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どこかの古い遺跡がある丘……その丘では金髪の青年と黒髪の青年の姿があった。
「帰ってきたんだって」
「何の話だ」
「7年前に失踪した
「興味ないな」
「ウソをつくなよローグ、あれほど憧れたナツさんだぜ」
「昔の話だ」
第167話
『
魔法評議院
「オーグ老師、リンディ様、議会お疲れ様でした」
「うむ」
「ありがとう」
「ギルド間通商条約改正案は議決されましたか?」
「いや……それは時間がかかる」
「だろうねぇ……」
そう言って議会を終えた評議員のオーグ老師とリンディ・ハラオウンに労いの言葉を送る2人の青年と、頭とお尻から生えた犬耳と尻尾が特徴の女性。
「それよりお前たちもすでに聞いておろうな?」
「もっちろん聞いてるよ!!」
「
「……………」
その2人の青年とは魔法評議院の第四強行検束部隊隊長・ラハールと……かつてメストという名で
「なぁリンディ!! 少し休暇をもらっていいかい? 久しぶりにフェイトに会いに行きたいんだ!!」
「アルフ……君は目上の者に対しての言葉遣いを」
「いいのよラハール君。そうね……抱えてる案件がもう少し落ち着いたらね♪」
「やったーっ!!!」
そう言って大手を上げて喜ぶ犬耳の女性の名はアルフ……かつては操られていたとはいえ、
「やれやれ……だが、胸のつかえが1つ取れたな、ドランバルト」
「オレは……」
「魔法界もまた騒がしくなるかもしれんな」
「(オレはあいつらを見捨てたんだ)」
この7年間……ドランバルトはアクノロギアが来ると知った後、自分はただただ部隊を安全圏に退避させることしかできずに、彼らを見殺しにした事を悔やみ続けていた。
「アクノロギアとゼレフが目撃されて7年か……」
「すみません……まだ…どちらも行方がつかめてません」
「観測部隊を増員するべきかしらね」
「この7年は静か過ぎた。
「加えてゼレフやアクノロギアの情報もまったくと言っていいほど見つからない」
「しかし静か故に不気味……まるで終わらぬ夜のごとき。そろそろ夜が明けるか、魔法界の大いなる日の出となるか」
「そのきっかけが、
ドランバルトのそんな問い掛けに対し……オーグ老師は静かに目を伏せて押し黙る。
「ふははははっ!」
「「「!?」」」
「あれほど毛嫌いしていた
しかしそれも一瞬の事で……オーグ老師は愉快そうに笑いながらそう言って、その場を歩き去っていったのであった。
「……なんだいアレ?」
「ふふっ、オーグ老師も色々とあるのよ」
疑問符を浮かべているアルフにそう告げると、リンディは廊下から覗ける青空へと視線を向け……どこか楽しげな口調で呟いた。
「さて……彼らの帰還に一緒に、今度は何が起きるのかしら?」
◇◆◇◆◇◆◇
ナツたちが天狼島から帰ってきて2週間が過ぎた。
天狼組の帰還の噂は大陸中に広がり…週刊ソーサラーもいち早く取材へとやって来た。
彼らのギルドでは7年の時を埋めるかのように毎日がお祭り騒ぎであった。
そんなある日の事……
「セイバートゥース?」
「剣咬の虎、セイバートゥースさ」
ロメオから聞かされた聞き覚えのないギルドの名前に、疑問符を浮かべるナツたち天狼組。
「それが天馬やラミアを差し置いて、現在フィオーレ最強の魔導士ギルドさ」
「聞いた事もねえな」
「パパたちがいた7年前は、そんなに目立ったギルドじゃなかったの」
「て事は、この7年で急成長したんだね」
ヴィヴィオの補足の説明を聞いて、納得するグレイとなのは。
「確かギルドマスターが変わったのと、凄腕の魔導士が7人加入したのが成長したキッカケだって聞いたな」
「たった7人でそんなに変わるものなの?」
「ほほう、いい度胸じゃねえか」
ノーヴェの説明にティアナが疑問符を浮かべ、ナツは好戦的な笑みを浮かべた。
「因みに私たちのギルドは何番目くらいなんですか?」
