッサ』が合流した。

 

 

「フェイトちゃん!!」

 

 

「大丈夫? なのは?」

 

 

抱えていたなのはを降ろしながらそう尋ねるフェイト。

 

 

「うん…大丈夫だよ」

 

 

「なのはちゃん! フェイトちゃん!」

 

 

なのはが笑みを浮かべながらフェイトにそう答えると、二人に向かってはやてが飛んでくる。

 

 

「二人とも、遅れてごめん……ギルドが大変なことになってるって聞いて、仕事先から急いで帰ってきたんだけど……」

 

 

申し訳無さそうにするフェイトに二人は優しく笑いかける。

 

 

「その話はまたあとでや」

 

 

「そうだよフェイトちゃん。今は……」

 

 

そう言ってなのはとはやては視線を白天王に向ける。二人の意図を察したフェイトは小さく頷いた。

 

 

「うん……そうだね……」

 

 

そしてフェイトも視線を白天王へと向ける。そして三人は同時に口を開く。

 

 

「「「アイツを倒そう!!!」」」

 

 

そう言うと、三人は雄叫びを上げる白天王へと向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その様子を遠目から見ているナツ、ティアナ、ハッピー、ルーシィの四人。

 

 

「お、おい…アレって……!」

 

 

「えぇ…間違いないわ……!」

 

 

「フェイトだーーー!!!」

 

 

合流したフェイトを見て、嬉しそうな笑みを浮かべるナツ達。そんな中、ルーシィ一人が首を傾げていた。

 

 

「ねえ…あの人は?」

 

 

「あの人はフェイトさん。妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女候補、最後の一人よ」

 

 

「すっごく強いんだよ!!」

 

 

「おまけに動きがすっげぇ速ぇんだよなぁ。『金色の閃光』って呼ばれてんだぜ」

 

 

「へぇ~」

 

 

三人の説明を聞きながらルーシィは遠目で戦うフェイトを観察する。

 

 

自分よりも長くて綺麗な金髪。

 

 

幼さを残しつつもキリッとした凛々しい顔立ち。

 

 

ほぼ完璧なプロポーション。

 

 

そして極め付けがギルド最強候補の実力。

 

 

「色々な意味で……負けた……」

 

 

「「「???」」」

 

 

一人で勝手に落ち込んでorzになっているルーシィを見て、三人は首を傾げていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そして場所は戻り、白天王に向かっていくなのは達。

 

 

「彼の者に大空を翔る翼を…〝エアリアル〟!!」

 

 

はやてが二人に向かってシュベルトクロイツを振るうと、なのはの足に桜色、フェイトの足に金色の魔力で形成された翼が出現し、その翼を広げて空へと飛び上がる。はやてもその二人を追うように黒翼を広げて飛んでいった。

 

 

「行くよ…バルディッシュ」

 

 

フェイトは自身の武器…魔法の杖(マジックロッド)の『バルディッシュ』にそう呟く。すると、バルディッシュの先端に金色の魔力で生成された刃が出現し、大鎌の形状となった。

 

 

「ソニックムーブ!」

 

 

そして次の瞬間には金色の光を纏い、目にも止まらぬスピードで白天王に向かっていく。

 

 

「ハァァァァアア!!」

 

 

そしてそのスピードのままバルディッシュを振るい、白天王の胸部を切り付けた。

 

 

『─────っ!!』

 

 

その攻撃自体はダメージが無かったが、突然切られたことにより白天王は一瞬怯む。それを見逃さずにフェイトが声を上げる。

 

 

「なのは!!」

 

 

「うん!!」

 

 

その声を聞いたなのはは頷きながらレイジングハートを構えて魔力を込め……

 

 

「ディバインバスター…フルパワーーー!!!!」

 

 

強大な砲撃を放った。

 

 

ドゴォォォォォォオン!!!

