LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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天狼島編ももうすぐ終わりですので、このまま駆け抜けたいと思います。

今回はアニメ寄りで、賑やかなキャラたちを書けました。

感想お待ちしております。


死闘は過去へと…

 

 

 

 

 

長かったようで短かったマスターハデスとの死闘。それに勝利したナツたちを祝福するように、朝日が彼らを照らしてくれている。

 

 

「あ…あ……」

 

 

そしてそんな彼らの目の前には戦いに敗れ…力無く地面に倒れているマスターハデスの姿があった。

 

 

「終わったな」

 

 

「ああ……」

 

 

「私たち勝ったんですね」

 

 

「うん、これで本当に全部終わりだ」

 

 

「もうヘトヘトよ~」

 

 

「ほらナツ、マフラー」

 

 

「ありがとな、ティア」

 

 

今回の一件の元凶を断ち、ようやく戦いが終わった事に一息入れるナツたち。すると……

 

 

「みんなー!!!」

 

 

「うわぁーーっ!!!」

 

 

「お前ら……」

 

 

「助けてナツ~!!!」

 

 

そんな空気をブチ壊すように慌てた様子で走ってきたハッピーとシャルル。

 

 

「待ちやがれーーーっ!!!」

 

「ネコーーー!!!」

 

「よくもマスターの心臓を!!!」

 

 

その後ろからは、ハデスの心臓を破壊された事に憤慨したグリモアの兵隊たちの姿があった。

 

 

「スマン…オレもリニスも魔力が…」

 

 

「もうほとんど残ってません……」

 

 

兵隊と戦っていたリリーとリニスも魔力切れにより戦闘モードと人間モードを維持できず、ハッピーたちと共に逃げてきていた。

 

 

「マズイぞ」

 

 

「くそ……さすがにもう魔力が0だ」

 

 

「うあ……」

 

 

「どうしましょうか…」

 

 

全員が疲労困憊で魔力もない中、目の前の群生をどう対処するかで考え込む。

 

 

するとその時……

 

 

 

「そこまでじゃ!!!!」

 

 

 

「「「!!」」」

 

 

「みんな…!」

 

 

背後から聞こえてきた鋭い声に全員が一斉に目を向ける。そこには……ガジルやミラジェーン…エルフマンやヴォルケンリッターの面々がボロボロの姿で満身創痍ながらも復活し…彼らはマカロフを筆頭に目の前の敵を見据えていた。

 

 

「うおおっ!!! 増えたァ!!!」

 

「あ…あれはマカロフか!!?」

 

「てか……あそこ見ろ!!!」

 

「マスターハデスが……倒れてる!!!!」

 

 

マカロフを筆頭にした妖精の尻尾(フェアリーテイル)の登場…そして自分たちのマスターであるハデスが倒れている事に動揺するグリモアの兵隊たち。

 

 

「今すぐこの島から出て行け」

 

 

「ひいいいい!!!」

 

「わ…わかりましたー!!!」

 

「信号弾だ!!!」

 

「お邪魔しましたーー!!!」

 

 

威圧が込められたマカロフの言葉に、兵隊たちは一目散にその場から逃げ出し、島からの撤退準備を始めたのであった。

 

 

その瞬間…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の陣営からワッと盛大な歓声が上がる。

 

共に戦った仲間たちとハイタッチをかわし…負傷していたメンバーの無事を喜び…勝利を祝うように笑いあった。

 

だがその中で、未だに不安そうな表情を浮かべている者がいた。

 

 

「なのはとジュビアは?」

 

 

「キャンプには戻ってなかったな」

 

 

「(無事なのか? ゼレフはどうなった!?)」

 

 

グレイはこの場で姿の見えないなのはとジュビア…特にゼレフを追いかけていったジュビアの心配をする。

 

 

その傍らでは……マカロフがツカツカと足音を立てながら、無言でラクサスの方へと歩み寄り…チラリと横目で視線を向けると、ラクサスはバツが悪そうに顔をそらした。そしてそんなラクサスに対し……マカロフがゆっくりと口を開く。

 

 

