読んで頂いたら分かると思いますが、『あの話』を題材にしております。
感想お待ちしております。
あと、リリカルキャラ設定にクロノとリニスを追加しました。興味のある方は下記のURLへどうぞ。
【http://id26.fm-p.jp/322/bakatesu555/index.php?module=viewbk&action=ptop&stid=3】
未知の世界
アースランド……マグノリアの街。
「いやーはっはっは!! 今日はいい仕事だったなー!!!」
「そうね、この仕事でこれだけの報酬が貰えたのは大きいわ」
「依頼人がすごく気前よかったからね!」
「中々得な仕事だったわね」
街の中をご機嫌な様子で歩いているナツ、ティアナ、ハッピー、シャルルの4人。この会話から察するに、どうやら今日の仕事は大成功だったようである。
「シャルルも今日は手伝ってくれてありがとう。今回の仕事にはどうしても空を飛ぶ手段が必要だったから、ハッピーだけじゃ厳しくてね」
「別にいいわよ。今日はウェンディもキャロやエルザと一緒に仕事に行ってて、ちょうどヒマだったもの」
「どうしてシャルルは一緒に行かなかったの?」
「依頼人がネコアレルギーらしいわ」
そんな会話をしながらギルドへと向かう足を進める4人。すると……
「ナツさーん! ティアナさーん!」
「ハッピー! シャルルー!」
「ん? おお、エリオ」
「リニスー」
後ろから声をかけられ振り向くと、そこにはエリオとリニスのコンビが駆け寄ってきていた。
「エリオとリニスも仕事の帰りかしら?」
「はい。ナツさんたちもですか?」
「おう! こっちは大成功だったぜ。なっ、ハッピー」
「あい」
「そうですか。僕たちの方も大成功でしたよ。ねっ、リニス」
「はい♪ ギルドの仕事にもだいぶ慣れてきました」
そう言って笑い合うナツ&ハッピーと、エリオ&リニス。
「んじゃあ、さっさとギルドに帰って打ち上げでもすっか!!!」
「あいさー!!」
「いいですねそれ!!」
「打ち上げって……どうせ飲んで騒ぐだけでしょ?」
「いつもの事じゃない」
「まぁいいじゃないですか」
盛り上がるナツとハッピーとエリオを見て、呆れたようにそう言うティアナとシャルルに優しく微笑むリニス。
そして一同が再びギルドに向かって歩き始めようとしたその時……
キィィィィイイン!!!
「うおっ!?」
「わっ!?」
「「「!!?」」」
突然6人の頭上に白い光が輝き始める。
「んだこりゃァ!!?」
「眩しい!!!」
「何かの魔法でしょうか!!?」
「わからない…でも何だかヤバイわ!!!」
「そんな事より、ここを離れた方がいいんじゃないの!?」
「そうですね、まずはこの光から一旦離脱して……!!」
6人がそんな声を上げている間にも、光はどんどん輝きを増していき……
「「「うわぁぁああああああ!!!!」」」
「「「きゃぁあああああああ!!!!」」」
悲鳴が響き渡り、6人は完全に光へと飲まれてしまったのであった。
〝運命の歯車〟が今……廻り始めた。
第百二十一話
『未知の世界』
場所はどこかの空の上……空は黒一色に染まっており、月と星が輝いている事から恐らく夜だろう。
その暗い夜空に、一瞬だけ眩い白い光が出現した。そしてその光が消えると同時に……
「どわぁああああ!!!」
「ああああああ!!!」
「うあああああ!!!」
「「「きゃあああああああ!!!!」」」
先程までマグノリアに居たハズのナツたちが出現し、そのまま重力の法則に従って地面に向かって落下し始める。
「ハッピー!!!」
「あいさー!!!」
「リニス!!!」
「はい!!!」
「シャルル、お願い!!!」
「わかってるわよ!!!」
スゴイ勢いで落下していたナツをハッピーが、エリオをリニスが、ティアナをシャルルがそれぞれを抱えて
「あービックリしたぁ……どうして急に空の上なんかに?」
「考えられる原因はあの白い光ね。転移魔法の一種かもしれないけど、それにしては魔力を感じなかったし……」
「第一…ここは一体どこなのよ?」
「あの光の感じ……もしかして……」
エリオとティアナとシャルルがそんな会話をし、リニスが1人ブツブツと呟いていると、ナツが声を上げた。
「おい!! 下見てみろ!!!」
そう言うナツが指差す方向をへと視線を向けて見ると……
「何よアレ……!?」
「街……でしょうか?」
「キレーな街だな」
そこには海と密接しており、所々にある照明がキラキラと光る街が広がっていた。
「こんな街、見た事も聞いた事もないわ……ここは一体……」
眼下に広がる見た事もない街を見てそう呟くティアナ。すると、リニスが1つの仮定を口にする。
「ここはもしかしたら……別の世界かもしれません」
「「「!!?」」」
リニスのその言葉を聞き、ナツたちは一斉にリニスへと視線を向ける。
「リニス、どういう事?」
「先程のあの白い光……少しですが、アニマと似たような感じがしました」
「つーことは、ここはエドラスなのか?」
「いいえ、エドラスには王都以外にあのような大きな街は存在しません。考えられるとすれば……」
「アースランドともエドラスとも…まったく違う世界?」