 

 

『──────っ!!!』

 

 

その砲撃は先ほどフェイトが切りつけた胸部へと命中し、白天王は苦しげな声をあげた。

 

 

「はやてちゃん!!」

 

 

「OKや!!」

 

 

なのはの掛け声に反応し、今度ははやてが動き出す。はやては背中の黒翼を羽ばたかせ、白天王の頭上へと躍り出る。

 

 

「行くで! リィンフォース!!」

 

 

―はい! 我が主!!―

 

 

そして夜天の書を開き、シュベルトクロイツを高々と天に向かって構える。

 

 

「彼方に来たれ、宿り木の枝。銀月の槍となりて撃ち貫け!!」

 

 

呪文を唱えると同時に、はやての足元に白い魔法陣が展開する。そして白天王の上空に、七ツの白い光が出現する。

 

 

「石化の槍! ミストルティン!!」

 

 

その瞬間、白天王は足元から見る見る石へと変化していく。

 

 

『────────!!────────!!!』

 

 

白天王はそれを何とかしようと抵抗しているが、石化は止まらない。

 

 

「これで……終いや!!!」

 

 

はやてがそう叫んだと同時に、白天王は完全な巨石へと姿を変えた。

 

 

「やったぁ!! やったねフェイトちゃん!!はやてちゃん!!」

 

 

「うん……よかったぁ」

 

 

「私らの大勝利や!!」

 

 

石化した白天王を見て、大いにハシャグ三人。しかし……

 

 

 

ピシッ…ピシピシッ……!

 

 

 

「「「えっ?」」」

 

 

突然石となった白天王の身体に亀裂が入り……

 

 

ガラガラガラガラ!!

 

 

 

『─────────────────!!!!!』

 

 

 

石だけが剥がれ落ち、白天王が凄まじい雄叫びを上げながら復活した。

 

 

「そ…そんな……!」

 

 

「う…嘘や!! 何で石化が解けたんや!!?」

 

 

「どうなってるの……?」

 

 

あまりの事態に戸惑うなのは、フェイト、はやて。すると、はやてと融合したリィンフォースの声が響く。

 

 

―主! おそらく原因はあの召喚者です!!―

 

 

「召喚者?」

 

 

その言葉を聞いて、三人は白天王の近くで蟲に乗っているルーテシアへと視線を向けた。

 

 

―はい。召喚獣は召喚魔導士から魔力を供給されることでその力を発揮します。つまり、その供給される魔力が大きければ大きいほど召喚獣の力は、より強大になるのです―

 

 

「じゃあ、その魔力供給を止めればいいんだね!」

 

 

―そうだ。しかし、召喚者と召喚獣は魔力を供給する見えないパイプで繋がっている。それを断ち切る方法は二つ。一つは召喚者を気絶させること―

 

 

「気絶させるって…あの女の子を?」

 

 

「……敵とは言え、ちょっと良心が痛むけど……四の五の言ってられへんな」

 

 

そう言って、はやてはルーテシアに向かってシュベルトクロイツを構える。

 

 

「堪忍…してや!!」

 

 

そしてルーテシアに向かって白い魔力弾を放った。だが……

 

 

 

「アアァァァァアア!!!」

 

 

 

ルーテシアが咆哮すると、彼女の身体から魔力が噴出し、それが盾となってルーテシアを守った。

 

 

「なっ!? 魔力の盾やて!!?」

 

 

「そんな……! 召喚獣に魔力を与えながらあんな事が出来るなんて……」

 

 

「とんでもない魔力量なの……!!」

 

 

それを見た三人は驚愕する。

 

 

「あれじゃあ生半可な攻撃は効かへんな…」

 

 

「あれ以上の攻撃力となると……」

 

 

「適任なのは私の……砲撃…だけど……」

 

 

そこまで言って、三人はふと考える。なのはの砲撃魔法なら確かにルーテシアの魔力の盾を突き破ることは出来るだろう。しかし、なのはの砲撃魔法の破壊力はハンパではない。そんな砲撃を幼いルーテシアが喰らったらどうなるか……

 

 

「「却下で!!」」

 

 

「ですよね!!」

 

 

即決でその案は却下となった。

 

 

「リィンフォース! もう一つの方法は!?」

 

 

はやては最後の頼みの綱であるリィンフォースのもう一つの方法を尋ねる。

 

 

