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動力源を探して船の中に潜入していたハッピーたちエクシード4人は、その途中で奇妙なモノを見つけた。
「これって……」
「動力源って感じじゃなさそうね」
「……リリー、これをどうみますか?」
「うむ……
目の前にあるソレを見ながらそんな会話をしていると……
『中で声がしたぞ!』
『バカな!! どうやってこの部屋に!!』
「!!」
「見つかったわよ!!」
部屋の出入り口の向こうから、おそらくグリモアのメンバーであろう者たちのそんな声が聞こえてきた。
「敵はオレとリニスが食い止める!!」
「ハッピーとシャルルは、これを停止させてください!!」
「停止!?」
「やりましょハッピー!!」
グリモアの兵士たちの相手はリリーとリニスに任せ、ハッピーとシャルルはソレの停止に取り掛かる。
「停止って…言っても…どうやって…」
「色々いじってみるしかなさそうね」
装置の操作法など当然知らない2人は、適当にその辺の機械などをいじり始めたのであった。
「ウオオオオオオッ!!!」
「ハァァアアアアッ!!!」
「うわぁ!!」
「何だコイツらは!!?」
「美女と野獣!!?」
「怯むなー!!」
一方リリーとリニスは戦闘モードと人間モードに変身し、部屋の扉が開かれると同時に扉の前で待ち構えていたグリモアの兵隊たちに体当たりと飛び蹴りを放ったのだった。
「つぇあーーー!!!」
「借りるぞ」
「わっ!! オレの剣!!」
「デヤァ!!!」
「「「ぐあぁぁ!!」」」
さすがにこの人数を丸腰で相手にするのはキツイと判断したのか、リリーは1人の男が振るってきた剣を受け止めるとそれを奪い、そのまま力強く振るって兵達を切り裂いた。
「どけどけェ!! オレの魔法で吹き飛ばして──」
「ハッ!!!」
「うげっ!?」
意気揚々と杖を構えて魔法を放とうとした男に対し、リニスは俊敏な動きで男の前に立つと、杖を持った手を蹴り上げてその杖を上へと弾いた。
「お借りしますよ」
「オ…オレの杖!! か…返し……」
「ブラストッ!!!!」
「「「ぐあぁぁあああああ!!!」」」
そしてそのまま落ちてきた杖を手にしたリニスは、その杖の先端を兵の群生へと向けて…魔力の爆発を起こして兵達を吹き飛ばした。
「「!」」
するとリリーとリニスは、相手から奪った武器に違和感を覚えた。
「大きさが変化する剣か。
「何て使いやすい杖……エドラスで使っていたモノと遜色ありません」
リリーの奪った剣は身の丈ほどの大剣へと変化しており……リニスは奪った杖の使いやすさに感心していた。
「気に入った、こいつをオレの〝武器〟にする。ギヒッ」
「こんなに使いやすい杖が〝武器〟なら、心強いですね」
リリーとリニスはかつて自分たちの相棒に言われた言葉を口にしながら、その剣と杖を自分の新たな武器に決めたのであった。
「あ~~…ムジカの剣、高かったんだぞあれ……」
「オレのミルディアン製の〝シンフォニアタクト〟も……いくらしたと思ってんだよ……」
第161話
『暁の天狼島』
その頃……悪魔の眼を開眼したハデスの邪悪な魔力の前に……ナツたちは恐怖でその身を震わせていた。
「魔道の深淵……」
「な…なんという魔力だ……」
「あ…ああ……」
「あう…エリオ君……」
「ウェンディ……」
「ナツ!!! 大丈夫!!?」
「体が……ゲホッゲホッ…ガハッ!!」
グレイとエルザとルーシィはその圧倒的な魔力の前に震え……ウェンディはあまりの恐怖にエリオに寄り添い、エリオもそんなウェンディを守るように片手で彼女の体を抱き寄せる。そして雷炎竜の力により魔力を使い果たしたナツは動く事すら出来ず、ティアナに支えられている状態であった。
そんな彼らに対し、ハデスは静かに語り始める。
「魔の道を進むとは、深き闇の底へと沈む事。その先に見付けたるや、深淵に輝く一なる魔法。あと少し…あと少しで一なる魔法に辿り着く。だが、その〝あと少し〟が深い。その深さを埋めるものこそ大魔法世界。ゼレフのいる世界。今宵ゼレフの覚醒と共に世界は変わる。そして私はいよいよ手に入れるのだ。〝一なる魔法〟を」
「一なる魔法…」
「(やっぱりこの話、どこかで聞いた事……ママ!!?)」
ゼレフの語りを聞いて、ルーシィの聞き覚えのあるその話に……今は亡き自分の母の顔が思い浮かんだ。
しかしそんな事は知らず、ハデスはさらに語りを続ける。
「うぬらは行けぬ、大魔法世界には。うぬらは足りぬ、深淵へと進む覚悟が」
「何だ、あの構えは……」
そう言うとハデスはまっすぐに伸ばした両腕で円を描くようにゆっくりと回し始める。