リニスの言いたい事をティアナが問い掛けるように言うと、リニスは肯定するようにコクリと頷く。
「何ーーーっ!!!?」
「うぱーーっ!!!?」
それを聞いて絶叫に似た叫び声を上げるナツとハッピー。
「あくまでも仮定の話ですが……」
「でも、突然現れたアニマに似た白い光…それに包まれたかと思うと空の上にいて…目の前に広がる見た事もない街……」
「可能性としてはそれが一番適当よね」
「だとしたら、これからどうしましょう……」
ここが異世界だとして、それからどうするかを「うーん…」と唸りながら考え込む一同。すると……
「あの…そこの方々!! 時空管理局です!! ちょっとお話よろしいですか!?」
「「「!!」」」
突然後ろから声をかけられ、ナツたちは振り返ってそこにいた人物を見てみると、驚愕で目を見開いた。
「「「フェイトォ(さん)!!!?」」」
そこに居たのは……同じギルドの仲間であるフェイトだったのだが…何故かそのフェイトの姿は10歳前後の子供姿をしており、それを見たナツたちは目を見開いて驚愕した。
「ふぇ? どうして私の名前を?」
自分の名前を言い当てられて目を丸くしているフェイト。そんな彼女の問いには答えず、ナツたちは顔を見合わせてヒソヒソと会話を始める。
「何でフェイトの奴縮んでんだ? つか、どうやって飛んでんだあいつ?」
「あい」
「バカ、縮んだ訳じゃないわよ。ここがエドラスのような別の世界だとするなら、あのフェイトさんはこの世界の住人って事よ」
「って事は、あの人は僕たちの知ってるフェイトさんとは別人……」
「そうなりますね」
「パラレルワールドのようなものね」
「あのっ!!」
そんなヒソヒソと話しているナツたちに向かって、フェイトはひと際大きな声で呼びかける。
「こちらは時空管理局です。異世界渡航者の方ですよね?
そう言ってナツたちに問い掛けるフェイト。しかしナツたちは構わず再びヒソヒソと話し始める。
「あのフェイト何言ってんだ?」
「パスデータって何? オイラたちそんなの持ってないよ」
「聞く限りだと……たぶんあのフェイトさんは評議院みたいな組織に所属してるんじゃないかしら?」
「確かに組織的な話し方よね」
「じゃあ、このままだと僕たち捕まっちゃうんじゃ……」
「「「………………」」」
エリオが言った言葉に押し黙り、考え込むナツたち。
「あのー……」
そしてフェイトが三度彼らに声をかけたその時……
「逃げるわよ!!!」
「おう!!」
「あいさー!!」
「「はい!!」」
ティアナの号令により、ナツたちは一斉にその場から逃走した。普段評議院や軍隊から逃げ慣れているナツたちならではの、息の合った行動である。
「え……えぇ!!? ま、待ってください!!!」
彼らの突然の行動にフェイトはオロオロと戸惑うが、すぐに彼らを追いかける。
「火竜の……咆哮!!!!」
そんなフェイトを遮るように、ナツが灼熱のブレスを放つ。
「っ……バルディッシュ!!!」
それを見たフェイトはすぐさま魔力のシールドを張り、ナツのブレスを防御した。そして炎が消えてシールドを解除すると、すでにそこにナツたちの姿はなかった。
「逃げられた……バルディッシュ、追える?」
【周囲に魔力反応なし。追跡は不可能かと】
「そう……」
バルディッシュから聞こえてくる機械的な声を聞き、フェイトは残念そうに目尻を下げる。
「それにしてもさっきの人、口から火を吹いてた……あれも魔法なのかな?」
【わかりません。魔力の反応はありましたが……】
そう言って、フェイトはナツたちが去っていった方向を静かに見据えていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「何とか撒いたようですね」
「疲れた~」
「ちょっと飛ばしすぎたわね」
「じゃあ、あの塔の上で少し休みましょ」
フェイトから逃げ切った一同は、主にハッピーたちの休息の為に近くにあった塔(正確にはビルだが)の屋上に降り立った。
「さて……休息ついでに少し状況を整理するわよ」
そう言ってその場を仕切るティアナに、全員の視線が集中する。
「まず、私たちは仕事の帰りにアニマに似た白い光に包まれて、気がついたら空の上に放り出されていた」
「そしたら目の前には見た事もないキレイな街が広がっていて……」
「その街並みから察するに、ここはアースランドともエドラスともまったく違う世界」
「この世界にも小さいけどフェイトが存在して、そのフェイトは時空管理局とかいう恐らく評議院に似た組織に所属している」
「で…オイラたちはそのフェイトから逃げて来た……」
ティアナ、エリオ、リニス、シャルル、ハッピーの順でこれまで起きた出来事を整理するが……
「だーーーっ!!!! 何がなんだかさっぱりわかんねえ!!!!」
不明確な点ばかりでナツが頭を抱えながら天に向かって叫んだ。
「とにかく……あの小さなフェイトの事を踏まえると、私たちが別の世界に飛ばされたのは明確となりました」
「そうね。あとはどうやって元の世界に帰るかだけど……」
ティアナとリニスが状況を簡潔にまとめ、アースランドへと戻る方法を考える。すると……
ゴゴゴゴゴゴ……!!!
