LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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火竜VS鉄竜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二十七話

『火竜VS鉄竜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォオン!!

 

 

ファントムの一室に響くとてつもない轟音。その理由は、ナツとガジル…両者の拳が互いの顔面を捉えた音だった。その衝撃で二人は吹き飛ばされる。

 

 

「きゃあああっ!!」

 

「ひえええっ!!」

 

「あぶぁ!!」

 

 

そして衝撃の余波がティアナたちにも襲い掛かる。

 

 

「だらぁっ!!!」

 

 

「うぉらぁああ!!!」

 

 

それを皮切りに、二人の激しいどつき合いが始まる。互いにパンチやキック…時には肘などを使い、まさに一進一退の攻防であった。

 

 

「す…すごい……」

 

 

「何て……戦い……」

 

 

それを見ているルーシィとティアナは呆気に取られていた。それはファントムも同じだった。

 

 

「お…おい…あのガジルとどつき合いやってるぞ」

 

「し…信じらんねえ……」

 

 

その戦いを見ている者全員が呆然としていると、ガジルが鋼鉄の頭でナツに頭突きを喰らわした。

 

 

「ぎっ!!」

 

 

それを喰らったナツは額から血を流す。だがそれに怯むことなく、なんとガジルに頭突き返したのだ。頭突き返されたガジルはよろけて後ろに数歩下がった。

 

 

「ガジルが押されてんのかよ……!?」

 

「いや…火竜(サラマンダー)も相当息が上がってるぜ」

 

 

ファントムの言う通り、ナツとガジルは互いに肩で息をし、バテ始めているのは明白だった。すると、ガジルは突然床の鉄板をベリベリと剥がし……

 

 

「ガジガジガジ…」

 

 

そのまま食べ始めたのだ。

 

 

「や…やっぱり鉄を食べるんだ……」

 

 

「テメェずりぃぞ!!! 自分だけっ!!!」

 

 

「……マズイわね」

 

 

その光景にルーシィは驚き、ナツは憤慨し、ティアナは冷や汗を流しながらそう呟いた。その間にガジルは鉄板を食べ終える。そして……

 

 

「鉄竜槍・鬼薪!!!」

 

 

「ぐおあああっ!!!」

 

 

腕を槍状に変形させ、ナツに向かって連続で突きを繰り出した。

 

 

「何!? さっきまでアイツふらふらだったのに!!」

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は自分と同じ属性のものを食べることで、体力を回復させたり、パワーアップできるんだ!!」

 

 

「だったらナツも炎を……」

 

 

「無理よ……自分の炎や自分の発火させた炎を食べることは出来ないのよ!!」

 

 

三人がそんな会話をしている間にも、次第にナツはガジルに追い詰められていく。

 

 

「ティアナ!! クロスファイヤーシュートをナツに食べさせられない!!?」

 

 

「それも無理……クロスファイヤーシュートはただの魔法弾だから、火の属性は持ってないのよ」

 

 

「火!! 火!! 火の星霊なんていたかしら!!」

 

 

何とかしてナツに火を食べさそうとするルーシィは星霊の鍵を出す為にポケットを漁るが、最初に捕まった時に落としてしまったのを思い出した。

 

 

「手元にあるのは新しく手に入れたサジタリウスのみ…契約もまだだけど、これにかけるしか!!!」

 

 

そう言ってルーシィは立ち上がり、鍵を構える。

 

 

「我…星霊界との道を繋ぐ者。汝……その呼びかけに応え(ゲート)をくぐれ。開け! 人馬宮の扉!!! サジタリウス!!!」

 

 

ルーシィがそう唱えると、鍵が輝き始める。そして光が止むと同時に現れたのは……

 

 

「はい! もしもし」

 

 

弓矢を持ち、馬の着ぐるみを着た星霊であった。

 

 

「そうきたかっ!!」

 

 

「馬のかぶりもの!!」

 

 

「星霊って一体……?」

 

 

サジタリウスの姿に一同は驚いたが、すぐに本題に入った。

 

 

