LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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合流

 

 

 

 

 

デリオラを復活させようとしている一味、リオンとギンガに敗北したグレイとスバル。現在そんな負傷した二人を背負ってナツが森の中を走っている。

 

 

「くっそー…意外と距離があんな。村はまだ無事か?」

 

 

村の安否を心配しながら森を走るナツ。すると……

 

 

「ナツ……」

 

 

「ん? おぉスバル! 気がついたか?」

 

 

「うん……ありがとう。もう大丈夫だよ」

 

 

そう言って、ナツから降りて自分で立つスバル。

 

 

「無理すんなよ?」

 

 

「大丈夫だよ。それに、いつまでも寝てられないよ。ギン姉は…私が止めないとっ」

 

 

そう言うスバルの目は、決意に満ち溢れていた。それを見たナツはニカッと笑う。

 

 

「んじゃあ行こうぜ!! まずは村を守らねえとな!!」

 

 

「うん!!」

 

 

ナツとスバルは頷き合い、再び森の中を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十四話

『合流』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっしゃあ!! 村が見えてきたぞ!!」

 

 

「でも、門が閉まってるよ!!」

 

 

ようやく森を抜けたナツとスバルは村の入り口前に来ていたが、村の門は閉じられていた。しかし……

 

 

「おっ? 何か急に開いたぞ」

 

 

「ホントだ!ラッキー!!」

 

 

突然村の門が開き、ナツとスバルは一直線に走る。

 

 

「みんなーーっ!! 無事かーーっ!!」

 

 

ナツは村人にそう呼びかけるが……

 

 

「ダメ!! 来ちゃダメぇーーっ!!!」

 

 

「あ?」

 

 

「どういうこと?」

 

 

何故か村に入ることを拒否するルーシィに二人は首を傾げる。

 

 

「止まって! ストーップ!!」

 

 

「「?」」

 

 

必死に二人を止めるルーシィ。それに疑問を覚えながらも、二人は入り口前でブレーキを掛けて急停止する。それを見てホッと息を吐くルーシィ。だが…

 

 

「あれ? ここだけ地面の色が違う」

 

 

「何だこれ?」

 

 

「きゃあああ!!」

 

 

目の前のある変わった地面を踏む二人。その瞬間……

 

 

「えばっ!」

 

 

「ひゃあっ!」

 

 

ズボン!!

 

 

二人は見事に落とし穴にハマってしまった。

 

 

「痛たた……」

 

 

「オイオイオイ…こんな時にオチャメした奴ぁ誰だコラァ……」

 

 

「ルーシィに決まってるじゃないかー!!」

 

 

「やっぱりか」

 

 

「酷いよルーシィ!!」

 

 

「違うのよーーーっ!!!」

 

 

落とし穴を作った張本人であるルーシィに二人は恨みがましい視線を送る。

 

 

「よかった! ナツもグレイもスバルも無事で」

 

 

「よかねえよ。グレイはダウンだし、スバルもこの通りだ」

 

 

ナツは気絶しているグレイと負傷しているスバルを指しながらそう言うと、ナツはある事に気がついた。

 

 

「! 氷が割れてる!! あれ!? 火でもダメだったのに!!」

 

 

「あっ! ホントだ!!」

 

 

そう。先ほどまでナツの体を凍らせていた氷が見事に割れているのだ。

 

 

「さ…作戦通りだわ」

 

 

「おそらく、術者との距離が離れた為、魔法の効果が弱まったのだと」

 

 

見栄を張るルーシィにバルゴが淡々と説明する。

 

 

「そりゃそうと、アイツ等まだ来てねえのか?」

 

 

「そ、そういえば遅いわね」

 

 

「うん。あの三人は私とナツより先に村へ向かったはずなのにね」

 

 

「一回山に登ったり、走りづらかったりで結構時間くったと思ったんだけどな」

 

 

「確かに変だぞ。遅すぎる」

 

 

「迷ったか。哀れな奴等め」

 

 

「ううん。遺跡の頂上からは村の位置がわかってたわ」

 

 

未だに姿を見せない敵に一同が話し合っていると……

 

 

「な…何だあれは!!?」

 

 

突然村人が空を指して声を上げた。その先には…

 

 