「よくぞ戻ってきた───なーんて言うと思ったかバカタレめ!!!! 破門中の身でありながら、天狼島に足を踏み入れるとはーーー!!!!」

 

 

「うるせぇジジィだな」

 

 

「マスター落ち着いて」

 

 

「顔デカ」

 

 

シリアスな雰囲気から一転し、顔を大きくするほど凄まじい剣幕で説教するマカロフにラクサスはうざったそうな表情で顔を背ける。

 

 

「ラ…ラクサス……」

 

 

するとそこへ……雷神衆+フェイトの4人がラクサスの存在に気がついた。

 

 

「ラクサスーーー!!!!」

 

 

「帰ってきたのかラクサスー!!!!」

 

 

「お帰りラクサスー!!!!」

 

 

「お~~~いおいおいおい!!」

 

 

「うっざ!!」

 

 

ラクサスの帰還を喜び、嬉し涙を流しながら一斉に飛びついてくる4人に、ラクサスは嫌悪感を露にするが…そんな彼らを無下にする事はなかった。

 

 

「相変わらずキビシーなマスターは。これぞ漢」

 

 

「そうね。破門()か」

 

 

その様子を見ていたミラジェーンは、全てを察したように笑った。

 

 

「さーて試験の続きだ!!!」

 

 

「今からやるの!!?」

 

 

「二次試験は邪魔されたからな、ノーカウントだ!!!! この際わかりやすくバトルでやろーぜバトルでよォ!!!」

 

 

「まだ戦う気なの!!?」

 

 

「無理に決まってんでしょバカナツ!!!」

 

 

しゅっしゅっとシャドーボクシングをしながらそう言い放つナツに、ティアナとスバルがツッコミを入れる。

 

 

「テメェの頭どうなってんだ!! そんなボロボロでオレに勝てるとでも思ってんのか!?」

 

 

「やめなよガジル」

 

 

「つーか、ボロボロなのはオメーも一緒だからな」

 

 

そんなナツに突っかかるガジルをレビィが止めるように言い、アギトが冷静にツッコム。

 

 

「ああヨユーだね、今のオレは雷炎竜……ぐぱーーーー」

 

 

「どんな気絶の仕方だよ!!!」

 

 

「……おもしろい」

 

 

「炎以外の属性を食べちゃった副作用ですね」

 

 

意気揚々とガジルに言い返すと思ったら、そのまま倒れて盛大なイビキをかき始めるナツ。あまりの展開の変わりようにガジルはツッコミ、ルーテシアはそんなナツを面白そうに指で軽く突き、エリオが簡単に解説する。

 

 

「とりあえずキャンプまで戻りませんか?」

 

 

「少しは休まないと体が持たないわ」

 

 

「それもそうだな」

 

 

「サンセー」

 

 

「帰ろ帰ろ」

 

 

「ティア、ナツをお願いねー」

 

 

「は!? 何で私なのよ!!? ちょっと待ちなさいリサーナ!!!」

 

 

ウェンディとシャルルのそんな提案に、一同はすぐに賛同してキャンプへと足を進めていったのであった。

 

 

「(お父さん、無事かな…)」

 

 

「(はやて…)」

 

 

「(なのは…ジュビア…)」

 

 

賑やかに騒ぎながらキャンプへと戻る道中で、カナはギルダーツ…ヴィータははやて…グレイはなのはとジュビアと……この場で姿の見えない面々を心配していた。

 

 

「マカロフ…」

 

 

「!」

 

 

その中でただ1人……マカロフだけが名を呼ばれて足を止め、倒れているハデスへと視線を向けていた。

 

 

「とどめをさせ」

 

 

「……ワシはあなたから多くの事を学んだ。その礼に今回は見逃してやる。島から出て行け」

 

 

「甘えた事を……私を生かしておけば、次こそ必ずギルドを潰すぞ」

 

 

「ワシはあなたに負けた。しかしガキどもは貴様に勝った」

 

 

「違うな……私の心臓をやられ、天狼樹が若造どもに力を与えた。この偶然がなければ、私がうぬらに負ける事などなかった」

 

 

