ゴッドイーター2の最新作が面白くて面白くて、つい更新が疎かになってしまった事を深くお詫びいたします。もうストーリーが超泣けました。
あと文章が中々思い浮かばなかったのも遅れた原因ですね。基本勢いだけで書いているようなものなので。
今回は少し色々と詰め込み過ぎたせいで無駄に長い上に、支離滅裂な文章になってしまいましたが、どうかご容赦ください。
感想お待ちしております。
『それでも…私たちはこの世界で魔法と共に生きていくのよ!!! たとえその果てに絶望が待っていたとしても、仲間と一緒なら乗り越えられると信じて!!!!』
ああ……オレもそう思っていたさ。仲間と一緒ならどんな絶望だって乗り越えられる…どんな苦しみだって耐えられるとな。
『どんな絶望の中にも必ず希望はある!!! そしてその希望を作り出すのは──魔法だって信じてるから!!!!』
オレも信じていた……魔法があれば何だって出来る……果てしない絶望の中でも希望を掴む事が出来ると。
『私にとって魔法は──仲間との絆の象徴なのよっ!!!!』
そうだ……魔法はオレと仲間を繋いでくれた絆そのもの。魔法があったからこそ最高の仲間と巡り合えた。
ティアナ・ランスター……お前の言っている事は間違ってはいない。かつてはオレも仲間や魔法と共に戦い、どんな絶望にだって立ち向かってきた。
だがそれでも──世界は残酷だ。
この世界に魔法がある限り、残酷な未来が変わる事はない。
だからこそ……オレは世界を創り変えると決めた。
その為にオレは──
名前も捨てた……誇りも捨てた……信念も捨てた……
そして──女である事さえも捨てた。
全てを失った私は……全てを捨てた。
私は────
「ウ…ウソ……!!!」
驚愕と動揺が入り混じった表情を浮かべながら、震える声でそう呟くティアナ。
その視線の先には、ティアナ自身が対峙しているロストの姿がある。だが先ほどまでと今では大きな違いがあった。
それはロストの顔を覆い隠していた仮面が粉々に割れて地面に転がっており…その影響でフードも剥がされて、今まで隠していたロストの素顔が明らかになっているのである。
「そんな…まさか……アンタは……!!!」
そしてティアナは震える唇を動かしながら、絞り出したかのような声で……静かに告げた。
「わ…たし……!!?」
そう……ずっと隠されていたロストの素顔。
その顔立ちは間違いなく──ティアナ・ランスターそのものであった。
第221話
『闇に堕ちた星』
「まさか……本当に仮面を剥がされるとは思ってなかったわ」
そう言いながらティアナとまったく同じ顔を持つロストは、嘆息混じりに自身の顔を片手で覆った。声も先ほどの男性のような口調と声質ではなく、彼女本来のものとなっていた。
髪の色は抜け落ちたように真っ白に染まり…膝まで届くほどで長く、ストレートに伸ばされている。顔立ちも現代のティアナとは違い、幼さが抜けて女性らしい顔立ちをしている。
だがそれでも彼女を見た者はこう答えるだろう……彼女は間違いなくティアナ・ランスターだと。
「アンタは…本当に……私…なの?」
「ええ、そうよ。私は正真正銘……未来のあなた自身よ」
その言葉を聞いた途端……ティアナは激しい動揺に襲われた。この世界を今まさに危機に陥れようとしている人物が、未来の自分だったのだから。
「でも、私はすでにティアナ・ランスターという名前は捨てている。今の私はロスト……世界を変える者よ」
微笑を浮かべながら静かにそう語る未来のティアナである……ロスト。
「ウソよ……何で…何で私が……!!?」
体を震わせ、信じられないという表情を浮かべながらそう言葉を口にするティアナ。
「一体アンタに……未来の私に何があったって言うのよ!!!?」
「……………」
ティアナのその言葉に対してロストは一瞬だけ目を伏せると、ゆっくりと語り始めた。
「今この時代から数年後……世界は崩壊したわ」
「!!?」
「〝
ロストはそこまで前置きをしながら、続けて驚くべき事実を言い放った。
「その災害の正体は〝
それを聞いた瞬間、ティアナは大きく目を見開く。
「当然私たちは戦った。
目を細めながらそう語るロストの表情はどこか憂いを帯びていた。
「そして……
「!!!」
「私の中には〝破壊の力〟と相反する〝創造の力〟が宿っていた。その力のおかげで私は生き残れたけど、代わりに力を使い果たした
ロストは真っ白に染まってしまっている自身の髪を靡かせながらそう言葉を続ける。
「今のあなたにはわからないでしょうね。生まれ育った国も…大好きだったギルドも…愛した仲間も…何もかもを失ったこの絶望感は……!!!」
そう言い放ちながら自身の顔を片手で覆い、その指の隙間から覗くロストの瞳は、暗く深い負の感情で染まっているように見えた。
「ホント…笑えるわよ。