「「「!!!」」」
突然地響きのような音が響き、同時にナツたちは強大な魔力を感じ取った。
「何だ…この魔力の感じ?」
「あい…なんだか凄く危ない気がするよ」
「海の方角からね」
「行ってみましょう、元の世界に帰る手掛かりがあるかもしれません」
エリオの提案に、ナツたちは迷う事無く頷く。
「行くぞぉ!!!」
ナツの号令と同時に、一同は魔力が感じ取れる海の方角へと飛んでいったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
それからしばらくして、海の上の上空へとやって来たナツたち。
「おい、誰かいんぞ!!」
「あれは……」
そこには既に4人の人影があり、その内の3人は、ナツたちも見知った顔であった。
「はやてだ!! でもフェイトと一緒で小っちゃいね」
「隣にいるのはリインフォースさんですよね。僕たちの知ってる姿と全然変わってませんけど」
「ハヤテ様!!? 背丈は小さいですが、間違いありません」
「もう1人は……見慣れない奴ね」
その3人とは、フェイトと同じく子供姿の八神はやて…彼らの知っている姿とまったく変わっていないリインフォース…エドラスの王女、ハヤテ・K・クローディアと酷似している少女であった。
そしてもう1人は、長いピンク色の髪に花のついたカチューシャを身に着けた見慣れない少女。
「魔力の発生源は……アレね」
そう言うティアナの視線の先には、ハヤテと少女の側にある魔力の発生源と思わしき赤い球体があった。
「みんな、少し離れて様子を見るわよ」
「なんで?」
「いいから!!」
素で疑問符を浮かべているナツを無理矢理黙らせ、ティアナたちは4人とは少し離れた所で様子を見る事にした。
すると、ハヤテの高らかな声が聞こえてくる。
「いずれにせよ時は満ちた。行くぞ桃色!!」
「はぁーい♪強制起動システム正常、リンクユニットフル稼働」
ハヤテの指示に少女が空間モニターを操作すると、浮かんでいた赤い球体が激しく反応し始める。
「さぁ蘇るぞ! 無限の力『無限の闇』!! 我の記憶が確かなら、その姿は『大いなる翼』! 名前からして戦船か、あるいは対外強化装備か……」
「んー、こんな感じかしら?」
そう言うと少女は空間モニターに、自分のイメージしたロボットのような映像を表示する。
「おお! 中々カッコイイではないか」
「か…かっこええ…かな?」
「私には、よく……」
その映像を見て感嘆の声を上げるハヤテと、苦笑いを浮かべるはやてとリインフォース。
「おおっ!! カッケー!!!」
「うぱー!!!」
「凄くカッコイイです!!!」
「えっと……カッコイイ…のでしょうか?」
「気にする事ないわよリニス。男ってのはバカな生き物なんだから」
「っていうか、静かにしなさいよ。気付かれるでしょ」
その映像を遠くから見ていたナツとハッピーとエリオの男組は目を輝かせるが、女性陣の反応はイマイチであった。因みに運よくその会話は聞かれていない。
「ともあれ、この偉大な力を手にする我等に負けはない! 残念だったな子鴉とそのお供!
