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大魔闘演武2日目のバトルパートも4試合消費し、残るは最終試合を残すのみとなった。その最終試合の組み合わせは……
『本日の最終試合。
VS.
この2人による対戦であった。
第180話
『怨みは夜の帳に包まれて』
『これはまたしても美女対決となったーー!!!!』
ミラジェーンとジェニー戦に続いて2人の美女による対戦カードに、観客席は大いに盛り上がる。
「どっちが勝つともう?」
「ユキノさんに決まってるでしょ!! 何でそんな事もわからないんだよフロッシュは!!」
「フローもそーもう」
「誰かさんのおかげで競技パートでの点数……とれなかったからなァ」
「クス」
「ですね」
「ケッ」
「いいえ……スティング様は不運だっただけ。乗り物の上での競技だと存じていれば……」
「んな事はいーよ。お前がこのチームにいるって意味……わかるよな」
「
セイバーの陣営でそんな会話が繰り広げられたのち……ユキノは神妙な面持ちで闘技場へと足を運んでいった。
「アミタちゃん、がんばってね」
「アチキたちの分まで」
「けど相手はあの
「アミタの方が強いよ!!」
「そーそー、お姉ちゃんなら楽勝よん♪」
「何も心配する事はない。ゆけ、アミタ」
「お任せください!!! 必ずチームに勝利をもたらしてみせます!!!!」
人魚側の陣営では、アミタが仲間たちの声援を受けながら意気揚々と闘技場へと向かって行った。
そして闘技場の中央では……アミタとユキノの両者が相対する。
「
「よく見ておくんだ。私たちが越えるべきギルドを」
「はい」
『アミティエの強さはご存知の通り。
実況席のチャパティが2人ついてそう簡潔に説明する。
『それでは試合開始ィ!!!!』
そしてついに銅鑼の音が鳴り響き、最終試合が始まった。
「よろしくお願いいたします」
「こちらこそです!!」
開始と同時に丁寧に頭を下げてそう挨拶してきたユキノに対し、アミタも元気一杯に挨拶をしながら頭を下げる。
「あの……始める前に私たちも『賭け』というものをしませぬか」
「賭け…ですか。申し訳ありませんが、あまり賭け事というのは好きではなくてですね」
「敗北が恐ろしいからですか?」
「そうではありません!! 一度賭けを了承してしまえば、もうそれからは逃れる事ができないのです。そしてそれは時に自分自身を滅ぼしてしまいます。なので私としては、あまり軽はずみな賭けはしたくないのです」
「では重たくいたしましょう」
賭けを拒否しようとしたアミタに対し……ユキノは驚くべき事を言い放った。
「命を……賭けましょう」
試合の勝敗で命を賭ける……そんな事を言い放ったユキノに対し、会場全体が騒然とする。
「……それがどういう意味かは…わかって言っているのですね」
「はい」
「……いいでしょう」
アミタはそんなユキノの目をジッと見据えながら問い掛けると、彼女もその視線から目をそらす事無く静かに頷いて答えて見せた。それを見たアミタは、ユキノが持ち出した賭けを了承した。
「あなたの覚悟が本物だという事はその眼を見てよくわかりました。ならばその覚悟に全力で応えるのが礼儀というもの!!!! かかってきなさい!!! いざ尋常に勝負です!!!!」
そう言うとアミタは換装で自身の両手に青い装飾の双銃を取り出し、その片方の銃口をユキノに向けて言い放った。
『こ…これはちょっと…大変な事に……』
『う~む』
『COOL……じゃないよコレーーー!!!』
とんでもない賭けが成立してしまった事に、観客席だけでなく実況席の3人も戸惑う。しかしそんな事はお構いなしに、試合が始まってしまった。
「
そう言ってユキノが取り出したのは……何と金色の星霊の鍵であった。
「星霊魔導士!!!?」
それを見た同じ星霊魔導士であるルーシィは驚愕する。だが驚いているのは彼女だけではない。
「(なんと!!?)」
「(もう1人いたのか!!? 星霊魔導士が!?)」
アルカディオスとダートン……この2人もルーシィ以外の星霊魔導士がいた事に驚愕していた。
「ピスケス!!!!」
そしてユキノが召喚したのは、白と黒の2匹の巨大魚。魚である為応援席のハッピーが興奮していたが、今回は割愛する。
召喚された2匹の巨大魚…ピスケスはアミタへと牙を剥き、一斉に襲い掛かる。