この時代にやって来た3人の未来人であるルーシィ、ローグ、そしてロストことティアナの経験した未来の出来事はそれぞれ違う。だがそれでも、過酷な未来である事には変わりなかった。
「ねえ、どうしてだと思う? どうして世界はこんな事になってしまったと思う?」
ティアナに対して冷たい表情を浮かべながらそう問い掛けるロスト。そしてその答えがティアナの口から発せられる前に、ロスト自身が答えを言い放つ。
「魔法があったからよ。この世界に〝魔法〟という存在が溢れたせいで、ゼレフが生まれ…悪魔が生まれ…アクノロギアが生まれた。エクリプスだってゼレフ書の魔法と星霊魔法が合わさった装置……どれも〝魔法〟という存在が生んだ結果よ」
「けど…魔法は……」
「仲間との絆の象徴…でしょ。私も昔はそう思ってたわよ…あなたは私なんだから。でもね……私から仲間を奪い去ったのもまた──〝魔法〟なのよ」
「!!?」
「魔法によって紡がれた絆が、魔法によって断ち切られる……私はそれが1番許せないのよ」
そう語る度にロストの瞳が、段々と激しい憎悪の色へと染まっていく。
「だから私は世界を創り変えると決めた!!!! 魔法が蔓延るこの世界を破壊して、魔法の無い世界を創り上げるのよ!!!! 間違ってしまったこの世界を正す為に!!!!」
狂気と憎悪に染まった表情で、声高らかにそう言い放つロスト。
すると、これまでの話を今までずっと黙って聞いていたティアナが静かに口を開く。
「……ってない……」
「?」
「この世界は……間違ってなんかいない!!!!」
ロストに負けず劣らずの声量で力強くそう言い放つティアナ。
「アンタの言う通り、これからの未来には絶望が待っているのかもしれない……それでも私たちはこの世界で生きていくの!!!! 明日を信じて未来へ進む!!!! アンタにこの世界を否定する権利なんかない!!!!」
「……………」
そんなティアナを静かに見据え、彼女の言葉を黙って聞いていたロストは……やがて目を伏せながら口を開く。
「もうアンタがどれだけ吠えようが無駄よ。すでにこの世界を破壊する条件は整ったわ」
「条件?」
ロストのその言葉に疑問符を浮かべながら聞き返すティアナ。
「私が何故この時代にやって来て、わざわざローグの計画に協力したと思う?」
「…………」
「理由は2つ……1つは失った
「それで……どうなるっていうの?」
「今この時代には〝過去〟からやって来たドラゴン……〝現在〟を生きるあなたたち……そして私やローグの〝未来〟の住人……3つの異なる時代を生きる存在が集まっているわ。でもね、本来時の流れというのは決して交わらないもの。もしそれをムリヤリ交わらせてしまったら、時が乱れ、世界が歪む。つまり、今この世界はとても不安定な状態にあるのよ。ちょっとした刺激を与えれば簡単に壊れてしまうほどに」
「なっ……!!?」
「そしてその世界に刺激を与える〝爆弾〟というべきものも、私は持っている」
するとロストは未だに体を覆っているローブの中をゴソゴソと漁ると……そこから何やら手のひら程の大きさをした赤黒く、禍々しい輝きを放つ球体を取り出した。
「それは……」
「永遠の命と無限の魔力を生み出す無限連環機構……
「心臓!!?」
ロストの手にある赤黒い球体が、
「
ロストがそう問い掛けた瞬間…ティアナの脳裏に最悪のヴィジョンが浮かび上がった。
「まさか……アンタ……!!!」
「そう…未来で私たちの世界を崩壊させた
つまりロストは彼女の未来で起きた
「準備は全て整ってるわ。あとはあなたから世界を創り変える為の力…
「……そんな事させない。アンタが未来の私なら、私が止めてみせる」
キッと鋭い眼でロストを睨みながらそう言い放つティアナ。それを見たロストは小さく嘆息する。
「やっぱりそうなるのね。あんまり自分をイジめたくないから、穏便に済ませたかったんだけど……仕方ないわね」
そう言うとロストは身に纏っていたローブを掴んで、そのまま勢いよくそれを脱ぎ捨て……見た目はティアナと同じ衣服だが、白い生地の部分が黒く染まっている服装を露にした。
「ここからは私も本気よ。この戦いで全てを終わらせてあげる」
そして両手に握ったクロスミラージュに酷似した黒い装飾の双銃……ダークミラージュの銃口をティアナへと向けながらそう言い放った。
「絶対にさせない。たとえ相手が未来の私自身だろうと、私は私の守りたいものの為に戦う……だから私は未来を──ルーシィとの約束を守る」
それに対してティアナも、クロスミラージュの銃口をロストへと向けながらそう言い放ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃、王宮の方では……
「ラクサスさん!!!!」
「おう!!!!」
「ぬぐぅ!!」
