仕事が始まってから更新速度落ちるだろうなとは思っておりましたが、まさか1ヶ月以上も更新できないとは……
楽しみにしていてくださった読者の皆様には心からお詫び申し上げます。
さて、前回から引き続きはやて過去編。本来なら前後編に分けるつもりだったのですが、ヴォルケンリッターの件も含めたら予想以上に長くなりそうでしたので、中編を加えました。
こんなにお待たせした上にかなりグダグダな展開となっておりますが、どうか最後までお付き合いください。
あと、この間新連載として投稿しました『LYRICAL TAIL 番外編』もよろしくお願いします。現在『鳳凰の巫女』を執筆中です。
感想お待ちしております。
時はX774年……フィオーレ王国の中でも片隅の方に位置する『ナニワ村』という小さな村。
「ギルダーツさん、この度はウチのはやてを助けていただいて、ありがとうございます」
「いやいや、気にすんな。偶然通りかかっただけだしな」
その村の村長の家では、村長であるグレアムが森でバルカンからはやてを助けてくれたギルダーツに感謝の言葉を述べ、ギルダーツは苦笑を浮かべながらその言葉を受け取った。
「しかし、見た所あなたは魔導士のようですが…何故こんな辺鄙な村に?」
「仕事だ、魔導士ギルドのな」
グレアムの問いにそう答えながら、ギルダーツはこのナニワ村に来た用件を話す。
「最近この辺りの村や街で、ガキの誘拐事件が多発してるのは知ってるか?」
「ええ。まだこの村では起きてはいませんが、警戒はするように村人には呼びかけています」
「オレの仕事はその誘拐事件の解決でな。んで、その誘拐犯のアジトがこの村の近くにあるという情報を掴んだ」
「なんと!?」
「だからしばらくはこの村を拠点にしてそのアジトを探そうと思うんだが……」
「わかりました。そういう事でしたら、喜んで協力いたしましょう」
「話が早くて助かるぜ村長」
協力的なグレアムの言葉に感謝するギルダーツ。
「しかしそうなると問題は宿泊場所ですね。この村は辺鄙な場所にある村ですから、観光に来る者もいないので宿泊施設もありません。私かこの村の誰かの家に泊めてもらうしか……」
思案顔でそう語るグレアム。すると……
「話は聞かせてもろたで!!!」
「うおっ!?」
「はやて!?」
突然バーンっと勢いよく扉を開けて入って来たのは、おそらく盗み聞きをしていたのであろうはやてであった。
「なぁなぁオジサン!! 泊まる場所を探すんやったら、しばらく私のウチで暮らさへん?」
「あん?」
「コラはやて!!」
そう言って詰め寄るはやてに訝しげな表情を浮かべるギルダーツと、そんな彼女を叱るような口調で戒めるグレアム。
「ええやろグレアムおじさん? 私、この人に助けられた恩返しがしたいんや!」
強くそう言うはやての言葉にグレアムが小さく嘆息すると、ギルダーツが次いではやてに対して口を開く。
「おいおいお嬢ちゃん、その気持ちはありがてーが、お前さんが勝手に決めていいコトじゃねえだろ。親御さんにちゃんと許可は取ったのか?」
「許可なんかいらへん。どっちもおらへんねんから」
「……なに?」
「ギルダーツさん……この子の親は…ひと月ほど前に事故で……」
「そうか……そりゃ悪い事聞いちまったな」
「ええよ、気にしてへんから♪」
グレアムの説明に、ギルダーツはバツの悪い表情で謝罪し、はやてはそれを笑顔で許す。すると、グレアムは諦めたように小さく嘆息しながらギルダーツに対して口を開く。
「ギルダーツさん、申し訳ありませんがここは1つ、この子のワガママを聞いてもらえませんか?」
「いやまぁ…しばらく泊めてくれるっつーんなら別にいいんだが」
「ホンマに!? ほな決まりやな!! 行こ行こっ!!!」
「うおっ!? ちょっ…オイ!!!」
それを聞いた途端、はやては目を輝かせてギルダーツの腕を掴んだかと思うと、その小さい体でギルダーツを引っ張って出ていったのであった。
そんなはやてを、グレアムは「やれやれ」と呟きながらも優しい表情で見送ったのであった。
第228話
『八神はやて 中編』
「~~♪~♪」
グレアムの家をあとにし、ご機嫌な様子でギルダーツを引き連れて自分の家へと歩くはやて。そんなはやてにギルダーツが声をかける。