「なんの!!!」
だがアミタは軽やかな動きでピスケスの猛攻を回避し、そして双銃の2つの銃口をそれぞれピスケスへと向ける。
「バルカンレイド!!!」
「「ギョッ!!?」」
そして双銃から魔法弾を連射し、それらをピスケスへと命中させて2匹を怯ませる。それを見たユキノは、ピスケスの鍵とは違うもう1本の金色の鍵を取り出した。
「開け、天秤宮の扉──ライブラ!!!!」
そしてユキノは両手に天秤を持ち、民族衣装のような格好をした褐色肌の女性の姿を星霊……ライブラを新たに召喚した。
「ライブラ、敵の重力を変化」
「了解」
ユキノの指示に聞いて、ライブラが天秤を構えたその瞬間、アミタの体にズシリとした重みが圧し掛かった。
「うっ!!?」
「私と同じ魔法を使えるのかい!? あの天秤!!!」
「アミタの体を重くしたっていうの!?」
圧し掛かる重力波によって身動きが取れなくなったアミタを見て、応援席のリズリーとアラーニャがそう言葉を口にする。
「ピスケス」
「「ギョッ!!!!」」
そしてそんな動けないアミタに向かって、再びピスケスが襲い掛かる。しかし……
「な・ん・の!!! これしきィーーー!!!!」
アミタはそう叫ぶと同時に重力波が圧し掛かる体を動かし、その場から飛び退きながらピスケスの攻撃をかわした。
「ライブラの重力から抜けたっ!!」
「何で?」
その様子を見たレクターとフロッシュが驚愕しながら疑問符を浮かべる。するとその疑問が聞こえていたのか、アミタが声高らかにその問いに答える。
「圧し掛かる重圧など……気合いと!!! 根性で!!! どうにでもなります!!!!」
『『『(ええぇ~~……)』』』
「もう…お姉ちゃんってば熱血おバカなんだから……恥ずかしい」
「あはははっ、アミタちゃんらしいね!!」
「それを本当に何とかしちゃうところもね」
「アミタなめちゃいけないよ」
重力波を抜けた理由がまさかの根性論という事とそれを誇らしげに語るアミタに対して、観客たちは声には出さずに唖然とし、人魚チームの面々は苦笑を浮かべている。
するとユキノはピスケスとライブラを星霊界へと送還し、ポツリと呟く。
「私に開かせますか〝十三番目の門〟を」
「十三番目の門!!? 今……あいつそう言った!?」
「どうしたんですか、ルーシィさん」
そんなユキノの呟きが聞こえていたルーシィは、身を乗り出して驚愕する。
「黄道十二門の鍵は、その名の通り12個の鍵があるのね。だけど噂で聞いた事あるの。13個目の鍵、黄道十二門をしのぐ未知の星霊の話」
ウェンディの疑問に対しルーシィがそう説明している間に……闘技場のユキノは金でも銀でもない……黒い鍵を取り出していた。
「それはとても不運な事です。開け、
そしてユキノが黒い鍵を構えて召喚したのは……巨大な蛇の姿をした星霊であった。
「運など関係ありません!!! 自分の運命は自分で切り開く!!! それが私を未来へと導くのです!!!!」
それに対してアミタは高らかに叫ぶと……自身の武器である双銃を、双剣へと変形させた。
「銃が変形した!!?」
「銃剣一体の可変式魔法武器──ヴァリアントザッパー」
銃から剣へと変形したアミタの武器を見たルーシィが声を上げ、カグラがその武器の名を小さく呟いた。
「行きますよっ!!! アクセラレイター!!!!」
そして双剣となったヴァリアントザッパーを構えたアミタがそう叫んだ次の瞬間……アミタの姿が消えた。
「消え──!!?」
目の前で姿を消したアミタを見てユキノが戸惑っていると……次の瞬間にはオフィウクスの体がアミタによって斬り裂かれていた。
「え…?」
「必・殺!!! フェイザースラーーッシュ!!!!」
ユキノが小さく声を漏らして愕然としている間にも、アミタは瞬く間にオフィウクスの体を連続で斬り裂いてく。そして気がつけばオフィウクスの体はズタズタにされ……そのまま星霊界へと強制的に送還されたのだった。
「うそ…?」
自身の最強の星霊があっさりとやられてしまった事が信じられず、呆然とするユキノ。そんな彼女の目の前に、ヴァリアントザッパーを構えたアミタが現れた。
「言いましたよね? 軽はずみな賭けは身を滅ぼすと」
そして……
「人魚は時に虎を喰らいます」
アミタの一撃によって、ユキノは地面に倒れたのであった。
