LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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ちょっと展開が早いかもです。

感想お待ちしております。


エドラスの妖精

 

 

 

 

 

突如空に出現した巨大な渦のような穴……その穴にギルドや民家だけでなく、街そのものを吸い込まれ、マグノリアは白い大地が広がる更地となってしまった。

 

そしてシャルルは。その現象が自分とハッピーのせいだと言い放った。

 

 

 

「こことは別の世界エドラス。そこでは今、魔法が失われ始めている」

 

 

「魔法が失われる?」

 

 

「こっちの世界と違ってエドラスでは魔法は有限、使い続ければいずれ世界からなくなるのよ。その枯渇してきた魔力を救う為に、エドラスの王は別の世界…つまりはこの世界から魔力を吸収する魔法を開発した。

 

 

それが〝超亜空間魔法アニマ〟さっきの空に開いた穴よ」

 

 

街やギルドを吸い込んだ穴が、アニマという魔法だと説明するシャルル。

 

 

「6年前に始まったこの計画は、この世界の至る所にアニマを展開したけど、思うような成果は上げられなかった。何者かがアニマを閉じて回っていたの」

 

 

そう説明しながら、シャルルは脳内でその人物がミストガンだと断定付ける。

 

 

「だけど今回のアニマは巨大すぎた。誰にも防ぐ術などなく、ギルドは吸収された」

 

 

「何で妖精の尻尾(フェアリーテイル)を吸収したんだよ」

 

 

「言ったでしょ、エドラスの魔力とする為よ」

 

 

「そうかっ!!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)には、強力な魔力を持つ魔導士がたくさんいる!!!」

 

 

「だから狙われたって事!!?」

 

 

「そうよ」

 

 

エリオとウェンディの言葉に、シャルルは淡々とそう返す。

 

 

「ずいぶん勝手な奴等だなァ!!! オイ!!! みんなを返せよコノヤロウ!!!」

 

 

ナツは空に向かってそう怒鳴るが、当然返事は返ってこない。

 

 

「そ…それが……オイラとシャルルのせい…なの?」

 

 

「間接的にね。私たちはエドラスの王国からある別の使命を与えられて、この世界に送り込まれたのよ」

 

 

シャルルの言葉を、ハッピーは呆然と聞いている。

 

 

「そんなハズない!! あなた…卵から生まれたのよ!! この世界で!!!」

 

 

「そうだよ!! 僕たちが見つけて、育てて孵したんだ!!!」

 

 

「ハッピーもだ、オレが見つけたんだ!!」

 

 

「そうね。先に言っておくけど、私はエドラスには行った事がないわ。ウェンディとエリオの言う通り、この世界で生まれ、この世界で育った。

 

でも私たちにはエドラスの知識や自分の使命がすり込まれてる、生まれた時から全部知ってるハズなのよ。

 

なのにアンタは何で何も知らないの!!?」

 

 

「! オイラ…」

 

 

シャルルにそう怒鳴られ、顔を俯かせるハッピー。

 

 

「……とにかくそう言う事。私たちがエドラスの者である以上、今回の件は私たちのせい」

 

 

「さっき別の使命って言わなかった? シャルル」

 

 

「……それは言えない」

 

 

「教えてシャルル、オイラ自分が何者か知りたいんだ」

 

 

「言えないって言ってんでしょ!!! 自分で思い出しなさいよっ!!!」

 

 

またもや怒鳴られ、俯くハッピー。すると、ナツが小さく息を吐いてから、笑みを浮かべて言い放つ。

 

 

「んじゃ……話も纏った事だし、いっちょ行くか!? エドラスってトコ」

 

 

「それもそうですね」

 

 

ナツのその言葉にエリオも同意する。当然シャルルは反論する。

 

 

「纏ってないわよ!! てか…エリオはともかくアンタ、まったく理解してないでしょ!!」

 

 

ぎゅるるるるる…

 

 

「ナツ…オイラ…不安でお腹すいてきた」

 

 

「そりゃ元気の証だろ」

 

 

腹をすかせるハッピーに笑顔でそう言うナツ。

 

 

「エドラスにギルドのみんながいるんでしたら、仲間として助けにいかないといけませんしね」

 

