LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回は少し時間が掛かりました。バトルシーンがムズい!!!


感想お待ちしております。


2人の野獣

 

 

 

 

「おおお…おおお……」

 

 

「うぅ…うぷっ……」

 

 

大魔闘演武2日目の競技パート〝戦車(チャリオット)〟の終了後……その競技で奮闘したナツとエリオは、乗り物酔いの後遺症で医務室のベッドで寝込んでいた。

 

因みにその隣りでは、未だに体調の悪いウェンディとキャロの2人も眠っていた。

 

 

「ナツとエリオ……大丈夫なんですか?」

 

 

「何の心配もいらないよ。ただの乗り物酔いじゃないか」

 

 

「ですよね」

 

 

付き添いで来ていたルーシィの問い掛けに呆れながら答えるポーリュシカの言葉に、同じく付き添いで来ていたティアナは苦笑する。

 

 

「ウェンディとキャロの容態は?」

 

 

「もうだいぶ回復してきたよ」

 

 

「シャルルはもう元気になったの?」

 

 

「ええ」

 

 

「よかったぁ!」

 

 

ウェンディとキャロが順調に回復し、一足先に元気になったシャルルに安堵するティアナとルーシィ。

 

 

「みんな待ってるから」

 

 

「私たちは行くわね」

 

 

そう言い残して、ティアナとルーシィは医務室を後にしてエルザたちの下へと戻って行った。

 

 

それを見送った後……ポーリュシカはシャルルに例の〝予知〟の事で問い掛ける。

 

 

「黙ってるつもりかい?」

 

 

「伝えてどうするの? あんな未来、信じてくれる訳ない」

 

 

「自分が信じていない事を、他人が信じてくれるハズもないね」

 

 

「そうよ!! 私はあんなの信じない。ただの夢だったんだわ。あれは夢……予知じゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第177話

『2人の野獣』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武2日目・バトルパート

 

 

『さあ皆さんお待ちかねのバトルパートです!!! 今日はどんな熱い戦いを見せてくれるのか!!!』

 

 

第1試合

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)

クロヘビ

 VS

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)

トビー・オルオルタ

 

 

『ヘビと犬の睨み合い!! 果たして勝つのはどちらか』

 

 

『フェアな戦いを見たいねぇ』

 

 

『トビー犬すぎるぅぅ!!! COOOOL!!!!』

 

 

実況席の3人がそう言うと同時に観客席は大いに盛り上がる。

 

 

「戻りました」

 

 

「試合始まっちゃった?」

 

 

「まだだよ」

 

 

「ちょうどこれからだ」

 

 

「リオンとこの犬っぽい奴が出るみてーだぞ」

 

 

「相手はレイヴンだがな」

 

 

「レイヴン?」

 

 

医務室から戻ってきたティアナとルーシィはちょうどこれから試合が始まる闘技場へと目を向ける。そしてルーシィはふと、レイヴンのチームへと視線を動かす。

 

 

「き…金髪ぅ」

 

 

「え?(あざだらけ?)」

 

 

そんなルーシィの視線に、先日彼女とバトルパートで戦ったフレアが気がつき、ルーシィを睨むが……ルーシィは何故かあざだらけとなったフレアの顔を見て驚いた。

 

 

「フレア……二度と無様なマネはするな。勝てたのは誰のおかげだと思っている」

 

 

「でも…金髪がこっちを睨んで…」

 

 

「またぶたれたいのか?」

 

 

「す…すみません、お許しを……」

 

 

アレクセイに顔を鷲掴みにされ、ドスの利いた声色でそう言い放たれたフレアは、ガタガタと震えながら許しを乞うたのであった。

 

そんな2人のやり取りを見ていたルーシィは、フレアの顔のあざはアレクセイにやられたものだと悟り……複雑な表情で眺めていたのであった。

 

 

『それでは、第1試合開始です!!!』

 

 

その間に試合開始の銅鑼が鳴り響き、開始と同時にトビーは自身の両手の爪を鋭く伸ばす。

 

 

「おおーーん!!! 超麻痺爪メガメガクラゲ!!!!」

 

 

トビーは麻痺効果のある爪を振り回してクロヘビに切りかかるが、クロヘビは表情1つ変えずにそれを回避する。すると次の瞬間、クロヘビの姿がフッと消える。

 

 

「消えたっ!!」

 

 

「バカモン!! 擬態魔法だ!!」

 

 

