今回もほとんど原作沿いですので、あまり目新しい場面はありませんが、どうかご容赦ください。
感想お待ちしております。
未来ローグが操るドラゴンの1体……マザーグレアが生み出した小型ドラゴンと魔導士ギルドの戦いは鮮烈を極め、キレイな花で溢れていたクロッカスの街並みは見る影もなくなっていた。
「うあっ!!!」
そんな戦場の中で、エルザは小型竜の大群に取り囲まれ、追い詰められていた。
「(足が動かない……)」
大魔闘演武で負った右足のケガがエルザから機動力を奪い、いつもの戦闘のキレが出せずにいたのだ。仲間からもその事を指摘され、休むように言われていたが、エルザは「問題ない」と言って戦場に赴いたのだ。
「(情けない……弱音すら吐けないのか私は……そんなのは強さじゃないと、わかっているのに……)」
そんなエルザの心情などお構いなしに、一斉に彼女へと襲い掛かる小型竜の群れ。
「(ここまでか……)」
そしてエルザが自身の最期を悟ったその時……
──ドッ…ゴォォォォオオオン!!!!
エルザの前に颯爽と現れたジェラールが……一瞬で小型竜を一掃し、彼女の危機を救ったのであった。
「手を貸そうか?」
「すまない」
そう言って優しく手を差し伸べるジェラールの顔を見たエルザは、安堵の表情を浮かべて彼の手を取った。
だがその時……
「ジェラール」
そんな2人の前に、ミリアーナが現れた。
「ミリアーナ」
「…………」
そしてジェラールの姿を見たミリアーナは……その瞳を憎悪に染め、彼を睨んだのであった。
第219話
『命の時間』
「ジェラール……!!」
「待てミリアーナ」
「いいんだエルザ」
「よくない。私はジェラールを許した」
「なんでジェラールをかばうの? シモンを殺したんだよ。私たちを塔に閉じ込めたんだ。許せない!!! 私は絶対に許せない!!!! ジェラールを殺してやるんだ!!!!」
「そんな事をしても何も残らん!! 何も得られんぞ!!」
「だから許せって言うの!!? 間違ってるよ!!!」
エルザの説得にも耳を貸さず、そう怒鳴り声を上げるミリアーナ。すると……
「そうね……間違ってるわ」
そこへ、ウルティアが現れた。
「そもそもジェラールを恨む事自体見当外れだわ」
「アンタ誰?」
「ジェラールを影で操っていた女よ」
「!!」
「よせ、ウルティア」
「私はそういう女」
そう言い放ったウルティアの顔には妖しい笑みが浮かび上がり、それを見たミリアーナはゾクリと背筋を凍らせた。
「やっぱりダメね…いくら正義の味方ごっこをやっても…私は……きっと根が腐ってる」
「何かあったのか?」
「別に……それより、こんなトコでボサッとしてる場合じゃないわよ。小型のドラゴンはまだウヨウヨいる。手分けして探しましょ」
どこか憂いを帯びているウルティアの言葉にジェラールが問い掛けるが、ウルティアはそれには答えずに指示だけを出した。
「それとね子猫ちゃん」
「!」
「シモンを殺したのは私。楽園の塔を作らせたのも私。恨みがあるなら生き残りなさい。後でたっぷり相手してあげる」
そう言い残すと、ウルティアはヒラヒラと手を振りながらその場を去って行った。
「あいつも本当は被害者だ。幼い頃から正しい事を教わってこなかった」
「私……もう、何がなんだか……」
「どうかしてるよ、この世界は」
「それでもこの世界で生きていくんだ、私たちは……」
そう言って複雑な表情を浮かべるエルザたち。
そしてその様子を物陰から見ていたカグラもまた……複雑な表情を浮かべながら、ジェラールを殺す為に抜きかけていた不倶戴天を鞘へと納めたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方で、ドラゴンを呼び込んだこの惨状を7年後の未来の自分の仕業だと知り……自責の念と絶望で膝をついたローグ。
「何ボケっとしてんだァ!!!!」
「! スティング」
するとそんなローグのもとに、スティングが駆け寄って来た。
「手ェ貸してやる!!! 行くぞ!!!」
「お前……1頭倒したのか?」
「いいや──つれて来ちまった」
そんなスティングの背後から現れたのは、彼が相手をしていたハズのもう1頭のドラゴンであった。
「何!!?」
「あははははははっ!!」
「笑い事かっ!!?」
「何だかんだ言っても、コンビって事だ」
ドラゴンのいる場にもう1頭ドラゴンをつれて来るというスティングの行動に怒鳴るローグだが、スティング本人は愉快そうに笑った。
「シザーランナー、捕獲任務というのは骨が折れる。手を貸せ」
「知った事かリヴァイア!! オレは人間どもを全て消し去る!!!!」
どうやら体の至る所にヒレのようなものを生やしているドラゴンはリヴァイア……鋏のような形状をした頭部を持つドラゴンはシザーランナーという名前らしい。
