LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

183 / 240
今回は一種のタイトル詐欺かも……(汗)

でもあの2人を目立たせる為にはこうするしかなかったんです……

あと所々描写が荒いかもしれませんが、どうかご容赦ください。

月刊FAIRY TAILマガジンがいよいよ今週発売です!!!

個人的には真島先生の『FAIRY TAIL ZERO』が楽しみです。

感想お待ちしております。


兄妹vs親子(?)

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武・3日目の競技パート〝射的(シューティング)〟は接戦の末……己の限界を超えた力を発揮した妖精Aチームのティアナが1位をモノにしたのであった。

 

 

「ツインテちゃんってばやるぅ~♪ そうこなくっちゃ面白くないわぁ~♪」

 

 

「凄いね、ティアナ」

 

 

「うん、ティアナがここまで強くなってるなんて……私もうかうかしてられないなぁ」

 

 

「やはり流石だな、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「7年前の連合軍の時とは比べもんになんねーな」

 

 

「……驚嘆」

 

 

「ケッ」

 

 

「気に入らねえな」

 

 

「………………」

 

 

そんなティアナの力を目の当たりにして、他の参加者の面々は様々な反応を見せる。

 

 

「いいぞティアナーー!!!」

「ティアナ、カッコイイーーー!!!」

「やったー!!!」

「すごいです!!」

「見事だ」

 

 

そんな中……ティアナは控え室等で歓喜の声を上げている自軍である妖精Aチームへと視線を向ける。そこでふと、静かに自分を見据えているナツと視線が交差した。

 

 

するとナツはニッと口角を吊り上げて笑い、ティアナに向かって真っ直ぐと拳を突き出した。

 

 

そしてティアナもそれに応える様に誇らしげな笑みを浮かべ、ナツに向かって堂々と拳を突き出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第183話

『兄妹vs親子(?)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『競技パートでの興奮も冷め遣らぬ中、本日のバトルパートはタッグバトルです!!!』

 

 

『いつもと違うバトルに期待じゃな』

 

 

『これは見応えありそうですね』

 

 

今回行われるバトルパートは1日目・2日目とは違い、2対2で行われるタッグバトルであった。

 

 

そのタッグバトル第1試合の組み合わせは……

 

 

四つ首の仔犬(クワトロパピー)

グラン&メイア

 VS

妖精の尻尾(フェアリーテイル)

なのは&ジュビア

 

 

であった。

 

 

そして目の前の闘技場では……すでにその試合は始まっていた。

 

 

「オラァ!!! 熔魔(ようま)天狗礫(てんぐつぶて)!!!!」

 

 

水流昇霞(ウォーターネブラ)!!!!」

 

 

グランの使用する失われた魔法(ロスト・マジック)……〝熔岩(ヴォルカニック)〟により放たれたいくつものマグマの弾丸を、螺旋を描くようにして放った水流でガードするジュビア。

 

 

「爆撃」

 

 

「ディバインシューター!!!!」

 

 

強力な魔法銃火器を操る魔法〝武装(フルアーマー)〟により、全身を武装して小型のミサイルポッドから爆弾魔水晶(ラクリマ)で作られた何発もの小型ミサイルを発射するメイアと……それに対し周囲に生成した桜色の魔法弾でミサイルを撃ち落していくなのは。

 

 

この2人は先ほどの競技パートにも出場していた為、魔力をある程度消費していたが、それでも見事な戦いを繰り広げていた。

 

 

一見両チームの力は拮抗しているように見えるがその実……優位に立っているのはなのは&ジュビアの方であった。そしてそれには理由があった。

 

 

「クソッ……相性悪過ぎんだろ!!!」

 

 

「劣勢……ッ!!!」

 

 

そう……グランの操る熔岩はジュビアの操る水によって一瞬で固まって無力化し、メイアの放つ重火器よる攻撃は全てなのはの射撃や砲撃魔法によって撃墜されていく。つまりこのグランとメイアにとって、なのはとジュビアの魔法は相性最悪なのである。

 

 

「ジュビアちゃん!!!」

 

 

「はい!! 水流拘束(ウォーターロック)!!!」

 