「ずいぶんご機嫌だなお嬢ちゃん」
「ウチにお客さん来んのは久しぶりやからな~。それにおっちゃんって魔導士さんなんやろ? 私いっぺん魔導士さんの話聞いてみたかってん」
「ははっ、そうか。まぁオレの話でよけりゃいくらでも聞かせてやるよ」
「ホンマに!? 楽しみやわ~♪」
ギルダーツのその言葉でさらにご機嫌になるはやて。そんなはやての後ろを歩きながら、ギルダーツはジッと彼女の姿を見据える。
「(にしてもこのお嬢ちゃん……自分じゃ気づいてねえだろうが、なんて量の魔力を体に秘めてやがる。オレと同等…いや、ヘタすりゃオレ以上かもな。)」
はやての体から感じられる異常な魔力の資質。それを感じ取ったギルダーツは彼女の秘められた才能に関心を示していた。
「あ! そうや!!」
「ん? どうした?」
すると突然大声を上げて思い出したように立ち止まったはやて。それに続いてギルダーツも疑問符を浮かべながら足を止める。
「いやー…そういえばまだちゃんと自己紹介してへんかったな~って思うてなぁ。お互いいつまでもおっちゃんやお嬢ちゃんって呼び方もアレやし」
「ああ、そういやそうだったな」
はやてにそう言われ、ギルダーツもちゃんと名乗ってなかった事を思い出す。
「オレはギルダーツ・クライヴだ。よろしくな」
「私は八神はやて言います。こっちの大陸やとハヤテ・ヤガミになるんかな。こちらこそよろしくや」
そう言ってお互いに名前を名乗ると、ギルダーツははやての名前に違和感を感じ取った。
「ん? お前さん、東洋人なのか?」
「せや。って言うても両親が東洋生まれなだけで、私自身はフィオーレ生まれやで」
「ほう、珍しいな」
「よう言われる。あっ! ついたで!! あれが私の家や!!」
そんな会話をしている間にはやての家が見えてきたらしく、彼女が指差す先には、周りの民家に比べて少し大きめの二階建ての一軒家が建っていた。
「ずいぶん立派な家だな。ここで1人で暮らしてんのか?」
「せやで。因みにこう見えても私、家事は一通りこなせるんや!」
そう言って誇らしげにえっへんと胸を張るはやてに微笑ましさを感じながら、ギルダーツは彼女にある疑問を問うた。
「寂しくは……ねえのか?」
「…………」
ギルダーツのその問い掛けに、はやてはほんの一瞬だけ顔を強張らせて黙ったが、すぐに笑顔を浮かべて答える。
「寂しくなんてあらへんよ。グレアムおじさんも村の人たちもよくしてくれて、みんな家族みたいなもんやからな♪」
「…………」
「それにな……この家はお父さんとお母さんと過ごした思い出が詰まった大切な家で、宝物や。私は2人が遺してくれたこの家を守っていくって決めた……寂しいなんて弱音なんか吐いてられへんよ」
「……そうか」
笑顔でそう語るはやてだが、ギルダーツにはその笑顔がどこか無理しているように見えた。そんな彼女を心情を察したギルダーツはこれ以上は何も聞かずに、はやてに対してニッと笑いかけると……
「小せェのにたいしたモンだな……はやては」
ポンポンとはやての頭を優しく撫でながら、そう告げたのであった。
「……………」
「ん? どうした?」
ギルダーツに頭を撫でられながら、キョトンとした表情でジッと彼を見つめるはやて。そんなはやての様子に疑問符を浮かべるギルダーツ。
「あ、いや、何でもあらへんよ! それよりほら入って入って!!」
「おっとそれもそうだ。んじゃ、お邪魔させてもらうか」
そしてギルダーツははやての案内で、彼女の家へと足を踏み入れたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほう、こりゃ中も結構なモンだ」
「せやろ? 毎日の掃除は欠かしてへんからなぁ」
そう言って感嘆の声を上げるギルダーツと誇らしげに笑うはやて。はやての家の中はギルダーツから見ても広めであり、キレイに片付いていた。
「部屋はお父さんの部屋を使ってや。今から夕食の支度するから、ゆっくりくつろいで待っててや」
「何か手伝うか?」
「ええよ別に。ギルダーツさんは大事なお客さんなんやから」
「気にすんな、オレはしばらく居候させてもらう身だし、はやてみてェな子供にだけ働かせて自分は何にもしねェなんざ大人としての沽券に関わるからな。まぁ夕方には仕事の為に村の身辺調査に行くが、それ以外の時ァ遠慮なく何でも言ってくれ」
