あと、リリカルキャラ設定にヴィヴィオとティーダを追加しました。興味のある方は下記のURLへどうぞ。
【http://id26.fm-p.jp/322/bakatesu555/index.php?module=viewbk&action=ptop&stid=3】
感想お待ちしております。
キリエ・フローリアンとの接触を果たし、闇の欠片により再生されたラクサスとティーダとのトラブルも無事解決したナツたちは、この世界のなのは達の拠点であるアースラへと保護された。
現在、同じく保護されたヴィヴィオたち未来組は割り当てられた部屋でのんびりと戦いの疲れを癒しているのだが……ナツたち妖精組は、アースラの食堂にてこの世界のなのは達と話し込んでいた。
「つまり君たちの世界……アースランドには、フェアリーテイルという魔導士ギルドと呼ばれる集会があって、その世界には僕やなのは達も存在していて、君たちと同じギルドに所属している…という事だな」
「そう言う事です」
クロノの確認するような問い掛けに小さく頷きながら答えるティアナ。
「しかし……我らヴォルケンリッターが人間として生きている世界とは……」
「ちょっとビックリよね……」
「パラレルワールドみたいなモンよ。そういう世界もあるって事だけ頭に入れておけばいいわ」
ティアナの説明に面食らっていたシグナムとシャマルの言葉に、シャルルがそう補足する。
「あのー…」
すると、未だに人間形態となっているリニスが、何やら困ったかのような声を上げる。
「私はいつまでこうしていればいいのでしょう?」
そんなリニスの両脇には……
「リニス…リニスゥ……」
「別人とはいえ……またリニスに会えたよ~……」
目尻に嬉し涙を浮かべながら彼女に引っ付いているフェイトと、同じく涙を浮かべながらリニスに抱きついているフェイトの使い魔……アルフの姿があった。
「あー……すまない、彼女たちはちょっと色々あってな。出来れば気の済むまでそうさせてあげてくれ」
「はあ……」
申し訳なさそうにそう言うクロノの言葉を聞き、リニスは釈然としないながらも頷いた。
「ところで……あの人は大丈夫なんやろか?」
そう言って問い掛けるはやての視線の先には……
「おぶっ…おおお……」
「ナツ、しっかりー」
「大丈夫ですか、ナツさん?」
「ム…ムリ」
苦しげな表情で床にぶっ倒れているナツと、そんなナツを励ましているハッピーとエリオの姿があった。
「ああ……ナツは乗り物に極端に弱いのよ」
「つまりただの乗り物酔いよ」
「「「乗り物酔い!!?」」」
ナツがぶっ倒れる程苦しんでいる原因が単なる乗り物酔いだと知り、管理局組は驚愕する。
現在ナツたちが居るのは次元航行艦船アースラ……そう〝船〟……乗り物である。
「気持ち…ワル……お…降ろしてくれぇ……」
「それはムリだよ。ガマンするしかないね」
「おぷっ」
「……このアースラであそこまで乗り物酔いをした人を見るのは初めてだ」
「気にしないでいいですよ。いつもの事だし」
ナツのそんな姿を見てボヤくクロノに、ティアナはバッサリと言い放つ。
「……ん?」
すると、そんなティアナの視界の端に、とある人物が映った。
「(あれは……キリエ・フローリアン……)」
その人物とは……どこか思い詰めたような…そして何かを決意したかのような表情をしたキリエであった。
「………………」
そんな彼女の表情を見たティアナは、座っていた席から立ち上がり、そのまま静かにキリエのもとへと歩み寄った。
「キリエ」
「? あらツインテちゃん、何か御用?」
ティアナが話しかけると同時に、先程までの表情は消え、ぶりっ子のような笑みで応対するキリエ。
しかしティアナはそんなキリエの変化など気にも掛けず、ハッキリと用件を言い放つ。
「ちょっと……顔を貸してもらえるかしら?」
第128話
『フローリアン姉妹』
その後……キリエはティアナに連れられてある広い部屋へとやって来ていた。
「ここは?」
「模擬戦用の仮想シュミレーションルームよ。クロノさんにどこか戦っても平気な部屋はないかって聞いたらここを紹介されたわ。因みにちゃんと使用許可も貰ったわ」
「そんな所に連れてくるなんて、もしかして私と戦いたいの? ツインテちゃんってば意外と好戦的?」
「場合によってはそうなるかもね。でも私は、アンタと少し話がしたいだけよ」
「話?」
「ええ。アンタ……何か無茶なことを仕出かそうと考えてるんじゃない?」