「ゼレフ書、第四章十二節より。裏魔法──
その瞬間……戦闘で崩れた瓦礫が徐々に形を変えて行き、あっという間に禍々しい悪魔のような姿の生物へと変化していった。
「ガ…ガレキから、化け物を作ってるのか!?」
「そんな……これが…魔法……!!?」
「ひっ…ひぃん……ひっ…」
その光景にグレイとエリオは愕然とし、ウェンディはもはや声にもならない悲鳴を上げる。
「深淵の魔力をもってすれば、土塊から悪魔をも生成できる。悪魔の踊り子にして天の裁判官。これぞ裏魔法」
その1体1体が絶望的な魔力の塊であり…その数は20を優に超え…聞くものに恐怖を与える様な雄叫びを上げている。
「(怖い…!!! 怖い!!! 怖い!!!!)」
「(怖くて……体が動かない……!!!!)」
「(私が……恐怖で震えている)」
「(何ビビってんだオレは……チクショオ…)」
「(怖くて……もうダメ……)」
「(恐怖に体が支配される……誰か──私たちに勇気を……)」
全員が恐怖に打ち震え……ティアナがナツを抱き締めながら懇願するように涙を流す。
すると……
「なんだ…こんな近くに仲間がいるじゃねーか」
「ナツ…」
ただ1人ナツが、ティアナの腕を優しく掴みながらそう言った。
「『恐怖は〝悪〟ではない、それは己の弱さを知るという事だ。弱さを知れば、人は強くも優しくもなれる』」
一次試験で言われたギルダーツの言葉を復唱しながら、ゆっくりと立ち上がろうとするナツ。
「オレたちは自分の弱さを知ったんだ。だったら次はどうする?」
それからナツはフラフラになりながらもしっかりと立ち上がり、他の6人に問い掛ける。
「強くなれ!!! 立ち向かうんだ!!!! 1人じゃ怖くてどうしようもないかもしれねーけど、オレたちはこんなに近くにいる。すぐ近くに仲間がいるんだ!!」
そして……
「今は恐れる事はねえっ!!!! オレたちは1人じゃねえんだ!!!!!」
そんなナツの言葉は──仲間の心へと染み込んでいく。そして気がつけば……全員の体の震えは止まっていた。
「見上げた虚栄心だ。だが、それも此処まで」
それに対しハデスは今にも後ろに控える悪魔たちを解き放とうとしている。
「(仲間がいれば)」
「(恐怖はない)」
「(そうだね、ナツ)」
「(たとえ魔力がもうなくても)」
「(僕たちは最後まで諦めない!!!)」
「(それが私たち──
だがそれで彼らがもう……恐怖に呑まれる事はない。ナツの言葉で恐怖へと立ち向かう勇気を得たのだから。
「行くぞォ!!!!」
「「「うおおおおおおおっ!!!!!」」」
最後の力を振り絞り……まっすぐとハデスに向かって駆け出していくナツたち。
「残らぬ魔力で何が出来るものか。踊れ──土塊の悪魔」
そんなナツたちに対し、ハデスは土塊の悪魔を解き放つ。
悪魔たちは走り出すナツたちを迎え撃つように一斉に攻撃を仕掛けてくるが、彼らをそれを何とか回避しながら走り続ける。
だがそんな中……一番体力を消費していたナツの足が、ガクンっと崩れ、その場で倒れそうになってしまう。
するとそんなナツの左右の腕を……エリオとウェンディがそれぞれしっかりと掴んだ。そしてエリオとウェンディはナツに笑いかけると、そのままナツの体を思いっきり前へと放った。
そしてナツが飛んだその先にはティアナとルーシィの姿があり…2人は飛んできたナツを見るとすぐに頷きあい、ナツに向かってそれぞれ手を差し出す。ナツは差し出された2人のその手を掴むと、ティアナとルーシィがさらに勢いをつけてナツを前へと投げ飛ばす。
さらにその先にはグレイとエルザがおり……2人は目配せをしタイミングを見計らったようにナツの両足に己の片足をそれぞれ重ね、渾身の力でナツを蹴り出した。
そしてナツの進む先にいるのは……ハデス。
「全てを闇の底へ。日が沈む時だ──
次の瞬間……ナツとハデスが衝突し……凄まじい轟音と共に巻き起こった爆炎の渦にナツとハデスが呑み込まる。
凄まじい爆発に耐え切れず大破する戦艦。
爆風の中から飛んできたナツのマフラー。
そして全員が固唾を呑んで見守る中……晴れた爆煙の中から現れたのは──
──ハデスの顔面に拳を叩き込んでいるナツの姿であった。
「ナツ!! っとと…」
ティアナは歓喜の声を上げると同時に、飛んできたナツのマフラーをキャッチする。
「バ…バカな…裏魔法が効かぬのか!!?」
「うおおおおおおおお!!!!」
「ありえん!!! 私の魔法は……!!!! まさか!!!?」
ナツの拳に殴り飛ばされながらハデスは思考を巡らし……そして1つの答えにたどり着いた。
そして同時刻……ハッピーとシャルルの2人は偶然発見したソレの破壊に成功した。
