LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回は2話連続投稿です。

この2話でようやく大魔闘演武編は終了となります。

その後しばらくは短編などを書いてから、新章へと突入したいと思います。

例のごとく1時間後に投稿されます。

感想お待ちしております。


大舞踊演武

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武から数日後。

 

 

ドラゴンの脅威が去ったクロッカスの街はあちこちが壊れていたりするが、街中ではすでに避難から戻って来た住民たちの喧騒によって包まれていた。

 

 

「この前の緊急避難の時、城下にドラゴンが襲って来たって」

「バカ言え、そんなのいるモンか」

「見た奴だっているんだぜ」

「魔導士の魔法じゃないのかい?」

 

 

どうやら今回の一件は表沙汰にはなってはおらず、ドラゴンが襲ってきたという話を真に信じている者はほとんどいないようである。

 

 

「そういやその魔導士たち、今日……お城でパーティだって」

「うひょー! 羨ましいねえ!」

「今まで城に魔導士なんて招待しなかったのに」

「それだけ今回は盛り上がったって事さ」

 

 

そう……現在メルクリアスでは、今回クロッカスの街を守る為に奮闘した全ての魔導士ギルドの者たちが招待され、盛大なパーティが開かれようとしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第223話

『大舞踊演武』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあ!」

 

 

「すごい…」

 

 

「キレイね」

 

 

「おう、来たかーーーっ!!!」

 

 

「お前似合わな過ぎだろ」

 

 

「服着てから来いよ」

 

 

「まあまあ、2人とも…」

 

 

「こっちだ。他のギルドも全員集合ってトコだな」

 

 

「大魔闘演武打ち上げパーティや!!」

 

 

準備を終えたティアナやルーシィたちが会場に足を踏み入れた瞬間に目に飛び込んできたのは、礼服やドレスなどに身を包んだ妖精の尻尾(フェアリーテイル)をはじめとした数々の魔導士ギルドの面々たちで賑わい、装飾などでとても幻想的な雰囲気に包まれた空間であった。

 

 

「漢なら食うべし食うべし!!」

「この肉うめーーっ!!」

「アイスだ!! こっちにアイスもあるぞー!!」

「食べ過ぎて腹を壊すんじゃないぞ、ヴィータ」

「酒だーー!! 酒よこせーー!!」

「カナちゃん、お城ん中やねんから節度をもってや~」

「ふぉれももれもふぉいふぃね、ふぃあ~」

「食べるか喋るかどっちかにしなさいバカスバル」

「王様も太っ腹だな~」

「こんな荒くれ連中を、みんな城に招待するなんてね」

「あれ? ナツさんは一緒じゃないんですか?」

「そういや見てねえな」

 

 

テーブルに並んでいる豪勢な食事に舌鼓を打つ者や…酒を煽る者…そして談笑する者など、すでに思い思い行動をしながら盛り上がっている妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたち。

 

 

もちろん、盛り上がっているのは彼らだけではない。

 

 

「スゲェなこりゃ」

 

 

「華々しさのレベルが違うね、お兄ちゃん」

 

 

「なんて煌びやかな世界」

 

 

「「「キング一夜バンザーイ!」」」

 

 

「君たち、あの曲を頼む、bフラットで」

 

 

「あの曲!!?」

「ええ!? 知らねえよ!!」

 

 

一夜を筆頭にした青い天馬(ブルーペガサス)

 

 

「また比べるかい」

 

 

「いいねえ、今度は負けないよ」

 

 

「「「ワイルドォ~~ッ!! フォーー!!!!」」」

 

 

カナとバッカスの飲み比べ対決に盛り上がっている四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)

 

 

「だから似合わんと言っただろ……」

 

 

「ううん、超似合ってるよ」

 

 

「そうですよ!! とってもお似合いですよカグラさん!!!」

 

 

「んー♪ やっぱり私のコーデに間違いはないわね」

 

 

「キレ―だよカグラ」

 

 

「カグラなめちゃいけないねぇ」

 

 