「無茶って?」
そう問い掛けるティアナだが、キリエは表情を変える事無く飄々と聞き返す。
「そうね、例えば……あのU-Dっていう女の子が関係している──とか」
「!」
「図星ね」
キリエの目が僅かに見開かれたのを見逃さず、ティアナはそう言って小さく笑みを浮かべる。それを見たキリエは嘆息しながら口を開く。
「鋭いこと……誰かから聞いたのかしら?」
「いいえ、カマかけてみただけよ」
「……まぁいいわ。あなたは知らないかもしれないけど、アミタって言う私の姉と水色ちゃんが──砕け得ぬ闇、システムU-Dが再起動する事を観測したのよ」
「再起動?」
「再起動したら、本当に手の負えない怪物になっちゃって──世界の2つ3つ、壊しちゃうかもしれないって」
「そう……あの子ってそんなに危ない子だったんだ」
「だから私が行くの。私はどうあっても、エグザミアが欲しいしね」
「エグザミアって言うのは知らないけど、一人で行くのは無謀じゃないかしら?」
「自慢じゃ無いけど、機械は年下の方が性能は上なのよね。お姉ちゃんは妹には勝てない」
「機械?」
ティアナは目の前にいるキリエが機械だと言う聞いて、眉をひそめる。
「あら、知らなかったの? 私は『エルトリア』って世界で作られた『ギアーズ』と呼ばれる機械なのよ」
「ふーん」
「あんまり驚いてないわね?」
「私の世界でも似たような人たちがいたもの」
「そう、つまんないの。とにかく、私の奥の手、オーバーブラスト──それを使えばヤミちゃんなんてイチコロよ」
「……アンタのその心意気は立派だけど、その演技はイマイチじゃないかしら? 言葉では偽悪を気取っているけど、本当は悲壮感と責任感に心が押し潰されそうになってるんじゃない?」
ティアナの言葉に、キリエは一瞬だけ眉をひそめるが、それでもなお飄々とした態度は崩さない。
「ツインテちゃんってば女の子なのに意外とわかってないわね。私みたいな女の子の心は、たとえ読めても口にしちゃダメなのよ。『そんなの全然違うわよ!』って意固地になっちゃうんだから」
「奇遇ね……私もどちらかというとそう言うタイプよ」
「で、どうするの? 邪魔をする気なら、どいてもらうだけだけど……」
「別に邪魔をする気なんてないわ。それで勝算があるんだったらいいし、何より私は部外者だからとやかく言える立場じゃないし」
「じゃあ──」
「それでも……気に入らないのよ…アンタの今のその顔……」
「?」
「その──自分を犠牲にして何かを成し遂げようと決意した顔よ」
「!!」
ティアナのその言葉で、初めてキリエの表情が崩れる。
「仮にアンタの言うオーバーブラストとやらが成功したとして……アンタ自身はタダで済むのかしら?」
「……………」
そんな問い掛けにも答えず、押し黙るキリエ。
「あのU-Dって子を目覚めさせたはアンタ自身……自分の過ちは自分でケジメを着けるってその想いは立派よ。それだけなら、私は何も言わなかったわ」
「だったら──」
「でもね……その為に自分の身を犠牲にするつもりなら、私は許さない。例え部外者だろうが何だろうが、全力でアンタを止める」
「……………」
そう言い放つティアナに対し、キリエは無言で彼女を睨みながら自身の武器であるピンク色の装飾が施された二丁の銃……ヴァリアントザッパーを構える。
「なら……あなたを倒して押し通る!!!」
「……来なさい。絶対に止めてやる」
そう言ってティアナもクロスミラージュを構え……両者はお互いを牽制するように睨み合う。
そして最初に動き出したのは──キリエであった。
「ラピッドトリガー!! ファイアー!!」
「甘いわよっ!!!」
ズドドドォオン!!!!
キリエが2つの銃口から魔法弾を連射するに対し、ティアナも2つの銃口から魔法弾を放ち、キリエの魔法弾を撃ち落す。
「クロスファイアー……」
「!」
「シュートッ!!!」
そしてお返しと言わんばかりに、ティアナは自身の周囲に即座に生成したいくつもの魔法弾をキリエに向かって発射する。
しかしそれに対しキリエはヴァリアントザッパーを二対の双剣……フェンサーモードへと切り替える。
「スピンドライブッ!!!」
その二対の双剣を軽やかな剣技で振るい、迫り来る魔法弾を斬り裂きながらティアナへと向かって行くキリエ。
「ハァアッ!!!」
そしてそのまま眼前へと迫ったティアナに向かって、片方のヴァリアントフェンサーを振り下ろすキリエ。しかし……
ガキィィイン!!!
