LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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3話目です。


コードETD

 

 

 

 

 

王都の城の一角にある会議室。

 

そこではエルザ以外の魔戦部部隊長であるリリー、ヒューズ、シュガーボーイの3人と、リリーの補佐であるリニス。幕僚長のバイロとその補佐であるココ。そして魔戦部隊総隊長であるハヤテとその側近であるフェイトが、国王のファウストを交えて会議を行なっていた。

 

 

「ぐしゅしゅ…やはり言い伝え通り、地上(アースランド)の魔導士は皆、体内に魔力を持っている事がわかりましたぞ」

 

 

「んーーーまるでエクシードのようだなァ」

 

 

「しかしその魔力はエクシードの比にはなりましぇん」

 

 

「ふむぅ」

 

 

「エクシードより強大な魔力を持つ人間か……では先刻捉えたアースランドのルーシィやティアナの体内にも魔力が宿っておるのか?」

 

 

「でしゅな」

 

 

「ハイハーイ!! だったら殺さずに魔力を吸い続けたら、ずーーっと魔力に困らないじゃん!!」

 

 

「おっ!! フェイトそれスッゲェいいアイデアじゃん!!」

 

 

「へっへーん!! でしょー?」

 

 

「それはならん」

 

 

フェイトの案にヒューズが乗っかるが、ファウストが却下した。

 

 

「エクシードの女王(クイーン)シャゴットより、抹殺せよとの命令が出ておる」

 

 

女王(クイーン)の命令ですか!!?」

 

 

「んーーー我々はエクシードには逆らえん」

 

 

「えーーっ!! そんなぁ~~!!」

 

 

「スッゲェもったいねえよチクショォ!!!」

 

 

「それに我々の技術力では、人体から魔力を抽出する事はまだ不可能」

 

 

「では、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の3人はどうする?」

 

 

「あれは人であり、人ではありません。実験が成功すれば、半永久的な魔力が手に入るでしょう」

 

 

「おおっ! スッゲェ!!」

 

 

「スッゲー!!」

 

 

「スッゲェですね」

 

 

「いいぞバイロ、すぐに始めろ」

 

 

「だが、万一に備えて地上(アースランド)魔水晶(ラクリマ)の魔力抽出も怠るでないぞ」

 

 

「はっ!」

 

 

ファウストとハヤテのその指示を最後に、会議は終了した。

 

 

「もう少しでこの世界に魔力が戻るかもしれねえ!! スッゲェ!!」

 

 

「んーーーゴキゲンだね」

 

 

「そしたらまず何するよ、シュガーボーイ」

 

 

「んーーー魔導サーフィンかな」

 

 

「私もやりたいですー」

 

 

そんな会話をしながら会議室を出て行くヒューズ、シュガーボーイ、バイロ、ココの3人。しかしリリーとリニスだけが、席を立たずにいた。

 

 

「どうしたリリー」

 

 

「陛下……最近の軍備強化についてなのですが」

 

 

そう言ってファウストに進言しようとしたリリーだが、ファウストの鋭い眼光により、その言葉を飲み込んだ。

 

 

「いいえ……失礼しました」

 

 

「パンサー・リリー……うぬは余計な事は考えず、城の警備に徹しよ。もう少しで我らの計画が叶うという瀬戸際に、つまらぬ横槍などを入れられてはたまらぬからな」

 

 

「はっ……行くぞリニス」

 

 

「はい」

 

 

そう言ってリリーはファウストとハヤテの2人に頭を下げると、リニスと共に会議室を出て行った。

 

 

「フェイト」

 

 

「なーにー王様…じゃなかった、総隊長(そーたいちょー)?」

 

 

「ナノハの奴はどうした?」

 

 

「ナノハ? んー…確かさっきティアナって言うアースランドの魔導士を見に行くって言ってたよ~」

 

 

「そうか……まぁよい。それとフェイトよ、(くだん)のアースランドの魔導士3人のうち、1人の抹殺をうぬに命ずる」

 

 

「!」

 

 

「1人はすでにエルザに任せておる。うぬはもう1人の方を始末せよ」

 

 

そんなハヤテの命令を耳にしたフェイトは、ニィッと口角を吊り上げて無邪気に笑った。

 

 

「いいの?」

 

 

「好きにせよ」

 

 

「りょーかーい♪ じゃ、行ってきまーす!!」

 

 

そう言うと、フェイトはスキップのような軽い足取りで会議室を出て行った。

 

 

そして残ったのは、ファウストとハヤテの2人だけであった。

 

