LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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思いつきで書いてみた今回の章ですが、これ意外とムズいです。特にリリなの原作キャラと妖精リリカルキャラとの絡みが……

お陰で思いの外時間が掛かってしまいました。次回はもっとかかるかも……

今回はサブタイで分かるとおり、あの子たちが登場します。まぁほんのちょっとですが……


感想お待ちしております!!!


Vivid and Force

 

 

 

 

 

ナツたちが謎の世界に飛ばされてから一夜が明けた翌朝。人目につかないビルの屋上で眠りながら疲れを癒していたナツたちだったが……

 

 

「「!!?」」

 

 

突然、眠っていたナツとエリオがガバッと勢いよく起き上がった。

 

 

「ん…どうしたのよナツ……」

 

 

「ナツー…何かあったの~?」

 

 

「エリオも…どうしたんですか?」

 

 

そんな2人に触発されるように、ティアナやハッピーたちも次々と起き上がる。すると、ナツがゆっくりと口を開く。

 

 

「何だ……この妙なニオイは?」

 

 

「ニオイがどうしたのよ?」

 

 

ナツの言葉に疑問符を浮かべるシャルル。そしてその疑問に、エリオが答える。

 

 

「この街の色んな所に、妙なニオイが散漫してるんだよ」

 

 

「……そう言われてみれば、妙な魔力を感じるわね」

 

 

エリオの言葉に、ティアナも同意する。

 

 

「ナツ、どんなニオイなのそれ?」

 

 

「んー……なんつーかこう……知ってるけど知らねえニオイなんだ」

 

 

ハッピーの問い掛けに首を傾げながらそう答えるナツ。それを聞いて、シャルルとリニスはさらに疑問符を浮かべる。

 

 

「知ってるけど知らない? 何よそれ?」

 

 

「どういう意味ですか?」

 

 

「わかんねえよ、オレだってこんなニオイは初めてなんだ」

 

 

「僕も表現するとしたら、ナツさんと同じ感じかな? それ以外に表しようがないんだ」

 

 

初めて感じる妙なニオイに、訝しげな表情を浮かべるナツとエリオ。そんな2人の話を聞いて、ティアナは顎に手を当てながら口を開いた。

 

 

「もしかしたら、昨夜の事が関係してるんじゃないかしら?」

 

 

「昨夜というと……あの女の子ですか?」

 

 

「ええ……U-Dとか、砕け得ぬ闇とか言われていた子よ。私が感じる妙な魔力には、少しだけどあの子に似通った魔力を感じるのよ」

 

 

そう言うとティアナは顎に手を当てたまま、しばらく考え込むように目を伏せる。

 

 

「……調べてみる価値はあるわね」

 

 

そして考えが纏ったティアナは、さっそくナツたちに指示を出す。

 

 

「ナツとハッピー、エリオとリニス、私とシャルルの3手に分かれて探索してみましょう。もしかしたら、元の世界に帰る手掛かりが掴めるかもしれないわ」

 

 

「おっしゃ!!!」

 

 

「あい」

 

 

「了解です」

 

 

「異論はありません」

 

 

「わかったわ」

 

 

ティアナの指示に文句を言う事無く頷くナツたち。

 

 

「30分後に、またここに集合よ。いいわね?」

 

 

「おう! 行くぞハッピー!!」

 

 

「あいさー!!」

 

 

「わかりました。行こう、リニス」

 

 

「はい!!」

 

 

「シャルル、私たちも行くわよ」

 

 

「ええ」

 

 

そう言って、ナツたちはそれぞれ3手に分かれて街の探索へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百二十三話

『Vivid and Force』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妙なニオイがしてんのはこの先だ」

 

 

「あい」

 

 

ナツの言う妙なニオイが漂う場所へと空から飛んで向かうナツとハッピー。

 

 

「ナツ、あそこに誰かいるよ」

 

 

「ん?」

 

 

そう言ってハッピーが示す先にいたのは、ビルの屋上で佇む見慣れた1人の少年。

 

そしてナツとハッピーは、その少年の姿を見て、大きく目を見開きながら叫んだ。

 

 

「オレーー!!!?」

 

 

「ナツがもう1人!!!?」

 

 

その少年とは……なんとナツ自身であった。

 

 

「ひょっとして、この世界のナツかな……?」

 

 

「……いや、違う。オレが感じた妙なニオイの出所は……あいつだ」

 

 

