LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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2話目です。

今回は内容はタイトルでお分かりだと思います。

最近原作キャラとリリカルキャラがイチャついてねーなと思い、この2人にがんばって頂きました(笑)

まぁちょっと悪ノリしすぎましたけどね。

ただし反省はしていません(`・ω・´)キリッ

ただし自分はラブコメを書くのはヘタクソですので、かなりグダグダだと思いますが、どうかご了承ください。

感想お待ちしております。


聖王と白竜

 

 

 

 

 

その日の夜……昨夜と同じくクロッカスの街の人目に付きにくい場所で、エルザとジェラールが今日も情報交換を行っていた。

 

 

「なに? ゼレフに似た魔力を?」

 

 

「ああ。今日のトーマという少年との試合中に、それが感じられた」

 

 

「そうか……やはり大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の奴等と関わりが?」

 

 

「いや、その線は薄いだろう」

 

 

「何故だ?」

 

 

「オレも初めはあのトーマからゼレフに似た魔力が感じられると思っていたが、試合中によくよく観察してみると、魔力の出所がトーマではないという事が明らかになった」

 

 

「では、その魔力の出所は掴んだのか?」

 

 

「いいや……ゼレフに似た魔力は試合中に消えた……いや、かき消されたと言うべきか」

 

 

「かき消された?」

 

 

「今日の試合で、トーマが最後に放った白い砲撃……どうやらアレは魔力をかき消す効果があるらしく、会場に漂っていた禍々しい魔力すらも吹き飛ばしてしまった。だから未だに魔力の出所が人物なのか装置なのかすらハッキリしていない」

 

 

「だが今日その魔力が出現したという事は、明日以降もまた現れる可能性があるかもしれんな」

 

 

「ああ。だから明日の競技にはオレが出るつもりだ。もしかしたら会場に僅かでも魔力の残痕が残されているかもしれないしな」

 

 

「……本音は?」

 

 

「1日目の失態を取り返したい……と言ったところか」

 

 

「まったくお前は……」

 

 

そんなジェラールの正直な発言により、先ほどまでのシリアスな空気が瓦解し、エルザは思わず苦笑を浮かべた。

 

 

「出るのは構わんが、決して正体がバレるような事はするなよ」

 

 

「わかっている。ウルティアからも同じ事を注意された」

 

 

「フフッ……じゃあ、また明日な」

 

 

「ああ。お休み、エルザ」

 

 

そして一通りの情報交換が終わったあと、エルザとジェラールはその場で別れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第186話

『聖王と白竜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……クロッカスの街の中心部にある広場。

 

 

夜もすっかり暮れて人気がなくなったその広場に、1人の少女の姿があった。

 

 

「ハッ!! ヤァッ!!!」

 

 

その少女とは……誰もいない虚空に向かってパンチやキックなどの放ち、格闘練習をしているヴィヴィオであった。

 

 

「(今日みたいな試合じゃ全然ダメだ……パパやみんなの足を引っ張らないように、もっと強くならないと!!!)」

 

 

今日のラグナとの戦いで引き分けに終わってしまったヴィヴィオ。グレイやエルザたちは「よくやった」と褒めてくれたが、どうやら彼女自身は納得がいっていないらしく、宴会を抜け出してこうして夜のトレーニングに励んでいるらしい。

 

もちろんこんな事をしても今すぐ強くなれる訳ではないという事はヴィヴィオも理解しているが、それでも何かやっておかないと落ち着かないようである。

 

 

「こんな夜中にトレーニングかよ。意外と熱心だな……お前」

 

 

「!」

 

 

すると突然、そんなヴィヴィオの後ろから誰かが声をかけながらやって来た。それに反応したヴィヴィオはすぐさま振り返って声の主を確認すると、そこに立っていたのは……

 

 

 

「──スティング」

 

 

 

その人物とは、剣咬の虎(セイバートゥース)の双竜の一角と言われる青年……スティングであった。

 

 

「何してるの? こんな時間に」

 

 

「なんか妙に寝付けなくてな。夜風に当たるついでに散歩してたんだ」

 

 

「レクターは?」

 

 

「宿で寝てる」

 

 

「「……………」」

 

 

そんな短い会話のあとで言葉に詰まり、互いに無言になるスティングとヴィヴィオ。

 

 

「なあ……少し話さねえか?」

 