『し……しし…試合…終了…』
会場全体が唖然とする中……かろうじて口を開いたチャパティが試合終了を宣言する。
『勝ったのは
「さっすがアミタちゃん!!」
「やったー!」
「ま、お姉ちゃんなら当然って感じ?」
「アミタなめちゃいけないよ」
「見事」
『
2日目の意外な結末に観客たちは驚愕の入り混じった歓声を上げる。
「セイバーの女が弱かったのか……マーメイドの女が強かったのか……」
「後者だな」
「ですね。アミティエ・フローリアン……あんな魔導士がいるなんて」
試合の結末を見届けていたグレイとエルザ、そしてティアナが愕然としながらそう口を開く。
「わ…私が…敗北……
最強ギルドの一員である自分が敗北したという事実に、ユキノは涙を流した。
「……あなたの命は私がお預かりします。いいですね?」
「はい…仰せの通りに……」
自らが持ち出した賭けの為…敗者であるユキノは何も言えず、己の命を勝者であるアミタに預ける他に道はないのであった。
『これにて大魔闘演武2日目終了ー!!!』
『また
『COOLCOOLCOOL!!』
こうして大魔闘演武2日目は幕を閉じ……2日目の結果は以下のようになったのであった。
―2日目結果―
大鴉の尻尾:38P
凶鳥の眷属:26P
蛇姫の鱗:23P
人魚の踵:22P
青い天馬:21P
剣咬の虎:20P
妖精の尻尾C:16P
四つ首の猟犬:14P
妖精の尻尾B:12P
妖精の尻尾A:12P
◆◇◆◇◆◇◆◇
その夜……クロッカスの街の人目に付きにくい場所で、エルザとジェラールが情報交換を行っていた。
「魔力を感じない?」
「そうだ……
「どう言う事だ」
「考えられる可能性はいくつかある。人物だと仮定した場合、今回は
「まだ出番のない大会出場者だという可能性もある訳だな」
「あの魔力がある種の装置、又は特定の場所と仮定した場合、装置が稼動していないか、魔力を外部に漏らさないフィルターのようなものがあるのか」
「なんにせよ、物騒な魔力を感じないうちは何もあるまい」
「そうだといいがな。明日以降、少し主催者側を探ってみるか」
「あまり目立った事はするなよ」
「わかっている。ウルティアにはだいぶ釘を刺された」
「クスッ…無理をしないようにな」
「お休み、エルザ」
「うん」
一通りの情報交換が終わったあと、エルザとジェラールはその場で別れたのであった。
そしてふと、ジェラールは去っていくエルザの後ろ姿を眺めながら、嬉しそうにフッと表情を緩める。
「(こうして普通に会話できる日が来るとはな……ありがとうエルザ……)」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「遅くなってしまった。さすがに宴会は終わっているか」
その後…ジェラールと別れたエルザは宿であるハニーボーンに向かって、1人夜の街を歩いていた。すると……
「やーっと見つけたっ!!」
「!!」
そこへ、
「誰だ?」
そんな少女を見て、疑問符を浮かべるエルザだが……
「ウフフ──元気最強?」
「!!!」
そのフレーズを聞いた瞬間……驚愕で目を見開いたあと、嬉しそうに頬を緩ませた。
「エルちゃん、久しぶり~♡」
「ミリアーナ!」
その少女の正体は……エルザの奴隷時代の仲間の1人であるミリアーナであった。
「会いたかった~~っ!!! みゃーー!!!」
「あはは、ミリアーナ!!! ギルドに入ってたのか」
「うん、
「ショウやウォーリーも同じギルドに?」
「何言ってんの、
「そうか」
「あの2人はまだ旅を続けてる。たまに連絡も取るよ」
「そうか……本当に……会えて嬉しいぞ、ミリアーナ」
「私もだよ、エルちゃん」
「元気そうで何よりだ…グスッ」
「エルちゃん泣かないの~」
「お前だって…」
エルザとミリアーナは久しぶりの再会を喜び、お互いに涙を浮かべながら抱き締めあったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方……クロッカスのまた別の場所では……
「ったく
「何言ってんだよ。そーいうお前だってかなり騒いでたじゃねーか。なぁルールー?」
「うん」
「うっせ」
宴会を終えたガジルとアギトとルーテシアの3人がそんな会話をしながら宿へと向かって歩いていた。
するとその時……
ヒュッ…!!