それはティアナのダガーモードとなったクロスミラージュの魔力刃によって受け止められた。
「!!」
それを見たキリエはすぐにもう片方のフェンサーを銃形態のザッパーモードへと切り替えてその銃口をティアナへと向けるが…それとほぼ同時にティアナも、クロスミラージュの銃口をキリエへと向けた。
「「……………」」
お互いに片方の刃で鍔迫り合いをしながら、もう片方の銃口をお互いに突きつけて硬直状態となったティアナとキリエ。
しかしそれも束の間……
「ハァァアアッ!!!」
「タァアアアッ!!!」
すぐにお互い距離を取ったかと思うと、次の瞬間には両者の双剣による激しい攻防が繰り広げられる。斬りかかっては防がれ、防げば斬りかかる。そんな攻防が数秒の間で何度も繰り返される。
ガキィィイイイン!!!!
「「っ……!!」」
そして一際大きな音が鳴ると、2人は弾かれるようにお互いから距離を取る。そしてティアナはクロスミラージュの魔力刃を消し、キリエもフェンサーをザッパーへと切り替えて、お互いに銃口を向ける。そして……
「ファントム・ブレイザー!!!!」
「ファイネストカノン!!!!」
ドゴォォォオオオオオオンッ!!!!
両者の砲撃が衝突し、部屋に凄まじい轟音と衝撃が響き渡る。
そして轟音と衝撃が止むと、両者は距離を取りながらそれぞれ武器を構え、互いの姿を見据えている。
「……どうやら私とアンタの戦い方は似ているようね」
「そうみたいね……だったら──」
「!?」
ティアナの言葉に同意するように笑うと、キリエはティアナに向かって一直線に駆け出した。
「これならどうかしら!!?」
そしてそう言いながらヴァリアントザッパーを組み合わせ、両手持ちの大剣型……へヴィエッジへと切り替える。
「……さすがにそのモードはないわ」
「やあああっ!!!」
「っ……」
キリエが振るうへヴィエッジを、ティアナはバックステップで後退しながら回避する。
「この……!!」
さらにその際に数発の魔法弾をキリエ目掛けて発砲するが、キリエはヘヴィエッジを盾代わりにしてそれを防御する。
「もらった!!!」
そしてキリエはすぐさま大きく一歩を踏み出し、ティアナの眼前へと迫り……
「グラビティインパクト!!!!」
「しまっ……!!!」
ズドォォオオオオオン!!!!
そのままヘヴィエッジの刀身を力強く叩きつけたのであった。しかし……
「!? 居ない!!?」
そこにティアナの姿はなかった。
「
「!!?」
背後からティアナのそんな声が聞こえてきたと同時に、キリエは後頭部にクロスミラージュの銃口を突きつけられる。
「残念ね、アンタが攻撃したのは私が魔法で作った幻影よ」
「くっ……」
銃口を突きつけながらそう言うティアナの言葉に、悔しそうに唸るキリエ。
「……もうやめなさい。今の戦いでわかったわ」
そんなキリエにティアナが諭すように口を開く。
「今のアンタじゃ、奥の手とやらを使ってもあの子を倒す事なんて出来ないわ」
「そんなのやってみないと分からないでしょ!」
「分かるわよ。今のアンタは、悲壮感と責任感に駆られて行動しているに過ぎないもの。そんなんじゃ必ず足元を掬われるわ」
「…………!!」
ティアナの言葉に、キリエは声を詰まらせる。そしてティアナは、そんな彼女に対し更に言葉を続けた。
「私の仲間にもね……昔アンタと同じ事をしようとした人がいたの。その人は自分の身を犠牲にしてまで私とナツを……仲間の命を守ろうとした。結果的にその人も私たちも助かったんだけど……その時に分かった事があるのよ」
そう語るティアナの脳裏には……厳しくも優しい心を持った女魔導士の姿が浮かんでいた。
「そんな事をしても誰も喜ばない……そこにあるのは……残された者の悲しみだけなんだって。そしてその残された者は……一生その悲しみを背負って生きていくのよ」
「……………」
ティアナの言葉を聞いたキリエはしばらく黙っていたが…やがてゆっくりと口を開いた。
「私の世界…エルトリアはね、〝死蝕〟っていう星の病気で滅びの危機にあるの。それを救う為に、私はこの世界にあるエグザミアを入手しに来た……でもホントはね──エグザミアを持って帰っても、エルトリアが救われる保障なんてないの……でも、それでもたった1つの可能性だったの。無駄足になっても、徒労になっても……誰に叱られてもいいから、その可能性に賭けてみようって思ってた」
「……………」
ポツポツと語りだしたキリエの言葉を、ティアナは黙って聞いている。
「『もしかしたら世界を救えるかもしれない』なんて賭けの代償に──何の関係もない世界や人が傷ついたりしたら、凄く困るの。絶対に嫌なの。だから──!!!」
ガキィィイイン!!!