驚愕するトビーに控え室等からジュラの怒鳴り声が響く。

 

 

砂の反乱(サンドリベリオン)

 

 

「ぐぼぉ~ん!!!」

 

 

足元からの砂の攻撃により、吹き飛ばされるトビー。

 

 

「あれは…マックスさんと同じ魔法〝砂塵(サンドストーム)〟!!!?」

 

 

「違うわ。アレは〝擬態(ミミック)〟……擬態した属性の魔法が使えるようになる珍しい魔法よ」

 

 

妖精Aチームの陣営では、クロヘビの魔法を見て驚愕するヴィヴィオに、ティアナが冷静にそう説明する。

 

 

「おおーん、お前強いな」

 

 

「君もタフだね」

 

 

「クロヘビって名前かっこいいな」

 

 

「本名じゃないよ」

 

 

「本名じゃねえのかよ!!!!」

 

 

「キレるとこ?」

 

 

クロヘビの名前が本名じゃないとわかった瞬間に何故かキレたトビーは、再びメガメガクラゲでクロヘビに切りかかる。

 

 

「お前!!! オレが勝ったら本名教えてもらうからなっ!!!!」

 

 

「別にいいけど。ボクが勝ったら?」

 

 

「オレのとっておきの秘密を教えてやるよ!!!!」

 

 

「面白そうだね」

 

 

そんな妙な賭けが成立した2人の試合は続き……やがて決着がついた。

 

 

『ダウーン!!! トビー立てなーい!!! 試合終了ーー!!! 勝者…大鴉の尻尾(レイヴンテイル)、クロヘビ!!!!』

 

 

仰向けに倒れるトビーと悠々と立っているクロヘビ。しかもクロヘビの体にはキズ1つなく、圧倒的な力で勝利した事が伺えた。

 

 

「で? 君の秘密って?」

 

 

「くつ下…」

 

 

クロヘビの問い掛けに、トビーはポツリと呟きながら答える。

 

 

「片方…見つからないんだ。3ヶ月前から探してるのに、何故か見つからないんだ……オレ…誰にも言えなくて……」

 

 

涙ながらに自身の秘密を明かすトビーだが、あまりにもしょうもない秘密に観客だけでなくラミアの陣営ですら唖然としていた。因みにトビーのその片方のくつ下だが、彼自身の首にぶら下がっていた。

 

するとクロヘビはそれを教えるように自身の胸をトントンっと叩くと、それに釣られてトビーは自分の胸元を確認し……ついにくつ下を見つけた。

 

 

「こんなとこにあったのかよっ!!!?」

 

 

「「「えーーーーっ!!?」」」

 

 

まさか本気で気づいていなかったというトビーに、観客席から驚愕の声が上がる。

 

 

「お前…いい奴だな……おおーん、やっと見つかったぁ!」

 

 

号泣しながら喜びの声を上げるトビーに会場全体が呆れかえっていた。

 

 

するとそんなトビーに向かって、静かに手を差し伸べるクロヘビ。

 

 

『おーーっと! 健闘を称え合って、2人が握手を──!!? しなーーい!!!!』

 

 

だがクロヘビの手はトビーの手を通り過ぎて彼の首元のくつ下を奪うと……何とそのままビリビリに引き裂いてしまったのだった。

 

 

『これは酷い!!! 酷すぎる!!!!』

 

 

「大切なものほど壊したくなるんだよね、ボク」

 

 

クロヘビの非道な行動に会場全体が静まり返り……その中でレイヴンの笑い声だけが響き渡っていたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『さあ……気を取り直して本日の2試合目。四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)・バッカス!!!!』

 

 

「ウィー」

 

 

2試合目の対戦カードに選ばれた1人は、昨夜妖精の尻尾(フェアリーテイル)と酒場でひと悶着を起こしたバッカスであった。

 

 

『対するは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)───』

 

 

「私たち……いや、まだどのチームかはわからんか」

 

 

「ナツだったらどうしよう」

 

 

「「たたき起こす」」

 

 

「パパとティアナさんがハモった!!?」

 

 

「あいつ……エルザやクロノと互角だったんだろ?」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名が出た事で、Aチーム全体に緊張が走る。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方……王国関係者が控えている観戦席では……

 

 

「ほっほーう、ちゃんと組み込んでくれたのだな」

 

 

「陛下」

 

 

そこで試合を観戦していたアルカディオスの下に、試合の参加者にバッカスを指名したフィオーレ国王がやって来た。

 