「知りたいです!!」
「それ聞いちゃうの?」
「ウェンディ、キャロ、聞くまでもないでしょ」
「えー?」
「どうして?」
ウェンディとキャロはただ純粋に興味本位として聞いただけなのだろうが、それがどれだけ残酷な質問か理解していなかった。
「最下位さ」
「超弱小ギルドです」
「フィオーレ1弱ェギルドだ」
「「あああああ…ごめんなさい」」
その質問に答えたロメオ、ヴィヴィオ、ノーヴェの言葉を聞いて、2人は申し訳なさで頭を抱えたのであった。
「かーーっはっはっはっ!!!! そいつはいいっ!!!! 面白ェ!!!!」
すると、それを聞いていたナツが高笑いを上げながらテーブルに乗り出して叫んだ。
「は? 急に何言ってんのよバカナツ」
「だってそうだろう!? 上にのぼる楽しみがあと何回味わえるんだよぉ!!!! 燃えてきたぁーーーーっ!!!!」
どこまでも前向きで明るいナツの発言。
「まったく…」
「やれやれ」
「にゃははっ、ナツ君らしいね♪」
「あはは!」
「かなわねーなナツ兄には」
「だね♪」
「ホント相変わらずだぜ」
「そうですよね、うん!! 楽しみだねキャロちゃん!」
「うん!! 頑張ろうねウェンディちゃん!」
そんなナツの言葉に、その場にいた面々も釣られて笑みを浮かべたのであった。
するとそこへ…カナがやって来る。
「ねえ、アンタらギルダーツ見なかった?」
「何だよ、いつもパパが近くにいねーと寂しーのか?」
「バカ!!」
「あ!! 悪ィ……」
「ううん、いいよ。気にしないで」
「グレイってそういうとこデリカシーないよね?」
「パパサイテー」
「うぐっ…!!!」
自身の失言に気がついたグレイはすぐにルーシィへと謝罪し、ルーシィも気にしなくていいと笑って許す。代わりになのはとヴィヴィオから非難するようなジト目が向けらたが、何も言い返せないグレイであった。
「ギルダーツならマスター……いや…マカロフさんと呼ぶべきか……」
「マスターでいいんじゃない」
「マスターと旧
「よーし!! じゃ…今のうちに仕事行っちまうか!」
エルザからそれを聞いたカナはこれ幸いといった様子で、仕事へと出かけていった。
「ギルダーツのカナへのデレっぷりったらすごいもんね」
「(お前のシャルルへのデレっぷりもな)」
「あれでこのギルド最強っていうんだから……変わったギルドよね」
◇◆◇◆◇◆◇
その頃……エルザの言うとおり、この7年ですっかり廃れてしまった旧
「いいのか? 勝手に入っちまって。差し押さえられてんだろ、この建物」
「直に取り戻すわい」
「しっかし知らなかったな、ギルドの下にこんな深い地下通路があったとは……」
「誰にも言っておらんからのう」
「そいつはどうして」
「まあ……見ればわかるわい」
そんな会話をしながら階段を下りていくと、降りた先には1つの扉があった。
「よっこらせっ」
「!!」
そしてマカロフがその扉を開くと、そこには少々廃れてはいるが、どこか神秘的な雰囲気を感じさせる部屋が広がっていた。
「な…なんだここは……」
その部屋の雰囲気にギルダーツが戸惑っていると……その部屋の奥にある一際大きな扉に向かって、マカロフは魔法陣を展開する。
その瞬間……轟音と共に扉がゆっくりと開かれ……その扉の奥から神々しい光が溢れ出した。
「我がギルド最高機密──ルーメン・イストワール」
「あ…あ…あ……」
神々しく輝くソレを見せられたギルダーツは、上手く言葉を発する事が出来なかった。
「な…何だこれは……どういうこった……」
「メイビスは記した。これぞ
「こ…言葉が見つからねえ……」
「無理もない。ワシもプレヒトにこれを見せられた時、言葉を失った」
「何でこんなモンがギルドの下に……つーか何でオレに見せやがる」
戸惑いながらもそう問い掛けるギルダーツに対して……マカロフはまっすぐと彼の目を見て言い放った。