「双竜の力、見せてやろうぜ」
「……ああ」
笑みを浮かべながらそう言い放つスティングの言葉に、ローグはどこか安心したように笑みを浮かべて頷いたのであった。
すると……
「2人だけじゃないよ!!」
「私たちもいます!!」
「「!!」」
そんな声とと共にスティングとローグの前に現れたのは……小型竜の包囲網を突破してきたヴィヴィオとアインハルトの2人であった。
「
「はぐれてしまって申し訳ありません。ですが今度こそ、一緒に戦います」
そう言って傍に駆け寄ってくるヴィヴィオとアインハルトの2人を見て、スティングとローグは自然と笑みを浮かべた。
「ハハッ!! 聖王様と覇王様が味方についてくれるとは…もう負ける気がしねえなローグ!!!」
「ああ…まったくだ」
そう言うとスティングはヴィヴィオと…ローグはアインハルトと並び立ち、それぞれ背中合わせになってリヴァイアとシザーランナーと対峙したのであった。
「(そうさ!! コイツ等がいる限り大丈夫!!! オレが悪に染まるなら〝仲間〟がオレを止めてくれる。仮に染まってしまったとしても〝光〟がオレを殺すだろう)」
心強い仲間と相棒に包まれたローグの表情には、もう自責の念も悲壮感も払拭され……どこまでも真っ直ぐとした表情が浮かんでいた。
「遅れんなよヴィヴィオ!!!」
「スティングこそヘマしないでよね!!!」
「行くぞ、アインハルト」
「はい、ローグさん」
そしてスティングとヴィヴィオ…ローグとアインハルトは、それぞれの敵へと立ち向かっていったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃…ジェラールたちと分かれたウルティアは、崩壊した街中を1人顔を俯かせながら歩いていた。
「世界を元に戻すには、ローグを殺すしかない……殺すしか……」
ポツリとそう呟くと同時に、ナツに言われた言葉が脳裏で反響する。
『殺す……とか、オレたちまで道を間違えるつもりかよ』
するとウルティアは、よろっと体制を崩すと、その場に膝をついていまった。
「(思いとどまった……殺さなかった……だけどそこじゃない。私は何の罪もない人間を…殺そうとした!!!)」
一瞬でもローグを殺してしまおうと考えてしまった自分自身に対して、嫌悪を露にするウルティア。
「(極めて短絡的に……人の命を消そうとした……私はやっぱり変わってない。何が魔女の罪よ──私の罪は禊ぐ事はできない)」
そしてウルティアは……1人静かに涙を流したのであった。
「(私にはもう……生きる資格がない……)」
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方……崩壊した民家を遮蔽物にして小型竜を迎え撃っていたグレイ、なのは、ジュビア、リオン、ギンガの5人。
「ジュビアーーッ!!」
「メルディ」
そこへまた1人、メルディが合流する。
「ウル見なかった? はぐれちゃって」
「見てないけど……」
メルディがはぐれてしまったウルティアを見てないかと尋ね、それに対して見てないと答えるジュビア。
「ジュビアちゃん!! メルディ!!」
「危ねえ!!」
「「!!」」
するとその時……グレイとなのはがそんな2人を地面に押し倒して伏せさせ、その瞬間4人の頭上を小型竜の放つレーザーが通過した。
「ボーっとするなっ!!」
「ここは今戦場なのよ!!」
そう言ってジュビアとメルディを叱咤しながら小型竜を撃破するリオンとギンガ。
「ごめん」
「あああ…グレイ様がジュビアのお尻を……」
「ジュビアちゃん、今それどころじゃないから……」
「なのは、ジュビア」
すると、唐突にグレイが深刻な表情で2人の名を呼ぶ。
「お前らに1つ言っておきてぇ事がある」
「「!!」」
そんなグレイの表情を見てただ事ではないと判断したなのはとジュビア。
「な…ななな何の話ですか!!?」
「いや……大した事じゃねーんだけど……」
「私とジュビアちゃんには大した事かもしれないの!!」
「壮絶な勘違いオチと見た」
そしてグレイがゆっくりと口を開こうとしたその時……
「ジュビアーーーー!!!!」
「!?」
リオンの叫びが聞こえ、気がつけば1体の小型竜がジュビアに向かってレーザーを放とうとしていた。
「ジュビアちゃん!! 危ないっ!!!」
「!!? なのはっ!!!」
するとその瞬間……ジュビアの体をなのはが突き飛ばし、そんななのはを庇うようにグレイが彼女の体を抱き締める。
だが無情にも……小型竜の放ったレーザーはグレイとなのは──2人の胸を貫いた。
その光景にリオンやギンガ、メルディが愕然としている間にも……複数の小型竜が続けてグレイとなのはに向かってレーザーを放ち、2人の体にいくつもの風穴を開けていく。