「!!!」
ガジルの耳に何やら風を切るような音が聞こえ、それを聞いたガジルは反射的に鋼鉄化した腕を構えた。その瞬間……ガキィィィイイン!!っという金属音が鳴り響いた。
「!?」
「な…なんだ!!?」
あまりの一瞬の出来事についていけなかったルーテシアとアギトは目を見張る。そしてよく見ると……ローブを纏って顔を隠した1人の男が、ガジルに向かって槍を突き出している光景が広がっていた。
「こいつは……
その男は見覚えがあったアギトはそう呟く。そのローブの男は、
「コイツ……!!?」
「……フッ」
男の槍を防御したガジルは何かに気づき、目を見開く。それに対して男は口元に笑みを浮かべると、槍を引いて後ろに大きく飛んでガジルから距離を取った。
「いきなり何だテメェ!!!」
「ガジルを襲うなんて……許せない」
「待て」
突然襲ってきた男に対して敵意を露にしながら男を睨むアギトとルーテシアを、ガジルが止めた。そしてガジルは男の姿を静かに見据えると、小さく笑みを浮かべた。
「ギヒッ……久しぶりにしちゃあずいぶんなご挨拶じゃねーか」
「フッ……これ以上ない最高の挨拶ではないか?」
お互いに笑みを浮かべながらそう言い放つガジルとローブの男。そんな2人の様子を見たアギトが、疑問符を浮かべながら尋ねる。
「おいガジル……お前あいつと知り合いなのか?」
「何言ってやがる。テメェらもよく知ってる男だよ」
「え?」
「?」
ガジルの言葉に疑問符を浮かべながら首を傾げるアギトとルーテシア。するとそんな2人に対して、男が口を開いた。
「久しいな……アギト、ルーテシア」
そして男はローブを脱ぎ捨てると……隠していたその顔が露になった。
そしてその顔を見たルーテシアとアギトは、驚愕しながらその男の名を叫んだ。
「ゼスト……!!?」
「ゼストの旦那!!!?」
その男の正体は……ガジルたちと同じく元
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃……
その宿の1室では、ギルドメンバー全員が整列して集まっていた。
「情けなくて涙も出ねえぞ、クズ共ォ!!