―もう一つは……あの召喚獣を、完膚なきまでに叩きのめすことです―

 

 

「「「無理でしょ!」」」

 

 

―即答ですか!?―

 

 

まさかの三人の即答にさすがのリィンフォースも驚いた。

 

 

「いやまぁ、それは冗談としてや。せやけどあの巨体を倒すんは骨が折れるで?」

 

 

「でも、勝機はあるよ」

 

 

「勝機?」

 

 

フェイトの言った言葉に首を傾げるなのは。すると、彼女は「見て」と言って白天王のある箇所を指差す。そこは、先ほどフェイトが切りつけ、なのはが砲撃を叩き込んだことにより出来た胸部の傷だった。

 

 

「あそこに出来た傷のダメージは決して小さくはないはずだよ。あそこに私達の最大の攻撃を叩き込めば……」

 

 

「あの巨人を倒せるかもしれへんっちゅうわけやな?」

 

 

はやての言葉にフェイトは小さく頷く。

 

 

「それじゃあ、行ってみようか?」

 

 

「うん!」

 

 

「おっしゃ!」

 

 

そう言って三人娘は真っ直ぐと白天王を見据える。そして、一斉に白天王を目掛けて飛んでいった。

 

 

『──────!!!』

 

 

それに対して白天王は雄叫びを上げ、腹部の水晶に光を迸らせ、魔力光線を放つ。その狙いの先に居るのは……フェイト。

 

しかしフェイトは迫り来る魔力光線に特に怖気づくこともなく……

 

 

「ソニックムーブ!!」

 

 

持ち前の素早さでその光線を軽々と避ける。そしてそのままバルディッシュを振りかぶり……

 

 

「ハーケン…セイバーー!!」

 

 

白天王の胸部を狙って、金色の刃を放った。しかし、その刃が届くことはなく、白天王の巨大な腕で弾かれて霧散した。

 

 

『──────!!!』

 

 

すると白天王は自棄になったのか、手足を滅茶苦茶に振り回し始めたのだ。

 

 

「わっ! っとと……」

 

 

「危なっ!! 今掠ったで!?」

 

 

滅茶苦茶に振り回される手足をギリギリで避ける事に成功したなのはとはやては、白天王から一旦距離を置いた。

 

 

『──────!!!』

 

 

なのは達が離れても尚、白天王は雄叫びを上げながら暴れまわっている。

 

 

「アカン…あないに滅茶苦茶に暴れられたら手がつけられへん……」

 

 

「少しでもいいから、動きを封じることが出来ればいいんだけど……」

 

 

「でも…私達にあんな巨体の動きを封じれる魔法は……」

 

 

暴れまわる白天王を見据えながら、何とかして打開策を考える三人。

 

 

 

「そう……あの巨人の動きを止めればいいんだね?」

 

 

 

「「「っ!!?」」」

 

 

突然背後から声が聞こえ、三人はすぐさま振り返る。するとそこに居たのは……

 

 

「おっとと……初めて使ったけど、風の系譜の魔法って結構難しいね」

 

 

多少ふらつきながらも、風の魔法を使って浮いているユーノの姿があった。

 

 

「「ユーノ(君)!?」」

 

 

「ユーノ君! こんな大事な時にどこ行っとったんや!?」

 

 

ユーノの登場になのはとフェイトは驚き、はやては何故先ほど突然いなくなったのかを問い掛けた。

 

 

「うーん……ちょっとある人を迎えに行っててね」

 

 

苦笑しながらそう答えると、ユーノは「それより…」と言って視線を白天王へと向けた。

 

 

「あの巨人の動きを止めるんでしょ?だったら僕に任せてよ。僕の専売特許だ」

 

 

そう言って三人より少し前に出るユーノ。確かに彼が使用する魔法…〝拘束(バインド)〟は今のこの状況にピッタリの魔法である。

 

 

「とは言え、流石にあんな巨体をいつまでも止めていられる自信はない。だから僕が奴を止めたら、すぐに渾身の魔法を叩き込むんだ」

 

 

「え? で…でも……そんなことしたら、街まで……」

 

 

