ファントムのギルド内の通路……そこでは、スバルとルーテシア&ガリューが互いの姿を見据えており、まさに一触即発の雰囲気が漂っていた。そんな中…最初に動き出したのは……
「でりゃぁぁああ!!!」
スバルであった。スバルはマッハキャリバーの機動力を活かしながら、リボルバーナックルを構えてルーテシアとガリューに接近する。
「……ガリュー…行って」
ルーテシアの小さく短い指示にガリューはコクリと頷き、スバルに向かって突撃した。
「ウィング…ロード!!」
そしてスバルとガリューが衝突するかと思われたその時、スバルがウィングロードを展開し、それを伝ってガリューの後ろに回った。
「もらったぁ!!」
そのまま渾身の力で拳を振るうスバル。ガリューは咄嗟に振り返るが、完全に不意を突かれているので防御出来ずに攻撃を喰らい、吹き飛ばされる。
「よしっ!!」
それを見たスバルはガッツポーズを取るが、ガリューはすぐに体勢を立て直してスバルに向かって駆け出し、拳を振るった。
「いっ!!?」
スバルは咄嗟に腕をクロスさせて防ごうとするが、ガリューの拳の威力はハンパではなく、今度はスバルが後ろに飛ばされてしまった。
「っ……でりゃぁぁあああ!!」
何とか持ち堪えたスバルはすぐにガリューに向かって突撃した。ガリューもそれに対抗するかのようにスバルに向かう。
ドガァァァァアン!!!
スバルとガリューの拳が激突し、凄まじい衝撃が辺りに響く。それを皮切りにスバルとガリューの激しい応戦が始まった。
単純なパンチやキックだけではなく、フック・ローキック・アッパー・ハイキック・足払い……時には頭突きなどを繰り出していた。
そんな激しい戦いの中、スバルはチラリとルーテシアの方を見る。だがルーテシアは特に何かする素振りも見せずにそこに佇みながら戦いを傍観している。
「(あの子…さっきからずっと眺めてるだけだけど、戦わないのかな? ルーシィと同じ召喚獣と一緒に戦うんだど思ってたんだけど……)」
そう思っていると、スバルはガリューの拳が目の前に迫ってきているのに気がついた。
「しまっ──がっ!!!」
余所見をしていたことが仇となり、ガリューに殴り飛ばされるスバル。すぐに反撃に出ようとするが、ガリューは既にスバルの目の前に迫っており、追い討ちをかけようとしていた。
「くぅっ……!!」
スバルは歯を食い縛りながらガリューが放った拳を紙一重で回避する。その際に頭に巻いていたハチマキが千切れ、頭から血が流れるが、スバルは気にせずにそのままガリューの懐に潜り込み、リボルバーナックルに魔力を込める。
「スクリュゥゥウ……!!」
すると、リボルバーナックルのリボルバーの部分が高速回転を始める。
「ナックル!!!」
そしてその渾身の拳をガリューの腹部に叩き込んだ。それを喰らった螺旋回転をしながら吹き飛び、壁に叩き付けられてそのまま動かなくなった。
「ハァ…ハァ……あとは…君だけだね……」
「………………」
ガリューを倒したスバルは息を乱しながらルーテシアに視線を向けるが、ルーテシアは相変わらず無表情で佇んでいた。
「私たちは絶対に…ルーシィをファントム何かに渡さない!!!」
「…………私は」
すると、スバルの言葉を聞いたルーテシアは突然ゆっくりと口を開いた。
「私はファントムの作戦なんて……どうでもいい」
「え?」
ルーテシアが放った意外な一言にスバルは目を丸くする。
「
「ど…どういうこと? じゃあ何で君は……!?」
驚愕の表情のままルーテシアに問い掛けるスバル。
「私は……ガジルの側に居られれば…それでいい」
ルーテシアの言葉にスバルは大きく目を見開いた。
「ガジルって……
「っ……」
スバルの言葉にルーテシアの眉が僅かに動いたが、スバルはそれに気付かずに言葉を続けた。
「それだけじゃない!! レビィとジェットとドロイ……私たちの仲間を傷つけた奴なんだ!!! どうしてそんな奴に───」
スバルはその先の言葉を言う事が出来なかった。何故なら……
「違うっ!!!!!」
