LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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昨日は本当に更新できなくてすみませんでした。


今回の話を含めて、全4話を今から1時間置きに1話づつ更新します。短いのもあれば長いものもあります。あと徹夜で書いたので、ちょっと文章が荒いかもしれませんが、どうかご了承ください。


感想お待ちしております。


おかえりなさいませ

 

 

 

 

エドナツとエドティアナの協力により、予定よりだいぶ早く王都へとたどり着いたナツたちアースランド組。

 

そして現在、まるでお祭り騒ぎのように賑わっている王都の城下町を歩いていた。

 

 

「何これ…」

 

 

「意外ですね…独裁国家の統治下って言うから」

 

 

「もっとくたびれてる街かと思ってたんだけど」

 

 

「街の中にもあっさり入れたしな」

 

 

「前の2つの街とは全然違う。遊園地みたい」

 

 

そう言って輝く街並みを見渡しながら歩く一同。

 

 

「魔力の無駄遣いだわ。全ての国やギルドから魔力を奪って、この王都に集中させている。国民の人気を得る為に、こんな娯楽都市にしたんだわ」

 

 

「呆れた話ね……王様も、それに喜んでいる国民も」

 

 

シャルルの説明に、ティアナが呆れたようにそう言うと、街の一角にかなりの人だかりが出来ているのを発見した。

 

 

「何か、向こうの方が騒がしいですね」

 

 

「パレードとかやってんのかしら」

 

 

「ちょっと見に行ってくるか!」

 

 

「あいさー」

 

 

「僕も行きます!」

 

 

「アンタたち…遊びに来たんじゃないのよ」

 

 

「聞こえてないみたいだよ、シャルルちゃん」

 

 

「ハァ……」

 

 

シャルルの制止の言葉も耳に入らず、人ごみの中へと向かって行く一同を見て、苦笑するキャロと溜息をつくティアナ。

 

 

「何だ何だ?」

 

 

「待ってよナツー」

 

 

「うわ! すごい人ごみ」

 

 

「中々前に進めない……」

 

 

そうして何とか人ごみを掻き分けて前に出て行くと……ナツが急に立ち止まった。

 

 

「ちょっと…急に立ち止ま……」

 

 

文句を言おうとしたルーシィだが、ナツの視線の先にあるモノを見て言葉を失った。

 

 

 

それは……周囲の建築物の大きさに相当する程の……巨大な魔水晶(ラクリマ)であった。

 

 

 

魔水晶(ラクリマ)

 

 

「まさかこれが…」

 

 

「マグノリアのみんな……」

 

 

「大きい……」

 

 

「しかもアレは一部分よ。見て、切り取られた跡があるわ」

 

 

「そんなっ!? これで全部じゃないのか!!?」

 

 

しかもその魔水晶(ラクリマ)を見る限り、それはほんの一部だと言う事を知って、さらに驚愕する。

 

 

「陛下ー!!!」

 

 

「バンザーイ!」

 

 

すると、その魔水晶(ラクリマ)の前で……エドラス国王のファウストが演説を始めた。

 

 

「エドラスの子らよ。我が神聖なエドラス国は、アニマにより10年分の〝魔力〟を生み出した」

 

 

「くっ…何が「生み出した」だ……!!」

 

 

「オイラたちの世界から奪ったくせに」

 

 

その言葉にエリオとハッピーが歯噛みしながら呟く。

 

 

「共に歌い、共に笑い……この喜びを分かち合おう」

 

 

オォォォオオオオオ!!!!

 

 

民衆から大きな歓声が上がり、それを悔しそうな表情で眺めるティアナとルーシィ。しかし、ファウストの言葉はまだ続いた。

 

 

「エドラスの民にはこの魔力を共有する権利があり、また…エドラスの民のみが未来へと続く神聖なる民族!!! 我が国からは誰も魔力を奪えない!!!! そして我はさらなる魔力を手に入れると約束しよう!!!!

 

 

 

これしきの魔力がゴミに思えるほどのなァ!!!!!」

 

 

 

そう言ってファウストは……持っていた杖を魔水晶(ラクリマ)に叩きつけ…バキッと音を立てて僅かに砕いた。

 

 

それを見てさらなる歓声を上げる民衆たち。

 

 

そしてナツの怒りは……限界にまで達した。

 

 

「ナツ……今は堪えて……」

 

 

そんなナツを、ティアナが後ろから抱き締めるように止めた。

 

 

「できねえ!! あれは……あの魔水晶(ラクリマ)は……!!!」

 

 

「お願い……私もみんなも…同じ気持ちだから……」

 

 

そう言うティアナの目からは涙が溢れていた。

 

いや…ティアナだけではない。ルーシィも…ウェンディも…エリオも…キャロも…ハッピーも…シャルルも……全員が悔しそうな表情で涙を堪えていた。

 