「細かい説明は後!! アンタ火出せる!!?」

 

 

「いえ…それがしは弓の名手であるからしてもしもし」

 

 

「くっ…ダメね」

 

 

唯一の希望が断たれ、三人は落ち込む。

 

 

「ルーシィ!!危ねえから下がってろ!!!」

 

 

「あい」

 

 

ナツに叱られ、ルーシィは己の無力さに涙を流しながらサジタリウスを連れて下がった。

 

 

「どらぁっ!!!」

 

 

ナツは渾身の体当たりをガジルの腹部に喰らわせるが……

 

 

「で?」

 

 

「!!」

 

 

まったく効いていなかった。そしてガジルはナツの足首を掴む。

 

 

「ハラが減ってちゃ力が出ねえか? だったら鉄を食いな!!!」

 

 

そのまま振り回し、ナツを壁にガリガリと想いっきりこすり付ける。

 

 

「もうテメェには用はねえ。消えろクズがっ!!!」

 

 

そしてトドメと言わんばかりに、ナツを思いっきり床に叩き付けた。そしてナツは床に倒れ、動かなくなった。

 

 

「よっしゃ!!」

 

「さすがガジルだぜ!!!」

 

 

それを見たファントムは歓声を上げ…

 

 

「そ…そんな……」

 

 

「…………!!!」

 

 

ルーシィは目に涙を溜め、ハッピーは両手で目を押さえ、ティアナは拳を強く握っていた。

 

 

「あん? 何だ…まだ潰れてねえのかよ?」

 

 

そう言いながら、ガジルは戦いで空いた壁の大穴に視線を向けた。その先には、ボロボロだが、しっかりと立っている妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドがあった。

 

 

「まぁいい……火竜(サラマンダー)にトドメを刺して、オレが直々に潰しに行くか」

 

 

そう言うとガジルは腕を剣に変形させてゆっくりと倒れているナツに歩み寄る。

 

 

その時……

 

 

 

ズガァァン!!

 

 

 

「ぐおっ!!?」

 

 

ガジルの顔面に魔力弾が直撃した。

 

 

「……テメェ」

 

 

ガジルは魔力弾を撃った張本人……ティアナを睨みつけた。

 

 

「やらせない……ナツもギルドも…私が守ってみせる!!!」

 

 

そう叫ぶと、ティアナはガジルに向かって駆け出した。

 

 

「調子に乗んじゃねえぞ小娘がっ!! 鉄竜棍!!!」

 

 

ガジルはそんなティアナに向かって鉄棒を振るう。

 

 

「ふっ…ハァァアア!!!」

 

 

だがティアナはそれを避けると、そのまま鉄棒の上に乗り、それを伝ってガジルに向かっていく。

 

 

「なにっ!!?」

 

 

予想外の行動にガジルは目を見開く。その間に、ティアナはガジルの目の前まで距離を詰めていた。

 

 

「クロスミラージュ…ダガーモード」

 

 

ティアナがそう呟くと、片方のクロスミラージュから魔力で造られた剣が出現する。

 

 

「てぇぇぇえい!!!」

 

 

「ぬおっ!?」

 

 

ダガーモードとなったクロスミラージュを振るい、ガジルを斬りつけるティアナ。しかし、鋼鉄の鱗を纏っているガジル相手ではダメージは殆ど無い。

 

 

「無駄だ!! テメェごときがオレの鋼鉄のうろ──ごぎっ!!?」

 

 

喋っているガジルの顎に通常モードであるもう片方のクロスミラージュの銃口を当て、強制的に黙らせるティアナ。そして……

 

 

「ぶっ飛べ!!」

 

 

ズガァァアン!!!