 

「わかってんじゃねーかエリオ」

 

 

「どうなの? シャルル」

 

 

「おそらく、いるとは思う。だけど助けられるかわからない。そもそも私たちがエドラスから帰ってこれるのかどうかさえ……」

 

 

「まあ…仲間がいねえんじゃ、こっちの世界には未練はねえけどな。イグニールの事以外は」

 

 

「ナツさんと同意見です」

 

 

「私も」

 

 

「みんなを助けられるんだよね? オイラたち」

 

 

全員の言葉を聞きながら、シャルルは葛藤するように体を震わせたあと、ゆっくりと口を開く。

 

 

「私だってまがりなりにも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員な訳だし…母国の責任でこうなった(やま)しさもある訳だし…連れてってあげない事もないけど……1つ問題があるの」

 

 

「問題?」

 

 

「ええ。私たちがエドラスに行くには、私とオスネコの力でエドラスに運ぶ必要があるの。だけど知っての通り、私とオスネコが運べるのは1人まで……」

 

 

「つまり……1人だけがここに残される?」

 

 

「そう言う事よ」

 

 

「そんな……!!」

 

 

シャルルの説明に、全員が絶句する。

 

 

「1人だけ残してなんていけるかよっ!!! 何か他に方法はねえのか!!?」

 

 

「ない事もないけど……それにはキャロの協力が必要だったのよ」

 

 

「キャロの?」

 

 

「正確には、キャロのフリードの力だけどね」

 

 

「だけど……キャロちゃんはアニマに……」

 

 

そう…キャロは先程のアニマに吸い込まれ、目の前で姿を消した。つまり1人がここに残される以外打つ手がない。

 

そう思われたその時……

 

 

 

キィィィイン!!!

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

突如全員の目の前に、魔法陣が輝きながら展開され、それを見たナツとエリオはすぐに戦闘に入れるように身構える。

 

そして魔法陣の輝きがより一層増した次の瞬間……

 

 

ポンッ!

 

 

「きゃっ!!」

 

 

「キュー!」

 

 

その魔法陣から……キャロとフリードが現れた。

 

 

「えっ!?」

 

 

「キャロちゃん!!?」

 

 

突然現れたキャロに目を丸くするエリオとウェンディ。

 

 

「あっ…エリオ君にウェンディちゃん、それにシャルルちゃん!! 無事だったんだね!!! えっと……ここは?」

 

 

「それよりキャロ!!! アンタ、アニマに吸い込まれたハズでしょ!!?」

 

 

「アニマ?」

 

 

「さっきの空に開いた穴の事だよ。キャロちゃんはそれに吸い込まれたハズでしょ?」

 

 

シャルルの言葉に首を傾げているキャロに、ウェンディがそう教えてあげると、キャロは合点がいったように説明を始めた。

 

 

「あ、うん……確かに吸い込まれそうになったんだけど、その前にフリードが助けてくれたんです」

 

 

「キュク!」

 

 

「フリードが?」

 

 

「うん。私が吸い込まれる前に、危機を察知したフリードが、逆転召喚魔法で私を別空間に匿ってくれたの」

 

 

「なるほど……それで難を逃れたって訳ね」

 

 

「フリード偉いっ!!!」

 

 

「キュー♪」

 

 

ウェンディに褒められて、フリードは嬉しそうに鳴き声を上げる。

 

 

「んじゃあ、これで問題なく全員エドラスに行けるな!!!」

 

 

「まぁ……そうなるわね」

 

 

ナツの言葉に同意するように頷くシャルル。

 

 

「えっと……」

 

 

「キャロちゃん、実はね……」

 

 

イマイチ状況を把握していないキャロに、ウェンディが先程の話を説明する。

 

 

「そっか……うん、わかった!! 私もギルドの皆さんを助ける為にエドラスに行くよ!!!」

 

 

ウェンディの話を聞いて、キャロもエドラスに行く覚悟を決めた。

 

 

「じゃあ、改めて説明するけど、その前にいくつか約束して。私がエドラスに帰るという事は〝使命〟を放棄するという事。向こうで王国の者に見つかる訳にはいかない……全員変装する事」