 

「もうすぐだな……父上よ」

 

 

「うむ。もうすぐだ……もうすぐ我々は……永遠の魔力を手に入れられる」

 

 

「その時こそ、時代の終わりと始まりの時……我々がこのエドラスに新たな歴史を刻みつける時だ」

 

 

そんなファウストとハヤテの会話が、会議室に響いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百九話

『コードETD』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃……牢屋に閉じ込められ、両手首に手錠を嵌められているキャロは、暗い表情で部屋の隅に座り込んでいた。

 

 

「ウェンディちゃん…エリオ君…シャルルちゃん……みんな大丈夫かなぁ……」

 

 

そう言って捕まってしまった他の仲間たちの心配をするキャロ。すると、牢屋の扉の鍵がガチャリと開けられ……

 

 

「オイッスー!! 元気かいチビッ子ー!!」

 

 

そんな掛け声と共に、フェイトがバーンっと勢いよく扉を開け放ちながら入ってきた。当然、そんなフェイトを見てキャロは驚く。

 

 

「フェイトさん!!?」

 

 

「およ? ボクの事知ってるのかい?」

 

 

首を傾げるフェイトを見て、キャロは目の前の人物がエドラスのフェイトだと言う事を察した。

 

 

「は…はい……えっと…アースランドのフェイトさんとは、同じ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間ですから……」

 

 

「ボクが妖精の尻尾(フェアリーテイル)? ナノハと王様も? あ、王様っていうのはボクたちの総隊長のハヤテの事ね。次期王様だからボクはそう呼んでるんだー♪」

 

 

「はい……なのはさんもはやてさん、それにエルザさんも、みんな妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員です。4人ともとっても強くて、ギルド最強の女魔導士って呼ばれてるんですよ」

 

 

「ふーん、そっか! やっぱりボクは別の世界でも強くて凄くてカッコイイんだー♪」

 

 

アースランドの自分の話を興味津々の様子で聞いているフェイト。そんな彼女に、キャロはある質問を投げかけた。

 

 

「あの……滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の魔力を使って、どうするつもりなんですか?」

 

 

それはここに投獄される前に王国兵が話していた、王国の本当の目的の事であった。その質問に対し、フェイトは口元に人差し指を当て、首を傾げながら答えた。

 

 

「んー…知らないっ! 聞いたかもしれないけど忘れちゃった♪」

 

 

「そ…そんなぁ……」

 

 

笑顔でそう答えるフェイトに、キャロは落胆の表情を浮かべていたが……

 

 

「でも……王様と国王様のやる事に間違いはないよ。ボクやナノハはどこまでだって、王様について行くだけさ」

 

 

フェイトのその言葉に、キャロの表情が変わった。

 

 

「……それは……こっちのはやてさんや国王がやろうとしている事は、全部正しいって事ですか?」

 

 

「とーぜんでしょ、王様はボクの何倍も頭がいいんだ。その王様がやろうとしている事が間違いのハズないよ」

 

 

「っ……私たちの世界のギルドのみんなや街の人たちを魔水晶(ラクリマ)に変えて、魔力だけを抽出して命を奪う……そんな事が正しいって言えるんですか!!?」

 

 

「なんで? そっちの世界の人間が何人死のうが、ボクたちの世界には関係ないじゃないか。むしろ王様たちの計画で役に立てたんだから、光栄に思うべきなんだよ」

 

 

フェイトがそう言った瞬間……部屋にパンッと、乾いた音が響いた。キャロが手錠に繋がれた手で、フェイトの頬を叩いたのだ。

 

 

「やっぱりあなたは私の知ってるフェイトさんとは違う……私たちの世界のフェイトさんは、強くて…暖かくて…凛々しくて…ギルドの誰よりも優しい人なんだっ!!!

 

自分たちの目的の為に、関係のない大勢の人達を犠牲にするような事は絶対にしない!!!