綺麗にドレスアップして恥ずかしそうにしているカグラを、人魚の踵(マーメイドヒール)のメンバーたちが称賛する。ただしミリアーナだけが、どこか浮かない表情で俯いていたが。

 

 

「大魔闘演武では戦う機会がなかったが、ゼスト殿とはいつか手合せ願いたいものだ」

 

 

「それはオレも同じだ。だが今は祝いの席……しばし戦いの事は忘れて、飲み交わそうではないか」

 

 

「フフッ…そうだな」

 

 

歴戦の強者同士惹かれあうのか、ジュラとゼストは好戦的な笑みを浮かべながらお互いに酒を煽った。

 

 

「まさかこうやって、我々元四天王がもう1度顔を合わせる日が来るとは思いもしませんでしたね」

 

 

「つーかオレぁ、お前らが王国に仕えてる事に驚いたけどな」

 

 

「驚嘆」

 

 

「テメェらこそ、正規ギルドで楽しくやってるそうじゃねーか」

 

 

そう言って意外な所で再会を果たしたグラン、メイア、ガワラ、オルバの元悪霊の札(デーモンカード)の四天王と呼ばれていた4人。

 

 

「まさか王の城に入れる日が来るとはのう」

 

 

「長生きはスるもんだね」

 

 

マカロフたち各ギルドマスターの面々も、大いにパーティを満喫していたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「グレイ様、ジュビアはVer.2,0になりました」

 

 

「いつから機械みてーになったんだよ」

 

 

「にゃはは…気持ちの問題じゃないかな~?」

 

 

突然そんな事を言い出したジュビアに呆れるグレイと苦笑するなのは。

 

 

「そして今、新時代のジュビア突入なのです。グレイ様、愛してます!!!」

 

 

「お断りだ」

 

 

そう言って抱き着こうとしたジュビアに対し、キッパリとそう言い放って彼女を避けるグレイ。当然避けられたジュビアは、ジュガーンっとショックを受ける。

 

 

「オレも新時代に突入した。イヤなものはイヤだとハッキリ言うからな」

 

 

何かグレイの心境に変化があったのか、ジュビアの好意を理解した上でそう宣言した。

 

 

「あ~ん♡ ジュビアをなじるグレイ様も素敵!!」

 

 

「うわ!! 新バージョン、タチ悪ィ!!!」

 

 

しかし新時代のジュビアにはまったく意味を成さないようであった。

 

 

「ジュビアちゃんはたくましいからね~♪」

 

 

「って、のんきに笑ってるけどよ……言っとくがお前もお断りだぜ、なのは」

 

 

するとその様子を見て楽しそうに笑っていたなのはに対して、グレイがそう言い放つ。しかしなのはは特に慌てた様子もなく、微笑みを崩さずに言葉を返す。

 

 

「あぁ、やっぱり私の気持ちにも気づいてたんだね」

 

 

「ったりめーだろ、何年の付き合いだと思ってんだ」

 

 

「それもそうだね。じゃあさ──」

 

 

そして、なのははニッコリと満面の笑顔を浮かべながらグレイに対して言い放つ。

 

 

「私がその程度で諦めるほど弱くないって事も知ってるよね~♪」

 

 

「……そうだった、コイツも別の意味でタチ悪ィんだった」

 

 

それを聞いたグレイは片手で額を抑えながら呆れたように呟いた。どうやらこれからも彼を取り巻く環境は変わらないようである。

 

 

「そう言ってやるなグレイ」

 

 

「リオン」

 

 

するとそこへ、グレイの兄弟子であるリオンが口をはさむ。

 

 

「オレは今日ハッキリわかったよ。ジュビアの心はオレを向いてないのだと」

 

 

「「「遅くね」」」

 

 

この口ぶりからどうやらリオンはジュビアの心を理解したらしく、彼女の事はスッパリと諦めるようだ。

 

 

因みにそんなリオンの言葉にツッコミを入れたユウカとトビーとチンクの後ろで、ギンガが勢いよくガッツポーズをしていたのは余談である。

 

 

「それにしてもナツの奴、どこ行ったんだ?」

 

 

「騒がしい場所にナツさんがいないなんて……」

 