 

 

「オレもか?」

 

 

「シャルルはそれでいいの?」

 

 

「いいの、もう決めたから。そしてオスネコ、私たちの使命については詮索しない事」

 

 

「あい」

 

 

「3つ目……私も情報以外エドラスについては何も知らない。ナビゲートは出来ないわよ」

 

 

「了解」

 

 

「最後に、私とオスネコがあなた達を裏切るような事があったら、ためらわず殺しなさい」

 

 

その条件に、全員が目を丸くする。

 

 

「オイラ…そんな事しないよ」

 

 

「いい?」

 

 

ごぎゅるるる…

 

 

「てか、ハラうるさい!」

 

 

シャルルの言葉に全員が納得のいかなさそうな顔をするが、シャルルはお構いなしに行動を開始する。

 

 

「行くわよ!!」

 

 

「わぁ!」

 

 

「オスネコもナツを掴んで!! エリオとキャロはフリードに乗って私たちに続いて!!!」

 

 

そう言うと同時に、ウェンディを掴んで羽を広げ、空へと飛び上がるシャルル。

 

 

「飛んで行くの!?」

 

 

「私たちの翼は…エドラスに帰る為の翼なのよ」

 

 

シャルルのその言葉を聞いたハッピーは目を丸くする。そんなハッピーに、ナツが笑いかける。

 

 

「行こうぜハッピー!! お前の里だ!!!」

 

 

そしてハッピーもナツを掴んで空へと飛び立ち、巨大化したフリードに跨ったエリオとキャロも、シャルルとハッピーに続く。

 

 

「オスネコ!!! 魔力を解放しなさい!!!! フリードは私とオスネコに振り切られないように全速力でついて来て!!!」

 

 

「あいっ!!!!」

 

 

「グォオオ!!!」

 

 

今までにないスピードで一直線に空へと登っていくシャルルとハッピー、そしてフリード。

 

 

「アニマの残痕からエドラスに入れるわ!!! 私たちの(エーラ)で突き抜けるの!!!! そしてその突き抜けた穴に、フリードもすかさず飛び込んで!!!!」

 

 

「わああああ!」

 

 

「おおおおお!」

 

 

「くうぅぅ!」

 

 

「うぅぅ!」

 

 

あまりのスピードにナツたちにも負担が掛かるが、それでも全員根を上げずに必死に耐える。

 

 

「今よ!!!!」

 

 

そして次の瞬間……ハッピーとシャルルは空に穴を開け、その穴にフリードも突入すると同時に眩い光に包まれ……その姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百四話

『エドラスの妖精』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして眩い光が止み、全員が恐る恐る目を開けると……

 

 

「おおっ!!!」

 

 

そこには……幻想的な光景が広がっていた。

 

 

「ここがエドラス…」

 

 

「オイラのルーツ…」

 

 

「本当に…」

 

 

「別世界…」

 

 

空に浮かぶ島…空中を流れる川…見たこともない生物に植物……その幻想的な光景が、ここが別の世界だと教えていた。

 

 

その光景に見惚れながらしばらく飛んでいると……

 

 

ポフッ!

 

 

ハッピーとシャルルの翼、そしてフリードの姿が消えてしまった。そうなると必然的に……

 

 

「うああああ!」

 

 

「あぎゃううう!」

 

 

「「きゃああああ!」」

 

 

「うわぁあああ!」

 

 

「くうぅぅ!」

 

 

ズドン!!

 

 

全員そのまま落下し、その下にあったカボチャを模したような建物の天上を突き破った。

 

 

「おおお…」

 

 

「急に翼が…」

 

 

「フリードも消えちゃいました…」

 

 

「言ったでしょ、こっちじゃ魔法は自由に使えないって」

 

 

「本当だ……何か変な感じがする」

 

 

「これじゃあ、換装空間に仕舞ってあるストラーダも出せないや」

 

 

エドラスに来て魔法が自由に使えないことを確認しつつ、その場を見渡す。

 

 

「ここ…どっかの倉庫みたいだね」

 

 

「ちょうどよかったわ、ここで変装用の服を拝借しましょう」

 

 

どうやら落ちた場所は倉庫だったらしく、そこには様々な衣類が置かれていた。

 