 

 

「ぐおぉっ!!」

 

 

そのまま思いっきり魔力弾をぶっ放し、ガジルを空中に打ち上げる。

 

 

「まだまだ!!」

 

 

そう言ってティアナは片方のクロスミラージュをダガーモードから通常モードにすると、両方のクロスミラージュの銃口を空中のガジルへと向ける。

 

 

「ハァァアア……!!」

 

 

すると、クロスミラージュの銃口にオレンジ色の魔力が集まる。そしてその魔力を一つとなり、強大なモノとなる。

 

 

「ファントム……」

 

 

そしてティアナはガジルに向かってその魔力を……

 

 

 

「ブレイザァァアアア!!!!」

 

 

 

巨大な砲撃にして放ったのであった。

 

 

「う…うおぉぉぉぉおお!!!」

 

 

ドゴォォォォオン!!!!

 

 

空中に居たガジルは避けることが出来ずに直撃し、土煙を巻き上げながら床に墜落した。

 

 

「やった!?」

 

 

「ティアナすごい!!」

 

 

それを見たハッピーとルーシィは歓声を上げる。

 

 

「ハァ…ハァ……」

 

 

すると、ティアナは緊張が解けたのかペタンっと地面に座り込む。

 

 

だが……

 

 

 

「調子に乗んなつったよな小娘……!!」

 

 

 

「っ……きゃああっ!!!」

 

 

突如、土煙の中からガジルが飛び出し、ティアナを殴り飛ばした。

 

 

「最後の砲撃は中々効いたぜ……だが、それだけだ」

 

 

「くっ……!!」

 

 

殴り飛ばされたティアナはすぐに体勢を立て直し、反撃を始める。

 

 

幻影魔法(ミラージュマジック)……〝フェイク・シルエット〟!!!」

 

 

幻影魔法を使い、ティアナは何十人もの自分の幻影を作り出し、ガジルを囲む。しかし、ガジルは冷静に自分を囲むティアナをグルリと見渡すと……

 

 

「しゃらくせぇんだよっ!!!」

 

 

他のティアナを一切無視して、一直線に集団の奥へと駆け出す。

 

 

「えっ!?」

 

 

「オラァ!!」

 

 

ドガァァア!!!

 

 

そのまま奥にいた本物のティアナに拳を振り下ろし、床が割れるほどの勢いで叩き伏せた。それと同時にティアナの幻影が消える。

 

 

「が…あぁ……」

 

 

それを喰らったティアナはダメージのあまり動くことが出来ない。すると、ガジルはそんなティアナのツインテールの片方を掴むと、グイッと乱暴に持ち上げる。

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の鼻にかかりゃ、幻影なんざ無意味なんだよ」

 

 

そう…ガジルは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)特有の嗅覚の良さを利用して、幻影の中から本物を見つけることが出来たのである。

 

 

「くっ……」

 

 

それを聞いたティアナは悔しそうに歯を食い縛り、ガジルを睨みつける。

 

 

「そういやぁ聞いた話じゃあ、テメェはよく火竜(サラマンダー)と一緒に居るようだが…奴の女か?」

 

 

そう言ってガジルは意地の悪い笑みを浮かべながらそう問いかける。その問いに対してティアナは……

 

 

「……はっ…バカ言ってんじゃないわよ……鉄クズ野郎……」

 

 

挑発的な笑みを浮かべながらそう言ったのだった。

 

 

「……まぁいい。どっちにしろ、二人纏めてぶっ潰すだけだからなぁ。まずはテメェだ」

 

 

ガジルはそう言いながらゆっくりと拳を振りかぶる。

 

 

「潰れろ……クズ女」

 

 

「っ……!!」

 

 

ティアナは覚悟して目を閉じる。

 

 

「ダメェーー!!」

 

 

「ティアナーー!!!」

 

 

ルーシィとハッピーの叫びも虚しく……無情にもガジルの拳がティアナに振り下ろされる……

 

 

 

 

ガシッ!!

 

 

 

 

ことはなかった。突然、何者かがガジルの手首を掴み、それを止めたのだ。

 

 

「なっ!? て…テメェ……!?」

 

 

ガジルはその人物を見て目を見開いた。何故ならその人物とは……

 

 

「ハァー…ハァー…ハァー……!!!」

 

 

傷だらけになり、苦しそうに息を乱しているナツであった。

 

 

「……を………せ…」

 

 

「あ?」

 

 

「…アを……は…せ……」

 

 

「聞こえねえよ!」

 

 

「ティアを……放せぇ!!!!」

 

 

メキッ!