ナツとハッピーがそう言っていると、目の前のナツ(?)が血走った目でナツを睨みながら叫ぶ。

 

 

「んがあああああ!!!! 誰でもいい!!! かかってこいやァーーー!!!!」

 

 

そう言い放つと同時に、ナツ(?)はナツへ向かって炎を吹き出す。

 

 

「っ……ハッピー!!」

 

 

「あいさ!!!」

 

 

そんなナツ(?)の攻撃を、ナツを抱えたハッピーが上空へと飛び上がって回避した。

 

 

「物騒な奴だなー」

 

 

「それナツが言う?」

 

 

ハッピーのそんなツッコミも無視して、ナツは目の前のナツ(?)をジッと見据える。

 

 

「……見た感じ、だいたいファントムと戦った頃のオレか」

 

 

「なんでそんな事わかんの!!?」

 

 

「オレの事だからな」

 

 

ナツはハッピーのツッコミにそう答えるが、ハッピーはイマイチ納得できなかった。

 

 

「それよりハッピー、オレをあいつんトコに降ろせ」

 

 

「どうするの?」

 

 

「あいつが何なのかは知らねえが、とりあえずブン殴っときゃいいだろ」

 

 

「やっぱり……」

 

 

そんなナツの言葉に、ハッピーは若干呆れながらも、ナツの指示通りにナツ(?)が立っているビルの上にナツを降ろす。

 

 

「おしっ…かかって来いよニセモン野郎。あの頃からオレがどんだけ強くなったか確かめてやる」

 

 

「燃えてきたぞぉぉおおお!!!」

 

 

こうして……ナツvsナツ(?)という奇妙な対決が始まった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてその頃……ナツとハッピーが戦っていた場所とはまた違う場所の、ビルの屋上。

 

 

「ハァ…ハァ……何…この人たち……」

 

 

「強い……!!」

 

 

そこでは長い金髪をサイドポニーにして赤と緑の虹彩異色の瞳を持った少女と…長い碧銀の髪を左右2つに縛ってたらし、同じく青と紫の虹彩異色の瞳を持った少女が戦っていた。

 

しかもその相手とは……

 

 

「こいつらたいした事ねえぜザトー兄さん」

 

 

「ぎゃほお! 遊び相手にもならねえなガトー兄さん」

 

 

六魔討伐作戦の際にナツたちが戦った闇ギルド〝裸の包帯男(ネイキッドマミー)〟のザトーとガトーであった。

 

 

「アインハルトさん……大丈夫ですか?」

 

 

「はい……ですが、この方たちは一体……」

 

 

そう言って金髪の少女と碧銀髪の少女は困惑の表情を浮かべながら、目の前のザトーとガトーを見据える。

 

 

「さっさとやっちまおうぜガトー兄さん」

 

 

「こいつらたいした事ねえぜザトー兄さん」

 

 

「さっき言ったぜガトー兄さん」

 

 

「そうかい、ザトー兄さん」

 

 

「……本当に…一体何なんでしょう?」

 

 

「何で、どっちもお兄さん?」

 

 

2人の漫才のようなやり取りを見て、2人の少女はさらに困惑しただけであった。

 

 

「闇ギルド〝裸の包帯男(ネイキッドマミー)〟」

 

 

「ぎゃほー!! オレたちに狙われたのが運の尽きだぜ」

 

 

「闇ギルド〝裸の包帯男(ネイキッドマミー)〟」

 

 

「死んだぜガキども」

 

 

「「!!!」」

 

 

そう言いながら拳を構えるザトーとガトーを見て、対する2人の少女も反撃の為に拳を構える。

 

 

だがその時……

 

 

 

 

 

「雷竜の……進撃!!!!」

 

 

 

 

 

ズドォォォォオオオン!!!!

 

 

「がぼぁッ!!!!」

 

 

「「!!?」」

 

 

「ガトー兄さん!!!?」

 

 

上空から落ちてきたエリオによる雷を纏った足で、まるで踏み潰すかのような一撃を後頭部に喰らい、ガトーは地面に沈んだ。

 

 

「こいつらはワース樹海で戦った六魔将軍(オラシオンセイス)傘下の……妙なニオイの出所はこの2人か」

 

 

ガトーとザトーを見て、エリオはそう呟く。

 

 

「エリオ!!?」

 

 

「えっ?」

 

 

すると……金髪の少女に名前を呼ばれ、首を傾げるエリオ。

 

 

「えっと……どこかでお会いしましたっけ?」

 