何故我々が魔導士ギルドの頂点にいるのか思い出せ。周りの虫ケラなど見るな、口を利くな、踏み潰してやれ。我々が見ているのはもっと大きなものだ
天を轟かせ、地を沸かし、海を黙らせる──それが
整列するギルドメンバーの前でそう語る、漢服のような服を着た筋骨隆々な強面の老人の名はジエンマ。
「スティング」
「はい」
「貴様にはもう1度だけチャンスをやる。二度とあんな無様なマネするな」
「ありがとうございます。必ずやご期待に応えてみせます」
そう言ってジエンマに深く頭を下げるスティング。
「ユキノ」
「はい」
「貴様には弁解の余地はねえ。わかってんだろうな」
「はい……私は他のギルドの者に敗北し……
「んな事じゃねえんだよっ!!! 貴様は〝命〟を賭けて敗北し、あろうことか敵に情けをかけられた!!! この
「はい……私はいかなる罰も甘んじて受ける所存です」
最終戦でアミタに敗北したユキノに対し、ジエンマは激昂しながら怒鳴ると、彼女に対する罰を言い放った。
「服を脱げ」
「はい、仰せの通りに」
ジエンマの命令によって、ユキノはその場で服を脱ぎ捨てて、ギルドメンバー全員の前で裸の姿となった。
「ギルドの紋章を──消せ」
「………はい」
ギルドの紋章を消す……それはつまり、ギルドの破門を意味している。それを理解しているユキノは、悲しそうに震えながらそれを了承した。
「短い間でしたが、大変お世話になりました」
「とっとと失せろ、ゴミめ」
ジエンマは土下座しながら最後の感謝の言葉を述べるユキノに対して吐き捨てるようにそう言い放ち……彼女を
◆◇◆◇◆◇◆◇
「やる事が極端だねぇ、ウチのマスターは」
「仕方ありません。これが最強ギルドたる所以なのですから」
「フローは寂しい」
その後……集会を終えたスティングとローグとアインハルト、そしてレクターとフロッシュはそれぞれの部屋に戻る為に廊下を歩いていた。
「……本当にそうなのでしょうか?」
「これが〝ギルド〟なのか?」
「ア?」
そう呟いたローグとアインハルトの言葉に、疑問符を浮かべるスティング。
「ユキノは仲間だった」
「ユキノさんとの付き合いは短いですが…それは確かでした」
「弱ぇから消えた。最強ギルドには必要なかったって事だろ?」
ローグとアインハルトの言葉に対し、冷たくそう言い放つスティング。2人はそんなスティングに、何も言い返さなかった。
「そういえば、ユキノさんの替わりに〝御嬢〟が入るらしいですよ」
「おおっ!! これで『最強の7人』がそろう訳だな」
そんな会話をしながら離れていくスティングとレクターを見ながら、その場で立ち止まるローグとアインハルト。
「ローグ…アイン…フローも弱いから消えちゃう?」
すると今回の事で不安を覚えたフロッシュが、涙を浮かべながら2人に問い掛ける。それに対しローグとアインハルトは、優しい笑みを浮かべながら答えたのであった。
「お前は消えないよ、フロッシュ」
「私とローグさんがついていますから」
「うん!! フローは消えない」
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方……ミリアーナと再会したエルザは広場へと場所を移し、ベンチに座って話し合っていた。
「本当は私たちが優勝した時に正体を明かして、エルちゃんたちを驚かそうとしたんだけど。もおっ!!! やっぱりエルちゃんに早く会いたかったんだーーーーっ!!!!」
「やれやれ」
そう言って自身に擦り寄ってくるミリアーナに呆れながらも、それを受け入れるエルザ。
「それにしても、お前のトコのアミティエという者、本当に強いな」
「でしょ~? アミタちゃんは私たちのチームだと、カグラちゃんの次に強いんだから!!」
「ほう? アミティエよりとは……カグラという者はそんなに強いのか?」
「そりゃそうだよ。本気になったらエルちゃんより強いかもよ~」
「2人とも、いつか手合わせ願いたいものだな」
「大会中にぶつかる事もあるかもね。あ……でもアミタちゃんはともかく、カグラちゃんが大会中に本気になる事はないかな」
「そうなのか?」
「カグラちゃんが持ち歩いてる刀……あれは抜かずの剣〝怨刀・
「ずいぶん物騒な名前の刀だな」
「その名の通り、本当に斬るべき相手にしか抜かないと誓った剣なんだって。憎くて憎くて、この世界に共存する事は不可能と思える相手。カグラちゃんの全てを奪った男──ジェラールを殺す為の剣」
「──え?」
ミリアーナの言った言葉に一瞬理解が出来ず、呆けてしまうエルザ。
「わかるよ、エルちゃんだって同じ気持ちだよね。私もジェラールが憎い……私たちを奴隷にして、シモンを殺したんだ。許せない許せない。だからカグラちゃんのギルドに入ったの」
ミリアーナは憎しみを露にした笑みを浮かべながらエルザにそう語る。
そんなミリアーナの言葉を聞きながら……7年の時が経ってもかつて犯した過ちは消える事無く……今も尚それに巻き込まれた人の心に深く根付いているのだと……エルザは痛感したのであった。
つづく