そう…妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女候補である三人が全力で魔法を放てば、ファントムのギルドはもちろん、下手をすればマグノリアにまで影響を及ぼすかもしれないのだ。

 

 

「大丈夫。僕も魔法でフォローするから、遠慮なくやっちゃっていいよ。全力全開…思いっきりね」

 

 

ユーノの作戦を聞いて、三人は顔を見合わせると……

 

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

「了解や!」

 

 

首を縦に振り、肯定を示した。

 

 

「よし! それじゃあ行くよ!!!」

 

 

「「「うん!!」」」

 

 

ユーノの言葉を合図に、なのは、フェイト、はやてはすぐさま上空へと舞い上がった。そしてユーノが両手を前に翳すと、翡翠色の魔法陣が展開する。

 

 

「広がれ…戒めの鎖……!」

 

 

するとその魔法陣から何本もの魔力で生成された鎖が出現し、白天王の身体に巻きつき始める。

 

 

『──────ッ!?──────!!!』

 

 

それに気がついた白天王は鎖から逃れようとするが、それは敵わず、鎖が何重にも巻き付く。

 

 

「捕らえて固めろ! 封鎖の檻!!」

 

 

さらにその周りにも発生した鎖が白天王を取り囲み、完全に逃げ場を奪う。

 

 

 

「アレスター…チェーーン!!!!」

 

 

 

そう叫びながらユーノは手元の鎖を引っ張る。その瞬間、白天王の周りにあった鎖が一斉に巻き付き、まるで翡翠色の繭のようになる。

 

 

しかし……

 

 

『────────────!!!』

 

 

それでも白天王は何本かの鎖を引きちぎり、顔を出して雄叫びを上げる。

 

 

「ぐっ…くぅ……この……!!」

 

 

ユーノは顔をしかめながら鎖を引っ張り続ける。だがそれでも白天王を束縛しておくには力及ばず、次々と鎖が千切れていく。

 

 

「まだか……三人とも……!!」

 

 

ユーノは三人が飛んでいった上空を見上げる。

 

 

その時、上空に金と白…そして桜色の三つの巨大な魔法陣が展開する。

 

 

「お待たせユーノ君!」

 

 

「準備、完了だよ!」

 

 

「いつでも行けるでぇ!」

 

 

三人のその言葉を聞いて、ユーノは微笑を浮かべる。

 

 

「よしっ! 行っけぇぇぇええ!!!!」

 

 

ユーノは最後の力を振り絞り、白天王の動きを封じ込める。それを見たなのは、フェイト、はやてはそれぞれの魔法の杖(マジックロッド)を天に向かって掲げる。

 

 

「全力全開!! スターライトォォオ……」

 

 

「雷光一閃!! プラズマザンバァア……」

 

 

「響け終焉の笛!! ラグナロク……」

 

 

そして、三人一斉に白天王に向かって振り下ろす。

 

 

 

「「「ブレイカァァァァアア!!!!!」」」

 

 

 

その瞬間…桜・金・白の三色の白天王をも上回る巨大な砲撃が放たれた。

 

 

『──────────────────!!!!』

 

 

ドガァァァァァァァァァァァアアアン!!!!!

 

 

激しい轟音と共に、白天王は三色の砲撃に飲み込まれていった。

 

 

「っ…マズイ! 予想よりエーテルナノの密度が濃い!!」

 

 

それを見たユーノはすぐさま危険を察知し、鎖を消して別の魔法陣を展開した。

 

 

「結界魔法…出力全開!!」

 

 

すると、三人の砲撃で発生した爆発を押さえ込むように翡翠色の魔力がドーム状となって生成される。

 

 

「止まれぇぇえええ!!!」

 

 

ユーノは咆哮しながら必死に爆発を押さえ込む。すると、やがて爆発はゆっくりと収まっていった。

 

 

「ハァ…ハァ……あ、危なかった~」

 

 

ユーノが安堵の息を吐くと、ドームが消えていく。そして後に残ったのは、三人の砲撃をまともに喰らった白天王だけであった。

 

 

『───…──…─!!』

 

 