「お前が次の
◇◆◇◆◇◆◇
一方……場所は戻って古い遺跡のある丘では、未だに2人の青年が会話を繰り広げていた。
「実際懐かしいよな。7年前って言ったらオレら、こんなに小さくってよォ。あ! お前はガジルさん派だったな。怖かったよなーガジルさん」
「過去を引きずるなスティング。オレたちの行く道に奴等はいなかった」
金髪の青年と黒髪の青年……スティングとローグがそんな会話をしていると……
「見つけたぞーーー!!!!」
「「!!」」
そこへ武装した1人の男が、2人に向かってそう叫んだ。
「死ねぇーーーい!!!!」
そして男は弓を引き、白銀の矢をローグ目掛けて放った。
しかし……その矢はローグに届く前にスティングによって素手で受け止められた。しかもそれだけではない。
「ガリッ…バリバリボリボリ」
なんとスティングはその掴んだ白銀の矢を、そのまま喰い始めたのだ。
「矢を…食べ…え? まさかコイツ……!!!」
「フッ」
そしてそれを見て男が驚愕している間に矢を食べ終えたスティングは、男に向かって軽く息を吐く。その瞬間、凄まじい勢いの白銀の閃光が男のすぐ隣りを通過し……地面や岩を砕いたのであった。
「あ…う……あ……」
「あれぇ? 調子悪ィな、外しちゃったよ」
「こ……こいつらだったのか…あの…
そう……この2人は今やフィオーレ最強と名高い魔導士ギルド〝
「うあああああああああ!!!」
それを知った男は、一目散にその場から逃げていった。
「オイオイ、仲間おいてくの? 腐ってるよアンタ」
「闇ギルドなど、所詮そんなものだ」
逃げ去った男をあざ笑うようにそう言う2人の背後には……すでに彼らによって倒された闇ギルドの残党たちが転がっていた。
ドゴォォォオオオオオン!!!!
「「!!」」
すると……突然とてつもない轟音が鳴り響き、スティングとローグの目の前に何かがドサリと落ちてきた。
「あ…がっ……!!」
その正体は……先ほど逃げたハズの男であった。
「スティングさん、ローグさん、仕事をサボらないでください」
するとそこへ……双竜と同い年くらいの1人の少女がやって来た。
「サボってはいない、こっちの連中はとっくに終わらせた。そっちはどうだ?」
「愚問です。100人程度の群生を制圧するなど……私の拳の前では造作もない事です」
「ヒュー…さすがだぜ──覇王様?」
長い碧銀の髪をツインテールにして…白と薄い緑を基調とした服を身に纏い…右が紫で左が青の虹彩異色の瞳を持った少女に対し、そう声をかけるスティングとローグ。
そして少女によって吹き飛ばされた男は……薄れていく意識の中で……少女の姿を見て口を開いた。
「ま…まさか…コイツまでいたとは……
少女の名はアインハルト・ストラトス。
「またハデにやりましたねスティング君」
「ケロ」
「どこ行ってたんだレクター、フロッシュ」
「いえいえ、ちょっと偵察的な~」
そこへまた新たに現れたのは……2匹のネコ。
「いや~!! これなら火竜や鉄竜……天竜や雷竜にだって負けませんねー。いやー実に頼もしいですよーハイ」
「フローもそーもう」
赤茶色の毛並みを持つスティングの相棒・レクターと…緑色の毛並みに上からピンク色のカエルの着ぐるみを着用しているローグの相棒・フロッシュであった。
「だろ?」
「スティング君こそ、最強の
そう言ってレクターと軽いハイタッチをかわすスティング。
「アインー」
「帰りましょうか、フロッシュさん」
そしてトテトテと自分に歩み寄ってくるフロッシュを抱き上げて、優しく微笑むアインハルト。
「今のオレなら絶対にナツさんに勝てると思うんだ」
「ええ、もちろんですよハイ」
「今度勝負しに行かね、ローグ? アインハルトも一緒にさ」
「興味ないな」
「私はエルザさんという方に興味が……」
「フローも」
そんな何気ない会話を繰り広げながら……彼らはその場から去っていったのであった。
つづく