 

「この姿の私を知らない……? って事は、背丈からして六課時代のエリオなのかな……? じゃあひょっとしてエリオもタイムスリップを……」

 

 

「?」

 

 

自分の方を見ながら考え込むようにブツブツと呟いている金髪の少女を見て、さらに疑問符を浮かべるエリオ。すると……

 

 

「このガキ!!! よくもガトー兄さんを!!!」

 

 

兄弟がやられた事に激昂したザトーが、エリオに向かって拳を振るう。

 

 

「あ…危ないっ!!!」

 

 

それを見て金髪の少女はエリオにそう叫ぶが……

 

 

「雷竜の…鉄拳!!!!」

 

 

バチィイン!!!

 

 

「!!?」

 

 

エリオは自身の雷を纏った拳をザトーの拳にぶつけ、それを弾いた。

 

 

「雷竜の旋尾!!!」

 

 

「ぎゃばっ!!!」

 

 

そしてすぐさま距離を詰め、ザトーの顎を雷を纏った足での回し蹴りで蹴り上げ、その巨体を宙に浮かせる。

 

 

「お前たちと出会ったあの頃の僕だったら、手も足も出なかっただろうけど……今の僕はあの頃とは違うんだ!!!!」

 

 

そう言い放つと同時に、エリオは大きく息を吸い込んで頬を膨らませる。そして……

 

 

 

「雷竜の咆哮ッ!!!!!」

 

 

 

「ぎゃぼォグァ!!!!」

 

 

凄まじい雷のブレスに飲み込まれ、一瞬で黒コゲとなったザトーは地面に倒れる。

 

 

「ウソだろ……オレたち兄弟がこんなガキにやられるなんて……」

 

 

「ウソだろ……オレたち兄弟がこんなガキに……」

 

 

「そりゃさっき言ったぜガトー兄さん」

 

 

「そうかいザトー兄さん」

 

 

やられた尚も、兄弟漫才のようなやり取りをするザトーとガトー。すると……2人の体が光の粒子へと変わり、そのまま霧散して消滅していった。

 

 

「消えた……一体どうなってるんだ?」

 

 

「エリオ!!!」

 

 

その光景を見てエリオが呆然としていると、先程の2人の少女が駆け寄ってきた。

 

 

「えっと……君たちは?」

 

 

「あの、私たちは……えーっと……」

 

 

「とりあえず、バリアジャケットを解除しませんか?」

 

 

「あ、そうですね!! クリス、バリアジャケット解除!!」

 

 

「!」

 

 

そう言うと、2人の少女の体が眩い光に包まれ、その眩しさにエリオは手で目を覆う。

 

そして光が消えると、そこには先程よりも小さくなった2人の少女が立っており、しかもそのうちの金髪の少女にはエリオも見覚えがあった。

 

 

「ヴィ…ヴィヴィオ!!?」

 

 

そう…その少女とは、なのはの養子である高町ヴィヴィオであった。

 

 

「えっと……ヴィヴィオ…だよね?」

 

 

「はいっ!! 高町ヴィヴィオです!!!」

 

 

エリオの問い掛けに対して元気な声で嬉しそうに答えるヴィヴィオ。

 

 

「でも何だか、雰囲気が違うような……」

 

 

エリオの言う通り、目の前にいるヴィヴィオは彼の知っているヴィヴィオとは服装や背丈などが異なっていた。

 

 

「あ、それはたぶん私たちは、エリオよりちょっと未来から来たからだと思う」

 

 

「未来?」

 

 

「うん。私たちは…新暦79年のミッドチルダからやってきたの!!」

 

 

疑問符を浮かべているエリオに向かって、驚愕の事実を告げるかのようにそう言い放つヴィヴィオ。しかし……

 

 

「新暦? ミッドチルダ?」

 

 

「……あれ?」

 

 

エリオは聞き覚えのない単語を聞いてさらに疑問符を浮かべており、そんなエリオの反応を見てヴィヴィオも目を丸くする。

 

 

「えっと……エリオ。エリオは、機動六課に所属していた時代からやってきたんだよね?」

 

 

「きどうろっか? いや、僕が所属しているのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)だよ。ていうか、ヴィヴィオもそのメンバーじゃないか」

 

 

「え?」

 

 

「え?」

 

 

「……何だか、お2人の会話がかみ合っていませんね」

 

 

まったくかみ合っていない2人の会話を聞いて、今まで黙っていたアインハルトがポツリとそう呟く。すると……

 