すると白天王は掠れた雄叫びを上げると、ゆっくりと後ろに倒れ始める。そして静かに…紫色の粒子となって消えて行った。

 

 

「はく…天……王……!」

 

 

「おっと」

 

 

それを見ていたルーテシアも、魔力が尽きてしまったのか、その場で気絶する。すると、彼女を乗せていた蟲が消えてしまい、ルーテシアは湖へ落ちそうになるが、なのはがギリギリのところで受け止める。

 

 

「ふぅ…ギリギリセーフ」

 

 

「大丈夫?」

 

 

「いやぁ~流石にしんどいなぁ~」

 

 

―そうですね…―

 

 

「うぅ…魔力を使いすぎた……」

 

 

そんななのはのもとに、疲れた様子の三人が駆け寄る。

 

 

「にゃはは……早くティアナ達のところへ行こう?流石に私もちょっとキツイや……」

 

 

そんな三人に、なのはが苦笑を浮かながらそう言うと、三人は頷き、ナツ達のもとへと向かって行ったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ドゴォォォォオオオン!!!

 

 

部屋に響き渡る激しい轟音…充満する煙幕。そして……

 

 

「ハァッ…ハァッ…ハァッ……!」

 

 

荒々しく肩で息をしている女性…シグナム。

 

 

「くっ…魔力を使い過ぎたか……限界だ……アギト」

 

 

―あぁ、アタシも限界だ。ユニゾン・アウト―

 

 

すると、シグナムの身体が光に包まれ、その光が消えると、融合が解除されたシグナムとアギトが立っていた。

 

 

「ぷはぁ~疲れたぁ~……」

 

 

そう言って息を吐き、床に座り込むアギト。

 

 

「やはり…融合(ユニゾン)は負担が酷いな……もう体から魔力を感じん」

 

 

そう…〝融合(ユニゾン)〟は強力な魔法だが、それにゆえに、使用後の後遺症も半端ではないのである。

 

 

「だが、これでジョゼの奴も……」

 

 

シグナムが安堵の息を吐いたその時……

 

 

 

「いやぁ…危ない危ない……」

 

 

 

「「っ!!?」」

 

 

突然煙幕の中から聞こえてきた声に、シグナムとアギトは信じられないモノを見るような目でそちらに視線を向ける。

 

 

「さすがは失われた魔法(ロスト・マジック)の一つ……〝融合(ユニゾン)〟……私も少々、本気を出してしまいました」

 

 

あんな強力な斬撃を喰らったにも関わらず、少しの傷を負っただけのジョゼが立っていた。

 

 

「ば…バカな……! あの攻撃が…効いていないだと!?」

 

 

「いえいえ、多少は効きましたよ。この私を傷つけた魔導士は何年ぶりでしょうかね? そんな強大な魔導士が……マカロフのギルドに他にもいたとあっては気に喰わんのですよ!!!」

 

 

「ぐあああああっ!!!」

 

 

ジョゼの魔法が直撃し、悲鳴を上げるシグナム。

 

 

「シグナム!! テメェ!!!」

 

 

「ガキは黙ってなさい!!!」

 

 

「うああああっ!!!」

 

 

続いてアギトもジョゼの魔法を喰らい、倒れる。

 

 

「なぜ私がマカロフを殺さなかったかおわかりですか?」

 

 

魔法を連発し、シグナムを追い詰めながらそう問い掛けるジョゼ。

 

 

「絶望。絶望を与えるためです。目が覚めた時、愛するギルドと愛する仲間が全滅していたらどうでしょう? くくく……悲しむでしょうねぇ。あの男には絶望と悲しみを与えてから殺す!!! ただでは殺さん!! 苦しんで苦しんで苦しませてから殺すのだぁ!!!」

 

 

「くっ……下劣な男め……」

 

 

ジョゼの言葉を聞いて、シグナムは顔を歪めながらそう返す。

 

 