 

「!?」

 

 

「しまっ……!!?」

 

 

すると、グランとメイアが毒づいているその一瞬の隙を見逃さなかったジュビアが水の球体の中に2人を閉じ込めて拘束した。

 

 

「今です!! なのはさん!!!」

 

 

「任せて!!! 全力全開!!!」

 

 

ジュビアの声に頷いたなのはは、レイジングハートを構えてその先端に桜色の魔力を集束する。そして……

 

 

「エクセリオンバスター!!!!!」

 

 

大威力の砲撃魔法を発射したのであった。

 

 

「ぐおあぁぁぁあああああ!!!!」

 

 

「アァァァアアアア!!!!」

 

 

当然拘束されていた2人にそれを回避する術はなく、そのまま砲撃魔法に飲み込まれ、ボロボロの姿で地面に叩きつけられて戦闘不能になったのであった。

 

 

四つ首の仔犬(クワトロパピー)ダウーーン!!! 勝者、妖精の尻尾(フェアリーテイル)B!!!』

 

 

「イエーイ!!」

 

 

「やりましたっ!!」

 

 

「クッソ……わかってはいたが、やっぱ強ェな……」

 

 

「不覚」

 

 

勝利したなのはとジュビアはハイタッチを交わし、敗北したグランとメイアは悔しそうにそう呟いたのであった。

 

 

「おおっ、なのはとジュビアが勝ったぞ!!」

 

 

「ま、あの2人なら当然だろ」

 

 

「意外とチームワーク抜群でしたしね」

 

 

「さっすがママとジュビアさん!!」

 

 

別のチームとは言え、同じギルドの仲間の勝利には喜びを隠せずにそう言葉を口にする妖精Aチームの面々。

 

 

『さあ続いて、タッグバトル第2試合目の発表です!!!』

 

 

そしてそう言っている間に、チャパティの口から次の試合の組み合わせが発表された。

 

 

青い天馬(ブルーペガサス)

ヴァイス&ラグナ!!!!

 

  VS

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)

グレイ&ヴィヴィオ!!!!

 

 

「オレとヴィヴィオのタッグ!!?」

 

 

「わーいっ!! パパと一緒だ~♪」

 

 

ヴィヴィオとタッグを組む事になったグレイは驚愕し、ヴィヴィオ本人は普通に喜んでいた。

 

 

「連戦かよ……まぁでも、ラグナがパートナーだったら心強いな。頼りにしてるぜ?」

 

 

「うん!!」

 

 

先ほどの競技パートからの連戦に顔をしかめるヴァイスだが、妹であるラグナに期待の言葉を口にし、ラグナ自身も意気揚々とそう返したのであった。

 

 

「グレイとヴィヴィオかぁ……グレイはともかく、ヴィヴィオは大丈夫かな? ノーヴェ?」

 

 

「なのはさんも一緒に修行したからわかってるだろ? この3ヶ月の修行でヴィヴィオはさらに強くなった。なんの心配もいらねーよ」

 

 

「にゃはは…それもそうだね」

 

 

心配そうにそう言うなのはに対し、ヴィヴィオに修行をつけた張本人であるノーヴェがそう断言し、なのはは少し安心したように息を吐いた。

 

 

「スティング君、ヴィヴィオさんですよ。応援しますか?」

 

 

「敵だぞ? 必要ねーよ」

 

 

レクターの言葉にスティングはそう素っ気無く返すが、その視線はヴィヴィオの方へと向いていた。

 

 

「現代の聖王……あなたの実力、この目で見させて頂きます」

 

 

そしてその隣りでは、アインハルトがまるで睨むような視線でヴィヴィオを見据えていたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

それからしばらくして……闘技場の中心にはグレイ&ヴィヴィオと、ヴァイス&ラグナが対立していた。

 

 

『いやーこれは面白い対戦カードですね。ヴァイス&ラグナは兄妹、そして聞いたところによりますと、何とグレイ&ヴィヴィオは親子だとか』

 

 

『ずいぶん似てない親子だね』

 

 

『兄妹と親子の対決ですね。確かに面白い組み合わせです』

 

 