「ネズミが飛んでる!!」

 

 

「しかも何かバケツを持ってるよ!!」

 

 

今朝遭遇した巨大ネズミ…アンジェリカが尻尾をヘリのように回しながら飛び、何かが入った巨大なバケツを持っていたのだ。

 

 

「毒毒ゼリーの準備に時間がかかってしまいましたわ」

 

 

「しかしちょうどよかった。例の魔導士どもも村に集まっている」

 

 

「おおーん」

 

 

アンジェリカの背に乗っている三人がそう言うと、バケツの中に入っていたゼリーが一滴零れる。そしてそれは、ゆっくりとルーシィに向かう。

 

 

「ゼリー?」

 

 

「ルーシィ!!!」

 

 

「きゃああ!!!」

 

 

そのゼリーを触ろうとしたルーシィを抱きとめて飛んだナツ。ルーシィが触ろうとしたそれは、地面に垂れたかと思うと生えていた草を一瞬にして溶かしてしまった。

 

 

「ひっ!」

 

 

「草が…地面ごと溶けた!?」

 

 

「なんだこのアブネェ臭いは」

 

 

ナツ達が驚愕している間に、村全体に毒毒ゼリーがばら撒かれた。

 

 

「うわあああ!」

 

 

「やめろォォ!」

 

 

「こんなのどうやって防げばいいのよ!」

 

 

それを見てうろたえる村人とルーシィ。

 

 

「みんな! 村の真ん中に集まれっ!!」

 

 

「ナツ! 私も行くよっ!!」

 

 

「おう! ハッピー、飛べるか!?」

 

 

「あいさ!」

 

 

飛び出していったナツに続いて飛び出すスバル。

 

 

「ウィングロード!!」

 

 

そして上空に向かってウィングロードを螺旋状に展開し、それを走りながら落ちてくるゼリーへと向かう。

 

 

「リボルバー……!」

 

 

「右手と…左手の炎を合わせて……火竜の…」

 

 

スバルはリボルバーナックルに魔力を込め、ナツは両手に炎を纏う。そして……

 

 

「シュート!!!」

 

 

「煌炎!!!」

 

 

スバルは強力な竜巻を、ナツは強力な炎をそれぞれぶつけ、毒毒ゼリーを爆散させたのだった。

 

 

「何とかなったけど村はひどいことになっちゃったわね」

 

 

「あい」

 

 

しかし、毒毒ゼリーのせいで村が焼かれたように何もなくなってしまった。そこへ、シェリー達が現れる。

 

 

「零帝様の敵はすべて駆逐せねばなりません。せめてもの慈悲に一瞬の死を与えてやろうとしたのに……どうやら大量の血を見ることになりそうですわ」

 

 

「あ?」

 

 

そう言うシェリーをナツ達は睨みつける。

 

 

「村人約50、魔導士3。15分ってとこか」

 

 

「おおう」

 

 

「オイラもいるぞ! 魔導士4だ!」

 

 

そう言いながら、四人は戦闘体勢に入る。

 

 

「アイツら…よくも…よくもボボの墓を……許さんぞっ!!」

 

 

先ほどの毒毒ゼリーでボボの墓を溶かされたモカは激怒するが、他の村人に止められる。

 

 

「村長!」

 

 

「オレたちはこの場から離れよう! 魔導士同士の戦いに巻き込まれる!!」

 

 

「いやじゃ! ほがぁ!!」

 

 

「誰か村長を黙らせてくれ!!!」

 

 

「グレイさんはオレたちにまかせろー!!」

 

 

「さあ!! 早く行くぞ!!!」

 

 

口々にそう言いながら、村人たちはグレイとモカを担いで早々に非難していった。

 

 

「逃がしませんわ。零帝様の命令は皆殺し。アンジェリカ」

 

 

「チュー」

 

 

それを追うためにアンジェリカに飛び乗ったシェリーは空を飛んだ。

 

 

「うおっ!」

 

 

「わっ!」

 

 

突然巻き起こった風に飛ばされないよう、ナツとスバルは体制を低くした。

 

 

「あれぇ!!?」

 

 

そして空中からする声に見上げると、アンジェリカの足にルーシィがつかまっていた。

 

 