 

フェイトさんをバカにしないでっ!!!!」

 

 

キャロの涙ながらの叫びが、部屋に響き渡る。そんなキャロに対してフェイトは……

 

 

「ふぅ~ん……まぁいいや。王様の命令はお前の処刑だしね」

 

 

そう言って、キャロの首根っこを掴んで牢屋から引きずり出した。

 

 

「は…放してっ!!!」

 

 

「放さないよ~♪ さーて、どうやって始末しよっかな~?」

 

 

そんなキャロを引き摺りながら、鼻歌混じりに廊下を歩いて行くフェイト。すると……

 

 

「おっ!! エルザじゃーん!!」

 

 

「フェイトか」

 

 

「こっちのフェイト!!? それにキャロ!!?」

 

 

「ルーシィさん!!!」

 

 

エルザによって壁に叩きつけられたルーシィと出会った。

 

 

「エルザも今からそいつの処刑?」

 

 

「ああ」

 

 

「だったら一緒にやろーよ、その方が手間も省けるし」

 

 

「いいだろう」

 

 

エルザとフェイトがそんな会話をしていると、ルーシィが2人の説得を試みる。

 

 

「お願い!!! 2人の力を貸して!!! あたしは仲間を助けたいだけなの!!!」

 

 

「こいつ何言ってんの?」

 

 

「どうやらお前と私を、アースランドの我らと一緒だと思っているらしい」

 

 

「何それ~」

 

 

「ねえ!!!」

 

 

「黙れ」

 

 

「ひっ」

 

 

そんなルーシィの言葉にも耳を貸さず、エルザは彼女の両手を繋いでいる手錠の鎖部分に、槍を引っ掛けて持ち上げる。しかもその下は目が眩むほど地面とは遠い。

 

 

「ちょ…ちょっとォォ!!!」

 

 

「お前はここで死ぬんだ」

 

 

「あっ、そのやり方いいね!! ボクもそうしよーっと!!」

 

 

「きゃっ!!」

 

 

そんなエルザを見習って、フェイトも手にしていたバルディッシュに似た斧のような杖に先端に、キャロの手錠の鎖部分を引っ掛けて、ルーシィと同じ状態にした。

 

 

「エルザとフェイトは無抵抗な人にそんな事しない!!! 2人は優しいんだ!!! そんな事するもんか!!!」

 

 

「おめでたい奴だな、私は人の不幸など大好物だ。妖精狩りの異名通り、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士を何人も殺した」

 

 

「ボクも同じだよ。王様の邪魔をする奴は何人もこの手で殺してきたんだ。それがボクの仕事であり、何よりの楽しみだからね」

 

 

冷たい笑みを浮かべながらそう言い放つエルザとフェイトに、ルーシィとキャロは悔しそうに涙を浮かべながら歯噛みする。

 

 

「2人の顔で…声で…そんな事言うな」

 

 

「最低です……」

 

 

「じゃあなルーシィ」

 

 

「バイバーイ、チビッ子」

 

 

そう言ってエルザとフェイトは同時にルーシィとキャロを落とした。

 

 

どんどん迫る地面に、2人は覚悟して目を強く閉じる。

 

 

そしてその時……

 

 

「ルーシィーーー!!! キャローーー!!!」

 

 

「!」

 

 

自分の名を呼ぶ声が聞こえ、2人が目を開けるとそこには……

 

 

「ハッピー!!!」

 

 

「シャルルちゃん!!!」

 

 

「エクシード…」

 

 

「なんで…?」

 

 

翼を広げてこちらへ向かってる2人を見て、ルーシィは嬉しそうに笑みを浮かべ、エクシードが現れた事にエルザとフェイトは動揺する。

 

 

「もう大丈夫だよ!!! オイラが来たからにびゃっ!!!」

 

 

「ハ…ハッピーちゃん!!?」

 

 

「…………」

 

 

「あ…ありがと…」

 

 

そしてハッピーは、キャロを受け止めたあと何故かそのまま壁に激突し、ルーシィはシャルルが助けたのだった。

 

 

「アレ!? あんたたち羽……」

 

 

「心の問題だったみたい」

 

 

「久しぶりで勢いつきすぎちゃった」

 

 

「大丈夫?」

 

 

「あい」

 

 

すると、エルザが動揺しながらも口を開いた。

 

 

「こ…これは一体……その女は女王様の命令で抹殺せよと……」

 

 

「命令撤回よ」

 

 

「し…しかし、いくらエクシードの直命でも、女王様の命令を覆す権限はないハズでは?」

 

 

「う……」

 

 

「その女をこちらにお渡しください」

 

 

「頭が高いぞ人間……」

 

 

鋭い眼光で睨むエルザに、シャルルがそう言い放った。

 

 

「私を誰と心得る!? 女王(クイーン)シャゴットの娘、エクスタリア王女、シャルルであるぞ」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

その言葉に、エルザとフェイトだけでなくルーシィとキャロとハッピーも驚愕する。

 

 

「はっ、申し訳ありません!!!」

 

 

「え…えっと……」

 

 