「なっ……!!?」
キリエの言葉に耳を傾けていたティアナはその隙をつかれ、彼女の後頭部に突きつけていたクロスミラージュを腕ごと払い除けられてしまった。
「私1人でケジメをつけるって決めたのよ!!!!」
そう言い放つと同時に、キリエは腕を弾かれて無防備となったティアナをヘヴィエッジで空中へと打ち上げる。
「スラッシュ・レイヴ・インパクト!!!!」
そのままキリエはすぐさまティアナを追うように空中へと飛び上がり、目にも止まらぬ速さ何度もティアナの体を斬り付けて行く。
「これで……終わりよっ!!!!」
そしてヘヴィエッジを銃形態のザッパーへと切り替え、双銃の銃口に巨大な魔法弾を作り出す。そしてそれをトドメと言わんばかりに……ティアナへと叩き付けた。
ドガァァアアアン!!!!
「きゃあああああっ!!!!」
それを喰らったティアナは……ボロボロの姿で地面に叩きつけられる。
「ハァ…ハァ…ハァ……ごめんなさいね。あなたの言いたい事も分かったけど、私は止まる訳にはいかないの」
息を切らしながらも、倒れているティアナに向かってそう言い放つキリエ。
「それに私たち『ギアーズ』は元々人のため、命のために生み出された機械だから。壊れたら、ただ捨てればいい──機械は生まれた目的の為に、壊れるまで働いてこそだもの……」
まるで自分を卑下するようにそう言うキリエ。すると……
「ふざけんじゃないわよ……!!!」
「!!?」
倒れていたティアナが怒りを孕んだ声を出しながら、ゆっくりと立ち上がった。
「アンタは何にも分かってないわ……アンタが機械だろうが何だろうが、そんなのは些細な事……アンタが〝命〟を持って生きている事には変わりないんだから」
「!!」
ティアナの言葉に、大きく目を見開くキリエ。
「でも……だからこそ!!!」
そしてティアナはクロスミラージュをダガーモードにし、キリエに向かって駆け出しながら言葉を続ける。
「アンタの事を大切に思ってくれている人を……アンタがいなくなって悲しむ人を……」
すると……ティアナがキリエに近づくにつれ、彼女の周囲に魔力で構成されたいくつもの刃が出現し…浮かび上がる。
「そんな人達を──裏切るようなマネをするなっ!!!」
「…………っ!!」
そして……
「ファントム・スライサー!!!!!」
「きゃああああああっ!!!!」
ティアナがクロスミラージュでキリエに一太刀を浴びせた直後、それに続くように彼女の周囲に浮遊していた魔力刃が一斉にキリエに襲い掛かり……キリエは地面に倒れたのであった。
「ハァ…ハァ…ハァ……」
キリエが動かなくなったのを確認し、ティアナはその場に力無く座り込む。すると、キリエが倒れたままポツリと呟く。
「じゃあ……私は……どうすればよかったのよ……」
そんなキリエの呟きに対し、ティアナは深い溜息をつきながら答えた。
「そんなの簡単よ──1人で抱え込まないで、仲間を頼ればよかったのよ」
「仲…間……?」
「そうよ。この世界のなのはさん達は今全力で今回の件の解決に取り組んでる。アンタも1人で突っ走らないで、その輪の中に入ればよかったのよ。きっとみんな受け入れて……アンタを支えてくれるハズだから」
「………………」
ティアナの言葉を聞き、黙り込むキリエ。すると……
「そうですよ、キリエ!」
「!!?」
突然聞こえてきた声に目を見開きながら起き上がるキリエ。そして声のした方を見ると、そこには長くて赤い髪を後ろで三つ編みにして、頭にはカチューシャをつけた少女がそこに立っていた。
「誰……?」
「お姉ちゃん……!?」
「イエス!! アイアムお姉ちゃんっ!! 無茶をする妹を止めに来たつもりでしたが、どうやら先を越されてしまったみたいですね。えっと……」
少女は高らかにそう名乗ると、ティアナへと視線を移す。
