LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回の話は短編集のようなものです。全部で7本ありますので、どうぞお楽しみください。

因みにタイトルは直訳で『妖精の日常』という意味です。

次回からは天狼島編に入りたいと思います。


感想お待ちしております。


Every day of a Fairy

 

 

 

 

 

 

これからお送りするのは、妖精たちの日常。

 

 

戦士に休息が必要なように、彼らもまた、仕事以外の日々を過ごすこともある。

 

 

今回はそんな妖精たちの羽休めを、どうぞご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第136話

『Every day of a Fairy』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

①ショッピング

(ティアナ&リサーナ+α)

 

 

「ねえティア、この服どうかな?」

 

 

「いいんじゃない? あんたのイメージにピッタリで。でもリサーナならこっちのも似合うと思うわ」

 

 

「あっ、それも可愛い♪」

 

 

マグノリアにある一軒の服屋。そこではティアナとリサーナの2人が、仲良く服を選びあっていた。

 

 

「でもゴメンねティア、私の買い物に付き合ってもらっちゃって」

 

 

「いいのよ、私もそろそろ新しい服が欲しいなーって思ってたところだから」

 

 

そう良いながら2人は選んだ服の会計を済ませ、お店の外に出る。

 

 

「えへへ……でもこうしてると、2年前を思い出すね」

 

 

リサーナがそう言うと、ティアナも微笑みながら懐かしそうに目を細める。

 

 

「……そうね、2年前もこうやってよく一緒に買い物してたわね。リサーナが仕事先で死んだって聞かされた時は、またこうやって一緒に買い物できるなんて思ってもみなかったわ」

 

 

「あう…ご心配をおかけしました」

 

 

「別に怒ってる訳じゃないわ、むしろ逆。あんたが生きて帰ってきたときは、本当に嬉しかったんだから」

 

 

「ティア……うんっ!! 私もティアにまた会えて、本当に嬉しかったよ♪」

 

 

「ふふっ♪」

 

 

「あはははっ♪」

 

 

満面の笑顔で笑い合うティアナとリサーナの姿は、どこからどう見ても仲の良い親友同士であった。

 

 

「さて、そろそろ次のお店に行きましょうか。次はあんたがいなかった2年の間に出来た、私のイチオシのお店よ」

 

 

「本当に!? 行こ行こっ!」

 

 

そう言って次のお店へと向かって歩みを進めようとする2人。すると……

 

 

「ってオイ!!! まだ回るのかよ!!? もう5件目だぞ!!!」

 

 

「荷物が重いよ~(泣)」

 

 

彼女達の後方で大量の荷物を抱え込んだナツとハッピーが、抗議の言葉を叫んだ。

 

 

「男が泣き言言わないの。荷物持ちくらいちゃんとやりなさい」

 

 

「ナツもハッピーも頑張って~♪」

 

 

しかし2人の抗議はあっさりと却下されてしまった。

 

 

「さっさと行くわよ。あと5件は回る予定なんだから」

 

 

「レッツゴ~♪」

 

 

「「オニだ……」」

 

 

容赦の無いティアナとリサーナの2人に、ナツとハッピーはそう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

②無自覚

(グレイ&ヴィヴィオ)

 

 

ギルドの酒場でグレイが1人テーブルでのんびりしていると、そんなグレイのもとにヴィヴィオが駆け寄ってきた。

 

 

「パパー! ヴィヴィオとあそぼー!」

 

 

「最近仕事続きで疲れてんだよ。悪いがまた今度な」

 

 

そう言って冷たくあしらうグレイだが、ヴィヴィオは諦めない。

 

 

「む~…あそぼーよパパー!」

 

 

「イヤだ」

 

 

「パパァ……」

 

 

「……………」

 

 

「うぅ……!!」

 

 

「……ハァ、少しだけだぞ」

 

 

あまりに悲しそうなヴィヴィオの顔に、とうとうグレイが折れた。その瞬間、ヴィヴィオは満面の笑顔を浮かべる。

 

 

「うん!! じゃあ公園にいこー」

 

 

「へいへい……ってオイ、何背中に乗ろうとしてんだ? おんぶはしねーぞ」

 

 

「おんぶじゃないもん! 肩ぐるまだもん!」

 

 

「どの道しねーよ!! さっさと降りろ」

 

 

「やっ!!」

 

 

「やじゃねえ!!」

 

 

「うー…パパ、ほんとうにダメ……?」

 

 

「………………………今回だけだぞ」

 

 

「わーいっ♪」

 

 

渋々肩車を許可するグレイと、彼の両肩に乗りながら両手を挙げて喜ぶヴィヴィオ。

 

 