「お前も頭を下げろ!!!」

 

 

「う…うん」

 

 

それを聞いてすぐさま平伏すエルザと、そんな彼女に怒鳴られて同じく平伏すフェイト。そしてポカーンとしているルーシィとキャロとハッピー。

 

 

「ウェン…3人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)とティアナはどこ?」

 

 

「ド…滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は西塔の地下に……もう1人は、すでに脱走した模様です……」

 

 

「脱走!?」

 

 

「さすがティアナだね」

 

 

「そう…なら今すぐ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を解放しなさい」

 

 

「私の権限では何ともなりません」

 

 

「いいからやりなさい!!!」

 

 

シャルルがエルザにそう言い放ったその時……

 

 

「エルザーー!!!」

 

 

「待ってください!!!」

 

 

「パンサー・リリー…リニス…」

 

 

そこへリリーとリニスが駆けつける。

 

 

「何アイツ!!! アンタの仲間!!?」

 

 

「あんなゴツイエクシードはいなかったよ」

 

 

リリーの姿を見たルーシィとハッピーは少なからず驚く。

 

 

「その2人のエクシードは〝堕天〟です!!!!」

 

 

「エクスタリアを追放された者どもだ!!!!」

 

 

「な…!!!」

 

 

それを聞いたエルザは目を見開く。

 

 

「……!! 逃げるわよ!!!」

 

 

「ちょっと!! あんた姫じゃないの~!!?」

 

 

「堕天って言われたら誰だろーと裏切り者扱いみたい」

 

 

そう言って一目散に飛んで逃げていくシャルルたち。

 

 

「チッ」

 

 

「やられましたね」

 

 

「おのれ…」

 

 

まんまと騙されたエルザは、怒りの形相を浮かべた。

 

 

「全兵士に通達!!! 堕天が囚人を連れて逃走!!! 青毛と白毛のエクシードは堕天である!!!! 見つけ次第抹殺せよ!!!!」

 

 

そんな命令が、城に飛び交ったのであった。

 

 

「ありがとう2人とも」

 

 

「怒ってないの?」

 

 

「え? 何を?」

 

 

「捕まったのは私たちのせいだし」

 

 

「シャルルちゃんは悪くないよ。それに助けてくれたし、ね? ハッピーちゃんも」

 

 

「ゴメンねルーシィ、キャロ」

 

 

「だ~か~ら~!! 全然怒ってないってば!!! それよりアンタ…女王の娘って方が驚きなんだけど」

 

 

「オイラも知らなかった」

 

 

「ハッタリに決まってるじゃない」

 

 

「あら」

 

 

「えー」

 

 

平然とそう言ってのけるシャルルにルーシィとキャロは唖然とし、ハッピーはどこか嬉しそうな表情を浮かべる。

 

 

「その顔何よ、ハッピー」

 

 

「ううん……いつものシャルルだなぁって思って」

 

 

「(あれ?)」

 

 

「(今…ハッピーって……)」

 

 

今までハッピーをオスネコと呼んでいたシャルルが彼の名前を口にした事に、ルーシィとキャロは少なからず驚く。

 

 

「う…うるさいわね!!! それより早くウェンディたちを助けに行くわよ!!!」

 

 

「あい! ナツたちは西塔の地下って言ってたね。3人を助けたら、脱走したティアナを探して合流しよう」

 

 

そう言って西塔に向かう2人の表情を見て、ルーシィとキャロは何かを悟った。

 

 

「クスッ」

 

 

「何笑ってんのよルーシィ」

 

 

「別にィ~♪」

 

 

「何でもないよ♪」

 

 

そんな会話をしながら西塔へと向かう4人。すると……

 

 

オォォオオオオオ……

 

 

「「「!!!」」」

 

 

オオオォォォオオオオオオオ……

 

 

「何…? この音…」

 

 

「音……違う…声?」

 

 

突然聞こえてきた奇妙な音に戸惑っていると……

 

 

「見つけたぞ~~~っ!!!! 堕天ども!!!!」

 

 

「ネコが、いっぱい!!!」

 

 

「追いかけてきたのか!!!」

 

 

その音の正体は……エクスタリアからハッピーとシャルルを追ってきた、ニチヤ率いる近衛師団の大群であった。

 

 

「空中はマズイわ!!! 地上に降りましょ!!!」

 

 

「ま…待ってシャルル!!!!」

 

 

地上に降りようとするシャルルをハッピーが制する。

 

 