幽鬼の支配者(ファントムロード)はずっと一番だった……この国で一番の魔力と一番の人材と一番の金があった……が、ここ数年で妖精の尻尾(フェアリーテイル)は急激に力をつけてきた。エルザやラクサス、ミストガンやクロノ、そしてギルダーツの名は我が町にまで届き、火竜(サラマンダー)の噂は国中に広がった。いつしか幽鬼の支配者(ファントムロード)妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこの国を代表する二つのギルドとなった。気にいらんのだよ。元々クソみてーに弱っちいギルドだったくせにい!!!」

 

 

「ならば……この戦いは貴様のくだらん妬みから始まったと言うのか!!?」

 

 

ジョゼに向かってレヴァンティンを振るいながら問い掛けるシグナム。だがジョゼはそれを軽々と避けながらその問いに答えた。

 

 

「妬み? 違うなぁ。我々はものの優劣をハッキリさせたいのだよ」

 

 

「そんな……そんなくだらん理由で!! 我らのギルドを…仲間達を傷つけたと言うのか!!!?」

 

 

シグナムが怒りの叫びを上げた瞬間、シグナムはジョゼの魔法に捕まってしまい、レヴァンティンを取り落としてしまった。

 

 

「うっ…しまった……!」

 

 

「前々から気にくわんギルドだったが、戦争の引き金は些細な事だった。ハートフィリア財閥のお嬢様を連れ戻してくれという依頼さ」

 

 

「う…く……それが…あのルーシィと言う娘か……」

 

 

「この国有数の資産家の娘が妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいるだと!!? 貴様等はどこまで大きくなれば気が済むんだ!!? ハートフィリアの金を貴様等が自由に使えたとしたら……間違いなく我々よりも強大な力を手に入れる!!! それだけは許しておけんのだぁ!!!」

 

 

「があああっ!!!」

 

 

ジョゼが魔力を込めると、シグナムを拘束している魔法が身体を縛り上げる。だがシグナムの表情は対照的に、なぜか笑みを浮かべていた。

 

 

「ふ…ふふ……貴様等の情報収集能力の…無さには……呆れを通り…越して……憐れ…だな……」

 

 

「何だと?」

 

 

「かく言う私も…彼女とは今日初めてあったの……だが……ミラ…ジェーンから主はやてに送られてくる…連絡で、彼女のことを…聞いたことがある……あの娘は…ルーシィは家出してきたのだ……家の金など…使えるものか……」

 

 

それを聞いたジョゼは目を見開く。

 

 

「家賃7万の家に住み……我々と同じように仕事をして……仲間と共に戦い…笑い…泣く……お嬢様ではない…一人の魔導士として……戦争の引き金? ハートフィリアの娘? 私には…ルーシィの気持ちがよく分かる……私も…私達も…家柄のせいで涙を流したクチだからな……花が咲く場所を選べんように、子だって親を選ぶことは出来ん……貴様などに涙を流すルーシィの気持ちがわかるのか!!!?」

 

 

「これから知っていくさ」

 

 

シグナムの叫びに対し、ジョゼはシレっと言ってのける。

 

 

「ただで父親に引き渡すと思うか?金がなくなるまで飼い続けてやる。ハートフィリアの財産全ては私の手に渡るのだ」

 

 

「貴様ぁぁぁあああああ!!!」

 

 

「力まん方がいい……余計に苦しむぞ」

 

 

「うああああああああああっ!!!!」

 

 

そう言ってジョゼが手をグッと握ると、強力な魔法がシグナムを襲い、彼女の断末魔が響き渡る。

 

 

その時……

 

 

ズバッ

 

 

「「!!!」」

 

 

突然魔法が消え、シグナムだけでなくジョゼも驚愕している。

 

 

「私の魔法が…!!? 誰だ!!?」

 

 

ジョゼは戸惑いながら視線を土煙の奥へと向ける。

 

 

「いくつもの血が流れた……子供の血じゃ。できの悪ぃ親のせいで子は痛み、涙を流した。互いにな…もう十分じゃ……」

 

 

土煙が晴れ、そこから現れたのは……

 

 

 

「終わらせねばならん!!!!!」

 

 

 

「マスター……マカロフ……!!」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドマスター…マカロフであった。

 

 

「天変地異を望むと言うのか」

 

 