「その代わり落ちんなよー」

 

 

「わかってるー…っとと」

 

 

そう言いながらもヴィヴィオはバランスを崩して落ちそうになってしまうが、それをグレイが咄嗟に支える。

 

 

「っと、危ねえなぁ。落ちんなっつったばっかだぞ」

 

 

「ごめんなさーい……」

 

 

「……反省してるならいい。それよりさっさと公園行くぞ」

 

 

「うんっ!! パパはっし~ん!!」

 

 

「やれやれ……」

 

 

どこまでも元気なヴィヴィオに呆れながらも、彼女を肩車しながらギルドを出て行ったのであった。

 

 

 

 

 

「グレイの奴、嫌々言ってる割にはヴィヴィオに甘めーよな」

 

 

「ありゃあ、完全に親バカだな。しかも無自覚の」

 

 

そんなグレイの姿を見て、ワカバとマカオの2人がそんな会話をしていたのであった。

 

 

 

 

 

③騎士の決闘

(エルザ&シグナム)

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

ギルドの酒場で一触即発の雰囲気を漂わせながら、睨みあうエルザとシグナムの2人。

 

 

「どうしても…譲る気はないのだな、シグナム」

 

 

「くどいぞスカーレット。こうなってしまった以上……もはや語る言葉は必要あるまい」

 

 

「フッ……そうだな。お前とは(これ)で語り合うのが一番手っ取り早そうだ」

 

 

そう言うと、エルザは魔法剣を…シグナムはレヴァンティンをそれぞれ構える。

 

 

「手加減はせんぞ、スカーレット!!!」

 

 

「望むところだ!! お前も全力で来い、シグナム!!!」

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」

 

 

お互いに剣を構え、雄叫びを上げながら駆け出すエルザとシグナム。

 

そして……

 

 

 

 

 

 

「「最後のケーキは……私のモノだぁーーーーーー!!!!!」」

 

 

 

 

 

 

そんな事を叫びながら、互いの剣を衝突させたのであった。

 

 

その様子を離れたテーブルから眺めていたルーシィは、隣りに座るはやてに尋ねる。

 

 

「ねぇはやて、アレなに?」

 

 

「期間限定ケーキの最後の1つを賭けた決闘やって。2人ともケーキ大好きやからな~」

 

 

ルーシィの問い掛けにそう答えながら、はやてはフォークで1口サイズに切り取ったケーキを口へと運ぶ。

 

 

「……で、はやてが今食べてるのは?」

 

 

「もちろん、最後のケーキに決まってるやん♪」

 

 

「…………………」

 

 

当たり前のようにそう答えるはやての姿は、ルーシィの目にはタヌキの耳と尻尾が生えているように映っていた。

 

 

 

 

 

④ネコ会

(エクシード's)

 

 

ギルドの酒場のテーブルの一角で、ハッピーたちエクシード4人が集まって雑談を繰り広げていた。

 

 

「リリーとリニスはアースランドの生活にはもう慣れた?」

 

 

「ああ、問題ない」

 

 

「私もです」

 

 

魚をかじりながらそう問い掛けるハッピーに、短く答えるリリーとリニス。

 

 

「生活面でもガジルやルーテシア、それにアギトに世話になってるからな。今のところ何一つ不自由はしていない。リニスはどうだ?」

 

 

「そう言えば、リニスはナツとハッピーの家で暮らしてるのよね?」

 

 

「ええ。エリオが元々そちらでお世話になっていたので」

 

 

「リニスはすごいんだよ。散らかってたオイラたちの家をあっと言う間にキレイにしちゃって、それから毎日掃除してくれるんだ」

 

 

「自分の家くらい自分で掃除しなさいよ。リニスは家政婦じゃないのよ」

 

 

「いいんですよ、私が好きでやってますから」

 

 

ハッピーを叱咤するシャルルを、リニスが微笑みながら宥める。

 

 

「それにエドラスでも、私はよくリリーの身の回りをよくお世話していましたから」

 

 

「「え?」」

 

 

「お…おい!」

 

 

リニスの発言にハッピーとシャルルは目を丸くし、リリーは慌てたように声を荒げるが、リニスの口は止まらない。

 

 

「この人昔から仕事面はしっかりしてるんですけど、生活面は意外と適当なんですよ。それで私が何度注意しても聞かないもんですから、私が副官としてお部屋のお掃除やら食事やらのお世話をしていたんですよ。ですよね、リリー?」

 

 

「あ…ああ……そうだったな」

 

 

リリーはそう言って気恥ずかしそうに顔を背けながら頷く。

 

 

「本当に出会った頃からずっとこんな感じだったんですよ。エクスタリアで暮らしていた頃も、女王シャゴットから心配されるほどで……」

 