「なんか勢いでしがみついちゃったぁ!!」

 

 

「えぇぇえ!!?」

 

 

「バカすぎる!!!」

 

 

「やっぱりバカだった」

 

 

そんなルーシィに呆れる三人。

 

 

「てか止まりなさい! 村の人に手出すんじゃないわよ!!」

 

 

そう言ってルーシィはアンジェリカの足をくすぐり動きを止める。だがしかし、空を飛ぶのに必要だった尻尾が止まってしまったため、一気に空中から地面へと落下して行き、アンジェリカは大きな音を立てて地面にぶつかったのだった。

 

 

「あ~あ…ありゃキレるぞ」

 

 

「キレてねえよ!!!」

 

 

「お前じゃねえよ」

 

 

そんな漫才のような会話をするユウカとトビー。

 

 

「大丈夫なぁルーシィ?」

 

 

「潰されてなきゃいいけど」

 

 

「潰されてたら死んじゃうよ。オイラちょっと見てくる」

 

 

「おう! 頼んだぞ!!」

 

 

そう言って、ハッピーは羽を広げてルーシィのもとへと向かった。

 

 

「こっちは…」

 

 

「私とナツが…」

 

 

「「かたづけとく!!!」」

 

 

そう言うと同時に、ナツはユウカに向かって炎を吹き、スバルはトビー頭に拳を叩き込んだ。

 

 

「おぉう!」

 

 

それを喰らったトビーは倒れるが…

 

 

「何て凶暴な炎だ。まさか噂に聞く妖精の尻尾(フェアリーテイル)火竜(サラマンダー)とは貴様のことか!?」

 

 

ナツの炎を喰らったにも関わらず、ユウカには傷一つついていなかった。

 

 

「おおーん」

 

 

そしてトビーも何事もなかったかのようにケロッと立ち上がる。

 

 

「だがオレたちもかつては名のあるギルドにいた魔導士。そう簡単にはいかんよ。魔導士ギルド〝蛇姫の鱗(ラミアスケイル)〟と言えばわかるかな?」

 

 

「おおう」

 

 

「そうさ…あの岩鉄のジュラがいた……おぐわっ」

 

 

「な…」

 

 

長々と語るユウカとトビーにナツが炎を喰らわせる。

 

 

「き、貴様…人の話は最後まで聞かんか!!」

 

 

「知らん」

 

 

ユウカの抗議の言葉を一丁両断するナツ。それに続いてスバルが口を開く。

 

 

「お前たちがどこのギルドだとか、誰の仲間だとか関係ない!」

 

 

「お前等は依頼人を狙う。つまり仕事の邪魔」

 

 

「「つまり妖精の尻尾(フェアリーテイル)の敵。戦う理由はそれで十分だ」」

 

 

声を揃えてそう言う二人に、ユウカは怒りの表情を見せる。

 

 

「トビー、お前はそっちの女をやれ。コイツはオレが片付ける」

 

 

「おおーん」

 

 

そう言って、ユウカはナツと、トビーはスバルと向き合った。

 

 

「おおーん。お前確かギンガの妹だな?」

 

 

「それがどうしたの?」

 

 

「どうもしねえよ!! ギンガの妹だろうが容赦しねえぞ!!」

 

 

トビーはそう言って構えると、シャキンっと音を立てて両手の爪が伸びた。

 

 

「麻痺爪メガクラゲ!! この爪にはある秘密が隠されている!!」

 

 

「それって…麻痺?」

 

 

「何故わかった!!?」

 

 

爪の秘密を言い当てられたトビーは驚愕する。と言うより、自分で言ってしまっているのだが…

 

 

「くそう…さすがギンガの妹。とんでもねえ魔導士だぜ」

 

 

「うわぁ…どうしよう……この人バカかも」

 

 

「バカって言うんじゃねえよ!!!」

 

 

「おっとっと」

 

 

スバルのバカと言う発言にキレたトビーは爪を振るうが、軽々と避けられる。

 

 

「この爪に触れたら最後、ビリビリに痺れて死を待つだけだっ!!!」

 

 

「あれ? ねえねえ……ここに何かついてるよ?」

 

 

「おお?」

 

 

爪を避けながらスバルは額を指すと、トビーはそれに釣られて額を触る。その瞬間、自分の爪が刺さり……

 