 

「エリオーーー!!!」

 

 

「あ、リニス」

 

 

上空から今まで姿が見えなかったリニスが落ちて来て、エリオの頭の上にポスッと着地する。

 

 

「あ、リニス…ではありません!!! 相棒の私を置いて1人で突っ走るとはどういう事ですか!!!」

 

 

「ゴメンゴメン、僕が走ったほうが速いかと思って……もうしないよ」

 

 

「約束ですよ!!!」

 

 

怒った様子でエリオの頭をペシペシと叩いているリニスに、苦笑いで謝罪するエリオ。

 

そんな光景を見ていたヴィヴィオとアインハルトは、2人でコソコソと話し始める。

 

 

「アインハルトさん!! ネコですよ!! しゃべるネコが落ちてきましたよ!!!」

 

 

「あれは……エリオさんの使い魔ではないのですか?」

 

 

「エリオに使い魔がいるなんてフェイトママから一度も聞いた事ありませんし……何よりあのエリオは機動六課やミッドチルダのことすら知らないみたいです。それによくよく思い返してみれば…さっきのエリオの魔法も変でした。いつもはストラーダを使った近代ベルカ式の魔法を使うのに、さっきは思いっきり殴ったり蹴ったりしてましたし、何より口から雷を吹いてましたし……あうう、もう何が何だかわかりません」

 

 

「ヴィ…ヴィヴィオさん、お気を確かに!」

 

 

軽く混乱しているヴィヴィオを宥めるアインハルト。すると、そんな2人にエリオが声をかける。

 

 

「2人とも……僕も君たちも、お互いに聞きたい事があるみたいだし、まずは僕たちの仲間と合流しない?」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃、街の上空……そこではティアナとシャルルもとある人物を戦っていた。

 

 

「ハハハハッ!!! 死ねェ!!! 邪魔な妖精(ハエ)ども!!!」

 

 

「まったく……何でアンタがここにいるのよ……エリゴール」

 

 

その人物とは……上半身裸の服装に鋭利な大鎌を担いだ男。

 

かつてナツたちが戦った闇ギルド〝鉄の森(アイゼンヴァルト)〟のエース……死神・エリゴールであった。

 

 

「何なのアイツ!!?」

 

 

「エリゴール……昔ナツに倒された、風の魔導士よ」

 

 

「何でそんな奴がここにいるのよ!?」

 

 

「知らないわよ。でもあっちがやる気なら、やるしかないわね」

 

 

シャルルにそう簡単に説明すると、ティアナはクロスミラージュを構える。

 

 

「クロスファイヤーシュート!!!」

 

 

そして周囲に数十発もの魔法弾を生成し、それらを一斉にエリゴール目掛けて放つ。

 

 

「小賢しい!!! 暴風波(ストームブリンガー)!!!!」

 

 

しかしエリゴールは魔法でまるで台風のような風を巻き起こし、ティアナの魔法弾を全て吹き飛ばす。

 

 

「防がれた!?」

 

 

「遠距離攻撃を当てるのは難しそうね。だったら……」

 

 

そう言うと、ティアナは指をパチンっと鳴らす。

 

 

幻影魔法(ミラージュマジック)…〝フェイク・シルエット〟」

 

 

その瞬間、ティアナとシャルルの幻影が数体作り出される。

 

 

「なっ!!?」

 

 

「さあ、本物を見破れるものなら……見破ってみなさい!!!」

 

 

ティアナがそう言うと同時に、ティアナとシャルルの本人と幻影たちはエリゴールの周囲をバラバラに旋回し始める。

 

 

「クソ……!!!」

 

 

自分の周囲を飛び回るティアナとシャルルの幻影たちを、エリゴールはキョロキョロと見回しながらイラついた様子で毒づく。

 

 

「ブンブンと目障りなんだよこの妖精(ハエ)がぁああ!!!!」

 

 

そんなティアナとシャルルの幻影に激情し、大声で吼えるエリゴール。

 

 

 

「──なんて言うと思ったか?」

 

 

 

だがしかし、その行為は演技であり、エリゴールは冷静であった。

 

 

「悪いが、本物の目星はついてんだよ」

 

 

「「!!」」

 

 

そう言うエリゴールの視線の先には、1人離れた所で浮遊しているティアナとシャルルの姿があった。

 

 