「なの…は……」
「グ……レ……」
そして最後に放たれたレーザーが2人の頭を撃ち抜き──その命を奪い去ったのであった。
「いやぁぁぁぁあああああああ!!!!」
「グレェーーーーーイ!!!!!」
「なのはさぁぁぁあん!!!!!」
その瞬間…リオンとギンガの絶叫が響き渡り、その場に泣き崩れるジュビア。
「シェリアーーーッ!!!! どこにいるのーーーっ!!!! シェリアーーー!!!!」
「お前の回復魔法で……グレイを…2人を…頼むよ……」
涙を流しながら回復魔法を扱えるシェリアを探すリオンとギンガ。だがもう……すでに2人とも手遅れなのは目に見えて明らかである。
「……………」
「頭を撃ち抜かれてる………」
そんな2人の亡き姿を目の当たりにしたジュビアは、ただ呆然自失とした表情で涙を流し……メルディも声を震わせて涙したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そんな出来事を皮切りに……魔導士と小型竜の戦いは、魔導士たちの不利へと傾き始めていた。
「ぐああああああああ!!!」
小型竜の腕に腹を貫かれるバッカス。
「誰かっ!!! 誰か来てくれーーーっ!!! ドロイが息してねえっ!!! 息してねえんだよっ!!!!」
力尽きて倒れたドロイの体を抱き起し、涙を流しながら叫ぶジェット。
「父ちゃん!!!」
「オレはいい!! ワカバ!!! ロメオを頼む!!!!」
多くの小型竜に体を取り押さえられて逃げ場を失ったマカオ。
「ぐっ…うぅ……ここまで……か」
「ザフィーラ!!! 死んじゃダメよ!!! ザフィーラ!!!!」
体中をレーザーで貫かれて血塗れのザフィーラに、必死で回復魔法をかけるシャマル。
「キリエ!!! お願いですから…目を開けてください……キリエェーーー!!!!」
意識のないキリエの体を抱き締めながら泣き叫ぶアミタ。
1つ……また1つと……多くの命が失われていったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そんな中で、未だに1人地面に膝をついて座り込んだ体制で呆然と虚空を見つめているウルティア。
「(私の人生は呪われていた……人を欺き、人を笑い、人の命を奪ってきた……だけどグレイ……あなたが私に人として生きるチャンスをくれた。独立ギルド〝
そんな自己嫌悪に陥ってしまったウルティアの脳裏に蘇るのは……まだ彼女が
その中にあった『時を戻す事ができる魔法』……〝ラストエイジス〟
だがその魔法には時を戻す代償として術者の〝時〟……つまりは〝命〟を捧げなければならない。
マスターハデスにその話を聞かされた幼いウルティアは、時を戻したその先に自分が望む世界はないと言って……その魔法を封印した。
しかし……
「(今なら望むわ……私の命ごときで世界を元に戻せるなら……私はこの命を捧げる!!!!)」
そう決意したウルティアは両手を地面につけ、膨大な魔力を解放する。
そして……
「時のアーク──ラストエイジス!!!!」
ウルティアは……禁断の魔法を発動させた。
その瞬間、彼女の全身に血管が浮かび上がり……身を焼き尽くすかのような激痛が襲い掛かる。だがそれでも彼女は魔力を放出し続ける。
「(お願い!!! 世界を元に……せめて……
そして……彼女の願い通り──世界中の時が巻き戻される。
あとに残ったのは、魔法の影響で全身がまるで焼け焦げたように黒く変色したウルティアの姿であった。
「(時が……戻っ……)」
薄れゆく意識の中で、街の時計塔へと視線を移すウルティア。
彼女がラストエイジスを発動させたのは──午前1時30分。
そして時が巻き戻った現在の時刻は──午前1時29分であった。
「(1分……!!? 私の…命の代価が……1分…だけ……!?)」
己の命を懸けた決死の魔法…ラストエイジス。そこまでして戻った時がたった1分だけだという事実に絶望するウルティア。
「(そんな……私は誰1人として救えなかった)」
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして……ウルティアが戻した1分前の世界では……
「ジュビアちゃん!! メルディ!!」
「危ねえ!!」
「「!!」」
グレイとなのはが、ジュビアとメルディの2人を地面に押し倒して伏せさせて庇い、その瞬間4人の頭上を小型竜の放つレーザーが通過した。
「ボーっとするなっ!!」
「ここは今戦場なのよ!!」
そう言ってジュビアとメルディを叱咤しながら小型竜を撃破するリオンとギンガ。
「ごめん」
「あああ…グレイ様がジュビアのお尻を……」
「ジュビアちゃん、今それどころじゃないから……」
「なのは、ジュビア」