ハデスのその言葉に、マカロフは思うところがあるのか静かに目を伏せると……ハデスにある事を問い掛ける。

 

 

「なぜ闇に落ちた」

 

 

「言ったハズだ…魔法とは本来〝闇〟、闇の中で生まれた奇蹟を〝魔法〟と呼ぶようになった。ギルドを引退した私は、魔の道を深く探る事でこの世界の(ことわり)を見つけたかった。魔法が溢れすぎたこの世界は偽りの世界…ゼレフのいた世界〝大魔法世界〟こそが本来の魔法の世界。私はその世界を見てみたかった。その為にゼレフを覚醒させる全ての鍵を手に入れた。あと少し…あと少しだった。〝一なる魔法〟にたどり着くまで……」

 

 

そう語りながら、天に向かって求めるように手を伸ばすハデス。するとそんなハデスに向かって、マカロフが静かに言い放つ。

 

 

「そんなものを見つけても何も変わらんよ」

 

 

その言葉を聞き、ハデスは目を見開くが…マカロフは構わず語り始める。

 

 

「魔法が本来〝闇〟だというならそれでよい。〝光〟だというならそれもよし。魔法は生きておる。それは時代と共に役割を変え、ワシらと共に成長する。それぞれが思えばそれが魔法。各々の感じ方一つで光にも闇にも赤にも青にもなる。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)は自由と共に生きていく──全部あなたから学んだ事じゃ」

 

 

そう言い残して……マカロフは再び歩き始め、先に戻っていった面々を追って行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第162話

『死闘は過去へと…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃……天狼島の森の中。

 

そこではナンバーズの3人とシーズンの2人……無限の欲望(アンリミテッドデザイア)の面々が負傷した姿で集まっており、彼らの目の前には通信用魔水晶(ラクリマ)が置かれていた。

 

 

悪魔の心臓(グリモアハート)のマスターハデスも妖精の尻尾(フェアリーテイル)によって倒され、我々もすでに戦闘可能な状態ではありません。加えて捕獲対象であるユーリ・エーベルヴァインもゼレフと共に見失い、捜索の続行は困難と思われます。まことに遺憾ですが……任務失敗とし、帰還します」

 

 

《ふむ…それは残念だ。エンドレスを手中に収める数少ない機会だったのだがね》

 

 

インヴェルノの報告に通信越しでそう返したのは、彼らのマスターであるジェイル・スカリエッティ。

 

 

「申し訳ありません」

 

 

《気にする事はない。マスターハデスの敗北はこの私でも予想外だった事だ。詳しい報告は帰ってから聞かせてもらうよ》

 

 

「了解」

 

 

その会話を最後に、スカリエッティとの通信が途切れる。

 

 

「ではこれより、帰還するぞ」

 

 

「「「はい」」」

 

 

「…………」

 

 

インヴェルノの言葉にナンバーズの3人は返事を返すが、エスターテは黙ったままであった。

 

 

「おいインヴェルノ……帰って機体修復が終わったらすぐに訓練に付き合え」

 

 

「なに?」

 

 

「こんな屈辱は初めてだ……オレはこのまま終わる気はねえ。いつか必ずオリジナルもろとも奴等をぶっ潰してやる」

 

 

「……いいだろう。それはオレも同じだからな」

 

 

エスターテの悔しそうな感情が篭った言葉に、同じ気持ちのインヴェルノは迷う事無く同意した。

 

そして懐から、1つの魔水晶(ラクリマ)を取り出すと…それを粉々に握り潰す。するとその瞬間…魔水晶(ラクリマ)から溢れ出した魔力が彼らの足元に魔法陣を描く。

 

 

 

「また会おう──妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

 

そんな言葉を言い残すと同時に……彼らは魔法陣と共にその場から消えていったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のキャンプでは……

 

 

「んごぉおおお…ぐがぁぁあ…がるるる…」

 

 

「あーもーうるさいわね!!!」

 

 

「黙って寝れねーのかよナツ!!!」

 

 

「まぁまぁ」

 

 

「いいじゃない、休ませてあげれば」

 

 

「ミラ姉!! いい事思いついた」

 

 