「それが家族(ギルド)の為ならば」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃…東の森。そこにポツンとある一軒やの前では、一人の初老の女性……ポーリュシカが空を見上げながら立っていた。

 

 

「(木々が…大地が…大気が怯えている……)」

 

 

ポーリュシカは切なそうに顔を伏せたかと思うと……

 

 

「これだから人間ってのはっ!!! 争う事でしか物語を結べぬ愚かな生き物どもめ!!!」

 

 

突然そう喚きながら足元にあった資材を蹴り飛ばす。彼女は筋金入りの人間嫌いなのである。

 

 

「マカロフのバカタレ!!! そんなに死にたきゃ勝手に死ねばいいっ!!!」

 

 

箒を手に持ち、周りの資材に当り散らすポーリュシカ。すると、その資材の中の一つであるリンゴがコロコロと転がっていく。そしてその先には……二人の男性が座っていた。

 

 

「ミストガン…クロノ・ハラオウン」

 

 

「お久しぶりです、ポーリュシカさん」

 

 

「いただいても?」

 

 

二人の男性…クロノは礼儀正しく挨拶をし、ミストガンは足元に転がってきたリンゴを手に取り、食べてもいいか尋ねる。

 

 

「そうか……こんなに早くマカロフが回復するのはおかしいと思っていたんだ。マカロフの魔力をかき集めてきたのはアンタたちだね」

 

 

「えぇ、まぁ……仕事が早く切り上がったんで加勢しようかと思ったんですが、彼に今は表舞台に立つべきではないと言われたので、裏方に徹することにしたんです」

 

 

そう…実はクロノは今朝の時点で既にマグノリアへと帰還していた。しかし、そこで偶然鉢合わせたミストガンに参戦することを止められたので、仕方なく裏方へと回ったのだ。

 

 

「しゃり…もしゃもしゃ」

 

 

「勝手に食うんじゃないよっ!!」

 

 

「巨人は動いた。戦争は間もなく終結する」

 

 

リンゴを咀嚼しながらそう呟くミストガン。

 

 

「人間同士の争いを助長するような発言はしたくないけどね、アンタたちも一応マカロフの仲間だろ? とっとと出て行きな。そして勝手に争いでもしてくるんだね」

 

 

「いえ……ですから言ったでしょう?僕たちは今回、裏方に徹すると……そして僕達の仕事は、もう終わった」

 

 

クロノがそう言った瞬間、強い風が吹いた。すると、彼等の足元にあった何枚もの布が一気に上空へと舞い上がる。

 

 

「(ファントムの旗!? まさか…ファントムの支部を全て二人で潰しま回った!!?)」

 

 

「リンゴをもう一ついただきたい」

 

 

「こんなゴミを置いていく気じゃないだろうね!!!」

 

 

閑話休題

 

 

「本当……アンタたちには呆れるよ。強すぎる力は悲しみしか生まない……そしてその悲劇の渦の中にいることを、怒りが忘れさせてしまう」

 

 

顔を俯かせながらそう語るポーリュシカ。すると、ミストガンは天を仰ぎながら口を開いた。

 

 

「私はそれをも包み込む聖なる光を信じたい。全てを導く聖なる光を」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は戻ってファントムのギルド……そこでは二人のマスター…マカロフとジョゼが睨み合っていた。

 

 

「……なんだ……? この温かいような……懐かしいような魔力は……」

 

 

「う…ううん……」

 

 

「!!」

 

 

「っ…マス…ター……?」

 

 

すると、先ほどまで気絶していたグレイ、スバル、エルフマン、ミラ、そしてエルザが目を覚ます。

 

 

「全員この場を離れよ」

 

 

「マスター!!?」

 

 

「何でここに!!?」

 

 

「全員! マスターの言われたとおりにしろ!!」

 

 

「シグナムさん……」

 

 

シグナムはジョゼを睨みつけた後、倒れているアギトのもとへ駆け寄った。

 

 

「アギト! 立てるか?」

 

 

「お…おう……それより頼みがある……旦那を……」

 

 

「わかっている。彼も連れて行く」

 

 