すると、唐突にグレイが深刻な表情で2人の名を呼ぶ。
「「「!!」」」
だがその瞬間……その場にいた全員の脳裏に、グレイとなのはが小型竜に殺されるという映像が浮かび上がった。
「何だ!? 今の!?」
「オレとなのはが殺される!?」
「どういう事…!?」
「夢!?」
「こんな戦場の中で?」
「ジュビアも見ました!」
突然浮かび上がった映像に、全員が困惑する。
「何だよ!? 突然……!!! 自分が死ぬ幻覚とか不気味すぎんぞ!!!」
「確かに…気持ちのいいものじゃないよね」
特にグレイとなのは、自分が死ぬという映像に表情を歪ませる。
「あの辺りから小型が現れて……」
そう言ってメルディが映像で見た小型竜が現れた場所を指差し、全員がその場所を注視する。
するとその瞬間……映像で見た通り、物陰から複数の小型竜が姿を現した。
「本当に来やがった!! どうなってる!!?」
「誰かが教えてくれたのか!!?」
「みんな下がって!! ディバインバスタァー!!!!」
それを見て、なのはがすぐさま砲撃を放って小型竜を一掃する。
「誰が……」
この時……運命が大きく変わったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その日、世界中の人々が1分先の未来を見た。
だが……まるで夢のようにすぐに記憶から消えてしまった為、この怪現象を気にとめる者は少なかった。
しかし、戦いの最中の魔導士たちには──1分の未来は生死を分けた。
「こっちは危ねえぞ!! あっちだ!!」
「何ださっきの」
「夢……っていうか」
「未来の映像のような……」
「ここにいたらヤバそうだな」
「何かの予知……?」
「とりあえず、ここを離れるぞ」
ジェットとドロイ…ロメオとマカオとワカバ…シャマルとザフィーラは脳裏に浮かんだ映像と同じ事になるのを避ける為にその場から離れる。
彼らだけでなく、バッカスやフローリアン姉妹も……未来の映像とは異なる行動を取った事で、最悪の未来を回避した。
ウルティアが作り出した1分の時間は……多くの魔導士の命を救った。
そしてその1分は──人類の反撃の起点となったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ん? 何だ今のは……時の流れが揺らいだ?」
その頃……街外れの岩場の丘で、時の流れに違和感を感じて疑問符を浮かべているロスト。
「よそ見してんじゃないわよ!!!」
「!!」
そんなロスト目掛けて複数の魔法弾を放つティアナ。それに対してロストはすぐさま反応して後ろに大きく跳躍し、その攻撃を回避する。そしてそのまま地面に着地したロストは、余裕そうに近くの岩の上に腰かけながらティアナに問い掛ける。
「ずいぶんと必死だな。そんなにこの世界の未来を守りたいのか?」
「当たり前でしょ。未来のルーシィと約束したのよ……未来を守るって!!!」
その問いに対して強くそう言い放っって答えるティアナ。だがロストはまるで、くだらないと言わんばかりに「フン」と鼻を鳴らす。
「こんな絶望しか待っていない世界の未来に何の価値がある?」
「絶望……?」
「そう……絶望だ。この世界にはもう……絶望という名の未来しか待っていない。たとえローグやドラゴンを退けた所で、それは変わらん。どう転ぼうがこの世界の行き着く先は決まっているのだからな」
仮面の奥に隠された瞳でティアナを見据えながらそう語るロスト。
「ローグの奴は支配したドラゴンでアクノロギアを討ち、ドラゴンの王になろうとしているらしいが……無意味な事だ。本当の絶望という力の前では──ドラゴンですら無力だと言うのに」
「だから……アンタはその無意味な計画を利用しようと考えた訳ね」
「!」
ロストの言葉に対して、そう言い放つティアナ。その言葉にロストは僅かに反応する。
「ずっと考えてたのよ……話を聞く限りじゃ、アンタはドラゴンの力にはまったく興味がない。だったら未来のローグの計画にただ協力してもアンタには何のメリットもないハズ。なら何故協力したのか……考えられるのは1つ──その計画を利用して自分の目的を達成する足掛かりにする為……違う?」
「……フッ」
そう言って自身の推測を述べるティアナ。それを聞いたロストは一瞬の沈黙の後、小さく笑い声を漏らす。
「その通りだ。ローグの計画なぞ……オレの目的の〝第1段階〟に過ぎん」
「……アンタの目的は何?」
ティアナの推測を肯定しながらそう述べるロスト。それに対してティアナが問い掛けると……ロストは「ククク……」と不気味に笑い、腰かけていた岩の上に立って赤い月を背にしながら静かに語った。
「オレが望むのは魔の法が存在しない世界──この世界から絶望の種である〝魔法〟そのものを完全に消し去る事だ」
つづく