テントの下で盛大なイビキをかいて眠っているナツに憤慨するティアナとエルフマンを、スバルとミラジェーンがたしなめる。すると、何かを思いついたリサーナがおもむろにナツをイジり始め……

 

 

「ツインテのナツ♡ ティアとお揃いで可愛くない?」

 

 

「「あはははは♪」」

 

 

「寒気がするからやめてくれる?」

 

 

「キモチ悪…」

 

 

ナツの髪を小さなツインテールにし、それを見たミラジェーンとスバルは楽しげに笑うが、ティアナとエルフマンにはウケなかった。

 

 

「オイラたちが壊したのがハデスの心臓だったのかー」

 

 

「偶然とはいえ、いい仕事したわね」

 

 

「それにおそらくアレが船の動力源にもなっていたのでしょうね」

 

 

「それを考えれば、エクシード隊としての初任務は成功という訳だ」

 

 

「そうね」

 

 

「あいさー」

 

 

ハッピーたちエクシード4人は偶然とはいえこの戦いの勝利に繋がる功績を残した事に、満足そうに笑う。

 

 

「オイ!! ケガはねえかリリー──ゲフッゴホッ!」

 

 

「ウム…お前よりはマシだ」

 

 

「つーか人の心配ができる体じゃねーだろ」

 

 

「ガジル……無理しちゃダメ」

 

 

リリーの心配をしながら自分が咳き込むガジルを見て、リリーとアギトは呆れ、ルーテシアは彼の背中をさすった。

 

 

「よく帰ってきたな、ラクサス!!」

 

 

「いや……帰ってきた訳じゃねえよ」

 

 

「ラクサスが帰ってきた~!!! お~いおいおい!!!」

 

 

「よかったね、フリード♪」

 

 

「だから……」

 

 

「ねえ…ラクサスのいない間にエルフマンが私に悪い事するの。仕返ししてぇ~」

 

 

「テメェ!!」

 

 

「ふむ…そう言えば試験中に抱き合ったりしていたな」

 

 

「おいザフィーラ!!!!」

 

 

「ほ~う、オメーいつの間に?」

 

 

「ちょっと待て!! これはつまり、ややこしい説明が……」

 

 

焦った様子で言いよどむエルフマンに対し、ラクサスは彼の肩にポンッと手を置いて静かに頷く。

 

 

「どーいう意味だよコレ!!?」

 

 

「公認…という意味ではないのか?」

 

 

「「んな訳あるかっ!!!」」

 

 

ザフィーラの発言に今度はエバーグリーンも一緒になって否定したのであった。

 

 

「あ~…やっと見つけた~」

 

 

「思いのほか迷ったな…」

 

 

「ユーノ!!」

 

 

「クロノも!!」

 

 

するとそこへ……ユーノとクロノの2人が合流し、ユーノのもとへルーシィとカナが駆け寄る。

 

 

「ユーノケガしてる!! 眼鏡もないし…大丈夫なの!!?」

 

 

「ヘーきへーき、見た目ほどたいしたケガじゃないよ。あと眼鏡は伊達だからなくても問題ないよ」

 

 

「実際お前は僕が行くまでは逃げ回ってただけだからな」

 

 

「うるさいぞクロノ」

 

 

心配するルーシィを安心させるようにそう言いつつ、後ろで皮肉を言ってくるクロノを睨むユーノ。するとそんなユーノに、申し訳なさそうな表情をしたカナが歩み寄る。

 

 

「ユーノ……ごめんね」

 

 

「え?」

 

 

「私があの時戦力を分散しようなんて言い出さなければ……」

 

 

「ああ、もういいんだよ。結果的にそれが功を奏したみたいなもんだし……一刻も早く試験を再開させたかったカナの想いも理解してるつもりだからさ」

 

 

「……ありがとう、ユーノ」

 

 

ユーノのその言葉を聞き、カナは安堵したように笑ったのであった。

 

 

「あ! もうイタくない!」

 

 

「うむ…さすがだな」

 

 

「次……キャロちゃんとレビィさんのケガの手当てをします」

 

 

「ケガが辛い人はどんどん来てね~♪」

 

 