 

「うん…どうしたんだろうね?」

 

 

そしてグレイたちは、先ほどからナツの姿が見えない事に首を傾げていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「わあ!! 見てキャロちゃん、シェリア、宝石みたい」

 

 

「ホントだ~♪」

 

 

「キレイだね~どんな味するんだろ」

 

 

別のテーブルでは、大魔闘演武を通して仲良くなったウェンディとキャロとシェリアの3人が、見た事もない宝石のように輝くゼリーに舌鼓を打ち「「「おいし~~♡」」」とそろって満足気な声を上げていた。

 

 

「おいしそうですね」

 

 

「「初代!!!?」」

 

 

「ん? どうかしたの?」

 

 

「う…ううん」

 

 

「何でもないよ、シェリアちゃん」

 

 

突然現れたメイビスに驚いて思わず声を上げるウェンディとキャロ。メイビスの姿は妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーにしか見えない為、そんな2人に首を傾げているシェリアを慌てて誤魔化した。

 

 

「私も食べたいです~」

 

 

「無理ですよ~、初代は幽体なんですからガマンしてもらわないと」

 

 

「ところで初代……ナツさん見てないですか?」

 

 

「さあ」

 

 

キャロがメイビスをたしなめつつ、ウェンディがナツについて聞いてみるが、メイビスも知らないと言う。

 

 

「おかしいなぁ……こーゆートコだといつも一番目立ってるのに」

 

 

「そうだよね…どこ行っちゃったんだろう?」

 

 

「ウェンディ!! キャロ!! 近くに何かいるよっ!! 助けて!!」

 

 

そう言ってナツの行方を心配しているウェンディとキャロの後ろでは、シェリアが若干メイビスに憑りつかれていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「もうケガはいいのか、カグラ」

 

 

「そっちこそ」

 

 

また別の場所では、歩き回っていたエルザとカグラの2人が偶然顔を合わせていた。

 

 

「色々あったが、友人になってくれないか? 同郷……だしな」

 

 

「断る」

 

 

「!」

 

 

エルザの申し込みをスッパリと断るカグラだが、当の彼女は恥ずかしそうに頬を染め……

 

 

「姉さん……の……方が……好ましい……」

 

 

と言ったのであった。そんなカグラの意外な態度にエルザは一瞬キョトンとするが、次の瞬間には彼女を自分の胸元に抱き寄せた。

 

 

「やれやれ、可愛い奴だ」

 

 

「わっ!! 冗談に決まっているだろ!! バカモノ!!」

 

 

「「あはは!!」」

 

 

「カグラも形無しだねぇ」

 

 

「ですね♪」

 

 

「カグラちゃんってば、かわいい~♡」

 

 

そんなカグラの様子を、人魚の踵(マーメイドヒール)のメンバーたちが微笑ましそうに眺めていた。

 

 

するとそんなエルザの視界に、未だに面白くなさそうな表情のミリアーナの姿が目に入る。

 

 

「ミリアーナ、いつまでそんな顔をしているんだ」

 

 

「……………」

 

 

「仕方のない奴だな」

 

 

拗ねたように顔をそらすミリアーナの態度に、エルザはやれやれと肩をすくめながら自身の胸元をゴソゴソと漁ると……

 

 

「ホレ」

 

 

「元気最強~~~っ!!」

 

 

「ネコネコ!!」

 

 

何故かそこからハッピーを取り出し、それを見たミリアーナは一瞬反応するが、すぐにまた目をそらしてしまう。しかし……

 

 

「ホレホレホレ」

 

 

「うわーーい! ネコネコがいっぱーい!!」

 

 

「おい…オレたちはぬいぐるもじゃないぞ」

 

 

「って、聞いていませんね……」

 

 

「あいさー」

 

 

「エルザ~」

 

 

エルザが立て続けにシャルルとリリーとリニスを取り出した事で、ミリアーナは呆気なく陥落してハッピーたちに飛びついた。

 

 

「今の…エルザさんはどこからあのネコちゃんたちを取り出したのでしょうか?」

 

 