 

「楽しみじゃのう、バッカス対エルザ。これは間違いなく良き試合になる」

 

 

「え?」

 

 

「ん?」

 

 

国王の言葉を聞いた瞬間、アルカディオスは突然驚いたように目を丸くする。

 

 

「い…今……エルザ……と申されましたか? わ…私が組んだのは……」

 

 

アルカディオスが動揺しながらそう言った瞬間……バッカスに対する選手の名前が発表された。

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)C──ザフィーラ!!!!!』

 

 

「むっ……オレか」

 

 

 

 

 

なんと……バッカスの対戦相手に選ばれたのは国王が希望したエルザではなく、ザフィーラであった。

 

 

「なんじゃとーーっ!!? ワシが見たかったのはバッカス対エルザじゃぞ!!!」

 

 

「申し訳ありません。不覚」

 

 

とは言えアルカディオスが間違ってしまったのも無理はない。国王からは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チームの変身する奴』としか聞かされていなかったのだから。

 

 

「こんなのは全く勝負にならんぞ!!! バッカスの圧勝に決まっておる!!!!」

 

 

「で…でしょうな」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

視点は戻って闘技場。そこでは地面に寝そべっているバッカスと、腕を組んで静かに佇んでいるザフィーラが向き合っていた。

 

 

「がんばれよ妖精の尻尾(フェアリーテイル)!」

「でも…あのバッカスが相手じゃ……」

「あの犬耳男、強ェのか?」

「ってかまた犬耳……」

 

 

観客達が様々な反応を示す中……突然バッカスはとある提案をザフィーラに持ちかけた。

 

 

「なぁ…さっきの奴等みてーにオレらも賭けをしねぇか?」

 

 

「賭け…だと?」

 

 

「お前のチーム…ヴォルケンリッターだったか? お前以外のチームの女、5人ともエレェ美人だよなァ」

 

 

それは先ほどの第1試合でトビーとクロヘビが個人的に行った賭け試合の提案であった。

 

 

 

 

 

「───オレが勝ったら一晩貸してくれや。5人一緒に」

 

 

 

 

 

バッカスがそう言い放った瞬間……控え室等や観客席にいたヴォルケンリッターの面々は驚愕や羞恥を露にし……彼の目の前にいたザフィーラの目の色が変わった。

 

 

「お前が勝ったら……そうだなァ……」

 

 

「笑えんな」

 

 

「ア?」

 

 

ザフィーラのポツリと呟いた言葉に反応し、片眉を上げるバッカス。そして……

 

 

 

 

 

「あまり図に乗るなよ猟犬風情が──身の程を知れ」

 

 

 

 

 

そう言い放ちながらザフィーラは静かな怒気を身に纏い、獲物を狩る獣のような瞳でバッカスを睨みつけた。

 

 

「商談成立って事でいいんだな。魂が震えてくらァ」

 

 

それに対しバッカスは怯む事無く、好戦的な笑みを浮かべてザフィーラを睨み返す。

 

 

『な…何やらこちらでも妙な賭けが成立しましたが……第2試合開始です!!!!』

 

 

そしてついに……試合開始を告げる銅鑼が鳴り響いたのであった。

 

 

「ハッハァ!!!」

 

 

最初に動き出したのはバッカス。開始と同時に駆け出し、独特な構えからザフィーラに向かって掌打を連続で放つ。

 

 

「鉄壁の構え」

 

 

それに対しザフィーラは自身の身を守るような構えを取り、バッカスの掌打を全て腕でガードしていく。

 

 

「裂鋼牙!!!!」

 

 

そして攻撃をガードしたザフィーラはカウンターとして鋼鉄の篭手に包まれた拳を振るい、バッカスへと反撃する。

 

 

しかしバッカスはその攻撃をその場にしゃがんで避けると、すぐさま振り上げるような掌打をザフィーラの顎へと叩き込む。

 

 

だがザフィーラもその攻撃を読んでいたのか、突き出した拳とは反対側の手でバッカスの掌打を受け止めていた。

 

 

「この程度か?」

 

 

「ほぉう……面白ェ」

 

 

冷静な顔をしてことごとく攻撃を防御するザフィーラに、バッカスは感心したような声を上げる。

 

 

「いつまで続くかなァ!!!!」

 

 

そして再びバッカスは連続で掌打を放ち、ザフィーラもその攻撃の防御に専念していった。

 

 