 

「おおっ!! 面白ェ服がたくさんあるぞ!!!」

 

 

「本当だ……この世界じゃ服も少し違うんですね」

 

 

「ナツさんにエリオ君、こっち向かないでくださいね」

 

 

「絶対に見ちゃダメだよ!」

 

 

「見てコレー」

 

 

倉庫の服を拝借し、全員が変装の為に着替える。因みにウェンディは髪型も変え、ツインテールとなっている。

 

 

「ん? んんん!!?」

 

 

「どうしたんですか? ナツさん」

 

 

すると、何かに気がついたナツが窓に張り付く。それを見たエリオが問い掛けると、ナツは大声で叫んだ。

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!!!」

 

 

 

「「「ええ!!?」」」

 

 

窓の先には、確かに妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドマークを掲げた、大木のような建物が存在していた。

 

 

「何か形変わってるけど妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!! 間違いねー!!!」

 

 

「あいさー!!」

 

 

「ちょっと!!」

 

 

シャルルの制止も無視して、中を覗き込むナツとハッピー。そこにはちゃんと、ギルドメンバーの姿があった。

 

 

「みんな無事だっ!!!」

 

 

「呆気なく見つかったね!」

 

 

「ちょっと待って!!!」

 

 

「んがっ」

 

 

「あぎゃ」

 

 

「様子がおかしいわ」

 

 

そう言いながらシャルルはナツとハッピーを地面に伏せらせ、他の3人もギルドの中を覗き込む。

 

 

そしてギルドの違和感には……すぐに気付いた。

 

 

「ジュビア、これから仕事に行くから」

 

 

「ま…待ってよジュビアちゃん!!! オレも一緒に行きてぇな~……なんて」

 

 

「暑苦しい、何枚着てんの? 服。もっと薄着になってから声かけて」

 

 

「ひ…冷え性なんだよっ!!!」

 

 

服をこれでもかと言うほどに重ね着しているグレイと、そんなグレイに対して冷たい態度をとるジュビア。

 

 

「……な、何じゃコリャ~~~~~~~っ!!!!」

 

 

いつもと違う仲間の様子に、思わず絶叫するナツ。

 

そして様子が違うのは、他のメンバーも一緒であった。

 

 

「情けねえなァ、エルフマン」

 

 

「また仕事失敗かよ~」

 

 

「恥ずかしいっス」

 

 

ジェットとドロイの2人に説教されて、泣いているエルフマン。

 

 

「カナさん、たまには一緒に飲みませんか!?」

 

 

「何度も申しているでしょう? 私…アルコールは苦手でございますの」

 

 

髪型を七三分けにしてメガネをかけているマカオと、まるで気品溢れるお嬢様のようなドレスを着ているカナ。

 

 

「ビスビス~~ん」

 

 

「な~にアルアル」

 

 

人目もはばからずイチャついているアルザックとビスカ。

 

 

「オレはジュビアちゃんが好きなんだー!」

 

 

「うるさいですよグレイさん!! 読書に集中できないじゃないですかっ!!!」

 

 

「よくそんな本読めるなァ、オレには無理だネ」

 

 

メガネをかけて、難しそうな内容の本を片手にグレイに怒鳴っているスバルと、そんなスバルの隣に立っている全体的にチャラい服装にグラサンをかけているユーノ。

 

 

「ど…どうなってんだコリャ……」

 

 

「何ていうか……全体的におかしい」

 

 

「みんな、おかしくなっちゃったの」

 

 

「……………」

 

 

ナツたちが絶句しながら様子がおかしいギルドメンバーを眺めていると……

 

 

「おい、誰だテメーら」

 

 

「「「!!」」」

 

 

いつの間にか目の前に、1人の少女がヤンキー座りで、ナツたちを睨みつけていた。その声に反応して、他のメンバーたちもナツたちを睨む。

 

 

「ここで隠れて何コソコソしてやがる」

 

 

そしてそのヤンキーのような少女を見たナツとハッピーは、同時にその少女の名を叫んだ。

 

 

 

「ルーシィ!!!?」

 

 

「────さん!!!?」

 

 

 