その地上には……魔戦部隊の1~4の隊長陣とフェイトを含めた、王国兵の大群が勢揃いしていた。

 

 

「空にも地上にも敵が……!!!」

 

 

「鋏まれちゃいました……!!」

 

 

「ど……どうしよう!!!」

 

 

空と地の両方の敵に挟まれてしまった4人は打開策を考える。

 

 

「ルーシィ、星霊魔法は!?」

 

 

「この手錠が魔法を封じてるみたいなの、それに…魔法が使えたとしても、この人数相手じゃ……」

 

 

ルーシィがそう言うと、近くの建物がシャルルの視界に入る。

 

 

「建物に入るのよ!!!」

 

 

「そっか!!」

 

 

シャルルの案により、建物の中に身を隠すことにした。するとその時……

 

 

プオォォオオオ

 

バサッバサッバサッバサ

 

 

兵士の1人が鳴らした笛の音が響き、続けて城壁の上に何本もの旗が、何かの合図のように掲げられた。そしてそれを見た隊長陣は驚愕する。

 

 

「コードETD!!?」

 

 

「ウソ!!?」

 

 

「こんな時に!?」

 

 

「国家領土保安最終防衛作戦…」

 

 

「コードETD発動!!!!」

 

 

その瞬間、城壁の上から5つの照明のようなモノが、眩い光を照らし出した。

 

 

「うああああ!」

 

 

「きゃあああ!」

 

 

それを何かの攻撃だと思ったルーシィとハッピーは悲鳴を上げるが……

 

 

「のあっ!」

 

 

「「!!!」」

 

 

「何でエクシードの方を!!?」

 

 

何とその光を浴びたのは、ニチヤたちエクシードの方であった。

 

 

「これは一体……何のマネであるかっ!!! 人間ども!!!」

 

 

「あぁあ!」

 

 

「ぐああ!」

 

 

「苦しい!!」

 

 

その光を浴びて、苦しみ出すエクシードたち。

 

 

「ど…どういう事!? 人間にとってエクシードは天使や神様みたいな存在でしょ?」

 

 

「反乱って事!? 何をするつもりなんだろう」

 

 

「よくわからないけど、今はこの混乱に乗じるのが得策みたいね。今のうちにウェンディたちを助けに行くのよ!!!」

 

 

「あい!!」

 

 

そう言って4人は西塔へと向かった。

 

 

「しまった!!! 堕天と囚人が!!! 西塔に向かうハズ!!! 守りを固めるんだ!!」

 

 

「「「はっ!」」」

 

 

「あっ、ボクも一旦王様の所に戻らなきゃ!!!」

 

 

そうしている間にも、謎の光を浴びたエクシードたちは、何やらバチバチと音を立てている。

 

 

「おのれ人間ども…女王様が…黙っておらんぞー!!!」

 

 

ニチヤのその言葉を最後に、なんとエクシードたちはネコ型の巨大な魔水晶(ラクリマ)へと姿を変えたのであった。

 

 

「エクシードが魔水晶(ラクリマ)になっちまった」

 

 

「あわわ…」

 

 

「ほ…本当にやっちまった」

 

 

「だ…大丈夫なのか……」

 

 

エクシードに事実上の反乱を起こした事に、動揺する王国兵士たち。すると……

 

 

「うろたえるでないっ!!!!」

 

 

すると、王宮のラウンジからハヤテの一喝が響き、王国兵たちの視線が集中する。そして、同じくラウンジに立っているファウストとハヤテが口を開く。

 

 

「この世に神などいない。我ら人間のみが有限の魔力の中で苦しみ、エクシードどもは無限の魔力を謳歌している。なぜ……こんなにも近くにある〝無限〟を我々は手に出来ないのか」

 

 

「塵芥どもに支配され続ける時代は終わりだ。全ては人類の未来の為に…より豊かな魔法社会を構築する為に…我が王国の兵士たちよ!!! 共に立ち上がれぃ!!!!」

 

 

「「コード『ETD(エクシード・トータル・デストラクション)』天使全滅作戦を発動する!!!」」

 

 

オオォォォオオオオオオ!!!!