『これは一方的な試合ーー!!! ザフィーラ!! バッカスに防戦一方だーー!!!』

 

 

「防戦一方? ずいぶんと甘く見られたモンやなぁ、ザフィーラも」

 

 

「ええ、防御こそがザフィーラの戦い方の真骨頂。防御力ならばギルド1です。盾の守護獣の名は伊達ではありません」

 

 

チャパティの実況を聞いて、はやてとリインフォースがそう言葉を口にする。

 

 

「けどよォ、あのバッカスって奴の変な動き……何だあれ?」

 

 

そう言って試合を観戦しながら疑問符を浮かべているヴィータの問い掛けに、バッカスの実力をよく知っているクロノが口を開いた。

 

 

「バッカスの魔法は手の平に魔力を収束するタイプの、わりとオーソドックスな魔法だ。だけど奴の強さの秘密はその魔法を最大限に生かす為の武術を身につけた事にあるんだ」

 

 

「武術だと?」

 

 

「ああ。劈掛掌(ひかしょう)という、独特な構えから〝掌打〟を得意とする武術だ。さらに恐ろしいのは、奴はその拳法に改良を加えて〝酔・劈掛掌〟を編み出した事」

 

 

「酔……つまり酔いか」

 

 

「その通り。酔・劈掛掌は酒を飲んで酔う事でその真価を発揮する。酔った鷹の攻撃予測は不可能。その上破壊力も増強されて、そうなればバッカスの必勝の型となるんだ」

 

 

途中でシグナムの疑問にも答えながら、そう説明するクロノ。するとその説明を聞いたヴィータがある事に気がつく。

 

 

「って…ちょっと待てよ!! 酔ったら強くなるってんなら、今のあいつは」

 

 

「そうだ、奴はまだ一滴も酒を飲んでいない」

 

 

「バッカスという男は、まだまだ本気ではないという事か」

 

 

まだまだ本気を出していないというバッカスという男の実力に、ヴィータやシグナムは少なからず戦慄する。

 

 

「心配いらんて~」

 

 

するとその会話を横で聞いていたはやてが、間延びした口調でそう口を開いた。

 

 

「ザフィーラは絶対に勝つ。あのバッカスって人が賭けの話を持ち出した時点で、もう勝負は決まったようなモンや」

 

 

そう言ってどこか確信めいた表情で笑いながら、はやてはザフィーラの試合の観戦を続けたのであった。

 

 

視点は戻って闘技場……バッカスの掌打による猛攻を、苦にした様子もなく全て防御したザフィーラ。しかもあれだけの攻防戦を繰り広げたにも関わらず、両者共に疲労を見せていないのは、まだまだ余裕がある証拠である。

 

 

「思ったよりやるじゃねェか。オレの劈掛掌をここまで防ぎ切った奴は初めてだ」

 

 

「大した事ではない」

 

 

「言ってくれるねェ」

 

 

そんな会話をしながらも、お互いに構えは崩さずに睨み合うザフィーラとバッカス。

 

 

「……ずっと考えていた」

 

 

「ア?」

 

 

「オレが勝った場合の賭けだ」

 

 

「そういやそうだったなァ。いいよ、何でも言ってみ」

 

 

バッカスがそう言うと、ザフィーラは自分が勝った場合の賭けの条件を言い放った。

 

 

 

「オレが勝てば大会中は猟犬の名を捨てて、ギルドの名を〝四つ首の仔犬(クワトロパピー)〟に改名するというのはどうだ?」

 

 

 

「ぷっ」

 

 

ザフィーラが出したその条件の内容に、バッカスは思わず笑いを吹き出した。

 

 

「マジメそうなツラして、中々面白ェ事言うじゃねえか」

 

 

「蒼き狼にたてついた愚かな猟犬の末路としては、ピッタリではないか?」

 

 

「OKOK!! それで決まり!! じゃあ…そろそろ本気で行こうかね」

 

 

ザフィーラの条件を了承すると、バッカスは地面に置いていた酒が入ってるヒョウタンを手に取り、グビグビと酒を飲み始めた。

 

 

「酒を飲んだか……」

 

 

「プハァーー」

 

 

酒を飲み、頬に朱を帯びたバッカスは先程までと違い、ユラリとした動きで構えを取る。

 

 

「鉄壁の構え…」

 

 

「無駄ァ!!!!」

 

 

それを見たザフィーラが防御の構えを取ろうとした瞬間……それよりも速く、バッカスの酔・劈掛掌による7発の掌打が一瞬でザフィーラに叩き込まれたのだった。

 