ふははは!さぁ蘇れ、そして我が手に収まれ!忌まわしき無限連環機構、シスエムUーD砕け得ぬ闇よっ!!」
その瞬間……赤い球体が弾け飛び、その中から何やら声が響く。
「ユニット起動──無限連環機構作動開始。システム「アンブレイカブル・ダーク」正常作動」
そこから現れたのは、ウェーブのかかった長い金髪をした小さな少女であった。
「お……おおお?」
「はいっ?」
「え……?これって……」
「ちょっと王様? システムUーDが人型してるなんて、聞いていないんですケドッ!?」
「むぅ、おかしい。我が記憶でも、人の姿を取っているなどとは……いや、それを言うなら、我々も元々人の姿などしておらなんだわけで………」
その少女を見て、ハヤテを始めとした全員がポカンっとしていた。
「女の子……?」
「何よ、何が出て来るかと思ったら、ウェンディと変わらない位の子じゃない」
「そうですね……見た感じは無害そうな子ですが……」
遠くからその少女の姿を見ていたハッピー、シャルル、リニスはそう声を漏らすが、ナツたちの反応は違った。
「な…なんだ…この感じ……この危ねえニオイは……!!?」
「魔力の質が……桁違いじゃない……」
「本能的にわかる……あの子は…ヤバイ……」
驚愕と警戒の入り混じった表情を浮かべながらそんな言葉を口にするナツとティアナとエリオの3人。
そんなナツたちを他所に、はやてたちの方の会話は進んでいく。
「あー……取り敢えず、『砕け得ぬ闇』やから……ヤミちゃん?」
「ヤミちゃんっ!?」
「視界内に夜天の書を確認──防衛プログラム破損、保有者認証、困難………」
「あ……あの、こんにちは、現在の夜天の書の主、八神はやてです!」
「待てぇーい! うぬら、なんたる横入りッ! 起動させたのは我ぞ!」
「起動方法を伝授したのは私です~!」
「そやけど、夜天の書の主は私やから……」
「黙れ黙れ! これは我のだ! 誰にも渡さんぞッ!」
「あ~ん、王様、話が違います~!」
3人がそんな言い合いをしていると……U-Dと呼ばれたの背中に、まるで血のように赤い羽のようなものが出現する。
「「「!!!」」」
それを見た全員の表情が変わる。
「状況不安定……駆体の安全確保の為、周辺の危険因子を……」
呟くようにそう言うと、U-Dは目を怪しく光らせ……
「排除します」
と言って背中の赤い翼を広げ、はやてとリインフォースの方を見据えた。
「空中打撃戦システムロード。出力上限5%」
「な……なんやこの重圧……魔力量の桁が違う!? まるっきり、勝てる気がせーへん……」
「我が主、お逃げ下さい! それの相手は、あまりにも──!」
U-Dから放たれる圧倒的な重圧に、はやての戦意はすでに折れかけており、そんなはやてに向かってリインフォースが逃げるように呼びかけるが……そんな事はお構い無しに、赤い翼を広げてはやてへと襲い掛かるU-D。
だがその時……
「火竜の鉄拳!!!!」
「「!!?」」
遠くから様子を見ていたハズのナツとハッピーが割って入り、ナツの炎の拳がU-Dに叩き込まれた。
しかし、その拳が当たる直前にU-Dは魔力のシールドでそれを防御していた。
「おおおおおらぁ!!!!」
「!!」
「お前の相手は……オレだぁ!!!!」
だがナツはそんな事意にも介さず、そのまま腕に力を込めて、シールドごとU-Dを後方へと吹き飛ばした。
「あれを…力尽くで吹き飛ばした……?」
「だ…誰なん? あの人……」
その光景を見て、呆然とするはやてとリインフォース。そこへ、エリオとリニスがやって来る。
「はやてさん、リインフォースさん、大丈夫ですか?」
「え? えっと…大丈夫やけど……君は誰? なんで私らの名前を……」
「話は後です!! とりあえず今はここから離れてください!!」
「しゃべった!? 羽の生えたネコがしゃべりおった!!? アルフと同じ使い魔!?」
「我が主…今はこの者の言う通り、離脱を」
「う、うん……」
リニスがそう言った事にはやては驚愕したあと、リインフォースの言葉に従ってその場から離れた。
「エリオ!!! はやてとリインフォースは無事か!?」
「大丈夫です!!! お2人は僕が守りますから、ナツさんは思いっきり戦ってください!!!」
エリオのその言葉を聞き、ナツはニカッと笑みを浮かべる。
「おっしゃ!!! 行くぞハッピー!!!」
「あいさー!!!」
そう言うと、ナツとハッピーは目の前にいるU-Dと向き直る。
「視界内に不明確な魔力を確認……攻撃対象を変更……」
対するU-Dは虚ろな瞳でナツの姿を見据えると、赤い翼を広げて戦闘態勢を取る。
「墜滅、開始」
「かかってこいよ」
こうしてナツとU-D……未知の世界での戦いが始まったのであった。
つづく