先ほどまでの無表情が一変し、怒りの表情を浮かべたルーテシアの大声がそれを掻き消したからである。
「ガジルは悪い人なんかじゃないっ!!! ガジルは私を……研究所に捕まっていた私と母さんを救い出してくれた!!! 私たちを縛っていたモノを全部壊してくれたっ!!! 何も知らないクセに……ガジルを悪く言うなぁぁぁあ!!!!」
ルーテシアが悲痛な叫びを上げたその時…スバルの背後から轟音が響く。
「なっ!?」
見るとそこには、先ほど倒したはずのガリューが復活して立ち上がっていた。しかも……
「魔力が…上がってる!?」
そう…ガリューから感じられる魔力が先ほどよりも上昇していたのだ。
「倒してガリュー……ガジルを侮辱したそいつを……倒してぇええ!!!」
ルーテシアがそう叫んだ瞬間、ガリューの姿がブレた。
「え───がはっ!!!」
気がつくと、スバルはいつの間にかガリューに殴り飛ばされていた。しかもそのまま胸倉を掴まれ、膝蹴りを思いっきり腹部に叩き込まれた。
「うっ……ごほっ!!!」
嘔吐物を吐き出しそうになるが、それを何とか堪えて咳き込むスバル。しかし、ガリューの攻撃はまだ終わらない。
「がぁぁあ!!!」
顎にアッパーを叩き込まれ、その威力で空中に投げ出されるスバル。そんなスバルを追うようにガリューも飛び上がり、両手をハンマーの様にして思いっきりスバルに振り下ろし、地面に叩きつけた。
「────────!!!!」
スバルもう声にならないほどの叫びを上げる。
「う…あ……」
スバルは何とか起き上がろうとするが、体がまったく言う事を聞かず、仰向けからうつ伏せの姿勢に変わっただけだった。
そんなスバルの側にガリューは着地し、まだ攻撃を続けようと拳を構える。
そして倒れているスバルの頭部に向かって拳が振り下ろされる……
「やめろガリュー!!!!!」
ことはなかった。
誰かの制止の声が響き、それを聞いたガリューの拳はスバルの頭部スレスレで止まった。
「………アギト」
ルーテシアはガリューを止めた少女…アギトに視線を向けた。
「ったく……やり過ぎだぞルールー。そいつ、もう気絶してんじゃねーか」
アギトはボロボロの姿で倒れて気絶しているスバルを見て言った。
「でも…あいつはガジルを……」
「だからってやり過ぎだ。これ以上やったら死んじまう。評議員に捕まったら、もうガジルと一緒に居られなくなるぞ?」
「……それはイヤ」
「だろ?それに、さっきガリューをパワーアップさせるのにかなりの魔力を使っただろ?これ以上魔力を使ったら、ルールーが持たねえよ」
「うん……わかった」
アギトの説得にルーテシアは渋々引き下がった。
「さて、ルールーはこれからどうする?」
「ガジルの所へ行く」
「だろうな……でも今はガジルは居ないぜ」
「どうして?」
「あの女…えっと…ルーシィだっけ?旦那と一緒にあいつを捕まえに行ったよ」
「……連れてって欲しかった」
「まーまー、そうむくれんなよルールー」
ムスッとした顔をするルーテシアをなだめるアギト。
「ガジルが帰ってくるまで、アタシと一緒におとなしく待ってようぜ?」
「わかった」
アギトの提案を聞き入れたルーテシアは、ガリューを連れてその場から去って行ったのだった。
キズつき倒れたスバルを一人残して……
第二十四話
『意外な助っ人』
それからしばらくして……
「姉ちゃん!! あそこに倒れてるのは!!」
「スバル!!?」
近くを通りかかったエルフマンとミラが倒れているスバルに駆け寄ってきた。
「スバル! しっかりして!!」
「スバルゥ!! 漢ならしっかりせんかぁあ!!!」
「ゲホッ……私…女です……」
エルフマンの呼びかけに絶え絶えの声でツッコミを入れるスバル。
「おおっ!! 気がついたか!!」
「スバル! 大丈夫!!?」
「はい……何とか……」
そう言ってスバルはフラフラと立ち上がるが、すぐにガクンッと膝が崩れてしまった。
「おっと! 無理すんじゃねえ」
それをギリギリでエルフマンが受け止める。
「スバル、誰にやられたの? エレメント4?」