 

「おおおおおお!!!」

 

 

あろうことか、トビーは自爆してしまった。

 

 

「バカでよかった」

 

 

スバル笑いながらそう言ってナツの方に視線を向ける。そこには気絶しているユウカの姿あった。どうやらナツも勝利したようだ。

 

 

「ナツ! 終わった?」

 

 

「おう! そっちもか」

 

 

「と言うより、ただの自爆なんだけどね」

 

 

スバルは苦笑しながらそう言うと、二人は視線を溶けてしまったボボの墓へと向ける。

 

 

「ひでー事するよな、こいつ等」

 

 

ナツはそう言って、墓石を立て直す。

 

 

「でも安心して。村も村の人も絶対元通りになる! 絶対に」

 

 

「お前の仇はオレたちがとってやるから」

 

 

ナツとスバルは墓石に向かってそう言うと、勢いよく立ち上がる。

 

 

「よしっ、オレは遺跡の方に行く。スバルは?」

 

 

「私はルーシィとハッピーが心配だから、二人と合流してから遺跡に向かうよ」

 

 

「わかった。んじゃあ遺跡で落ち合うぞ!!」

 

 

「うん!!」

 

 

そう言ってナツは遺跡に、スバルはルーシィたちの方へ向かって、それぞれ走り出した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ルーシィは無事かな? 急がないと!!」

 

 

スバルはそう呟きながらマッハキャリバーの速度を上げる。すると……

 

 

 

「見つけたよ……スバル」

 

 

 

「…………!!(ゾクッ)」

 

 

突然聞こえた冷たくて無機質な声に、スバルは悪寒を感じて立ち止まる。そしてゆっくりと声が聞こえてきた先を見ると……

 

 

「な…なのはさん……!!」

 

 

そこには見慣れた白い衣服を身に纏った一人の女性……高町なのはが無表情で立っていた。

 

 

「スバル……どうして勝手にS級クエストに行ったの?」

 

 

「そ…それは……なのはさんやマスターに、認めてもらいたくて……」

 

 

「ギルドの(ルール)を守れない人を…私やマスターが認めると思う?」

 

 

「っ……!!」

 

 

なのはの言葉にスバルは言葉を詰まらせる。

 

 

「さぁ、ギルドに帰るよ」

 

 

「っ、待ってくださいなのはさん!! まだこの島には────」

 

 

 

ドガァァァァァアアン!!!!

 

 

 

そう言いかけたスバルが最後に見た光景は、自分に容赦なく迫る桜色の光と…無表情で佇むなのはの姿であった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そして…翌日。

 

 

「…どこだ、ここは?」

 

 

一晩経ち、ようやくグレイが目を覚ました。そしてグレイは自分が眠っていたテントから外へ出る。すると、村人の女性が話しかけてきた。

 

 

「よかった…目が覚めましたか?」

 

 

「!」

 

 

「驚くのも無理ないですね。ここは村から少し離れた資材置き場なんです。昨夜、村がなくなっちゃったから村の人たちはみんなここに避難してるのよ」

 

 

「村が…なくなった?」

 

 

その言葉に疑問を持つグレイだが、すぐに思い出した。リオンの「村を消して来い」と言う言葉を。

 

 

「でも、ナツさんやスバルさん、ルーシィさんのおかげで怪我人が出なかったのがせめてもの救いです」

 

 

「アイツらもここにいるのか?」

 

 

「ええ、グレイさんの目が覚めたらテントに来るように伝えてくれと」

 

 

そしてグレイは案内されたテントの中に入る。そこにいたのは……

 

 

「エルザ!!? なのは!!?」

 

 

怒りの形相で待ち構えるエルザとなのはであった。その後ろには、縛られて泣いているルーシィとハッピー、そして不服そうな表情をしているスバルの姿があった。

 

 

「だいたいの事情はルーシィから聞いた」

 

 

エルザは冷たい声で言う。

 

 

「お前はナツたちを止める側ではなかったのか?」

 

 

「………」

 

 

「呆れてものも言えんぞ」

 

 

「ナ…ナツは?」

 

 

「これから連れ戻すところだよ」

 

 

グレイの問いに、同じく冷めた声でなのはが答える。

 