 

するとスティングは、広場に設置してあるベンチを指差しながらそんな提案を持ちかけた。

 

 

もちろん断わる理由が無いヴィヴィオはそれを了承し、スティングとヴィヴィオは2人並んでベンチに腰掛けた。

 

 

「珍しいね、スティングがこういう事に誘ってくるなんて」

 

 

「別に…久しぶりにお前とこうして話すのも悪くねーと思っただけだ」

 

 

「にゃはは、それもそうだね。私も気分転換にちょうどいいし♪」

 

 

「そういやぁ、今日のお前の試合…結構いい勝負だったんじゃねーか?」

 

 

「引き分けだったけどね」

 

 

「そう言うなよ。ナツさん程じゃないにしろ、意外とお前が強くて驚いたんだぜオレ」

 

 

「わざわざナツさんと比べないでよ。本当にスティングってばナツさんの事ばっかりなんだから」

 

 

「仕方ねーだろ、なんたってナツさんは──」

 

 

「オレが越えるべき人だから──でしょ? 1年前も同じような事言って、ホント変わってないんだから」

 

 

相変わらずナツの事しか頭にないスティングに対して呆れたように嘆息するヴィヴィオ。

 

 

「あ…試合と言えばさ、スティング」

 

 

「ん?」

 

 

「昨日の私の水着とかウエディングドレス姿、どうだった?」

 

 

「ブホッ!!?」

 

 

突然そんな事を訪ねて来たヴィヴィオに、スティングは思わず動揺して噴出してしまった。因みにヴィヴィオの言う昨日の事とは、大会2日目のミラジェーンvsジェニーの試合で起こった乱入コスプレ対決の事である。

 

 

「おまっ…何だいきなり!!?」

 

 

「なに動揺してるの? 感想聞いてみただけじゃん」

 

 

「別にお前の水着姿なんざ見ても何とも思わねーよ」

 

 

「え~? 本当かな~?」

 

 

そっぽを向きながらそう答えるスティングに対し、まるでイタズラっ子のような笑みを浮かべながら彼の顔を覗き込むように詰め寄るヴィヴィオ。

 

 

「くっつくんじゃねーよ!!」

 

 

「女の子に密着されて照れてるの? スティングってば意外と子供~♪」

 

 

「テメェはオレより4つ下だろうがっ!!!」

 

 

「そんな年下の女の子に迫られて焦ってるスティングって、もしかしてヘタレ?」

 

 

「誰がヘタレだテメェ!!!」

 

 

「にゃはははっ♪」

 

 

そんなスティングの反応を楽しみながら満面の笑顔を浮かべるヴィヴィオ。そしてそんなヴィヴィオの笑顔を見た瞬間……スティングはポツリと口を開く。

 

 

「……お前……ずいぶんと変わったよな」

 

 

「ほえ?」

 

 

突然そんな事を言い出したスティングに対して、思わず疑問符を浮かべながらキョトンと首を傾げるヴィヴィオ。

 

 

「1年前のお前はまったく笑わねえ奴だったのに、今じゃスッゲェ楽しそうに笑えてる」

 

 

「あー…確かにあの頃の私はそうだったね」

 

 

確かにナツたち天狼組が行方不明になって帰ってくるまでの7年間、ヴィヴィオの笑顔は失われていた。それを思い出したヴィヴィオはどこかバツの悪そうに苦笑を浮かべる。

 

 

「1年前は笑顔どころか、ずっと今にも泣き出しそうな顔してたくせにな」

 

 

「あう……」

 

 

「オレやレクターがどんだけ声かけても、ずーっと無愛想だったしな」

 

 

「ううっ……」

 

 

「あとそういやぁ、初めて会った時も……」

 

 

「も…もうその話はやめてよぉ!!!」

 

 

先ほどの仕返しと言わんばかりに昔の話を持ち出してくるスティングに、ヴィヴィオは顔を真っ赤にしながらストップをかける。

 

 

「スティングの意地悪」

 

 

「お互い様だ」

 

 

意地の悪い笑みを浮かべながらそう言い放つスティングに対して、ヴィヴィオは彼をジト目で睨みながら「むぅっ」と片頬を膨らませる。

 

 

「んで……今のお前がそんな顔して笑うようになったのは、やっぱナツさんたちが帰ってきてからか?」

 

 