「違います……私が戦ったのは召喚魔法を使う女の子でした……最初は押してたんですけど……急に召喚獣が強くなって……それで…」
「そう……おそらく魔力供給を上げたのね。召喚魔導士は召喚獣を出している間は、ずっと魔力を与え続けないといけないの。けどその与える魔力が大きければ大きいほど、召喚獣の力は増幅されるのよ」
スバルの言葉を聞いて、ミラが説明する。
「そうだ…早く……この巨人の動力源を…探さないと……」
「お、おい!! 無理すんなって!!!」
ファントムMk2を止める為にフラフラと歩き出そうとするスバルをエルフマンが止める。
「大丈夫! 動力源はもうわかってるわ!」
「え?」
「この巨人の動力源はエレメント4…つまり、あと二人のエレメント4を倒せばこの巨人も魔法も止められる」
「じゃあ、早くエレメント4を………あれ?」
探そうっと言いかけたスバルだが、窓の外を見た途端、言葉を止めた。
「どうしたの?」
「あそこ……あそこだけ雨が降ってます」
「何言ってんだ? 今日のマグノリアは一日中ピーカン……ってホントに降ってやがる!!?」
スバルが指差す先には、何故かピンポイントで雨が降っている場所があった。それを見たエルフマンは驚愕する。
「もしかしたら、あそこにエレメント4が……行ってみましょう!」
「「おう!(はい!)」」
ミラの言葉に二人は頷き、急いで雨が降っている場所へと向かって行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、エレメント4の一人…ジュビアと戦っているグレイは……
「ジュビアは許さない!!! なのはを決して許さない!!!」
「あちっ!! 熱湯!!?」
体の水を熱湯へと変化させてグレイに襲い掛かるジュビア。
「シエラァ!!!」
「チッ! アイスメイ……!!」
グレイは反撃しようとするが、氷を造り出すよりも早く、ジュビアの熱湯が襲い掛かった。
「速ぇ!! オレの造形魔法がおいつかねえだと!!? ぬおっ!!」
再び襲い掛かってきた熱湯をギリギリで避けるグレイ。
「時間をかせがねえと」
そう言ってグレイは最初に入って来た窓を破ってギルド内へと突入する。それを追ってジュビアの熱湯も迫る。
「アイスメイク…〝
今度は魔法が間に合い、氷の盾で熱湯を防ぐ。しかし…高温の熱湯で氷の盾が段々と溶け始める。
「ゲ…マジかよ……」
「ジュビアのジェラシーは煮えたぎっているの!!!!」
「何じゃそりゃ!!! ぐぉああぁっ!!!」
ジュビアの発言にツッコミを入れている間に、グレイは熱湯を喰らってしまう。
「熱…皮膚が焼けて……」
熱湯のあまりの高温にグレイは身体中に火傷を負う。そしてそのまま熱湯に流され、再び屋外へと飛び出す。
「んのヤロォ!!! 一ヵ所でもいいから凍らせちまえば……」
そう言ってグレイは自ら熱湯に片手を突っ込む。
「凍りつけぇ!!!」
グレイがそう叫ぶと同時に、段々と熱湯が凍らされ始める。
「そ…そんな……ジュビアの熱湯が凍りつくなんて……」
「へっ」
氷の中で驚愕するジュビアに得意げな表情を見せるグレイ。だが……
「しかも…」
もぎゅ
「あ"あ"あ"ーーーっ!!!!」
なんとグレイは氷の中のジュビアの胸を鷲掴みにしていた。
「違……!!! これは……!!」
「(ジュビア恥ずかしい…いっそこのまま……貴方の氷の中で…)」
必死に弁明するグレイと頬を赤らめるジュビア。
「スマン!!!」
すると、グレイは氷を消してジュビアを解放する。
「(氷から解放した!? なぜ!!? 優しすぎる!!!)」
氷から解放してくれたグレイに涙を浮かべるジュビア。
「し…仕切りなおしだ!!!」
「ダメよ…」
戦おうをするグレイに立ち上がりながらそう言い放つジュビア。
「ジュビアには貴方をキズつける事は出来ない」
「は? キズつけられねえ……て、勝ち目はねえって認めちまうのか?」
「ジュビアはなのはより強い。ジュビアなら貴方を守ってあげれる」
「守る? 何でオレを?」
「そ…それは……あの…」
すると再び、グレイが口を開く。