「他の幻影どもとは違って、テメェはすぐにオレから離れた。テメェのような中遠距離タイプの魔導士なら接近戦はない。大方、幻影で陽動している間に大技の遠距離魔法でオレを仕留めるつもりだったんだろうが、残念だったな」

 

 

「くっ……!!!」

 

 

エリゴールに作戦を読まれ、表情を歪めるティアナ。それと同時に、彼女が作り出した幻影が消滅する。

 

 

「これで終わりだ!!! 翠緑迅(エメラ・バラム)!!!!」

 

 

そしてエリゴールは、全てを切り刻まんとする最強の風魔法をティアナへと放った。

 

 

「死ね!!! 妖精(ハエ)がァ!!!!」

 

 

しかし……

 

 

 

スカッ

 

 

 

「!!?」

 

 

その攻撃は、ティアナに当たる事無くすり抜けた。

 

 

「バ…バカな……幻影だと!!?」

 

 

「そう……アンタならあの程度の作戦を簡単に見破れると思っていた。だからそれを逆手に取らせてもらったわ」

 

 

「!」

 

 

驚愕するエリゴールの背後に、いつの間にかティアナとシャルルが回りこんでいた。

 

 

「それと、私のような中遠距離タイプの魔導士に接近戦はないって言ってたけど……残念ながら私は接近戦でもそれなりに戦えるのよ」

 

 

そう言うと同時に、ティアナはクロスミラージュに魔力の刃を纏わせ……

 

 

「クロス・スライサー!!!!」

 

 

「ぐあぁああ!!!!」

 

 

エリゴールの体を十字に切り裂いた。だがティアナの攻撃はまだ終わっていない。

 

 

「もう一発!!! ダメ押しの……」

 

 

今度はクロスミラージュの銃口をエリゴールへと向け、魔力を集束させる。

 

 

 

「ファントム・ブレイザー!!!!」

 

 

 

「ぐおぁぁあああああ!!!!」

 

 

そしてオレンジ色の砲撃を発射し、それに飲み込まれたエリゴールはボロボロの姿で落下していく。

 

 

「か…敵わねえ……」

 

 

その言葉を最後に……エリゴールは光の粒子となり、霧散して消滅していった。

 

 

「消えた……?」

 

 

「何だったのかしら今の……幻?」

 

 

「それにしては、ずいぶん現実味があったけどね」

 

 

消えていったエリゴールを見て、ティアナとシャルルがそんな会話をしていると……

 

 

「あれ? ティアさん?」

 

 

「「?」」

 

 

突然名前を呼ばれ、その声が聞こえてきた方へと視線を向けるティアナとシャルル。

 

 

そこには黒を基調とした騎士のような服装に、体中に赤い刺青を入れ、刺々しい剣を持った銀髪の少年が立っていた。

 

 

「……誰アンタ? 私にガラの悪い知り合いは……まぁ一杯いるけど、アンタみたいに全身に刺青をいれた知り合いはいないし、愛称で呼ばれる筋合いもないわよ」

 

 

「え? いやあの、この模様は刺青じゃなくて……って、そうじゃなくて!! オレです、トーマです!!!」

 

 

「トーマ?」

 

 

少年のトーマという名前を聞いても、ティアナには聞き覚えがなく、首を傾げる。

 

 

「オレの事を知らない? ひょっとして、機動六課時代のティアさん?」

 

 

「きどうろっか? 何の話してんのよ?」

 

 

「機動六課も知らない!!?」

 

 

ティアナの言葉を聞いて驚愕しているトーマ。すると、トーマの体の中から少女のような声が聞こえてくる。

 

 

《トーマ、どうなってるの!?》

 

 

「わからない……あのティアさんは一体いつのティアさんなんだ?」

 

 

体内から聞こえてくる声にそう答えていると、その会話を聞いていたティアナがトーマに問い掛ける。

 

 

「体内から声……もしかして融合(ユニゾン)魔導士?」

 

 

「へ? ユニゾン魔導士……? 融合騎じゃなくて?」

 

 

《それに私、リアクトプラグなんですけど……》

 

 

「リアクト……?」

 

 

聞き覚えのない単語にお互い首を傾げるティアナとトーマ。すると、今まで黙っていたシャルルが口を開く。

 

 

「妙に話がかみ合わないわね、ティアナ」

 

 

「ええ……でもあっちは私の事を知ってるっぽいし……」

 

 

「うわっ!? ネコがしゃべって羽が生えてる!!!」

 

 