ウェンディとラクサスが協力してジルコニスを相手に戦い……
「小型はオレたちで食い止めるんだ!」
「こいつら硬ェ……」
「でも、倒せない相手じゃない!!」
「さっき一瞬〝未来〟が見えたような」
「アンタも?」
その傍らで、雷神衆とミラジェーンが小型竜の大群を食い止めていた。
「姫……ここは魔導士たちに任せて引きましょう」
「護衛します」
「……いいえ……ここにいさせてください……私には見守る義務があります」
こんな事態を引き起こした張本人だからこそ、この戦いの先に待っている結果を見届けなければない……そう考えたヒスイは、体を震わせながらもそう言ったのであった。
「みんなーーーっ!!!」
「ルーシィ様! ユーノ様!」
するとそこへ、ルーシィとユーノの2人が慌てた様子で戻って来た。
「これ見て!!!」
そう言ってルーシィがヒスイたちに見せたのは1冊のメモ帳。
「なんですかこれは……」
「未来のルーシィのメモ帳だよ」
「未来のルーシィ?」
「ここを見て」
そう言ってルーシィが差し出したメモ帳をユキノが受け取り、ルーシィが差したページを読み上げる。
「『万が一この時代において
「これはどういう事だ」
「つまり今、この時代で
「未来に
「そうか…ローグが未来から来なければ」
「彼によって狂わされたこの世界の歴史が、本来の歴史に戻るハズ……という事ですね」
ルーシィとユーノの説明に、リリーとリニスが納得したようにそう言う。
「しかし…すでに起きてしまった事を止められるのでしょうか」
「うまくいけば、ドラゴンもローグも仮面の奴もこの時代から消える!!」
「やってみる価値はあるわ」
「しかし大きな問題が1つ。この巨大な建造物をどうやって破壊するかだ」
見た限りでも、巨大で頑丈そうな造りをしている
「ありったけの魔力をぶつけるしかないわね!!!!」
「行くよ!!!!」
「はい!!!!」
そう言うと、ルーシィとユーノとユキノの3人はそれぞれが持てるありったけの魔力をぶつけて
「そんな……」
「ビクともしない……」
「ここまで頑丈なのか」
3人の攻撃を受けても
「魔力耐性の強いマギナニウム合金を使っている。簡単に破壊など……」
「それでも……」
「諦める訳にはいかないんだ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
場所は戻ってティアナとロストの戦いの場……そこでは凄まじい轟音と共に大爆発のような衝撃が響き渡っていた。
「うっ…あ……ゲホゴホッ」
「……………」
その爆発の中心では……すでにボロボロの姿で地面に倒れ伏し、血反吐を吐いているティアナと……そんな彼女を冷たい眼で見下ろしているロストの姿があった。
「言ったでしょ。あなたと私じゃ年期が違う……潜り抜けて来た場数が違うのよ」
「こ…の……っ!!」
ロストの言葉に対して、ティアナはギリッと歯を食いしばりながら立ち上がり……同時に自身の周囲に多くの魔法弾を生成した。
「クロスファイアーシューーット!!!!」
そしてそれらの魔法弾を一斉にロスト目掛けて放つが……
「無駄よ」
それに対してロストもティアナと同じように自分の周りに黒い魔法弾を生成する。だがその数はティアナよりも圧倒的に勝っていた。
「クロスファイアー……シュート」
そしてそれらの魔法弾を一斉に放つロスト。その瞬間、両者の魔法弾の1つ1つが激しくぶつかり合い、その度に相殺されて消滅していく。そうなると必然的に数が勝っているロストの方が有利であり……
「ああああああ!!!!」
相殺し切れなかったいくつもの魔法弾がティアナを襲い、吹き飛ばされて再び地面に倒れるティアナ。
「諦めなさい。今のあなたより私の方が全てにおいて勝っている……
倒れるティアナを見下ろしながら冷たくそう告げるロスト。
「諦める…訳…ないでしょ……!!」
しかしロストの言葉に反して、立ち上がろうとゆっくりと体を起こし始めるティアナ。
「アンタだって…知ってるハズよね……相手が何だろうが立ち向かう勇気がある限り戦う……それが
そう言い放つと同時に、しっかりと立ち上がるティアナ。だがそんな彼女に対してロストは「フン」と鼻を鳴らす。
「もうそんなくだらない理念は捨てたわ。勇気だけでどうこうなるほど、現実は甘くないのよ」
「そうよ…その理念を捨てたからこそ、アンタは戦えなくなったのよ」
「……何ですって?」
言い返してきたティアナの言葉を聞いて、僅かに眉をひそめるロスト。
「アンタはこの世界で生きていく勇気を失った……世界に立ち向かう勇気を持たない奴が、世界を変えられる訳がない!!!! たとえこの
「そんなキレイごとが……通じるかぁーーーっ!!!!」
ティアナの言葉に激昂したロストは、ダークミラージュに黒い魔力刃を纏わせてティアナに斬りかかる。