ギルダーツのその言葉に、はやては一瞬呆気に取られた表情になると、すぐに顔を綻ばせた。
「そうか? ほんならお言葉に甘えて、色々手伝ってもらおかな」
「おう! どんとこい!!」
それからしばらく、ギルダーツは料理をするはやての手伝いに勤しんだのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「いやー美味かったぜはやて!! ごちそーさん」
「お粗末様。そう言ってもらえると嬉しいわぁ♪」
夕食後…とても子供とは思えないはやての料理の腕にギルダーツは満足そうに絶賛し、それを聞いてはやても嬉しそうに笑う。
「家事もできて料理も美味い。はやては将来有望だな!! がははははっ!!」
そう言って豪快に笑いながら彼女の頭を撫でるギルダーツ。それに釣られるようにはやても笑う。
「あはははっ、そういうギルダーツはなんかお父さんみたいやな」
「ん? オレがかぁ?」
「うん! なんかこう…雰囲気っていうか、大らかさっていうか、どことなくお父さんっぽいんや」
「がははははっ!! オレが父親ねぇ……」
はやてが言った父親っぽいという言葉にギルダーツはおかしそうに笑いながら目を細める。
「まぁ確かにウチのギルドにはガキは多いからな。ちょうどはやてと同い年くらいの奴も何人かいるんだぜ
。あと、お前と同じフィオーレ生まれの東洋人の女の子もな。これがまたどいつもナマイキでなー」
「へぇ~! あ、せや! 約束通り魔法の話とかギルドの話とかもっと聞かせてぇな!!」
「ああいいぜ。何から話すか……そうだな、まずオレがいるギルドは
それからも目を輝かせたはやての要望に応え、結局ギルダーツは彼女が寝付くまで自身の話をしていたのであった。
そしてその日からギルダーツとはやての生活が始まった。
「おーい見ろはやて、土産だぞー」
「ギャーーーー!!!」
ギルダーツが村の身辺調査の帰りに捕まえてきた巨大イノシシを見てはやてが絶叫したり……
「あ、やべ」
「ちょっ!! なんで薪割りで地面まで割れるんや!!?」
薪割りをしていたギルダーツが間違って薪と一緒に地面まで割ってしまったり……
「チェックメイト♪」
「ぐおぉ~~…ま、また負けた……」
「イエーイ10連勝~♪」
はやてとチェスで勝負したギルダーツが10連敗して本気でヘコんだり……
「わぁ~高い高い♪」
「おーし、しっかり掴まってろよはやて」
「うん!」
はやてがギルダーツに肩車をしてもらいながら、村中で遊び回ったりなど……
その光景はまるで仲のいい親子であり、2人の顔からは笑顔が絶えなかった。
そしてそんな生活が始まって早くも1週間が経ったある日……はやてにとって、転機でも言える出来事が起こったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
場所は村の身辺にある森の中。その森の中にある大きな川で、ギルダーツとはやての2人は釣りをしていた。ただし、はやての方は仏頂面で楽しくなさそうである。
「おいはやて、何だそのシケたツラは?」
「だって全然釣れへんねんもん。それに釣りってあんま好きやあらへんし」
すでに水を張ったカゴの中には何匹か魚が入っているが、それらは全てギルダーツが釣ったものであり、はやては未だに1匹も釣れていないのである。
「バカヤロー、そう簡単に釣れる訳ねーだろ。釣りってのァ人間と魚の食うか食われるかの真剣勝負……まさに、男のロマン!!!」
「私女の子やからよう分からんもん」
そんなギルダーツの熱弁を拗ねたような口調でさらっと受け流すはやて。するとその時、はやての持っている竿の先がピクリと反応した。
「! 何かかかった!!!」
「いいぞはやて!! 引け引けっ!!」
「う~~ん……っ!!!」
すぐにはやては竿を持つ手に力を入れて引き始める。しかしかかった獲物は相当大きいのか、一向に引き上げられる気がしない。
「重っ……全然…上げられへん……!!」
力一杯引いているのにまったく引き上げられずに悪戦苦闘するはやて。すると逆にはやての方が限界に来てしまい、竿を握る手が徐々に緩み始めてしまう。