「私は大丈夫! ウェンディとシャマルも少し休んだら?」

 

 

「そうだよウェンディちゃん。さっきから治癒魔法使いっぱなしだよ?」

 

 

今しがたハッピーとシグナムの治療を終えたウェンディとシャマルの2人は、ギルドの中でも治癒魔法が使える数少ない魔導士である為、負傷者の手当てに勤しんでいる。だがその彼女たちもケガ人である事に変わりはないので、レビィとキャロは2人に休むように提案する。

 

 

「いいえ…天狼樹が元通りになってから調子がいいんです」

 

 

「シャマル先生も絶好調♪ どんどん治療できるわ」

 

 

しかし2人は笑顔でそう言って、レビィとキャロの治療を開始したのであった。

 

 

「しかし倒れた天狼樹がどうやって元通りに……」

 

 

「(……ウルティア……まさかな……)」

 

 

エルザの疑問にグレイはそれが出来そうな1人の人物を思い浮かべるが……そんな事はないだろうと思い、その可能性を脳内から消したのだった。

 

するとその時……2人の背後の草むらガサッと音を立てて揺れた。

 

 

「んなっ!?」

 

 

「曲者!!?」

 

 

それを聞いたエルザとグレイはすぐさま振り返って身構えるが……

 

 

「違うよ!! 私たちだよ!!」

 

 

「みな…さん……」

 

 

「なのは!! ジュビア!!」

 

 

「無事だったか!」

 

 

そこから現れたのはなのはと、なのはに肩を借りてようやく立てているジュビアの2人であった。おそらくここへ来る途中で合流できたのであろう。

 

 

「スミマセン…ジュビアは…ゼレフを逃してじまいまじだぁ~……グレイ様、お仕置きしてください!!! さあ!! 好きなだけぶってください…!!」

 

 

「オ…オレにそんな趣味はねえ!!」

 

 

「こっちにはあるんです~」

 

 

「こらこら」

 

 

ゼレフを逃してしまった事から、グレイにお尻を突き出してお仕置きを強要するジュビアにグレイは本気で引き…そんなジュビアをなのはが戒めた。

 

 

「あとはギルダーツとはやて」

 

 

「うん」

 

 

「…………」

 

 

「大丈夫……2人ともきっと無事よ」

 

 

「……んな事、オメェに言われなくてもわかってらぁ」

 

 

「(お父さん……)」

 

 

ルーシィの言葉にカナは俯きながら…ヴィータは若干強がりながらも心配そうな表情でヤシの実をストローで吸って飲む。

 

すると……

 

 

「ところでよォ…オメェ破門になったんだってなァ、ぷはーダセェ」

 

 

「しかもあんだけザコザコってバカにしとったナツ君に負けたんやで。笑えるわ~」

 

 

「やかましいぞオッサンに豆狸!!!」

 

 

「「ブフーーッ!!!」」

 

 

いつの間にか戻ってきていて、しかも2人してラクサスをからかっているギルダーツとはやてを見てカナとヴィータは思いっきり噴出した。

 

 

あれだけ心配しておいてあまりにもあっさりと戻ってきたギルダーツに、カナとルーシィは呆れながらも安堵したように笑いあったのであった。

 

 

「はやてーーー!!!」

 

 

「我が主ーー!!! ご無事でしたかーーー!!!」

 

 

「あ、ヴィータにリインフォース!! ただい──ゴフゥ!!!」

 

 

「がはははっ、相変わらず仲が良いなお前ら」

 

 

ヴィータとリインフォースの2人に勢いよく飛び付かれ、はやては腹部にダメージを受けながら吹き飛び、そんな様子をギルダーツは笑ってみていた。

 

 

「ギルダーツ!!! オレと勝ぷぎゃ!!!」

 

 

「休ませろっての」

 

 

「瞬殺かよ」

 

 

ナツはナツで目が覚めたと同時にギルダーツに勝負を挑もうとするがその前に瞬殺され、それを見てラクサスが呆れる。

 

 

「グレイ様~ん、早く!! 早くぅ~♡」

 

 

「だからオレはそういうアレじゃねぇ~!!!」

 

 