「つーかよぉ…お前今、なのはより強ぇって言ってたが……アイツを甘くみんじゃねえよ」
「え?」
「オレはなのはとはガキの頃から……ギルドに入る前からの付き合いだが、オレはアイツほど強い女を知らねえ。アイツほど不屈の心を持った女を知らねえ。アイツほど……努力する女を知らねえ……」
そう語るグレイの表情はどこか悲しげだった。
「アイツは誰よりも強い!! エルザよりも…フェイトよりも…ヴォルケンリッターの連中よりも…このオレよりもな!! オレは…アイツこそギルド最強の女だという事を信じてる……だから、アイツより強いって言うなら……オレを倒してみろ!!!」
グレイはジュビアに向かってそう叫ぶが、ジュビアは顔を俯かせた。
「それは…出来ない…だってジュビアは…あ…貴方のことが……す…す……」
グレイの言葉に言いよどむジュビア。
「てか雨強くなってねえか?」
「ジュビアじれったい!!!」
しかしグレイに話を逸らされ、ヤキモキした気持ちになる。
「まったく…うっとうしい雨だなぁ」
だがその言葉で……ジュビアの表情が変わる。
「(この人も…今までの人と同じ……)」
「同じなのねーーーっ!!!」
「うお!!? 何だっ!!?」
叫びながら再び体から湯気を噴出すジュビアを見て驚愕するグレイ。
「来るなら来やがれ!!!」
「(ジュビア…もう恋なんていらないっ!!!)」
「ぐぼぼぉっ!!」
熱湯に飲み込まれるグレイ。
「また凍らせて……」
もう一度熱湯を凍らせようと手を翳すが、氷は出なかった。
「さっきよりも高温なのか!!?」
「(いらないっ!!!)」
「うわぁあっ!!!」
「(ジュビアは雨女……ジュビアはエレメント4!!! ファントムの魔導士!!!!)」
そのまま熱湯の中を流されるグレイ。
「ぐあっ」
そして何とか熱湯の中を抜け出す。しかし、熱湯となったジュビアが再び襲い掛かる。
「シエラーー!!!」
「負けられねえんだよ!!! ファントムなんかによぉ!!!!」
そう叫びながら熱湯を氷で防ぐグレイ。
「ぬあああああっ!!!!」
そしてグレイが雄叫びを上げると、段々と熱湯が凍っていき、ついには降っている雨までも凍らせた。
「雨までも凍りに……なんて魔力!!?」
それを見て驚愕するジュビア。そして……
「
「ああああああっ!!!!」
熱湯ごと凍らされ、悲鳴を上げるジュビア。そして氷が割れると、ジュビアはその場に倒れた。
「ジュビアは…負けた!?」
「どーよ? 熱は冷めたかい?」
「……あれ…?雨が…やんでる…」
ジュビアは仰向けに倒れ、空を見上げながらそう呟いた。彼女の視線の先には、綺麗な青空が広がっていた。
「お! やっと晴れたか」
「(これが…青空……きれい……)」
初めて見る青空の美しさに、ジュビアは涙を浮かべる。
「で……まだやんのかい?」
グレイがジュビアにそう問い掛けると……
キャピン! キュー…
青空に照らされたグレイを見て、ジュビアは目をハートにして気絶したのであった。
「グレーイ!!」
「グレイさん!!」
「エルフマンにスバル!?あれ?何でミラちゃんまで……」
すると、グレイのもとにエルフマン、スバル、ミラが駆け寄ってきた。
「こいつは三人目のエレメント4か!?」
「何か……幸せそうに倒れてるね……」
何故か満ち足りた表情で倒れているジュビアに首を傾げるスバル。
「あと一人…あと一人倒せば
「!?」
「この魔法や巨人はエレメント4が動力源だったんだ」
「まだ間に合う!! いけるわっ!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃……最後のエレメント4であるアリアと戦っているナツとティアナは……
「ハァ…ハァ…ハァー……」
「くっ……うぅ……」
キズだらけの姿でアリアと対峙していた。対するアリアの体にはキズ一つない。
「よくぞそこまで立っていられる。たいしたものだ」
「くそっ!!」
「余裕ぶってんじゃ……ないわよっ!!!」
手に炎を纏って突撃するナツと、クロスミラージュを構えて魔力弾を放つティアナ。