「もう…限界や……!!!」
そしてはやての手から竿が放れてしまおうとしたその時……
「諦めるな、はやて」
「! ギルダーツ……」
そんなはやての手と竿を、ギルダーツが横から強く握って支えたのであった。
「こりゃ相当な大物だな。今回はオレも手ェ貸してやるから、2人で引き上げるぞ」
「──うん!!!」
そんなギルダーツの言葉に強く頷いたはやては、再び竿を持つ手に力を込めて、今度はギルダーツと共に引き始める。
「一気に行くぞはやて!!」
「了解や!!」
「「せー…のっ!!!!」」
そして2人同時に竿を思いっきり引き上げたその時……ついにその獲物が水面から勢いよく飛び出したのであった。
「よっしゃあ!!! 釣り上げた……で……?」
「──あん?」
しかし喜んだのも束の間……はやてとギルダーツは釣り上げたソレを見た瞬間、目を丸くした。
何故なら……2人が釣り上げたのは魚などではなく──何やら大きな本を抱えている長い銀髪の少女だったのだから。
「「え?」」
そして釣り上げたその少女をまじまじと見た後、はやてとギルダーツはお互いの顔を見合わせると……
「「えええええーーーーーーっ!!!?」」
森全体に響き渡るほどの大絶叫を上げたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「いやーまさか釣りで人間を釣り上げちまうたァ驚いたぜ」
「何のんきな事いうてんの。こんなんちょっとした事件やで」
「まぁな。だが幸いにも気絶してたおかげで、水をあんま飲んじゃいねえ。このまま安静にしてりゃ、そのうち目ェ覚めるだろ」
あの後、釣り上げた銀髪の少女に意識はないが、息があった事を確認したギルダーツとはやては急いで少女を家へと連れ帰り、応急処置をしたのちに濡れた服を着替えさせてベッドに寝かせたのであった。
「それにしてもこの子、どこの子やろ? 村の近くには街なんかないし、何よりなんで川に沈んでたんやろか? もしかして、ギルダーツの仕事にも関係あったり……?」
「さぁな。ガキの誘拐事件に関係あるかは分からねえが、いずれにしても話はこの嬢ちゃんが目を覚ましてからだろ」
「うん、せやね」
ギルダーツの言葉に強く頷いたはやては、ベッドに眠る少女の看病を始めたのであった。
それから数時間後……外はすっかり夜になっていた。
「ふわぁ……オレァそろそろ寝るが、はやてはどうすんだ?」
「私はもうちょっとこの子の様子を見とくわ」
「そうか……だが程ほどにしろよ。お前が体調を崩したら元も子もねぇんだからな」
「わかっとるって。おやすみ、ギルダーツ」
「ああ、おやすみ。なんかあったらすぐ呼べよ」
「はーい」
そう言って就寝の為に部屋へと戻るギルダーツ。そんなギルダーツを見送ったあとも、はやては少女を看病し続けた。はやては元々面倒見がいい事もあってか、少女の側から離れずに目を覚ますのを待つ。
そして時刻はすでに、日付が変わる0時に差し掛かろうとしていた。
すると……
「……ん…んん……」
「!」
今までずっと静かに眠っていた少女の口から僅かに声が漏れ、それを聞いたはやてはすぐさま少女の顔を覗き込む。
「う…ここ……は?」
「あっ、目ぇ覚めた!?」
「!?」
そしてようやく目を覚ました少女は、自身の顔を覗き込んでいたはやてを見て、驚いたように目を見開く。それから少女はベッドから上半身を起こすと、キョロキョロと部屋を見回したあとで、再びはやてに視線を戻した。
「あの…あなたは……?」
「私ははやて。君を釣り上げたモンや」
「は? つ…釣り…?」
「覚えてへんの? 君、川に沈んどったんやで」
「川に?…………………あ」
自分が川に沈んでいたと聞いて、何か思い当たるふしがあるのか、小さく声を漏らす少女。当然その声ははやての耳にもしっかり届いていた。
「なんかあったん?」
「あ…いえ……その……」
「?」
はやてが問い掛けると、途端に手をモジモジとさせて恥ずかしそうに赤面する少女。そんな彼女の態度に、はやては首を傾げる。
「じ…実は私、旅をしていまして」
「旅? 私と同じくらいの歳やのに1人で?」