 

「ええい! もうその話はやめんか!!」

 

 

「何を言ってるんですか、まだまだありますよ。例えば王子と共に王国に住み始めた時も、人間世界での勝手が分からずに私や王子が色々とフォローした事も」

 

 

「わ…悪かった!! オレが悪かったから頼む!! もうその話はやめてくれ!!!」

 

 

リニスに色々と暴露され、リリーは必死に頼み込みながら頭を下げている。

 

 

「へぇ~、意外な一面ね」

 

 

「でぇきてぇる」

 

 

その様子を見ていたハッピーとシャルルは、意地の悪い笑みを浮かべていたのであった。

 

 

 

 

 

⑤有罪?無罪?

(なのは&ジュビア)

 

 

「最近のなのはさんはズルイと思います!!」

 

 

「へ?」

 

 

ギルドのテーブルの一角でお茶していたなのはだが、その時に一緒にお茶していたジュビアに突然そう言われ、目を丸くしていた。

 

 

「えーと……なにが?」

 

 

「グレイ様との好感度です!!!」

 

 

ガタンッとテーブルから身を乗り出し、そう言い切るジュビア。

 

 

「グレイ様と一緒にヴィヴィオちゃんの親代わりになったり…グレイ様と2人一緒に戦ったり…グレイ様と入れ替ったり…最近なのはさんばかりグレイ様との好感度を上げてズルイと思うんです!!!」

 

 

「そ…そう…かな?」

 

 

「そうなんです!!!」

 

 

ジュビアはバンッとテーブルを叩きながら、なのはに詰め寄る。

 

 

「確かにジュビアはなのはさんとお友達になる際に、お互いのグレイ様への恋を応援すると言う話には乗りました!! ですがこれ以上差をつけられてしまっては、ジュビア困ります!!! ただでさえお2人は同期で幼馴染なのに!!!」

 

 

「そう言われても……」

 

 

ジュビアの抗議に「にゃはは…」と苦笑いを浮かべる事しかできないなのは。

 

 

「ジュビアなんて…ジュビアなんて……!!!」

 

 

そう言いながらプルプルと身を震わせ始めるジュビア。そして……

 

 

 

「ジュビアなんて──グレイ様に胸を揉まれた事しかないのにっ!!!!!」

 

 

 

と…物凄い爆弾発言を大声で叫んだ。

 

 

ザワッ…!!

 

ガタァァンッ!!!

 

 

その瞬間……それを聞いたギルド全体が騒然とし、同時に近くのテーブルに座っていたグレイが椅子ごと引っくり返っていた。

 

 

「……ジュビアちゃん、それ本当?」

 

 

「はい。ジュビアがまだファントムの魔導士だった頃、妖精の尻尾(フェアリーテイル)との抗争の際にジュビアはグレイ様と戦って、その時グレイ様がジュビアを氷付けにして……」

 

 

「うんわかった、もういいよ」

 

 

そう言ってなのははジュビアの話を区切らせた後で、再び口を開く。

 

 

「ジュビアちゃんの言いたい事はよくわかったよ。それじゃあ今度、ジュビアちゃんとデートするように私の方からグレイに言っておいてあげるよ」

 

 

「本当ですか!?」

 

 

「うん。ただし抜け駆けはナシだよ?」

 

 

「はい!!」

 

 

なのはの提案を嬉しそうに頬を紅葉させながらコクコクと頷いて受け入れるジュビア。

 

 

「それじゃあさっそくグレイのところに行って来るね。デートの件も含めて、色々とお話しないといけないから♪」

 

 

そしてそう言うと、なのはは席を立って満面の笑顔を浮かべながらグレイのもとへと向かった。

 

……レイジングハートを片手に。

 

 

 

 

 

『グレイー? さっきのジュビアちゃんの話はどういう事なのかな~?』

 

 

『ま、待てなのは!! 何でお前がキレてんのかは知らねえが、ジュビアの言ったアレは事故だ!! 決してわざとじゃねえ!!!』

 

 

『でも揉んだ事は揉んだんだよね?』

 

 

『そ…それは……』

 

 

『少し……お話……する?』

 

 

『お、落ち着けなのは!! 少しオレの話を…!!』

 

 

『うん、言い訳は向こうでたっぷり聞いてあげる』

 

 

『だ…誰か助け──ぎゃあああああああああっ!!!!!』

 

 

 

 

 

「ふふっ♪ グレイ様とデート~♪」

 

 

その場にいたギルドメンバー全員が合掌する中……浮かれて妄想に耽っているジュビアだけが、何も知らないでいたのであった。

 