「くっ…!!」
それに対してティアナも魔力刃で受け止め、応戦する。
「今のあなたは何も知らないからそんな事が言えるのよ!!!! 世界が壊れていく恐怖も…仲間を失った悲しみも!!!!」
「確かに私はアンタが味わった苦しみはわからない!!! けど…アンタがやろうとしている事が間違ってるって事はわかるわ!!!」
「間違ってるのは世界の方よ!!!! 本来なら闇の存在である魔法を世界に溢れさせた!!!! その過ちが世界を崩壊させたのよ!!!!」
「過ちなんかじゃない!!!! 魔法と共に生きる事が、間違いな訳がない!!!!」
「間違ってるわよ!!!!」
お互いに魔力刃で斬り合いながら、それぞれ胸の内の想いを言葉にして言い放つティアナとロストの2人。しかし……
「私は目の前で大勢の仲間を失い、何年も地獄のような場所で生きてきたのよ!!!! こんな世界が正しいハズがないっ!!!!」
「っ……!!!」
ロストの鬼気迫るかのような表情で言い放たれたその言葉に、思わず言葉を失い……同時に動きが鈍ってしまったティアナ。
その瞬間……ロストの魔力刃がティアナの体を斜め一閃に切り裂いた。
「か……はっ……!!!」
体を切り裂かれたティアナは血反吐を吐きながら、力無く地面に仰向けに倒れる。
「正しいって…言えるの……?」
そんなティアナを、ロストが悲しみと絶望の入り混じった瞳で静かに見下ろす。
「それ…でも……」
「!!」
すると、ティアナは地面に倒れながらも、ロストの問い掛けに答えるように口を動かし始めた。
「やっぱり…私…は……アン…タの…やろうとしてる事に…は……納得…できない……」
「どうしてよ!? この世界を創り直して魔法が存在しなくなれば、ゼレフもゼレフ書の悪魔も生まれる事無く、新しい未来を手に入れる事ができるのよ!!! あなたも私なら理解できるハズよ!!!」
「確か…に…その…方が……世界の為にも…なるのかも…しれない…理解も…できる……けど……正しいとは…思えない……だって──」
そこまで言うとティアナは、呼吸を整える為に一旦区切り、深く深呼吸をしたあと再び口を開く。
「だってそれじゃあ──今まで仲間と過ごした時間も、否定する事になるじゃない」
「!!!?」
ティアナが言い放ったその言葉に、初めて動揺したように大きく目を見開くロスト。
「ナツやハッピー…ルーシィにエルザさん…なのはさんやスバル……ギルドのみんなと笑ったり…怒ったり…ケンカしたり…騒いだり……そんな楽しかった日々も、間違いだって否定できるの?」
「それ…は……」
「アンタがやろうとしているのは…そういう事よ。世界を壊して創り変えるという事は、これまで過ごした時間を全てリセットするという事……ギルドの仲間との思い出も…記憶も…絆も…何もかもが0になってしまう。私はそんなの絶対にイヤ……たとえアンタのように全てを失ったとしても……仲間と過ごしたかけがえのない思い出だけは絶対に失わない。私がその想いを忘れない限り──みんなとの絆が断ち切られる事なんてないんだから」
「…………!!!」
ティアナの強い想いの篭ったその言葉に、顔を俯かせてまるで葛藤するように小刻み体を震わせるロスト。
しかし……
「もう遅いのよ」
「がっ!!」
それも一瞬の事で……次の瞬間には、ロストは倒れていたティアナの首を鷲掴みにしてそのまま宙吊りのように持ち上げた。
「私はこの手で…ナツを刺した…仲間をキズつけた…もう──後戻りはできないのよ」
そして……どこか悲しげな表情でそう呟くと、ティアナとロストの2人の体が輝き始める。
「これ…は……?」
「
すると、ティアナの体の一部が粒子となってロストに吸い込まれ始める。
「本来なら人間同士の
ロストがそう語っている間にも、ティアナの体が粒子になって吸い込まれ、彼女の体が薄っすらと透明になっていく。
「く……あっ……」
段々と体中から力が抜けていき、意識を保つ事すら難しい虚脱感に襲われるティアナ。
そして……
「さようなら──ティアナ・ランスター」
その言葉を最後に……ティアナは意識を手放したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「!!……ティア?」
同時刻……アトラスフレイムと共に未来ローグとマザーグレアを相手に戦っていたナツは、突然戦いの手を止めて、何かを感じ取ったかのように未来ローグに背を向けて街外れの丘の方へと視線を向けた。
「どうしたナツ!?」
アトラスフレイムがそう問い掛けるが、ナツは答えずに街外れの方を見据え続ける。
「よそ見とは余裕だな!! ナツ・ドラグニル!!!」
当然そのスキを未来ローグが見逃すハズもなく、白影竜となった姿でナツへと襲い掛かるが……
──ガシッ!!