「ティアナ・ランスターよ。余計な事しちゃったかしら?」
「キリエの姉のアミティエ・フローリアンです!! アミタと呼んでください!! そんな事ありません。妹を止めていただき、ありがとうございました!!」
そう言って少女…アミタはティアナに頭を下げると、今度はキリエに視線を移す。
「全く、ただでさえ私達姉妹で皆さんに迷惑をかけてるのに! さらに迷惑の上塗りをしてどうしますか!」
「ほっといてよ! 私には私の考えが──って言うかアミタ、あなた体は……!?」
「問題ありません。気合全快、熱い魂のおかげで、もうすでに全快しましたっ!!」
「えぇー……」
アミタの根性論に、ティアナはついそんな声を出してしまった。
「その証拠に、機体修復だって92%まで回復しています!!」
「マジで!!?」
「えっへん!ですっ!」
その言葉にティアナは驚愕の声を上げ、それを見たアミタは誇らしげに胸を張る。
すると、キリエが突然怒鳴り声をあげた。
「アミタ──バカッ!!」
「?」
首を傾げているティアナを他所に、キリエは言葉を続ける。
「バカアミタ……! そんな無茶な事をしたら、機体寿命が縮むの知ってるでしょっ!?」
つまりアミタは、これから先の生きていられたであろう時間を犠牲にして、機体修復を行なったのである。
「ちょっとくらいの負荷がなんです。無茶な妹を放っておく方が、よっぽど心の寿命が縮まります」
「(妹を止める為に自分の寿命を縮めてるアンタも大概よ。姉妹揃ってホントに……)」
と…ティアナは内心軽く呆れていたが、それを口に出すことはなかった。
「バカ……!! お姉ちゃん──じゃない、アミタッ!! 私、アミタの事嫌いっ!! ずっとずっと大嫌いだったっ!!」
「キリエ……」
キリエの拒絶の言葉に、アミタは寂しそうに呟くが、すぐに笑顔になりキリエを抱きしめた。
「ちょっと…離して……」
「嫌ですよ。離しません」
「そう言う所が嫌いなの──大っ嫌い……」
「あなたが私を嫌いでも──私はあなたを大好きですよ。本当は優しい子だって知ってます──何より、世界中で一番可愛い、私の大切な妹です。私はキリエが大好きですよ」
「そんな事言って……泣きつくとでも思った? 私は、そんなんじゃないんだから……」
そう言うキリエだが、その声は既に涙声であった。
「別に思ってませんよ。私は私の思ってる事を言って、私がするべき事をしただけです。無茶な妹を助けるのは、姉にとって息をするのと同じくらい、ごく自然な事ですから」
「だから……私は、お姉ちゃんの事が嫌い……」
「だけど私は、あなたが大好きです」
そんな言い合いをしながらも、アミタは微笑みながらキリエをすっと抱きしめていたのだった。
すると……
《すまない…水を差してしまうようだが、少しいいか?》
部屋に備え付けられたスピーカーから、クロノの声が響いてきた。
「……クロノさん、キリエの一件を私に任せてくれたのは感謝しますけど、さすがにこの場面で水を差すのはダメでしょ」
そんなクロノに対しティアナは呆れたようにそう言い放つ。因みにその際にアミタは抱き締めていたキリエを放し、姉妹揃って恥ずかしそうに頬を染めていた。
《それについては本当にすまない。だがこちらも緊急事態なんだ》
「!! もしかしてU-Dが!!?」
「「!!」」
アミタがそう問い掛けると、同時にティアナとキリエも表情を引き締め、クロノの返答を待った。
《いや、そうじゃない》
「「「(ガクッ)」」」
しかしその言葉に、3人は揃ってズッこけた。
「じゃあ何なんですか!!?」
ティアナが頭に怒りマークを浮かべながら怒鳴るように問い掛けると、クロノは今度こそ用件を言い放った。
《実は……君の仲間のナツ・ドラグニルが、アースラから脱走したんだ》
「……は?」
つづく