「気にしたら負けよお姉ちゃん」

 

 

その光景を見たアミタとキリエの姉妹がそんな会話をしていたのは余談である。

 

 

「ハッピー、ナツはどうした?」

 

 

「オイラ知らないよ」

 

 

ミリアーナに文字通り猫可愛がりされながらそう答えるハッピー。どうやら相棒であるハッピーもナツの行方はわからないそうだ。それを聞いたエルザは思案顔になる。

 

 

「こうも姿を現さんとは、何かあったか」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ナツがいねえって?」

 

 

「うん、誰も姿を見てないんだって」

 

 

「いつもならとっくにその辺で暴れてんのに」

 

 

「珍しいな」

 

 

「ラクサス様~」

「うわーすごい筋肉♡」

 

 

「オイ!! ラクサスにベタベタするなっ!!!!」

 

 

ラクサスたち雷神衆もナツがいない事に首を傾げ……

 

 

「ルーちゃんたちも今日は見てないって」

 

 

「ナツの事だから心配いらないと思うけどね」

 

 

「あのバカ、どっかで寝てんじゃねーの?」

 

 

スバルとノーヴェは特に心配した様子もなくそう答える。

 

 

「ティアもナツがどこ行っちゃったか知らない?」

 

 

「保護者じゃないんだから知る訳ないでしょ」

 

 

比較的ナツと一緒にいる事が多いティアナも、リサーナの問いに対してそう答えたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ナツさーーん!!!! 一杯やろうぜーーっ!!!」

 

 

「やりましょうナツ君!!」

 

 

火竜(サラマンダー)ならいねーぞ」

「ナツさんならいないよ」

 

 

グラスと飲み物を持って友好的な笑顔を浮かべながらやって来たスティングとレクターに、大量の食事を平らげているエリオを普通に食事をしているガジルが答える。

 

 

「あっれーー!? せっかくお近づきの印にって思ったのにーーっ!!」

 

 

「作戦失敗ですね」

 

 

「フローもそーもう」

 

 

「にゃはは、残念だったねスティング~」

 

 

軽くショックを受けているスティングに、彼と一緒にいたヴィヴィオがからかうように笑う。

 

 

「ライオス」

 

 

「その名前はよしてくれ、ローグだ」

 

 

その隣では、ガジルがローグに声をかけていた。

 

 

「未来から来たって奴の話」

 

 

「ああ……知ってる。我ながら情けない話だ」

 

 

今回の一件を引き起こしたのが未来の自分だと理解しているローグは、申し訳なさそうにそう答える。

 

 

「だがオレはそいつにはならない。絶対に」

 

 

「フローも」

 

 

しかしそれも一瞬で、すぐに強い決意を込めた表情でフロッシュと共にそう言い放つローグの言葉を聞いて、ガジルはギヒッと笑みを浮かべたのだった。

 

 

すると、そんなガジルの傍らでずっと黙っていたルーテシアとアギトがローグに声をかける。

 

 

「つーかお前、ホントにあの坊主頭のライオスだったのかよ。イメチェンにもほどがあんだろ」

 

 

「……ビックリ」

 

 

「だからその名前はよせ。そう言えば、お前たちとこうして話すのも久しぶりか」

 

 

そう言って、過去に面識のあるローグとルーテシアとアギトの3人は久しぶりの会話を楽しんだのであった。

 

 

「ガジルさんとエリオでいいや!! 一杯やろうよ!!」

 

 

「お前サラッと失礼な奴だな」

 

 

「あ、エリオはまだガキだから酒じゃなくてジュースな」

 

 

「本当に失礼だね。あと本来なら僕と君は同い年だからね」

 

 

「不器用なんで、仲良くしてあげてください」

 

 

ガジルとエリオに対してサラッと失礼な事を言うスティングをレクターがフォローした。

 

 

「なーんか明るくなっちまって」

 

 

「こんなスティングは記憶にないね」

 

 

「フフ…いいコトですよ」

 

 

そんなスティングの様子を、オルガとルーファスとアインハルトの3人がそう言いながら眺めていた。

 