 

 

 

 

⑥幸せな時間

(ルーシィ&ユーノ)

 

 

場所はルーシィの家。

 

 

そこでは家主であるルーシィと、彼女が招いた客であるユーノが2人揃って静かに読書を勤しんでいた。

 

 

因みに2人ともリビングの床にベッドを背もたれにして隣同士並んで座っている。

 

 

「「……………」」

 

 

ルーシィもユーノも読書に集中しているため、部屋に響くのはページを捲る音と、窓の外から聞こえる喧騒のみである。

 

 

すると……

 

 

ポスッ

 

 

「! ユ…ユーノ?」

 

 

突然ルーシィの肩に、ユーノの頭が乗った。いきなりの事にルーシィは内心ドキドキしながら彼の顔を覗き込むと……

 

 

「スゥ…スゥ……」

 

 

「……寝てる」

 

 

ユーノは小さく寝息を立てて眠っていた。

 

 

「もお……」

 

 

それを見たルーシィは呆れつつも、柔らかい笑顔を浮かべる。

 

そして手にしていた本を置いて、自分の肩に乗っているユーノの頭を軽く持ち上げて、そのまま自分の膝へと移動させた。いわゆる膝枕である。

 

 

「……………」

 

 

自分でやった行動に対する恥ずかしさで赤面するルーシィだが、それをグッと堪えて、そのままもう一度本を手にとって読書を再開する。

 

 

「(ヤバイ……これ……かなり幸せかも……!!)」

 

 

想い人と共に過ごしている静かな時間……その時間の中でルーシィは……確かな幸せをかみ締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という夢を見たルーシィであった。

 

 

「夢オチかいっ!!!!!」

 

 

 

 

 

⑦意外な組み合わせ

(ナツ&リインフォース&はやて)

 

 

「ん?」

 

 

「どうしたのよスバル?」

 

 

「あれ見てよティア」

 

 

ギルドのテーブルで食事をしていたティアナとスバル。するとスバルが何かに気づき、ティアナが首を傾げていると、スバルはカウンター席の方を指差す。そこには……

 

 

「ナツに…はやてさんにリインフォースさん? 珍しい組み合わせね」

 

 

普段あまり一緒にいるところを見ない3人が、カウンター席に並んで座って何かを話していた。

 

 

それを見たティアナとスバルは何となく、その3人の様子を見つめていた。

 

 

そして一方……そのカウンター席では……

 

 

「おーっ!! すげー色んな魔法が載ってんな~」

 

 

ナツははやてから借りた夜天の書をパラパラと捲りながらその中に記されている蒐集した魔法を見て、感嘆の声を上げる。

 

 

「せやろ? これまで色んな人の魔法を蒐集してきたからな~」

 

 

「その蒐集した魔法を扱えるのも、夜天の書に選ばれた我が主だけだからな」

 

 

自慢げにそう言うはやてと軽い説明をするリインフォース。すると、ナツは何かを考え込みながら口を開く。

 

 

「んー……なあ、リインフォースって夜天の書の中に入れんだろ?」

 

 

「ああ。夜天の書が損傷した際に書の内部から修復する時や、主の代わりに私が夜天の書を使用する権限を得る時なんかにな。それがどうかしたか?」

 

 

「んじゃあさ、リインフォースが夜天の書の中にいる時に、オレの炎で本を燃やしたら……リインフォースも燃え尽きて消えんのか?」

 

 

「「!!!」」

 

 

ナツが何気なくそう問い掛けたその瞬間……はやてとリインフォースの表情が凍った。

 

 

「ちょおおっ!!! 何を真顔でおっそろしい事を言うてんねんナツ君!!!」

 

 

「試してみようぜ」

 

 

「試すかぁ!!! ホンマに消えたらどないすんねん!!?」

 

 

「大丈夫だって、半分くらい燃えたらやめるから」

 

 

「燃やす事前提で話進めんなー!!!」

 

 

ナツの天然ボケとはやてのツッコミの激しい応酬が繰り広げられる。

 

 

「じゃあやってみっか」

 

 

「待て!! 了承してないのに何を始めようとしている!? あと何だか手つきがイヤらしいぞ!!!」

 

 

「え? そうか?」

 

 

「イヤァァア!!! 夜天の書に火を近づけんといてーー!!!」

 

 

「平気平気。あ、はやての服に燃え移った」

 

 

「ほわああああ!!! 私が燃えてまうわー!!!」

 

 

「我が主ーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

「何やってんだか……」

 

 

「あははは……」

 

 

その様子を一部始終見ていたティアナは呆れたようにそう声を漏らし、スバルは苦笑いを浮かべていたのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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