 

 

ファウストの言葉と、ハヤテの鼓舞によって、兵士たちは大いに雄叫びを上げる。

 

 

「こりゃあスッゲェ事になったな」

 

 

「んーーー是非もなしってトコかなァ」

 

 

「軍備強化はこの為だったのか……」

 

 

「リリー……」

 

 

リリーとリニス以外の魔戦部隊隊長陣も、この作戦に乗り気であった。

 

 

「エクシードの魔力を奪えば、我が国は永遠の魔力を手に出来る」

 

 

「陛下!! 王女!! 女王の攻撃がきますよ、エクスタリアの軍事力はとてつもないんですよーっ!」

 

 

「落ち着けいココ……その為に滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を捕らえておるのだ」

 

 

「左様。神を堕とすのは今しかない。急ぎ滅竜魔法を抽出せよ!!! バイロ!!!」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方、西塔の潜入に成功したルーシィとキャロたちは、まずはナツたちを助ける為に地下へと向かっていた。

 

 

「なんか大変な事になってきたね」

 

 

「まさか人間とエクシードが戦争始めるなんて~」

 

 

「どうなっちゃうんでしょうか?」

 

 

「私たちには関係ない事よ。どっちもどっちだし…勝手にやってればいいのよ」

 

 

そんな会話をしながら地下へと向かっていると……

 

 

ギュゥウン!!! ドカッ!!!

 

 

「きゃっ!」

 

 

「うわっ!」

 

 

「「!!」」

 

 

突然1本の槍が飛来し、4人の行く手を阻んだ。

 

 

「この先には行かさんぞ」

 

 

「「「「!」」」」

 

 

そこには槍を投げた張本人であるエルザが、多くの兵士を引き連れて立っていた。

 

 

「もう!! あたしたちに興味なくしたんじゃなかったの!?」

 

 

そんなエルザに文句を言うルーシィだが、エルザはただ微笑を浮かべるだけだった。すると……

 

 

キィィイン

 

 

「え!?」

 

 

ドゴォォオン!!!!

 

 

「うぐっ!」

 

 

「うあっ!」

 

 

「あうっ!」

 

 

「きゃあ!」

 

 

突然地面に刺さっていたエルザの槍が大爆発を起こし、それによって四人は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

 

「ほう…私の魔法をくらってまだ生きているのか」

 

 

そう言ってエルザは槍を引き抜き、4人へと歩み寄る。すると……

 

 

 

『きゃああああぁぁぁ……』

 

 

 

「!!!」

 

 

「この声は……!?」

 

 

「ウェンディの声……近くに…いる……」

 

 

通路の奥からウェンディの悲鳴が聞こえ、4人は目を見開く。

 

 

「アンタたち…ウェンディに何してるの…」

 

 

「コードETDに必要な魔力を奪っているんだ」

 

 

ルーシィの言葉に対して平然とそう言い放つエルザ。そしてまたしても…ウェンディの悲鳴が聞こえてくる。

 

 

「や…やめて……やめなさいよ!!!!」

 

 

「ウェンディちゃんに…酷いことしないでっ!!!」

 

 

「気にやむな。どうせお前はここで死ぬ」

 

 

そう言ってエルザは倒れているシャルルに向かって槍を突きつける。すると、そんなシャルルを守るようにハッピーが立ちはだかる。

 

 

「シャルルはやらせないぞ!!!!」

 

 

「ならばお前からだ」

 

 

エルザにとっては順番が変わった程度のもので、特に気にも留めずにハッピーに槍を構えた。

 

 

「ダメェーーーー!!!!」

 

 

そしてシャルルの悲痛な叫びが響き渡り、ハッピーに向かって槍が振り下ろされようとしたその時……

 

 

ドッ!!!

 

 

「「「「!!!」」」」

 

 

「何だ!!?」

 

 

突然エルザの後方に控えていた王国兵が数人吹き飛ぶ。

 

 

「うああ!」

 

「ぐはぁ!」

 

「あがあああ!」

 

「ぎええええ!」

 

 

次々と斬り捨てられ、さらには氷付けにされる王国兵士たち。

 

 

「オイ……コラてめぇら。そいつらウチのギルドのモンだと知っててやってんのか?」

 

 

「ギルドの仲間に手を出した者を、私たちは決して許さんぞ」

 

 

そこへ聞こえてくる4人にとっては非常に聞きなれた2つの声と口調。

 

 

「あ…ああっ……!!!」

 

 

「ど……どうして……アンタたちが…」

 

 

その2人の人物を見て、キャロとシャルルは声を震わせ……ルーシィは涙を浮かべながら笑い、2人の名を叫んだ。

 

 

「テメェら全員、オレたちの敵って事になるからよォ。

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のな」

 

 

 

「グレイ!!!! エルザ!!!!」

 

 

現れたのは……自分たちのよく知るアースランドのグレイとエルザであった。

 

 

 

 

 

つづく


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