「親子じゃねえ!!!!」

 

 

実況席の3人にそう怒鳴るグレイだが、その声が届くことはなかった。

 

 

そんなやり取りが行われていると、ラグナがヴァイスに対しある頼み事を口にした。

 

 

「ねえお兄ちゃん、お願いがあるんだけど……」

 

 

「ん?」

 

 

「この試合……私1人で戦わせてもらっていいかな?」

 

 

「なに?」

 

 

そんなラグナの頼み事に、目を丸くするヴァイス。

 

 

「私、今までお兄ちゃんやギルドのみんな鍛えてもらってきたけど、本格的な戦いは今日が初めてでしょ? だから少しでも実践の経験を積んでおきたいの。ダメ?」

 

 

「……OK、可愛い妹の頼みだ」

 

 

ラグナの言葉を聞いて、強い覚悟を感じたヴァイスはその頼みを快く承諾した。

 

 

「オレは後ろに控えてるから、危なくなったら助けてやる。だから思いっきり戦って来い。お前の魔法で、あいつらの度肝を抜いてやれ」

 

 

「うん!!!」

 

 

そう言ってラグナの頭を軽く撫でると、ヴァイスは後方へと下がって行った。

 

 

そしていよいよ……試合が始まる。

 

 

『制限時間は30分!!! それでは、試合開始カボーー!!!』

 

 

試合開始を告げる銅鑼が鳴り響くと同時に動き出したのは……ラグナ。

 

 

「先手必勝!! やあぁぁ!!!」

 

 

ラグナは開始と同時に一気に駆け出し、グレイとヴィヴィオに襲い掛かった。

 

 

「うおっと」

 

 

「ほっ…と」

 

 

そんなラグナの急襲に特に慌てた様子もなく軽々と回避するグレイとヴィヴィオ。しかしその直後、2人は驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「!? ヴァイスの奴……戦わねぇつもりか!!?」

 

 

「お兄ちゃんが出るまでもありません!! 2人とも私が倒します!!!」

 

 

武器(ストームレイダー)を構えることもなく、ただ後方で腕を組んで佇んでいるだけのヴァイスと、1人で2人を相手にしようとしているラグナを見て、グレイは顔をしかめる。

 

 

「ずいぶんとナメられたモンだな」

 

 

「だったら……こっちも私1人で十分だよね?」

 

 

「あ?」

 

 

ヴィヴィオのそんな言葉に、疑問符を浮かべるグレイ。

 

 

「あっちが1人で戦うつもりなら、こっちも私1人で戦うよ。だからパパは後ろに下がってて」

 

 

「けどよ……」

 

 

「それに、パパはあのルーファスって人に雪辱を果たすんでしょ?」

 

 

「!」

 

 

「あの人はすっごく記憶力がよくて、その記憶がそのまま力になる……ここであんまり手の内を見せないほうがいいと思うよ」

 

 

「………………」

 

 

ヴィヴィオのそんな言葉を聞いたあと、グレイは横目で剣咬の虎(セイバートゥース)のルーファスを見据えた後……小さく溜息を零した。

 

 

「わーったよ、好きにしやがれ。その代わり負けんじゃねーぞ」

 

 

「やったぁ!! パパ大好き!!!」

 

 

「ケッ……」

 

 

大喜びするヴィヴィオを尻目に、グレイもヴァイスと同じく後方へと下がって行った。

 

 

『おっと? どうやらグレイとヴァイスは後方に下がって待機し、代わりにヴィヴィオとラグナが1対1で戦うようです!!』

 

 

『タッグバトルの意味ないな』

 

 

『ですね……』

 

 

その光景を見て実況席の3人がそう口にするが、闘技場で向かい合っているヴィヴィオとラグナは特に気にせずに続ける。

 

 

「行くよっ!! ソニックシューター!!! ファイア!!!」

 

 

まずはヴィヴィオが自身の周囲に虹色の魔力で生成された5発の魔法弾を発生させ、それらを一斉にラグナへと発射する。

 

 

「くっ……!!」

 

 

ラグナは即座にそれを横に飛んで回避しようとするが、ヴィヴィオの放った魔法弾は軌道を変えて再びラグナへと向かって行く。

 