 

 

「ぐおああっ!!」

 

 

ナツがそう叫んだ瞬間、ナツが掴んでいたガジルの手首から軋む音が響き、その痛みでガジルはティアナを放した。

 

 

「(コイツ…どこにそんな力が!?)」

 

 

ガジルが驚愕している間に、ナツは自分の腕の中にティアナを引き寄せる。

 

 

「……起きるのが…遅い……のよ」

 

 

「ハァ…ハァ……悪ぃ…」

 

 

傷ついたティアナを見て、そう謝罪するナツ。

 

 

「ハッピー!! ティアを頼む!!」

 

 

「あい!」

 

 

ナツの頼みを聞いたハッピーはすぐさまティアナを連れて下がる。それを確認したナツはヨロヨロと歩きながらガジルへと向かう。

 

 

「テメェも…しつけえ野郎だなっ!!」

 

 

「ぐはぁ!!」

 

 

そんなナツをガジルは殴り飛ばし、壁に叩きつける。

 

 

「ぐほっ…がはっ……ゲホッゲホッ」

 

 

血反吐を吐きながらそれでも立ち上がるナツ。

 

 

「いい加減沈めよ火竜(サラマンダー)!!」

 

 

「うああっ!!」

 

 

それでもガジルは容赦せず、何度もナツを蹴りつける。

 

 

「オレは手加減って言葉知らねぇからよぉ。本当に殺しちゃうよ。ギヒヒ」

 

 

そう言って邪悪な笑みを浮かべながらナツに攻撃を加えるガジル。

 

 

「ジュピターの破壊、エレメント4との激闘……魔力を使いすぎたんだ!!!」

 

 

「そうよ……炎さえ食べれば、ナツは負けたりなんかしない!!!」

 

 

それを見ていたハッピーとティアナが叫ぶ。

 

 

「……なるほど」

 

 

すると、その叫びを聞いていた星霊…サジタリウスが動き出した。

 

 

「少々誤解があったようでございますからしてもしもし。ルーシィ嬢は『アンタ火出せる?』と申されましたので、それがしは『いいえ』と答えました」

 

 

そう言いながら弓矢を構え、狙いを定めるサジタリウス。

 

 

「しかし…今重要なのは火を出すことではなく、『火』そのものと言う訳ですな。もしもし」

 

 

サジタリウスがそう言っている間にも、ガジルがナツにトドメを刺そうとしていた。

 

 

「トドメだ火竜(サラマンダー)!!!」

 

 

「やめろーーー!!!」

 

 

「ナツーーー!!!」

 

 

ハッピーとティアナの悲痛な叫びが木霊する。その時…サジタリウスの放った矢が二人の間を通過する。

 

 

ガッ!! ボオゥ!!

 

 

そして、その先にあった機械に矢が命中すると、そこから火が燃え上がった。

 

 

「火!!」

 

 

「機材を爆破させて炎を!!?」

 

 

「おっしゃーー!!」

 

 

それを見たナツはその炎をガブガブと食べ始める。その間に、サジタリウスは二本、三本と矢を放ち、さらに機材を炎を出現させる。

 

 

「うおおおおっ!!!」

 

 

当然それも残さず食べるナツ。

 

 

「何なんだ!? あの馬みてーのは!!?」

 

 

「射抜き方一つで貫通させる事も、粉砕させる事も、機材を発火させる事も可能ですからしてもしもし」

 

 

「すごい!! 弓の天才なのねサジタリウス!!!」

 

 

ルーシィが喜んでいる間に、全ての炎を完食したナツ。

 

 

「ごちそー様。ありがとなルーシィ」

 

 

「ルーシィ…ナイスよ」

 

 

ナツとティアナの賞賛の言葉を聞いて、ルーシィは嬉しそうに「うん」と頷いた。

 

 