「はい。しかし先日、森の中で迷ってしまって……それから運よく川を見つけて、川沿いに歩きながら森を出ようとしていたんですが…………その途中で、その……足を滑らせてしましまして……」
「……………」
「そのまま川に落ちて流されてしまい……さらには川底から出ていた岩に頭をぶつけてしまって……そこからは何も覚えていなくて……」
「……………」
つまり少女の説明を要約すると……
・旅の途中で森で道に迷う
・川を見つけて川沿いに歩いて森を出ようとする
・その途中で足を滑らせて川に落ちる
・そのまま流されていると岩に頭をぶつける
・気絶する
・現在に至る
という事らしい。
「ドジやな~」
「あう……」
少女の説明に、はやては軽く呆れながらつい思った事を口にしてしまい、少女はさらに赤面する。
「それで、君は──あーごめん、名前聞くん忘れてた」
「あ…申し遅れました。私はリインフォースと言います」
「リインフォースか、キレイな名前やな~」
「いえ、そんな……」
少女のリインフォースという名前を聞いたはやては素直にその名を褒め、褒められたリインフォースは嬉しそうに微笑む。
「コホン……それでや、リインフォースは何で1人で旅なんかしてるん?」
「ああ…それはですね、私の一族に伝わる使命なんです」
「使命?」
「はい。本当は私が15になってからのハズだったんですが、両親が他界してしまったので、早くにその使命を受け継いで、この魔導書の持ち主となる人物を────!!!?」
そこまで言いかけると、リインフォースは何かを思い出したかのように表情を一変させて、自身の体や周囲を探ったり見渡したりして、何を探し始める。
「あの!!!」
「は、はい!?」
しかし見つからなかったのか、リインフォースは鬼気迫るかのような表情で今度ははやてに詰め寄る。
「本を見ませんでしたか!!? 私が持っていた大事な本です!!!」
「本? ああ……」
本を知らないかと聞かれて、はやてはそう言えばリインフォースを釣り上げた時に、彼女が大事そうに持っていた本の事を思い出す。
「あの本は確かギルダーツが持ってて、それからそこの棚の上に──あ、あったあった!!」
はやては記憶を辿りながらリインフォースが探しているであろう本が置いてある場所へと駆け出し、その本を手に取る。
「ほら、この本やろ?」
そしてそう言ってはやてが手に取った本をリインフォースに見せたその時……
《起動》
「へ?」
突然その本から奇妙な声が聞こえてきたと同時に、眩い光が本から発せられた。
「な…なんやこれ!!? リインフォース!!?」
いきなりの事に、はやては本の持ち主であるリインフォースに目を向けると、彼女も何やら大きく目を見開いて愕然としていた。
「夜天の書が…起動した……!!? まさか彼女が……適合者だと……!!?」
リインフォースが驚いたようにそう呟くと、彼女は神妙な面持ちでベッドから降りて、ゆっくりとはやてへと歩み寄る。
「リインフォース?」
そんな彼女にはやてが首を傾げていると……突然リインフォースは膝を折り、忠誠を誓うポーズではやての前で跪いた。
「夜天の書は継承された。これよりあなたには〝夜天の主〟として大魔道の力と、あなたをお守りする騎士を与えられるでしょう」
「何を…言うてるん? 一体何の話を──」
リインフォースの言葉が理解できずに、はやてが混乱していると、彼女が手にしている本……夜天の書がさらなる輝きを放つ。
「! きゃああっ!!!」
そして夜天の書から放たれる光の眩さに耐え切れず、右腕で目をかばうようにして構えるはやて。
それから光が収まり、はやては構えていた右腕を下ろしながら恐る恐る目を開ける。
「!!!?」
するとそこには──リインフォースの他に3人の少女と1人の少年が、はやてに跪いている光景があった。
「夜天の書の起動、確認しました」
ピンク色の長い髪をした少女が、顔を上げずにそう告げる。
「我等は夜天の主に仕え、主を護る守護騎士にございます」
「夜天の主の元に集いし雲……」
さらに金髪の少女と白い髪に犬の耳と尻尾を生やした少年が続けてそう言い放つ。
「ヴォルケンリッター──何なりと命令を」
そして最後に紅色の髪を二又の三つ編みにした少女がそう締めくくったのであった。
これがのちに
つづく