その少女の正体は……何とルーシィであった。

 

しかしナツたちの知っているルーシィとはまるで迫力が違い、ハッピーなど思わずさん付けするほどである。

 

 

「これは一体…どうなってるの?」

 

 

その光景を見ながら、シャルルは震える声で呟いた。

 

 

そして目の前のルーシィは、ナツの顔をジッと見据えると……

 

 

「ナツ?」

 

 

「!」

 

 

「よく見たらナツじゃねーかお前!!!」

 

 

「ぐもっ」

 

 

そのまま思いっきりナツを抱き締めた。片やナツはルーシィの力強すぎる抱擁に奇妙な悲鳴を上げる。

 

 

「今まで…どこ行ってたんだよ…心配かけやがって…」

 

 

「ルーシィ…」

 

 

「処刑だっ!!!」

 

 

「んぎゃー!!!!」

 

 

「でたー!!! ルーシィの48の拷問技の一つ、ぐりぐりクラッシュ!!! アレ痛ってぇんだよな」

 

 

心配そうな雰囲気から一転、ナツの肩に乗っかって拳でグリグリと万力のように締め上げるルーシィ。ユーノの解説付きで。

 

 

「あまりいじめては可哀想ですよ」

 

 

「そうですよ、またナツが泣いちゃうじゃないですかー」

 

 

「グスン」

 

 

「「いつまで泣いてんだテメーは!」」

 

 

「とにかく無事でよかった。ねっ! ジュビアちゃん」

 

 

「うるさい」

 

 

その様子を見て、口々にそう言うギルドメンバーたち。

 

 

「これ…全部エドラスの影響なの?」

 

 

「みなさんの性格が…何から何まで全部逆になってる」

 

 

その光景を見てそう呟くハッピーとエリオ。

 

するとそこへ、また1人のギルドメンバーが現れた。

 

 

「ルーシィ! またナツをイジメて! ダメじゃない! ジェットとドロイもエルフ兄ちゃんをイジメないの!」

 

 

そう言ってメンバーたちを注意している銀色の髪を短髪にした少女。

 

その少女の姿を見た瞬間……ナツとハッピーは信じられないようなものを見る目で、その少女の名を口にした。

 

 

「リサーナ…」

 

 

「うそ…」

 

 

その少女は……2年前に亡くなったナツと仲のよかった友人であり、ミラジェーンとエルフマンの妹……リサーナであった。

 

そんな彼女の姿を見たナツとハッピーは、目に涙を浮かべ……

 

 

「「リサーナーーー!!!!」」

 

 

思いっきり彼女に飛び付こうとした。

 

 

「ひっ」

 

 

「こォ~ラァーーー!!!!」

 

 

「「はぶぁ!」」

 

 

が…その前にルーシィの回し蹴りによって阻止された。

 

 

「お前いつからそんな獣みてーになったんだ、お? つか、そういやティアナはどうしたんだよ?」

 

 

「だって……リサーナが生きて……そこに……」

 

 

ルーシィに胸倉を掴まれながらも涙を流しながらリサーナを指差してそう言うナツ。

 

 

「な…なんでリサーナがいるんだ…?」

 

 

「えっと…ミラさんとエルフマンさんの妹……だったよね?」

 

 

「でも確か、亡くなったハズだよね」

 

 

そう言って疑問符を浮かべているウェンディとキャロ。そしてその疑問に対して、シャルルが口を開く。

 

 

「みんが〝逆〟になってる訳じゃないって事ね」

 

 

「!?」

 

 

「どういう事…シャルル?」

 

 

シャルルの意味深な言葉にハッピーが反応し、エリオが問う。

 

 

「見なさい」

 

 

「ナツ~、おかえりなさーい!」

 

 

「いつものミラだっ!!」

 

 

「ある意味つまんないね」

 

 

シャルルの示す先には、いつもと変わらぬ様子で手を振っているミラジェーンの姿が。

 

 

「決定的なのは、アレ」

 

 

そう言って次にシャルルが示した先には……

 

 

「なぁ…あの子たちって少しお前らに似てねえか? ウェンディ、エリオ、キャロ」

 

 

「そう?」

 

 