 

「ナツ君はスバルと分かれたあと、遺跡に向かったみたいだから、これから私とエルザさんで連れ戻す」

 

 

「そして見つけ次第、ギルドに戻る」

 

 

その言葉に、グレイは目を見開く。

 

 

「な、何言ってんだエルザ…なのは…!? 事情を聞いたなら今この島で何が起こってるか知ってんだろ!?」

 

 

「それが何か?」

 

 

放たれた一言に、グレイは言葉を失った。

 

 

「私達の目的はギルドの掟を破った人達を連れ戻すこと。あとはナツ君だけ……それ以外の目的はないよ」

 

 

「この島の人たちの姿を見たんじゃねーのかよ」

 

 

「見たさ」

 

 

「それを放っておけというのか!?」

 

 

二人を説得しようとするグレイ。だが、エルザはそれを認めなかった。

 

 

「依頼書は各ギルドに発行されている。正式に受理されたギルドの魔導士に任せるのが筋ではないか」

 

 

それを聞いたグレイは……

 

 

「見損なったぞ……テメェ等」

 

 

「何だと?」

 

 

「………」

 

 

吐き捨てるかのように言ったグレイの言葉に、エルザとなのはは眉を動かした。

 

 

「おまえまでギルドの掟を破るつもりか」

 

 

「見損なったのはこっちの方だよ」

 

 

エルザとなのはは剣とレイジングハートを出し、それをグレイに向ける。

 

 

「ただではすまさんぞ」

 

 

だがグレイは恐れることもせずに、向けられたエルザの剣を握る。

 

 

「勝手にしやがれ!!! これはオレが選んだ道だ!! やらなきゃならねぇことなんだ」

 

 

「「!!」」

 

 

グレイの行動と言葉に、二人は目を見開いた。

 

 

「最後までやらせてもらう。斬りたきゃ斬れ…撃ちたきゃ撃てよ」

 

 

そう言い残してテントから立ち去るグレイ。そしてエルザ達が呆然としていると……

 

 

ブチリッ

 

 

と言う音が聞こえた。見ると、スバルが縛っていた縄を自力で引き千切っていた。

 

 

「すみません、なのはさん……私も行かせてもらいます」

 

 

「……させると思ってるの?」

 

 

そう言うスバルにレイジングハートを向けるなのは。だがスバルはそれに臆することなく、言葉を続ける。

 

 

「私もグレイさんと同じ意見です。それに…この島にはギン姉が居る」

 

 

「……ギンガが?」

 

 

突然出てきたギンガの名前になのはは反応する。

 

 

「はい…そして、零帝の一味の一人です」

 

 

「っ!!?」

 

 

その言葉に目を見開くなのは。

 

 

「私はギン姉を止めに行く……たった一人の姉を…間違った道になんて進ませない!!」

 

 

スバルの力強い言葉を聞いたなのはは、スバルに問い掛ける。

 

 

「……それで、破門になったとしても?」

 

 

そんな問いにスバルは……

 

 

 

「家族を救おうとしない者に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を名乗る資格はありませんっ!!!!」

 

 

 

揺るぎない真っ直ぐな目で、ハッキリとそう言ったのだった。それを聞いたなのはは……

 

 

「……ハァ」

 

 

と、小さく溜め息をついた。

 

 

「エルザさん……」

 

 

「…………」

 

 

そしてエルザに視線を向けると、エルザは何かを悟ったように頷き、ルーシィとハッピーの縄を切った。

 

 

「行くぞ」

 

 

「え?」

 

 

「これでは話にならん。まずは仕事を片付けてからだ」

 

 

そんなエルザの言葉に、ルーシィとハッピーは笑顔を浮かべる。

 

 

「ほら、行くよスバル」

 

 

「え? あの…なのは…さん?」

 

 

そう言ってスバルに声を掛けるなのは。それを見て戸惑うスバル。

 

 

「ギンガを止めるんでしょ?」

 

 

「っ………はいっ!!!」

 

 

スバルは力強く返事をして、なのはの後に続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「勘違いするなよ」

 

 

「帰ったらちゃんと罰は受けてもらうからね」

 

 

「「「あい」」」

 

 

 

 

 

つづく


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