《あの白ネコちゃん、かわいいよトーマ!!》

 

 

「いやリリィ、そういう問題じゃないから」

 

 

「……ハァ」

 

 

シャルルを見て驚いているトーマと、彼の体から聞こえるリリィと呼ばれる少女の声を聞いて、軽く溜息をつくティアナ。

 

 

「まぁいいわ……とりあえず1つだけ聞かせなさい」

 

 

「!」

 

 

そう言うと、ティアナはクロスミラージュの銃口をトーマへと向けて問い掛ける。

 

 

「アンタは私の敵か否か……正直に答えなさい」

 

 

そう問い掛けるティアナの鋭くなった眼光からは、ただならぬ威圧感と迫力に満ちていた。それを感じ取ったトーマは慌てたようすで答える。

 

 

「ち…違います!! オレたちは敵じゃありません!!!」

 

 

「その言葉に嘘偽りはないわね?」

 

 

「はい!!!」

 

 

真っ直ぐとティアナの目を見ながらそう答えるトーマ。それを見たティアナは、クロスミラージュを降ろした。

 

 

「いいわ、信用してあげる」

 

 

その言葉に、トーマはホッと息を吐く。

 

 

「まずは私の仲間と合流するわね。お互いの情報交換はそれからよ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……で、あのバカだけがまだ来てないと?」

 

 

「は…はい……」

 

 

「「(こ…怖い……)」」

 

 

あの後……ヴィヴィオとアインハルトを連れたエリオとリニス、トーマとリリィを連れたティアナとシャルルは合流地点で合流したのだが、その場所にナツだけが来ていなかったのだ。

 

その為ティアナは背中から怒りのオーラを噴出しており、そのせいで色々聞きたい事があったヴィヴィオやトーマたちは黙らざるを得なかった。

 

因みにトーマはリアクトと呼ばれるものを解除し、普通の茶髪の少年姿に戻っており、その隣には儚げな雰囲気の少女…リリィが立っていた。

 

 

【警告。大型魔力反応が接近中。脅威判定2体】

 

 

すると、トーマが持っていた魔導書『銀十字』がそんな音声を上げた。

 

 

「なに?」

 

 

「こっちに大きな魔力が向かってきているって事です!」

 

 

トーマの言葉を聞いて、全員が気を引き締める。

 

すると……

 

 

 

ドガァァァアアン!!!

 

 

 

「「「!!」」」

 

 

突然爆発音のような轟音が聞こえ、全員がそちらの方向へと視線を向ける。

 

 

「ぐあああああ!!!」

 

 

すると全員の目の前に、ボロボロになったナツが飛んできて、地面に転がった。

 

 

「ナツさん!!?」

 

 

そんなナツの姿を見て、エリオは驚愕するが、ティアナは冷静に告げた。

 

 

「いえ……あれはナツじゃないわ」

 

 

「えっ?」

 

 

ティアナの言葉にエリオが疑問符を浮かべていると……

 

 

「オラァァアアアアア!!!!」

 

 

「ナツさんがもう1人!!?」

 

 

現れたもう1人のナツが、倒れているナツ(?)に殴り掛かる。それを見て再び驚愕するエリオ。

 

 

「くっ……!!!」

 

 

そんなナツに対して、すぐさま立ち上がって防御体制を取ろうとするナツ(?)だが……

 

 

 

「お前じゃオレには勝てねえ!!!! 出直して来いニセモン野郎!!!!!」

 

 

 

それよりも早く、ナツの強烈な拳はナツ(?)の顔面を捉え、そのまま殴り飛ばしたのであった。

 

 

「くっ…そぉ……!!」

 

 

そしてそんな言葉と共に、ナツ(?)は光の粒子となって消えていった。

 

 

「かーっかっかっか!!! ニセモンをやっつけたぞーー!!!」

 

 

「あい! さすがナツなのです」

 

 

そう言って得意気に高笑いを上げるナツと、それを褒めるハッピー。

 

 

そんなナツの姿を、ティアナとシャルルは呆れ顔で…エリオは輝かんばかりの尊敬の眼差しで…リニスは苦笑いで…ヴィヴィオやトーマたちが愕然とした表情でそれぞれ見ていたのであった。

 

 

「よぉお前ら、待たせたな!! ん…何でヴィヴィオが居んだ? つーか、誰だこいつら?」

 

 

何はともあれ……こうしてナツたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)は、鮮烈な少女たちと…ゼロの適合者の少年少女に出会ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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