「そうかァ? ユーノの勘違いじゃね」

 

 

「ウザッ」

 

 

グラマーな体型で妖艶な雰囲気を漂わせるウェンディと、ガラの悪い暴走族の特攻服のような服装をした青年姿のエリオに、すらりと背が高くグラマーな体型で、不機嫌そうな顔で毒づいているキャロの姿があった。

 

 

「私ーーーーー!!!?」

 

 

「僕っ!!!?」

 

 

「うえぇええええ!!!?」

 

 

当然それを見た3人は驚愕する。

 

そしてシャルルは、核心となるセリフを言い放った

 

 

「〝逆〟じゃなくて〝違う〟のよ。この人たち、私たちの探してるみんなじゃないわ。

 

別人!!!

 

エドラスに、最初からいる人たちよ」

 

 

その言葉に、全員が目を見開いて驚愕する。そして、シャルルの言葉は続く。

 

 

「ありえない話じゃないわ、パラレルワールドのようなものなのよ。エドラスには独自の文化や歴史があり、妖精の尻尾(フェアリーテイル)が存在する可能性だって……」

 

 

「そんな……!!!」

 

 

「じゃあここは……元からエドラスに存在している妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!?」

 

 

シャルルの説明に絶句するキャロと、驚愕しながらそう叫ぶエリオ。

 

 

「じゃあオレたちの知ってるみんなはどこにいんだよ!!?」

 

 

「知らないわよ!! それをこれから見つけるんでしょ」

 

 

ナツの問い掛けに対しそう答えると、シャルルはさっそく行動を開始する。

 

 

「これ以上ここにいるのも面倒ね、行くわよ」

 

 

「シャルル!! どこへ!?」

 

 

「王都よ!!! 吸収されたギルドの手掛かりは、王都にあるハズ!!!!」

 

 

そう言ってシャルルはハッピーの手を引き、王都へと向かう為に外に出ようとする。だがその時、ちょうど1人のギルドメンバーが戻ってきて……

 

 

 

「妖精狩りとダーク・マテリアルズだぁぁぁーーーー!!!!」

 

 

 

「「「!!!?」」」

 

 

それを聞いた瞬間、ギルド全体がざわつき始める。

 

 

「そこのネコ!! どこへ行く気だ!!! 外はマズイ!!!」

 

 

「「え?」」

 

 

そう叫びながら外に出ようとしていたハッピーとシャルルを呼び止めるルーシィ。

 

 

「くそっ!!! もうこの場所がバレちまったのか!!?」

 

 

「王国のヤロー……またオレたちを追って……!!!」

 

 

そう言って毒づくエドラスのユーノとエリオ(以後エドエリオ)。

 

 

「王国…」

 

 

「私たちをアースランドに送り込んだ奴等よ」

 

 

「オイラたち…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の敵なの……?」

 

 

そう言って涙を浮かべ、悲しそうな顔をするハッピー。

 

 

「転送魔法陣はまだなの!!? レビィ!!」

 

 

「今やってるわよクソルーシィ!!!」

 

 

ルーシィと口喧嘩をしながら何か機械のようなモノを操作しているエドラスのレビィ。

 

その時…

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……!!!

 

 

「大気が…震えている……?」

 

 

キャロの言う通り、大気全体がビリビリと震え始めたのだ。

 

 

「来るぞ!!!」

 

 

そんな誰かの叫びと共に、ナツたちが外の様子を見てみると……

 

 

「な…なんだアレは…」

 

 

翼と鋭利な2本の角を持った巨大な4体ものモンスターが、ギルドを取り囲んでいた。そしてその4体のモンスターの頭には、それぞれ1人ずつ人間が佇んでいた。

 

 

「妖精狩り…ダーク・マテリアルズ…!? 何なの!?」

 

 

「王国が妖精の尻尾(フェアリーテイル)を狙ってる!?」

 

 

「一体どうして!?」

 

 

「そんなの決まってるじゃない」

 

 

「(私…!!)」

 

 

ウェンディとキャロの疑問に答えたのは、エドラスのウェンディ(以後エドウェンディ)であった。

 

 

「王の命令で全ての魔導士ギルドは廃止された。残ってるのはただ1つ、ここだけだから」

 