 

「追いかけてくる!!?」

 

 

「残念!! それはなのはママ直伝の誘導弾だよ!!」

 

 

ヴィヴィオの誘導弾に当たらないように回避を続けるラグナ。

 

 

「だったら……!!!」

 

 

すると、このままだと埒が明かないと判断したのか、ラグナは回避するのをやめて迎撃しようとその場で足を止める。

 

 

そしてそのまま向かってくる魔法弾に向かって両手をかざすと……その瞬間、彼女の両手から黒い水が発生する。

 

 

「黒い…水!!?」

 

 

「ジュビアと同じ水の魔法か!!?」

 

 

ラグナの手から発生した黒い水を見て、ヴィヴィオとその光景を見ていたグレイがそう言葉を口にする。

 

 

「いや……そいつはただの水の魔法じゃねーよ」

 

 

そんなグレイの言葉を否定するようにポツリと口を開くヴァイス。

 

 

「ラグナの魔法は〝神〟を殺す為に生み出された失われた魔法(ロスト・マジック)

 

 

その間にも、ラグナは自身の両手に黒く清んだ水を纏う。

 

 

そして……

 

 

 

「水神の荒波!!!!!」

 

 

 

ラグナが黒水を纏った両手を地面に叩きつけたその瞬間……そこから黒水が大量に湧き出し、津波のような水流が発生した。

 

 

「いっ!? きゃああっ!!!」

 

 

そしてラグナが発生させた黒水の水流はヴィヴィオの誘導弾を飲み込んで消滅させ、そのままヴィヴィオ本人をもその水流で吹き飛ばした。

 

 

「この……!!」

 

 

だがヴィヴィオはすぐさま体制を立て直し、拳を構えてラグナ目掛けて駆け出すが……

 

 

「水神の矛!!!!」

 

 

ラグナはそんなヴィヴィオに向かって黒水で造り出した三叉の矛を投擲する。

 

 

「ぐぅっ!!」

 

 

それを咄嗟に後ろに飛んで間一髪で回避するヴィヴィオだが、黒水の矛が地面に衝突した際に発生した衝撃で、一瞬動きを止めてしまう。

 

 

そしてラグナはその隙を見逃さず、次の瞬間にはもうヴィヴィオの眼前に迫っており……

 

 

「水神の──怒号!!!!」

 

 

「うあぁぁぁあああああ!!!!」

 

 

ラグナが口から放った黒水の激しい水流に飲み込まれ、再び吹き飛ばされたヴィヴィオは闘技場の壁に背中から激突する。

 

 

「ヴィヴィオ!!!」

 

 

黒水を操るラグナに圧倒されるヴィヴィオを見て、思わず彼女の名前を叫ぶグレイ。

 

 

 

「ラグナは──水の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だ」

 

 

 

その光景を見ながらそう語るヴァイスの顔は……どこか誇らしげであった。

 

 

『ラグナのまるで洪水のような水流がヴィヴィオを直撃ーー!!! 大人しそうな見た目とは裏腹に、とんでもない魔法の使い手だーーー!!!』

 

 

『滅神魔法……珍しい魔法だね』

 

 

『教会に勤める者としては、あまり好ましくない魔法ですね』

 

 

「その通り!! ラグナこそ、我がギルドの次世代のエース!!! メェーン」

 

 

「ぶっちゃけ、僕たちよりも強いしね」

 

 

「フン、ヴァイスの妹なんだからこれくらい当然だろ。けどアイツ、スゲェ特訓がんばってたよな」

 

 

「ラグナちゃんなら、絶対に勝てるよね」

 

 

実況席からの声を聞きながら、それぞれそう言葉を口にする一夜とトライメンズの3人。

 

 

「神殺しの魔法……滅神魔法……」

 

 

「アイツの他にもいたのか……」

 

 

その光景を見ていたナツとティアナの脳裏を横切ったのは……かつて天狼島で戦った悪魔の心臓(グリモアハート)の魔導士であり、炎の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)でもあるザンクロウであった。

 

 

「知り合いか?」

 

 