「そうだよジュビアちゃん!! グレイは叩くより氷付けにする方が好きなんだよ!!!」

 

 

「そういうアレでもねえよ!!!」

 

 

未だにお尻を突き出して追いかけてくるジュビアから逃げながら、なのはの発言にツッコミを入れるグレイ。

 

 

「ウェンディ…シャマル…こっちも頼む……」

 

 

「頼りになるなァ」

 

 

「ウェンディの治癒魔法には、僕も昔からお世話になってますからね」

 

 

「漢だ」

 

 

「相変わらずその言葉を雑に使うねエルフマン」

 

 

「お前も、ちゃんと治してもらっておけよリリー」

 

 

「オレの事より、お前のダメージの方が深刻だな」

 

 

「な…なんか行列になっちゃったね」

 

 

「あははは……」

 

 

「大丈夫です!! こういう時こそお役に立てるし!!」

 

 

「風の癒し手の名にかけて、完璧に治してみせるわ!!」

 

 

いつの間にかウェンディとシャマルの前には、ガジル…リリー…ユーノ…エルフマン…エリオ…ビックスロー…ナツと、負傷者の行列が出来上がっていた。それでも治療する2人はやる気満々といった様子で治療を続ける。すると……

 

 

「ウェンディ、シャマル、替わろうか」

 

 

「「「!」」」

 

 

突然エルザが2人にそう言いながらやって来た──ナース服姿で。

 

 

「エ…エルザさんその格好……」

 

 

「どうしてナース?」

 

 

「アンタに治癒の力ないでしょ!!」

 

 

ナース服のエルザにウェンディとシャマルは目を丸くし、シャルルがツッコムが、エルザは構わず言葉を続ける。

 

 

「勝負に能力の差は関係ないぞ2人とも。試されるのは〝心〟だ!!」

 

 

「ひぅ…勝負ですか……!?」

 

 

「ちょっと!! ウェンディが怯えるじゃない!!!」

 

 

「それに治療は勝負じゃありません!!!」

 

 

「始まった……」

 

 

エルザの言葉にウェンディは怯え…シャルルとシャマルは憤慨し…レビィは呆れる。

 

 

「さあ素直に言ってみろ。痛いところはどこだ? まずは熱を測ってやろうか? それとも注射がいいか?」

 

 

するとエルザは木箱に足を組んで座り…行列に並んでいる男たちに向かって誘惑するような色っぽい声でそう問い掛けている。

 

 

「なるほど……勝負と聞いたらうちのシャマルが黙ってられへんな。なぁシグナム?」

 

 

「ええ、ヴォルケンリッターの一員としてここはシャマルに頑張ってもらいましょう」

 

 

「はやてちゃん!!? シグナム!!? どうして2人が私で張り合おうとするの!!?」

 

 

そんなエルザに対抗意識を燃やしたのは、当事者のシャマルではなく、なぜかはやてとシグナムの方であった。

 

 

「エルザさんがナースやったらこっちは……コレや!!!」

 

 

「きゃああーーーーっ!!!」

 

 

そう言うとはやてはなんとシャマルの着ていた服を一瞬で剥ぎ取り、その下に着ていたビキニタイプの水着姿となった。因みにこの水着は元々試験としてこの島に来た時から着ているモノである。

 

 

「さあ男ども!! ナース美人のエルザさんか水着美人のシャマル!! 治療してもらうならどっちや!!?」

 

 

もはやノリノリの様子で男性陣に高らかにそう問い掛けるはやて。

 

 

「ったく、何が始まったかと思えば……」

 

 

「イカれてるぜ」

 

 

「まったくです」

 

 

「うんうん」

 

 

そんなエルザとはやてに対し呆れたように嘆息しながらそう言うグレイとガジル…そしてエリオとナツであったが……

 

 

「とか言いながら並んでるじゃないか!!!」

 

 

「しかもちゃっかり割り込むなってーの!!!」

 

 

「ちゃんと並べテメェらぁ!!!」

 

 

「オスども!!!!」

 

 