「へ…へへ……」

 

 

シグナムの言葉を聞いて安心したのか、アギトはそのまま眠ってしまった。そんなアギトを背負いながらシグナムはグレイ達に駆け寄る。

 

 

「エルフマン! この男を運べ!」

 

 

「え? でもよぉ、こいつはファントムの……」

 

 

「いいから…頼む」

 

 

「お…おう」

 

 

シグナムの頼みに、エルフマンは釈然としないまま頷き、倒れているゼストを担いだ。

 

 

「行こう。立てるか?」

 

 

「で…でもよぉ」

 

 

「マスターを一人になんて……」

 

 

その場を離れようとするエルザに反論しようとするグレイとスバル。

 

 

「私達がいたのではマスターの邪魔になる。全てをマスターに任せよう」

 

 

エルザのこの言葉を聞き、二人は渋々ながらも納得し、エルザ達と共にこの場を離れていった。

 

 

そしてその場にはマカロフとジョゼ……両ギルドのマスターのみが取り残された。

 

 

「こうして直接会うのは6年ぶりですね。その間に妖精の尻尾(フェアリーテイル)がここまで大きなギルドになっていようとは。ふふ、もうすぐ潰れちゃいますけどね」

 

 

「ギルドは形などではない。人と人との和じゃ」

 

 

「しかし嬉しいですねぇ…聖十大魔道同士がこうして優劣をつけあえるなんて」

 

 

「全てのガキどもに感謝する。よくやった」

 

 

ジョゼの言葉を聞き流し、魔法陣を描きながら呟くマカロフ。

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)である事を誇れ!!!!!」

 

 

 

 

 

マカロフがそう叫んだその瞬間……強大な魔力が広がった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うおおっ」

 

 

「ちょっ、ナツ! しっかりしなさい!!」

 

 

「大丈夫ー!?」

 

 

突然ギルド全体に広がった強大な魔力にナツは吹き飛ばされそうになり、そんなナツをティアナが何とか支える。そんな二人にルーシィが声をかける。

 

 

「何だろ今の…」

 

 

「それにこの魔力……すごく大きい……」

 

 

「でも…何だかホッとするの……」

 

 

「ホンマ……不思議な感じやね、リィンフォース?」

 

 

「はい」

 

 

ギルド全体から感じられる魔力にハッピー、フェイト、なのは、はやて、リィンフォースが戸惑っていると、ナツとユーノがニヤッと笑みを浮かべる。

 

 

「こんな魔力の持ち主なんて……一人しかいないでしょ」

 

 

「あぁ…こんな魔力、じっちゃんしかいねえ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、マカロフとジョゼは激しい戦いの末、互いに傷だらけの姿で睨み合っていた。

 

 

「たいしたモンじゃ。その若さでその魔力、聖十の称号を持つだけのことはある。その魔力を正しい事に使い、さらに若い世代の儀表となっておれば、魔法界の発展へと繋がっていたであろう」

 

 

「説教……ですかな?」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)審判のしきたりにより…貴様に三つ数えるまでの猶予を与える」

 

 

次の瞬間、マカロフは巨人へと姿を変え、ジョゼを見下ろす。

 

 

「ひざまずけ」

 

 

「は?」

 

 

マカロフの言った言葉に、意味が分からないと言う表情をするジョゼ。

 

 

「一つ」

 

 

「ははっ。何を言い出すかと思えば、ひざまずけだぁ?」

 

 

「二つ」

 

 

「王国一のギルドがギルドが貴様に屈しろだと!!? 冗談じゃないっ!!! 私は貴様と互角に戦える!!! いや、非情になれる分私の方が強い!!!」

 

 

「三つ」

 

 

「ひざまずくのは貴様等の方だ!!! 消えろ!!! チリとなって歴史上から消滅しろ!! !フェアリィィティィル!!!!」

 

 

「そこまで」

 

 

三つ数え終わると同時に、マカロフは両手をパンッと叩き合せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精の法律(フェアリーロウ)…発動」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間……眩い輝きがファントムのギルド周辺を覆ったのだった。

 

 

 

 

つづく


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