「グリモアの……シンパチロウとか言ってたか?」

 

 

「ザンクロウよ。黒い炎を操る滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)

 

 

「全然たいした事なかったけどな」

 

 

「大苦戦だったでしょーがバカナツ」

 

 

妙な見栄を張るナツにそうツッコミを入れるティアナ。

 

 

「とにかくそいつの滅神魔法は、破壊力だけならナツの滅竜魔法をも上回ってました。それと同系統の魔法を操るラグナって子の実力は計り知れません」

 

 

「そんなの相手にヴィヴィオ1人で勝てるの!!? やっぱりグレイと協力した方が……」

 

 

「勝てるかどうかはわからないけど……少なくとも本人は──負ける気がないみたいよ」

 

 

「え?」

 

 

ヴィヴィオの事を心配するルーシィであったが、ティアナの言葉を聞いて、闘技場で戦うヴィヴィオをへと視線を向けた。

 

 

するとそこには、壁に叩きつけられた状態から復活したヴィヴィオの姿があった。

 

 

だがその顔には──強敵を前にしてなお、笑顔を浮かべていた。

 

 

「!!?」

 

 

「笑った……」

 

 

「ヴィヴィオ……」

 

 

それを見た瞬間……ラグナだけでなく、戦闘に参加していないグレイとヴァイス……いや、この試合を見ている全てのギルドの魔導士が、彼女が無意識に放ったピリッとした空気を感じて一筋の冷や汗を流した。

 

 

「(相手は強いし……一瞬も油断できない……だけど戦える。7年前は弱くて何もできなかった私が……妖精の尻尾(フェアリーテイル)の為に戦える。不謹慎だけど今はそれが──どうしようもなく嬉しいっ!!!!)」

 

 

祭の試合とはいえ、ヴィヴィオにとってはこれが初めてのギルドの為の戦い。それを今ようやく実感したヴィヴィオは高揚感を隠せずに笑ったのだった。

 

 

「次は──私の番!!!」

 

 

ヴィヴィオはその笑顔を浮かべたまま拳を構え、両足でトントンっと軽く跳ねながらステップを刻む。

 

 

「ジェットステップ」

 

 

そして次の瞬間……数メートル離れていたハズのヴィヴィオは、すでにラグナの眼前へと迫っていた。

 

 

「えっ!? えぇっ!!?」

 

 

あまりにいきなりの事態にラグナは困惑し、動きが鈍ってしまう。当然その隙を逃すヴィヴィオではない。

 

 

「ハァァァア!!!」

 

 

「うっ!! ぐぅ…ああっ!!!」

 

 

1発2発と…間髪入れずに素早く連続でラグナに拳を叩き込んでいくヴィヴィオ。

 

 

「見様見真似の──」

 

 

そして……

 

 

 

聖拳(せいけん)七連舞(ななれんぶ)!!!!」

 

 

 

最後の7発目の拳を渾身の力で叩き込んだのであった。

 

 

「きゃあぁぁぁああああ!!!!」

 

 

それを喰らってしまったラグナは、勢いよく後方に吹き飛ばされて地面に倒れる。

 

 

「アイツ……オレの技をいつの間に」

 

 

グレイは先ほどのヴィヴィオの技を見て、それが自分の技である『氷刃・七連舞』をヴィヴィオが自分なりに改良したものだとすぐにわかった。

 

 

「(あの泣き虫なガキだったヴィヴィオが……こんなに強くなってるなんてな)」

 

 

知らない訳ではなかったが、改めてヴィヴィオの成長を確認したグレイは、どこか嬉しそうな笑みを溢していた。

 

 

『ヴィヴィオの怒涛の連続攻撃が炸裂ーーー!!! ラグナ、立ち上がれるかーー!!?』

 

 

「くっ…うぅ……」

 

 

「ラグナ!! 大丈夫か!?」

 

 

「うん……まだ…やれる!!!」

 

 

心配するヴァイスを他所に、ダメージを負いながらもしっかりと立ち上がったラグナ。

 

 

「そうか……だがそろそろオレも……」

 

 

「大丈夫!!!」

 

 

「!」

 

 