「火を食ったくれーでいい気になるなよ!! これで対等だと言うことを忘れんなぁ!!!」

 

 

そう言ってナツに襲い掛かるガジル。そんなガジルを…ナツはギロリと睨み……

 

 

「ぐぁあっ!!!」

 

 

炎を纏った拳でアッパーをお見舞いした。

 

 

「これでパワー全開だーー!!!」

 

 

「行けーーー!! ナツーーー!!!」

 

 

ティアナとハッピーは力の限りナツに声援を送った。

 

 

「レヴィ…ジェット…ドロイ…じっちゃん…ルーシィ…ティア…そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)……」

 

 

「んぎぃ!! 鉄竜の咆哮!!!!」

 

 

負けじとナツに向かってブレスを放つガジル。だが…ナツが両手を翳すと、そのブレスはガジルへと逆流した。

 

 

「は…はね返し……」

 

 

「どれだけのものを傷つければ気が済むんだお前らは!!!!」

 

 

ナツの怒りの叫びが響き渡る。

 

 

「バカな…!! このオレがこんな奴に……こんなクズなんかに!!!!」

 

 

「今までのカリを全部返してやる!!!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に手を出したのが間違いだったな!!!!」

 

 

「オレは…最強の……」

 

 

そしてナツは、全魔力を右手に集中させ、渾身の技を放った。

 

 

 

「紅蓮火竜拳!!!!」

 

 

 

「ああああああ!!!!」

 

 

炎の連続パンチを放ち、それを喰らったガジルは倒れ…それだけではなく、ファントムのギルド全体が崩壊した。

 

 

「これで…おあいこな」

 

 

そう呟くと同時に、ナツは倒れた。

 

 

「ひっ!」

 

 

すると、ファントムのギルドが崩壊したせいでルーシィの足場が崩れるが、間一髪でハッピーが助け出す。

 

 

「ナツ!!!」

 

 

足場が悪い中、ティアナは何とかナツのもとへ駆けつけ、ナツの上半身を起こさせる。

 

 

「へへ…さすがにもう、動けねえや」

 

 

ナツは笑みを浮かべながらそう言うと、釣られてティアナも笑みを浮かべる。

 

 

「本当に…いつもいつもやり過ぎよ……」

 

 

そう言うと、ティアナはナツの頭をギュッと抱き締める。

 

 

 

「お疲れ様」

 

 

「………おう」

 

 

 

こうして…火竜(ナツ)VS鉄竜(ガジル)の勝負は、ナツに軍配が上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガジル?」

 

 

「「「「っ!!?」」」」

 

 

突然聞こえてきた声に全員がそちらに視線を向ける。そこには、目を見開きながらガジルを見ているルーテシアの姿があった。

 

 

「アイツは…?」

 

 

「ファントムの魔導士よ」

 

 

四人の中で唯一ルーテシアと面識のあるティアナが答える。だが、ルーテシアはそんな四人に目も暮れず、ゆっくりと倒れているガジルに歩み寄る。

 

 

「ガジル……ガジル……!!」

 

 

「……………」

 

 

ルーテシアは必死にガジルの体を揺さぶるが、ガジルは気絶しているため、応答はない。

 

 

「………さない」

 

 

すると、ルーテシアはゆっくりと立ち上がり、ナツ達を睨みつける。

 

 

「許さない……ガジルを傷つけた妖精の尻尾(フェアリーテイル)……絶対に…許さないっ!!!!」

 

 

その瞬間、ルーテシアから強大な魔力が噴出す。

 

 

「うおっ!?」

 

 

「きゃっ!!」

 

 

「あぎゅっ!?」

 

 

「くっ…なんて魔力……!!」

 

 

吹き荒れる魔力の嵐に、ナツ達は吹き飛ばされ、壁にぶつかる。

 

 

「アアァァアアア!!!」

 

 

そしてルーテシアが雄叫びを上げると、空中に巨大な紫の魔法陣が展開される。

 

 

 

 

 

 

「究極召喚……〝白天王〟!!!」

 

 

 

 

 

 

 

つづく


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