ユーノやビックスローやエルフマンと同じくしっかりとエルザやシャマルの列に並んでおり、行列の中にはマカロフやギルダーツ…そしてクロノやラクサスの姿もあった。そんな男たちに、シャルルのツッコミが炸裂した。

 

 

「ほ…ほら!! 少し休めるからよかったじゃない!!」

 

 

「そうだよウェンディちゃん!! エルザさんの厚意に甘えて休んでおこうよ!! ねっ!?」

 

 

「……やっぱり、お胸の差でしょうか?」

 

 

「「うぐっ!!」」

 

 

暗くなって落ち込んでいるウェンディを慰めるようにフォローするレビィとキャロであったが、ウェンディがポツリと呟いた言葉に思うところがあるのか、表情を歪める。

 

 

「包帯を巻くというのは中々難しいものだな」

 

 

「「「だあぁーーー!!! 殺す気かーーー!!!?」」」

 

 

「えっと…エリオ君? 出来れば格好は気にしないでね?」

 

 

「は…はい……」

 

 

一方エルザはグレイとガジルとユーノの3人を包帯で雁字搦めにして逆に3人を苦しめていたり…シャマルは水着なのを気にせずエリオの治療しようとするが、当のエリオは顔を真っ赤にして俯いている。

 

 

「グレイ様…お仕置きするより、お仕置きされる方が好きだなんて……ジュビアショック!!」

 

 

「にゃはは……少しお話が必要かな~?」

 

 

「ガァ~ジィ~ルゥ~!!!」

 

 

「……ガジルのバカ」

 

 

「ユーノ……胸ならあたしだって負けてないんだから!!」

 

 

「キャロちゃん…やっぱりエリオ君もお胸が大きい人が好きなのかな?」

 

 

「……そうかもしれないね」

 

 

そんな男どもを見て……彼らに好意を寄せる女性陣は若干黒いオーラを放っていたのであった。

 

 

「気のせいか……悪魔の心臓(グリモアハート)との戦いが、遠い過去のような……」

 

 

「ま…いつもの事だけどね」

 

 

「まぁまぁ、あんな戦いの後でもいつも通りでいられるというのはいい事ですよ」

 

 

「それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)です!!!」

 

 

たとえさっきまで命をかけた死闘を繰り広げていようとも……それが終わればいつも通りの大騒ぎできる彼らを見て、エクシード4人がそう言い放つ。

 

 

そしてマカロフも、そんなギルドのメンバーたちを見て、嬉しそうに笑みをこぼしたのであった。

 

 

「マスター、試験の方はどうします?」

 

 

「そうじゃのう……仕切り直すにしても、1度ギルドに戻ったほうがいいか」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……天狼島から撤退したグリモアの戦艦。

 

その船内の一室では、全身に包帯を巻いたハデスと七眷属のラスティローズと華院が意気消沈した様子で沈黙していた。

 

 

「まさかオレたちが敗北するとは」

 

 

「信じられねっス」

 

 

「ゼレフが目の前にいたのに……大魔法世界が目の前にあったのに……」

 

 

悔しそうに歯を食いしばりながらそう呟くラスティローズ。すると彼らのいる部屋に……コツコツと、2人分の足音が聞こえた。

 

 

「!!」

 

 

「誰だ!?」

 

 

「君たちのような存在が僕を作り出した」

 

 

ラスティローズの問い掛けに答えず、コツコツと足音を立てながら歩み寄ってくる2人の青年と少女。その2人の姿を確認した瞬間、ラスティローズと華院の体にゾワリと言い知れない悪寒が走った。

 

 

「君たちのような邪念がアクノロギアを呼んだ」

 

 

「そうなってしまった今……この時代は終わりを告げる」

 

 

「!!」

 

 

そしてマスターハデスもその2人の姿を確認し……大きく目を見開いた。

 

 

「もう誰にも止められません」

 

 

「世界はここに完結する」

 

 

「ゼレフ……!!!! ユーリ……!!!!」

 

 

そんなハデスの目の前に静かに佇むのは……彼らが欲して止まなかった黒魔導士ゼレフと、彼に付き従う少女ユーリ・エーベルヴァインの姿があったのだった。

 

 

 

 

 

つづく


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