「大丈夫だから……お願い、もう少しだけ1人で戦わせて。あの子には……負けたくないの」

 

 

「ラグナ……」

 

 

そう言って静かに闘志を燃やした瞳でヴィヴィオを見据えるラグナを見て、ヴァイスはしばらく目を丸くした後、小さく笑みを零した。

 

 

「わかったよ、オレはもう何も言わねえ。思う存分戦って来い!!!」

 

 

「うん!!!」

 

 

ヴァイスの言葉に強く頷いたラグナは両手に黒水を纏って再びヴィヴィオに向かって駆け出す。

 

 

「ソニックシューター!! ファイア!!!」

 

 

「水神の水はただの水じゃない……全てを洗い流す裁きの聖水!!!」

 

 

そんなラグナに向かって再び誘導弾を放つヴィヴィオだが、今度のラグナはそれを避ける素振りすら見せない。

 

 

「水神の激流!!!!」

 

 

ラグナは両手から激しい黒水の水流を放ち、誘導弾を飲み込んでそのままヴィヴィオを攻撃する。

 

 

「ハッ!!」

 

 

しかしヴィヴィオはその水流の攻撃を横に飛んで避ける。

 

 

「水神のムラサメ!!!」

 

 

それを見たラグナは、今度は右手に黒い水流で構成された刃を纏い、そのままヴィヴィオに斬りかかる。

 

 

「!!?」

 

 

ヴィヴィオはそれを後ろに下がって回避する。しかし回避したにも関わらず、ヴィヴィオの衣服の腕の部分が少しだけ裂けてしまった。

 

 

『ラグナの攻撃は空振りにも関わらず、ヴィヴィオの衣服を斬り裂いた!!?』

 

 

『圧縮された高密度の水流は鋼鉄すらも容易く切り裂くと言われておる』

 

 

『では、ラグナさんが手に纏っている水の剣も同じ原理だと?』

 

 

『おそらくね』

 

 

『攻めまくるラグナですが、ヴィヴィオはそれを避ける避ける!! 残り時間も僅か……勝負を決めるのはどっちだ!!?』

 

 

その後も黒水の刃をヴィヴィオに向かって振り続けるラグナだが、ヴィヴィオはそれを全て回避していく。

 

 

するとその光景を控え室等から観戦していたノーヴェが静かに口を開き、その言葉になのはたちが耳を傾ける。

 

 

「ヴィヴィオの魔導士としてのタイプはどちらかと言えば学者型で、格闘どころか戦闘向きですらなかった。だけどあいつは決して諦めず…その欠点を克服する為に長所を磨き、今の戦闘スタイルを確立させた。

 

相手の攻撃を覚えて対策する持ち前の学習能力に、速くて精密な動作。そして何より相手の攻撃を恐れずに前に出て撃ち込める勇気。それらが重なって出来上がるヴィヴィオの戦闘スタイル。それが──カウンターヒッター」

 

 

ノーヴェがそう言い放った瞬間……闘技場で戦うヴィヴィオの強烈なカウンター攻撃がラグナを襲った。

 

 

「ぐっ…あぅ……」

 

 

それを喰らってしまったラグナはよろめき、動きが鈍る。

 

 

「もらったっ!!!!」

 

 

それを好機と見たヴィヴィオのトドメの一撃がラグナへと向かって放たれる。しかし……

 

 

「水神の……」

 

 

「!!?」

 

 

「怒号!!!!」

 

 

その瞬間ラグナはなんと、自身の足元に向かって黒水の怒号を放ち、とてつもない衝撃を巻き起こした。

 

 

「うぐっ……!!」

 

 

ラグナの予想外の行動と巻き起こる衝撃に、ヴィヴィオは思わず攻撃の手を止めて衝撃から身を守る。だがその時、衝撃の中から姿を現したラグナが一気にヴィヴィオを襲う。

 

 

「なっ!!?」

 

 

「水神の荒波!!!」

 

 

「わぷっ!!!」

 

 

そして黒水の大波を発生させてヴィヴィオを飲み込み、そのまま流されるように壁へと叩きつける。

 

 

「負けられない……ギルドの為にも!!!」

 

 