 

「妖精と虎の友情に乾杯!!」

 

 

そう言って楽しそうに笑いながらガジルやエリオとグラスをぶつけて乾杯するスティング。

 

 

するとそこへ……ルーシィとミラジェーンの2人と共に会場を回っていたかつての仲間……ユキノと出くわした。

 

 

「「「!」」」

 

 

「ユキノ」

 

 

思わぬ形での再会に、気まずそうな表情を浮かべるユキノとフロッシュ以外の剣咬の虎(セイバートゥース)のメンバーたち。

 

 

「す…すみません。私…やっぱり来るべきでは……」

 

 

「待って!! 悪ィ……来てるの知らなくて……」

 

 

そそくさと立ち去ろうとするユキノを、スティングが呼び止める。

 

 

「マスターとお嬢は姿をくらませたんだ」

 

 

「え?」

 

 

「オレたちは1からやり直す。もう一度剣咬の虎(セイバートゥース)を作り直すんだ」

 

 

ジエンマやミネルバが姿をくらませ、剣咬の虎(セイバートゥース)を作り直すという話に戸惑いの表情を浮かべるユキノ。

 

 

「お前にはその……色々冷たく当たったけど──これからは仲間を大切にするギルドにしたい」

 

 

「それを私に言って、どうするんですか?」

 

 

「戻って来てほしい……ってのは調子いいかな」

 

 

そう言ってユキノに剣咬の虎(セイバートゥース)への復帰の話を持ち掛けるスティング。

 

 

だがしかし……そこへ意外な乱入者が現れた。

 

 

「無論!! 調子がよすぎて笑えるぞ」

 

 

「!!」

 

 

「カグラ様!!?」

 

 

そこへ現れたのはカグラであり、酔っているのか彼女の頬は若干赤く染まっている。

 

 

「ユキノの命はアミタが預かっておる。ユキノは人魚の踵(マーメイドヒール)がもらう!!! 異論は認めん!!!」

 

 

「「「何ィーーー!!!?」」」

 

 

「え…? ええ!?」

 

 

そんな突然のカグラの宣言に、驚愕の声を上げる剣咬の虎(セイバートゥース)と先ほどよりさらに戸惑うユキノ。

 

 

「アンタ酔ってるだろ!!」

 

 

「うるさい!! ユキノはマーメイドのモノだ!!」

 

 

「待てーーい!!!!」

 

 

そこへさらに、エルザの凛とした声が響き渡る。

 

 

「それはウチも黙ってられんな」

 

 

「漢だな」

 

 

「そーよ!! 流れ的にウチに入るって感じじゃない!」

 

 

「オウ」

 

 

「そーだそーだ♪」

 

 

「理由はどうあれ、仲間が増えるのは嬉しいよね~」

 

 

「リサーナと色々キャラかぶってるけどね」

 

 

「それ言わないでティア」

 

 

先ほど声を発したエルザを筆頭に…エルフマン、ルーシィ、グレイ、ヴィヴィオ、なのは、ティアナ、リサーナと……妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちが並び立つ。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆様まで……」

 

 

彼らまでユキノをギルドに入れる宣言をした事で、さらに困惑するユキノ。だが名乗り出たギルドは彼らだけではなかった。

 

 

「いいや……君のような美しい女性は」

 

 

「僕たち青い天馬(ブルーペガサス)に入ってこそ」

 

 

「輝くぜ」

 

 

「くんくん、なんと美しく可憐な香り(パルファム)

 

 

「事情はよくわからねえが、歓迎するぜ」

 

 

「うんうん!」

 

 

「ウチにいらっしゃいよ」

 

 

「そういう事なら、この蛇姫の鱗(ラミアスケイル)もユキノ争奪戦に参加しよう」

 

 

「そうね!」

 

 

「張り合ってどうする」

 

 

「まぁいいではないか、ジュラ殿」

 

 

「ウチに来いっての!!」

 

 

「キレんなよ」

 

 

「漢くせぇギルドに二輪目の華ってのも魂が震えらァ」

 

 

「おいおい、ケンカならオレも混ぜろよ?」

 