そしてナツたちは……目の前にいるファウストに、ただならぬ怒りを燃やしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百七話

『おかえりなさいませ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後……街のホテルの一室でナツたちは休息を取っていた。

 

しかし先程の出来事もあり、1人を除いて全員が意気消沈しており……シャルルのみが、懸命に何かを紙に書いていた。

 

すると、ナツが立ち上がる。

 

 

「やっぱりガマンできねー!!! オレァ城に乗り込むぞーーっ!!!」

 

 

「もう少し待ってちょうだい」

 

 

「何でだよ!」

 

 

「ちゃんと作戦を立てなきゃ、みんなは元に戻せないわよ」

 

 

シャルルの言葉に、ナツは言葉を詰まらせた。

 

 

「でも……どうしたらいいんだろう?」

 

 

「みんな…あんな水晶にされちゃって……」

 

 

「どうやって元に戻せばいいのかな……」

 

 

エリオ、ウェンディ、キャロが俯きながらそう呟く。

 

 

「王に直接聞くしかないわね」

 

 

「教えてくれる訳ないよ」

 

 

「殴ってやればいいんだ!!」

 

 

「そんな簡単にいく訳ないでしょバカナツ」

 

 

そんな会話をしていると、先程まで頭を抱えて俯いていたルーシィが、突然顔を上げた。

 

 

「王様はみんなを元に戻す方法を知ってるの?」

 

 

「おそらく」

 

 

「いけるかもしれない。もしも王様に近づく事ができたら……」

 

 

「本当か!?」

 

 

「どういう事ですか!?」

 

 

「ジェミニよ」

 

 

ナツとエリオの問いにそう答えるルーシィ。ジェミニとは、ルーシィが契約している双子座の星霊で、他者に変身する力を持っている。

 

 

「ジェミニは触れた人に変身できるんだけど、その間その人の考えている事までわかるの。つまり王様に変身できれば、みんなを助ける方法もわかるかも」

 

 

「「「おお!!!」」」

 

 

ルーシィの案にナツたちが感心の声を上げる。

 

 

「中々いい考えじゃない。だとしたら問題は、どうやって王様に近づくか…ね」

 

 

「さすがに護衛が多すぎて簡単には……」

 

 

「王に近づく方法はあるわ」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

そう言ってシャルルは、先程まで何かを書いていた紙を、全員に見えるようにかざす。そこには、王都の簡単に地図と、進むべき進路が描かれていた。

 

 

「元々は城から外への脱出用の通路だったんだけど、町外れの坑道から城の地下へと繋がっているハズ」

 

 

「すごい!! 何で知ってるの!?」

 

 

「情報よ。断片的に浮かんでくるの。エドラスに来てから少しずつ地理の情報が追加されるようになったわ」

 

 

「オイラは全然だよ」

 

 

「とにかく、そこから城に侵入できれば何とかなるかも」

 

 

「おし!! みんなを元に戻すぞ!!」

 

 

「出発は夜よ。今は少しでも休みましょ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてその夜……ナツたち一行はシャルルの案内のもと、町外れの坑道に足を踏み入れていた。

 

 

「松明持って歩くのって変な気分だな」

 

 

「ナツだったらいくらでも松明の代わりになるものね」

 

 

そんな会話をしがなら松明を片手に坑道を突き進んでいく一同。するとシャルルが『KY‐2c』と書かれた岩で閉ざされた道を指差した。

 

 

「ここよ」

 

 

「OK、みんな下がって」

 

 

そう言うとティアナが一歩前に出て、クロスミラージュを構えて魔力を集束する。

 

 

「ファントム・ブレイザー!!!!」

 

 

ドゴォォォオオン!!!!

 

 

そしてティアナの砲撃により岩が吹き飛び、先へと続く道が露となった。

 

 

「すごいねシャルル」

 

 

「本当に通路があったよ」

 

 

「ちゃんと城の地下に繋がってればいいけど」

 

 

そして一同がその通路を進もうとすると、ナツが俯いてどこか元気のないハッピーに気がついた。

 

 

「どうしたハッピー」

 

 

「何でオイラには〝情報〟ってのが無いんだろう? 同じエドラスのネコで、同じ〝何か〟の使命を与えられてアースランドに送られたんでしょ」

 

 

「その話はしない約束でしょ」

 

 

「あい」

 

 

「私もわからないわ、アンタみたいなケースは」

 

 

「……………」

 

 

「とにかく、奥に進むわよ」

 

 

「はい」

 

 

そう言って通路の先へと進んでいく一同。

 

 

「今にも崩れそうだな」

 

 

「不吉なこと言わないでよ」

 

 

「でも……本当に古い坑道ですね」

 

 