強い覚悟の宿った表情でそう言い放つラグナ。

 

 

「それは…私も一緒だよ!! パパやママ…そしてギルドのみんなの為に!! 絶対に勝つんだ!!!!」

 

 

それに対しヴィヴィオはゆっくりと立ち上がりながら、負けじとそう言い放った。

 

 

そして2人は同時に、自身が今放てる最強の技で勝負を決めにかかる。

 

 

ヴィヴィオは自身の拳に魔力を集束し……ラグナは両の手のひらを合わせて長く鋭い黒い水流の剣を構成し始める。

 

 

「一閃必中!!!」

 

 

「滅神奥義!!!」

 

 

そして……

 

 

 

「ディバインバスタァーーーー!!!!」

 

 

天羽々斬(アメノハバキリ)!!!!」

 

 

 

虹色の砲撃と黒い水流の剣が衝突し……会場中に凄まじい衝撃を巻き起こした。

 

 

「ハァァアアアアアア!!!!」

 

 

「やあぁぁぁぁあああ!!!!」

 

 

両者共に雄叫びを上げながら力の限り魔力を込める。

 

 

すると……

 

 

ドゴォォォォォオオオオン!!!!

 

 

砲撃と剣が衝突していた中心部分から大爆発が巻き起こり、その爆発はヴィヴィオとラグナを飲み込んだのであった。

 

 

「ヴィヴィオ!!!」

 

 

「ラグナ!!!」

 

 

それを見たヴァイスとグレイが駆け寄ろうとするが、爆風が凄まじくまったく近づけなかった。

 

 

そしてそれからしばらくすると……爆煙が晴れ始め……そこに立っていたのは──

 

 

「ハァー…ハァー…ハァー……」

 

 

「フゥー…フゥー…フゥー……」

 

 

ボロボロの姿になり、激しく息を乱しながらもしっかりと立っているヴィヴィオとラグナの2人であった。

 

 

『た…立っている!!! 2人とも倒れる事なく立っているーーー!!!!』

 

 

そしてその瞬間……試合終了を告げる銅鑼の音が鳴り響いた。

 

 

『ここで時間切れ!!!! 試合終了!!!! この勝負引き分け(ドロー)!!!! 両チームに5Pずつ入ります』

 

 

『いい試合だったね。男2人は何もスとらんけど』

 

 

『そうですね、とても見ごたえのある試合でした』

 

 

実況席がそんなコメントをすると同時に、会場中から暖かい拍手が鳴り響き始める。

 

 

すると、とうとう力尽きたのか、ヴィヴィオとラグナはガクリとその場で崩れて膝をつく。

 

 

「ヴィヴィオ!!」

 

 

「ラグナ!!」

 

 

そんな2人に、グレイとヴァイスが今度こそ駆け寄った。

 

 

「ゴメン…パパ……勝てなかった」

 

 

「いいんだ、気にすんな。強くなったな……ヴィヴィオ」

 

 

「えへへ♪」

 

 

グレイはヴィヴィオの体を支えながら彼女に心からの賞賛の言葉を送り、それを聞いたヴィヴィオは嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

 

するとヴィヴィオはふと……目の前で自分と同じようにヴァイスに支えられているラグナと目が合った。

 

 

「次は勝つよ」

 

 

「私も負けない」

 

 

そして短くそう言い合うと、2人は小さく笑みを浮かべて、どちらからともなく手を差し出して握手を交わしたのであった。

 

 

こうして引き分けに終わってしまった第2試合だが……会場中からは惜しみない拍手が送られていったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……剣咬の虎(セイバートゥース)の陣営では……

 

 

「アインハルト、お前が聖王と呼ぶあの女の試合を見てどうだったんだ?」

 

 

「そうですね……彼女の強さは予想以上と言えば予想以上でした。ですが……私の敵ではありません」

 

 

アインハルトはローグからの問いに答えながら自身の見解を述べると……胸の前まで持ってきた右拳を強く握り締めながら続けて言い放つ。

 

 

 

 

 

「この大魔闘演武で証明してみせます。私の覇王流こそが──最強だと」

 

 

 

 

 

つづく


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