「うん…そうだね。私はパパやママはもちろん、ナツさんもティアナさんもルーシィさんも…ギルドのみんなが大好きだから。大好きな人たちと一緒にいられるっていうのはそれだけで幸せな事で、自然と笑顔になれるんだよ」

 

 

「ふーん……オレにはよくわかんねーな」

 

 

胸に手を当てて誇らしげに微笑みながらそう語るヴィヴィオの言葉を、どこか面白くなさそうな表情で聞いているスティング。

 

 

「いつかわかる時がくるよ、スティングにも」

 

 

「ケッ…今のオレの目標はナツさんを越える事だけだ。そんなくだらねー事を考えてる余裕はねぇんだよ」

 

 

「もう……」

 

 

毒づきながらそう言い放つスティングに対して、嘆息しながらも苦笑するヴィヴィオ。

 

 

「でも言っとくけどナツさんは凄く強いよ。いくらスティングでも勝つのは難しいと思うなぁ」

 

 

「知ってるさ。けどオレは負けねぇよ」

 

 

「そう。まぁ私はもし2人が戦ったら断然うちのナツさんが勝つと思ってるけどね」

 

 

「ケッ、言ってろ」

 

 

そう言うと面白くなさそうにそっぽを向くスティング。するとそんな彼の態度に気がついたヴィヴィオは、ニヤニヤと笑いながら再び彼に詰め寄る。

 

 

「あれ~? もしかして拗ねた? ねぇ拗ねた?」

 

 

「拗ねてねえよ!!! つーかくっついてくんなっての!!!」

 

 

「あっ、また照れてる~!! スティングってばかわいい~♪」

 

 

「うっせェ!!! いいから──放れろっ!!!!」

 

 

するとスティングはそんなヴィヴィオを引き剥がす為に、彼女の体を突き放すように思いっきり手を突き出す。しかし……

 

 

 

──モニュッ

 

 

 

「ふえっ……?」

 

 

「!!!!??」

 

 

スティングが突き出したその手は……あろう事かヴィヴィオの胸を鷲掴みにする形となっていた。

 

 

「………………」

 

 

「………………」

 

 

片や顔を段々と真っ青に染め、身体中から冷や汗を滝のようにダラダラと流し……片や対照的に爆発するのではないかと言うほど顔を羞恥で真っ赤に染め、小刻みに震えている。

 

 

 

 

 

「にゃあああああああああっ!!!!」

 

 

 

 

 

直後……そんな悲鳴と何かを引っぱたくような音が、夜の広場に響き渡ったのであった。

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

「………スマン」

 

 

「う…ううん……私こそつい悪ノリしちゃって……」

 

 

頬にキレイな紅葉のような手形をつけたスティングは素直に謝罪し、ヴィヴィオも悪ノリが過ぎたと反省する。ただしその場の空気はかなりギクシャクしており、2人ともこれでもかというほど赤面していたのであった。

 

 

すると、スティングが勢いよくスクっとベンチから立ち上がる。

 

 

「そ…そろそろ戻った方がいいな。夜も遅ぇし、宿まで送ってくが……どうする?」

 

 

「あ…えっと……お願いします」

 

 

そんなスティングの申し出に対してヴィヴィオは素直に頷き、ベンチから立ち上がって彼に続いて宿へと向かって歩き出したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「「……………」」

 

 

それからしばらくスティングとヴィヴィオは夜の街を並んで歩いているが、先ほどの事もあってお互いに気まずそうに顔をそらしている。

 

するとそんな中で、スティングがポツリと口を開く。

 

 

「おい……言っとくがアレはわざとじゃねぇからな」

 

 

「あ…当たり前でしょ!! てゆーか、もしわざとだったらパパとママに言いつけるからね!!! 2人とも怒ったらすっごく怖いんだからっ!!!」

 

 

「それは勘弁してくれ……」

 

 

キレたグレイとなのはの2人を想像したのか、さすがのスティングも顔を青くさせて冷や汗を流していた。

 

 

「もう……ちゃんと責任とってよね?」

 

 

「責任って何だよ? ちゃんと謝っただろ?」

 

 

「それとこれとは別なのっ!!!」

 

 

「意味わかんねぇ……」

 

 

「何か言った?」

 

 

「いやなんでも」

 

 