「もう何年も使われてないんだろうね」

 

 

「お化けとかいるかな」

 

 

「怖い事言わないでよハッピーちゃん!!」

 

 

その後もシャルルの情報による案内を頼りに坑道の奥へと進んで行くナツたち。途中でナツが影絵で遊び、ティアナの折檻を喰らったりしたがそれは割合しておこう。

 

そうしてしばらく進んでいると、広がった道へと出て来た。

 

 

「どうやらここから城の地下へと繋がってそうね」

 

 

「どういう原理かわからないけど、シャルルがいて助かったわ」

 

 

「私にもわからないわよ。次々と情報が浮かんでくるの」

 

 

「ありがとうシャルル」

 

 

「礼を言うならみんなを助けてからにして。ここからが大変なのよ。気付かれずに王の寝室へ行き、気付かれずに脱出するの。兵隊に見つかったら今の私たちに勝ち目はない」

 

 

「いざって時は、あたしの魔法があるんだけどねー」

 

 

「頼んだぜティア」

 

 

「任せといて」

 

 

「またティアナ!!? もう!! あたしだって頼りになるんだからね!!!」

 

 

「そう言ってシッカの街で魔法が使えないナツやエリオより役に立たなかったのは誰だったかしら?」

 

 

「うぐっ」

 

 

ティアナの辛らつな言葉に痛いところをつかれ、呻くルーシィ。

 

 

「で…でもこの作戦はあたしのジェミニあってなのよ!!」

 

 

「はいはい。さっさと行くわよ」

 

 

「あい」

 

 

そんな会話をしながら通路を進んでいく一同。

 

 

だがその時……突然岩陰から粘液のようなモノが伸びてきて、ティアナとルーシィを拘束した。

 

 

「!?」

 

 

「ひっ」

 

 

「ティア!! ルーシィ!!」

 

 

「な…何よ…コレ……!!」

 

 

「きゃあ!」

 

 

「うわっ!」

 

 

「ひゃっ!」

 

 

「ウェンディ! エリオ! キャロ!」

 

 

「ふぉぼ!」

 

 

2人だけでなく、ハッピーとシャルル以外の全員が同じ粘液のようなモノで拘束されてしまう。ナツだけは口も塞がれてしまったが。

 

すると、周囲の岩陰から王国兵が次々と姿を現し、あっという間にナツたちを取り囲んでしまった。

 

 

「兵隊!!!?」

 

 

「何でこんな坑道にこれだけの…」

 

 

「どうして見つかったんだ……」

 

 

「まさか……読まれていた!!? 一体どうやって!!?」

 

 

明らかにこんな廃れた坑道に配置する必要はなさそうなほど多くの王国兵を見て、戸惑う一同。

 

すると王国兵たちを掻き分けて、彼らにとって2人の見知った顔が現れた。

 

 

「こいつらがアースランドの魔導士か、奴等とそっくりだな。ナツ・ドラギオン、ルーシィ・アシュレイ、ティアナ・スパニエル……とは本当に別人なのか?」

 

 

「そのようですね」

 

 

「エルザ!!!」

 

 

「なのはさん!!!」

 

 

その2人とは……エドラスのエルザとナノハであった。

 

 

「連れて行け」

 

 

「はっ」

 

 

エルザの指示により、その場から連れて行かれるナツたち。

 

 

「はばへー!」

 

 

「エルザ!! なのは!! 話を聞いて!!! ねえ!!」

 

 

「無駄よルーシィ、あの2人は私たちの知ってる2人とは違う!!」

 

 

「くそっ…この…」

 

 

「シャルル!!!」

 

 

「ハッピーちゃん!!!」

 

 

「ウェンディ!!! みんな!!!」

 

 

必死に抵抗しながらも連れ去られるウェンディたちに駆け寄ろうとするシャルル。そんな彼女の目の前に、エルザとナノハが立ち塞がる。

 

 

「「!!」」

 

 

そんな2人を見て身構えるハッピーとシャルルだが……

 

 

「エクシード」

 

 

「「え!?」」

 

 

次の瞬間……エルザとナノハを含めた王国兵全員が、ハッピーとシャルルに平伏すように膝をついた。

 

 

「「おかえりなさいませ、エクシード」」

 

 

エルザとナノハのその言葉に、ナツたちは驚愕する。

 

 

「エクシード?」

 

 

「…………!!」

 

 

「ハッピーちゃん…シャルルちゃん……」

 

 

「あなたたち、一体……」

 

 

一同が2人の存在に疑問を感じていると、再びナノハが口を開く。

 

 

「侵入者の連行、ご苦労様でした」

 

 

「(シャルル?)」

 

 

その言葉に、シャルルの体は小刻みに震え…そんな彼女をハッピーは、ただ見ている事しかできなかったのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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