「しかし我が〝空域〟の魔法の前では手も足もでまい」
「ぐっ!」
「きゃあっ!」
そう言ってアリアが手を翳すと、ティアナの魔力弾は打ち消され、そのまま見えない魔法攻撃を受けて倒れるナツとティアナ。
「む」
しかし、アリアの攻撃を受けても尚、ナツとティアナは立ち上がる。
「まだ立つか…
「倒れるわけ……ないでしょ……私たちは負けられないっ!!!」
「オレ達は
アリアに向かってそう叫ぶナツとティアナ。しかしそんな二人にアリアは手を翳し……
「空域…〝絶〟」
「ぐあああああっ!!!」
「きゃああああっ!!!」
容赦ない空域の攻撃で再び吹き飛ぶナツとティアナ。
「上には上がいるのです。若き竜と狙撃手よ」
「火竜の咆哮!!!」
「クロスファイヤーシュート!!!」
負けじとアリアに向かって炎のブレスと数十発の魔力弾を放つ二人。しかし、アリアはまるで煙のように消え、二人の攻撃を避けた。
「ど…どこだ!!!」
「姿を現しなさい!!!」
消えたアリアを探すナツとティアナ。すると、アリアの声が響く。
「終わりだ
その瞬間、二人の背後にアリアが現れ、手から放たれる光で二人を包む。
「空域〝滅〟!! その魔力は空になる!!」
「しまっ……」
「やば……」
光に包まれると同時に二人の身体から魔力が抜けていくのを感じる。
「ナツーー!! ティアナーーー!!!」
ハッピーが悲痛な叫びを響かせ、もうダメだと思ったその時……
ドン!!
「!!!」
突如、何者かがアリアの顔面に飛び蹴りをいれて魔法を中断させた。
「え!?」
「あ…あなたは……!!」
魔法が中断したことにより解放されたナツとティアナは、突然乱入してきた人物を見て驚愕した。その人物とは……
「「「シグナム(さん)!!!?」」」
チーム・ヴォルケンリッターの一人……シグナムであった。
「ほう…」
アリアは体勢を立て直しながらそう声を漏らす。
「な…何でお前がここにいんだよ!?」
「ギルドを守ってたんじゃ……!!」
「安心しろ…主はやてから許可は得ている。それより……」
そう言ってシグナムはアリアを睨みつける。
「我らの親に手を出したのは……この男か……」
「「っ!!!」」
低い声でそう呟くシグナムにナツとティアナはゾクリと背筋を凍らせる。
「悲しいな…
「そう簡単にくれてやるつもりはない」
「ふふふ…さすがにシグナムが相手となると……この私も本気を出さねばなりませんな」
そう言ってアリアは自分の目に巻かれた目隠しを取る。その瞬間、アリアの魔力が跳ね上がる。
アリアは普段目隠しで目を閉じることにより、強大過ぎる自分の魔力を抑えているのである。
「死の空域〝零〟発動。この空域は全ての命を食い尽くす」
「おああああっ!!!」
「うああああっ!!!」
「……………」
アリアの空域に巻き込まれ、悲鳴を上げるナツとティアナ。だがシグナムは特に動揺せず、静かに佇み……
「命を喰う魔法か……外道め」
そう呟きながら鞘に収まった自身の剣…レヴァンティンの柄を握る。
「あなたにこの空域が耐えられるかな?」
そんなシグナムに向かって死の空域を放つアリア。だがシグナムは、まったく微動だにせずに、静かに剣を構える。そして……
「一閃空牙」
たった一振りで……アリアの空域が消滅した。
「なっ!? バ…バカな!!? あの空域を一瞬で……!!?」
あまりの出来事に驚愕し、うろたえるアリア。その隙をついてシグナムは、そんなアリアの懐に潜り込み、レヴァンティンを構える。
「紫電……」
それと同時に、レヴァンティンの刀身に灼熱の炎が纏われる。
「しまっ──」
そこでアリアは魔法を発動しようとするが、時すでに遅く……
「一閃!!!」
「うぐわぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
次の瞬間…アリアは炎の刃に斬り裂かれ、断末魔と共に地面に倒れて気絶した。
「貴様程度の男に我らのマスターがやられるハズはない。二度とそのような
吐き捨てるようにそう言い残し、シグナムはナツとティアナのもとへ歩いて行ったのだった。
つづく