あまりにもメチャクチャなヴィヴィオの言い分に呆れたように嘆息しがなら小声で文句を言うスティングだが、ヴィヴィオにギロリと睨まれてすぐに口を噤んだ。

 

 

因みにこの話は後日、スティングがヴィヴィオに高級スイーツを奢るという約束で決着がついたのは余談である。

 

 

そしてそれからもしばらく2人で歩いていると……

 

 

「おっ…見えてきたな。アレだろ? お前んトコの宿」

 

 

「そうだよ」

 

 

そう言ってスティングが指差す先には、まだ少し距離はあるが、妖精Aチームの宿である『ハニーボーン』が見えてきていた。

 

 

「送ってくれてありがとう。もうここまででいいよ」

 

 

「何で? ちゃんと宿の前まで送ってくぜ」

 

 

「あのね……もし私たちが一緒にいる所をパパやナツさんに見られたら大変な事になるかもしれないんだよ? 最悪乱闘になるかも」

 

 

「オレとしちゃあ別にかまわねーけど……今ここでナツさんと戦うのは本意じゃねえな」

 

 

そんなヴィヴィオの配慮を理解して納得したスティングは彼女の要望どおり、ハニーボーンから少し離れた場所で別れる事にした。

 

 

「じゃあ、また明日な」

 

 

「うん。送ってくれた事には感謝するけど、明日こそ私たち妖精の尻尾(フェアリーテイル)が逆転するから覚悟しててね!!!」

 

 

「ハッ、言ってろ。剣咬の虎(セイバートゥース)こそが最強ギルドだって事を思い知らせてやるよ」

 

 

お互いに宣戦布告とも取れる言葉を口にしながら、好戦的な笑みを浮かべているスティングとヴィヴィオ。

 

 

「ああそうだ……ついでにお前にだけ1つ警告しておいてやる。うちのギルドの覇王様には気をつけろよ」

 

 

「覇王様?」

 

 

スティングのそんな警告に対し、疑問符を浮かべるヴィヴィオ。

 

 

「そいつはオレたちのギルドの中でも随一の格闘型魔導士。たぶん純粋な格闘勝負なら、剣咬の虎(セイバートゥース)最強と言っていい」

 

 

剣咬の虎(セイバートゥース)最強の……格闘魔導士……」

 

 

その話を聞いて、同じ格闘型の魔導士として思うところがあるのか、ヴィヴィオはゴクリと固唾を飲み込む。

 

 

「しかも運が悪い事に……そいつはお前とちょっとした因縁があって、お前と戦う事を望んでる」

 

 

「ええっ!!?」

 

 

そんな覇王と呼ばれる魔導士と因縁があり、しかも目をつけられているという事を聞いて驚愕するヴィヴィオ。

 

 

「ちょっ…何で…それどういう……?」

 

 

「悪ィが教えてやれんのはここまでだ。あとはその内わかるだろ」

 

 

「そんなぁ~!! じゃあせめて名前!! その人の名前だけでも教えて!!!」

 

 

ヴィヴィオの問い掛けに答えず帰ろうとするスティングに、ヴィヴィオはせめて名前だけでも聞こうと彼に頼み込む。そんな彼女の必死の頼みにスティングは仕方ないと言わんばかりに溜息をついてその覇王の名前を告げた。

 

 

「アインハルト……アインハルト・ストラトスだ」

 

 

「アインハルト……ストラトス……」

 

 

その名前を聞いてヴィヴィオはその人物とどこかで会ったか記憶を掘り起こして思い出そうとするが、やはり自分とアインハルトとの接点が思い当たらない。

 

 

「ま…せいぜい気をつける事だ。じゃあなっ!!」

 

 

「あっ!!」

 

 

そう言い残してスティングは逃げるように背を向けて走り出し、早々にその場から去っていった。それを見たヴィヴィオはまだ聞きたい事があったのか彼を引き止めようとするが、すでにスティングの背中は小さくなっており…そのまま次第に見えなくなっていった。

 

 

「……………」

 

 

最後に謎を残すだけ残して帰っていったスティングに憤りを覚えたヴィヴィオは、彼が去っていった先を片頬を膨らましながらジト目で見据える

 

 

 

「スティングのバカ……」

 

 

 

そしてそんな拗ねたようなヴィヴィオの呟きは……誰の耳に届く事なくクロッカスの街の中へと静かに溶けていったのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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