破壊されたソレの名は……
『悪魔の心臓』
「(私の心臓を…!!!)」
マスターハデスの大魔力と長寿の秘密……それこそがハッピーたちが破壊した『悪魔の心臓』であった。
「(あれをやられたら…私の魔力が……)」
「おおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
心臓をやられ、魔力を失ったハデスに次々と打撃を与えていくナツ。
すると、ウェンディがある事に気がついた。
「あれ?」
「ウェンディ、どうしたの?」
エリオがそう問い掛けると同時に、全員がウェンディの視線の先をたどる。
「な!?」
「そんな…」
「天狼樹が元通りになってる!!!?」
するとそこには……アズマによって倒されたハズの天狼樹が元に戻り、しっかりとそびえ立っていたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「ハァ…ハァ…ハァ…」
そんな元に戻った天狼樹の根元では……ウルティアが時のアークを天狼樹にかけている姿があった。そう…天狼樹を元に戻したのは、他ならぬウルティアだったのである。
「(私は…生まれ変わるんだ……)」
大魔法世界とは違う新たな未来を見出したウルティアは、静かに天を仰いだのであった。
だがその背後では……メルディが鋭い視線をウルティアに送っていた。
◇◆◇◆◇◆◇
そして天狼樹が元通りになると同時に、グレイやティアナたちの体に刻まれたギルドの紋章が輝き始める。
「魔力が元に…」
「戻っていく!!!」
天狼樹は妖精の紋章を刻む者たちを加護し、命を守る大樹。それが戻った今……天狼樹が彼らに魔力を与えたのだ。
「(私が……この私が……!!! マカロフに負けるというのか!!?)」
「勝つのはオレたちだーーーっ!!!!」
そう宣言してさらにハデスへと攻撃を加えようとするナツ。
「否ーーーー!!!!」
「がっ!!」
「魔道を進む者の頂にたどり着くまでは……悪魔は眠らない!!!!」
しかし…心臓を破壊されようとも諦めないハデスの攻撃がナツを殴り飛ばす。だがその時……
「いがっ!!」
「ラクサス!!」
復活したラクサスの拳が叩き込まれ、ハデスを怯ませる。
「行けェ!!!! フェアリーテイル!!!!」
そしてラクサスのその言葉を受けて……ナツたち7人が最後の全身全霊をかけた攻撃が始まる。
「契約まだだけど……」
まず最初に動き出したのは──ルーシィ!!!
「開け!!! 磨羯宮の扉!!!! カプリコーン!!!!!」
ルーシィが召喚したのは、今回の戦いで敵として現れたが……ロキによって呪縛から解放されたカプリコーンであった。
「うぬは…!?」
「ゾルディオではありませんぞ。
「ぐぬぅ!!」
そう言い放ちながらハデスに強烈な打撃を与え、蹴り飛ばすカプリコーン。
「見様見真似!!」
次に動き出したのは──ウェンディ!!!
「天竜の翼撃!!!!!」
「おあああああああ!!!!」
竜巻を纏った両腕を振るい、その突風と渦でハデスを吹き飛ばす。
「同じく!! 見様見真似の!!!」
その飛ばされた先で待ち構えていたのは──エリオ!!!
「雷竜槍・
「ぬおおおおおおお!!!!」
雷撃を纏ったストラーダで目にも止まらぬ高速連続突きをハデスに叩き込んだ。
続けてそんなハデスの上空から現れたのは──グレイ!!!
「
「ぐはぁっ!!!!」
造り出した一対の氷の剣でハデスを十字に切り裂き、その勢いで地面へと叩き落す。
「換装!!!」
そしてその落ちていく先へと駆け出しているのは──エルザ!!!
「天輪・
天輪の鎧へと換装し、両手に持った剣で相手を五芒星を描くようにハデスを切り裂く。
「幻魔双閃!!!」
そんなハデスを少し離れた場所から双銃で狙っているのは──ティアナ!!!
「ファントム・ツイン・ブレイザー!!!!!」
「ぐおおおおおおおおっ!!!!」
ティアナのクロスミラージュの2つの銃口からそれぞれ放たれた2つの閃光が、ハデスを飲み込み吹き飛ばした。
「うおおおおおおお!!!!」
最後に動き出したのは両腕に炎と雷をそれぞれ纏った──ナツ!!!!
「滅竜奥義…改!!!!」
そして……
「
炎と雷が入り混じった強烈な一撃をハデスへと叩き込んだのであった。
彼らの全力を振り絞った怒涛の連続攻撃の前にハデスは地面に崩れ落ち………今度こそその意識を手放したのであった。
「これがオレたちのギルドだぁっ!!!!!」
そしてそんな彼らの勝利を祝福し……長かった悪夢が終わりを告げるかのように……海から顔を出した太陽が戦場を照らしたのであった。
つづく