 

「ははっ──ア?」

 

 

攻撃に手ごたえをバッカスは得意気な表情で笑いながら振り返るが、直後にその表情は驚愕へと変わった。何故なら……

 

 

「フム……終わりか?」

 

 

確かな手ごたえを感じていたにも関わらず、特にダメージの負った様子もなく、首をコキコキと鳴らしているザフィーラが立っていたのだから。

 

 

「オレは夜天の主に仕えし盾の守護獣。この体はいかなる脅威からも主を守る鉄壁の盾。その防御力……伊達ではないぞ」

 

 

そう言い放つザフィーラに対し……バッカスは驚愕しながらも、その口元には好戦的な笑みが浮かんでいた。

 

 

「来い猟犬……貴様の攻撃など、全て防いでみせよう」

 

 

「へへっ、面白ェ奴だ!!! 魂が震えてくらァ!!!!」

 

 

そして再びバッカスは強烈な掌打の連撃をザフィーラへと叩き込んでいくが、ザフィーラの持ち前の防御力の前にことごとく防がれる。

 

対するザフィーラはバッカスの猛攻を防ぎつつ、隙を見つけてはカウンターの攻撃をバッカスへと放つが、バッカスのユラユラとした動きに攻撃をかわされてしまう。

 

 

『こ…これは何とも…壮絶!!!! まさに攻めと守りによる一進一退の攻防戦!!!! 攻めるが果てるか、守るが果てるか……勝つのは──どっちだ!!!?』

 

 

そしてチャパティのそう実況している間にも、両者の激しい攻防戦は続いていく。

 

 

しかしその攻防戦は……突然ピタリと止んでしまった。

 

 

「ハァー…ハァー…ハァー…ハァー……!!!」

 

 

何故なら……掌打による猛攻を休みなく繰り出していたバッカスがついに体力が限界にきたのか、汗だくで疲労を露にし、度重なる猛攻でボロボロになった腕をダランっと下げながらその場に膝をついたのである。

 

 

「フゥ…フゥ…フゥ……」

 

 

対するザフィーラも汗だくで全身ボロボロになりながら息を乱し、その足はすでにガクガクと震えて今にも倒れそうだが……彼は膝すらつく事無くしっかりと立っていた。

 

 

「ザフィーラ…って……言っ…たな………お前は…何…で……倒…れねえ?」

 

 

すでにお互い体力の限界にきており、現にバッカスは膝をつくほど疲弊している。にも関わらず、同じく限界に達しているであろうザフィーラが、倒れる事も膝をつく事もなく立っている姿を見て、バッカスは息も絶え絶えになりながらもそう問い掛ける。

 

 

「フゥ…フゥ……倒れないのでは…ない……倒れる訳には…いかんのだ……」

 

 

その問い掛けに対し、ザフィーラも荒い呼吸を繰り返しながら答え始める。

 

 

「言ったハズだ……オレは主をいかなる脅威からも守る盾だと……その脅威から主を守り通すまで…オレは決して倒れる訳にはいかん……」

 

 

そう答えながらザフィーラはフラフラになりながらもゆっくり腕を持ち上げ……その手を硬く握って拳を作る。

 

 

そして……

 

 

 

 

「ゆえに貴様の敗因は──我が主に手を出そうとした事だ」

 

 

 

 

そう言い放った直後……ザフィーラの強烈な拳がバッカスの頬に叩き込まれ、それを喰らったバッカスは大きく宙を舞った。

 

 

「わはははは……お前……ワイルドだぜ……」

 

 

その言葉と笑い声を最後にバッカスは地面に叩きつけられ……そのまま倒れて動かなくなったのであった。

 

 

『ダウーーーン!!!! バッカスダウーーーン!!!! 勝者!!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)C・ザフィーラ!!!!』

 

 

チャパティの勝者宣言と同時に、ザフィーラは静かに己の勝利を誇示するかのように右拳を高々と掲げる。

 

 

『この勝利が妖精の尻尾(フェアリーテイル)復活への狼煙かーーーっ!!!! ザフィーラ!!!! 強敵相手に大金星ーーー!!!!』

 

 

『COOOL!!! COOOL!!! COOOL!!!』

 

 

そして観客席からは惜しみない歓声と拍手が送られ……第2試合はザフィーラの勝利で幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)

6ポイント→16ポイント

 

 

 

 

 

つづく


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