 

「開戦」

 

 

「大会はどーでもいいけど、この戦いだけは絶対勝つぞォ!!」

 

 

青い天馬(ブルーペガサス)に続いて、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)まで名乗りを上げ、ユキノ本人はもうあたふたするしかない。

 

 

「やってやろうじゃねえか」

 

 

「大会の憂さ晴らしに丁度いいぜ」

 

 

「回るよ」

 

 

「若い頃の血がふつふつしちゃうわ~」

 

 

さらにはギルドマスターの面々もやる気を見せており、会場の空気は殺伐としていく。

 

 

そして……ついにその戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

「オラー!!!!」

「このくそ天馬ァ!!!」

「バカヤロォ!!!」

「くらえー!!!」

「やっちまえーっ!!!」

「マカロフの髪をむしれ!!!!」

「それはヒドイ」

「ババァ脱ぐなー!!!」

「うわーーーっ!!!! 大乱闘だーーーっ!!!!」

 

 

ユキノ争奪戦は会場にいた全ギルドを巻き込んだ大乱闘へと発展し、パーティ会場は大騒ぎとなったのだった。

 

 

そしてその喧騒の中で……その光景を見たユキノは、1人涙を流していた。

 

 

「泣く事ないじゃない」

 

 

「だって……ウソでも…嬉しくて…」

 

 

そう言って涙を流しながら笑顔を浮かべるユキノ。

 

 

今まで自分の周りにいる人はみんな不幸になってしまうと思っていたユキノ。剣咬の虎(セイバートゥース)を破門された事もあり、役立たずだと思っていた自分を、こんなにも大勢の人たちが取り合ってくれている。変な話だが、ユキノはそれがどうしようもなく嬉しいのだ。

 

 

「やっと笑顔になった」

 

 

そんな彼女の笑顔を見て、ミラジェーンも釣られて笑う。

 

 

「あなたにはこんなにも居場所があるのよ」

 

 

「はい……」

 

 

ユキノとミラジェーンがそんな会話をしている間にも、周囲の取っ組み合いのケンカは続いている。

 

 

すると……

 

 

「皆の者!!! そこまでだ!!!! 陛下がお見えになる!!!!」

 

 

そこへやって来たアルカディオスの一喝により、喧騒がピタリと止んだ。

 

 

「この度の大魔闘演武の武勇と、国の危機を救った労をねぎらい、陛下直々に挨拶をなされる。心せよ」

 

 

そう言うと、先ほどまでの喧騒がウソのように会場全体が静まり返り……その場にいる全員が国王が立つ予定の高台を見上げている。

 

 

そして……高台にあるカーテンが開かれ、その奥から現れたのは……

 

 

 

 

 

「皆の衆!!!! 楽にせよ!!!! かーーーーっかっかっかっかぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

何故か王様の格好に身を包み、先ほどから姿が見えなかったナツであった。

 

 

「「「んなーーーーーーっ!!!?」」」

 

 

当然思わぬ人物の登場に会場が騒然とする。

 

 

「オレが王様だーーーっ!!!! 王様になったぞーーーーっ!!!!」

 

 

高らかにそう宣言している怖いもの知らずのナツの行動に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちは頭を抱え、マカロフにいたっては髪の毛が全て抜け落ちるほどのショックを受けていた。

 

 

「返すカボ! 返すカボ!」

 

 

「いいだろ優勝したんだからっ!! オレにも王様やらせろよ。お前ら子分な。あーっはっはっは!!」

 

 

そんな彼らの気持ちなど露知らず、楽しそうにマトー君に扮した国王と言い争っているナツ。

 

 

その光景を見ながら、ティアナは小さく嘆息すると、苦笑を浮かべながらナツに向かって呟く。

 

 

「やりすぎなのよバカナツ」

 

 

そしてそんなハプニングがありながらも、彼らは打ち上げパーティを満喫し……その喧騒は夜の空へと響き渡っていった。

 

 

こうして……大魔闘演武は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の優勝で幕を閉じ、過去と未来を巡る戦いも終わったのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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