「なっ!!?」
何とナツは後ろから襲い掛かってきた未来ローグを一瞥する事もなく、彼の腕を掴んで攻撃を受け止めたのだ。
「少し黙ってろ」
「がはっ!!!」
そしてそのまま容赦なく未来ローグを殴り飛ばしたあと、ナツは再び街外れの方を見つめる。
「ティア……」
ナツには何となくだがわかっていた。今自分が見ている方角でティアナが戦っている事を……そしてその相手が仮面の奴だという事も……それがどれだけ残酷な戦いという事かも。
ナツはロストの仮面に隠されていた正体を知っている……だからこそ、今ティアナがどれだけ苦しくて辛い戦いをしているかは想像できる。
だがそれでもナツは信じていた……ティアナなら必ず打ち勝つ事が出来ると。
だからナツは様々な想いを言葉にして、ティアナがいるであろう方角に向かって呟くように言い放った。
「負けんじゃねーぞ──ティア」
そう言い終えると、ナツは未来ローグへと視線を戻し、自分の戦いに集中したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「これで全てが終わる……やっと……みんなに会える」
ティアナから力を吸収しながらそう呟き、目尻から一筋の涙を流すロスト。
だがその時……
──ガッ!!
「!!?」
突然、気を失っていたハズのティアナの手が彼女の首を掴んでいるロストの手首を握った。
「まだ……終われない……!!!」
「うあっ!!!」
その瞬間ティアナに掴まれたロストの手首からメキィっと、骨が軋むような音が響き、あまりの激痛にロストは思わずティアナの首から手を放す。同時に
「ハァー…ハァー…ハァー……」
「あなた…どこにそんな力が……!!?」
先ほどまでのティアナは明らかに瀕死寸前であった。にも関わらず、ロストの手から逃れ、息を乱しながらも尚も立ち上がるその底力にロストは驚嘆する。
「聞こえ…たのよ……ナツの…声が……」
そう言ってフラフラになりながらも、足元に落ちていたクロスミラージュを拾い上げるティアナ。
『負けんじゃねーぞ──ティア』
すると、再びティアナの耳にこの場にいないハズのナツの声が聞こえた。それは幻聴かもしれないし、都合のいい妄想なのかもしれない……だがそれでも、その声にはどこか温かさがあった。
その声を聞いた瞬間に、不思議と心の底から力が湧き上って来るのを感じ取った。
そしてその声に対して、ティアナはニッと笑いながらこう返した。
「わかってるわよ……うるさいわねっ」
そう呟いた次の瞬間……強大な魔力がティアナから放出された。
「なっ……!!?」
その光景を見てロストが驚愕していると……ティアナから噴き出した魔力がそのまま彼女の体を包み込み、淡い光となってティアナの体を覆っていた。
「ウソ……そんな…まさか……!!!」
そんなティアナの姿を見たロストは、信じられないと言いたげな表情を浮かべ、震える唇を動かして、目の前で起こっている現象を口にする。
「スターレイヴァー……!!?」
つづく
ティアナと未来ティアナ(ロスト)の相違点。
・見た目はぶっちゃけ、原作stsのティアナと原作Forceのティアナです。
・未来ティアナの髪の色は白。星の創造主としての力を使い切ってしまった影響だと思われる。
・服装と武器は、普段のティアナの服装とクロスミラージュの白い部分を黒くしただけ。2Pカラーと言われても反論の余地はない(-_-;)
こんなところですかね。