 

「え?」

 

 

「おいおい……知らねえでナツについて来たのかよォ」

 

 

「(僕だ…)」

 

 

首を傾げるウェンディに対して、エドエリオ引き継ぐように口を開き、信じられない言葉を言い放つ。

 

 

 

「つまりオレたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)は…闇ギルドなんだよ」

 

 

 

自分たちの大好きな妖精の尻尾(フェアリーテイル)がエドラスでは闇ギルドだと聞いて、アースランド組は目を見開いた。

 

 

そして……

 

 

「よし!! 転送魔法陣展開!!! 転送開始!!!!」

 

 

レビィがそう言い放った瞬間……ギルドは地面に潜るように、その姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「転送…!?」

 

 

「逃げられましたね」

 

 

「チッ……塵芥どもが」

 

 

「ぶぅー…つまんないのっ」

 

 

そう言って4体の大型モンスター……レギオンの頭の上で口々にそう言い放つ4人の女性。

 

1人目は露出の多い鎧姿に槍を持った赤い髪の女性。

 

2人目は黒生地に赤いラインを基調としたドレスのような服装をし、杖を手にした茶髪のショートヘアの女性。

 

3人目はレオタードのような服装にマントを羽織り、腕には篭手を装着して手には斧のような杖を持ち、長くて毛先の黒い水色の髪をツインテールにした子供っぽい雰囲気の女性。

 

4人目は黒を中心とした服装に、全てを射殺すかのような鋭い目付きを持ち、十字の剣のような杖を手にした毛先が黒い銀髪の髪をした女性。

 

 

「んーーー本当、逃げ足の速い妖精だねぇ」

 

 

そこへ、また1人の人物が現れる。

 

 

「シュガーボーイ、いたのか」

 

 

「んーーーおしかったねぇ妖精狩り(フェアリーハンター)に、ダーク・マテリアルズのお三方。けど奴等も転送できる回数は残り少ない、狩れる日は時間の問題っしょ。

 

それより例の巨大アニマ作戦、成功したらしいよ。んで……魔戦部隊長は全員王都に戻れってさ」

 

 

そう言うこのリーゼントヘアに鎧姿の男性は……王国軍の第四魔戦部隊隊長のシュガーボーイである。

 

 

「という事は……アースランドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)を殲滅したのですか?」

 

 

「正確には吸収した…うちの王はやる事がでかいねぇ」

 

 

「戯け。我の父上であれば、それくらい当然の事だ」

 

 

「んーーー手厳しいねえ、王女様」

 

 

茶髪の女性の問いに答え、銀髪の女性の言葉に苦笑するシュガーボーイ。

 

 

「ねーねー! その吸収(きゅーしゅー)されちゃったアースランドの魔導士はどーなったの?」

 

 

「王都さ。巨大な魔水晶(ラクリマ)になってるよ」

 

 

水色髪の女性の問い掛けにそう答えると、それを聞いた赤髪の女性を笑みを浮かべる。

 

 

「素晴らしい。それならエドラスの魔力はしばらく安泰だろうな」

 

 

「んーーー」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方…姿を消した妖精の尻尾(フェアリーテイル)は、どこか砂漠のような場所に出現した。

 

 

「野郎ども!!! 引っ越し完了だ!!!」

 

 

「引っ越し…?」

 

 

「ギルドごと移動したのか……」

 

 

「すごい…」

 

 

逃げる為にギルドごと移動するという発想に、目を丸くするナツたち。

 

 

「な……何だったんだ、さっきの奴等は…」

 

 

「あん? 忘れちまったのかよナツ。あれは──」

 

 

そう言ってエドエリオが、先程の4人の詳細を口にする。

 

 

王国軍

第二魔戦部隊隊長

〝妖精狩り〟

エルザ・ナイトウォーカー

 

 

「そして……エドラスの王女にして魔戦部隊の総隊長とその側近の2人……」

 

 

 

王国軍

魔戦部隊総隊長

エドラス国王女

〝闇統べる王〟

ハヤテ・K・クローディア

 

 

王国軍

魔戦部隊総隊長側近

〝星光の殲滅者〟

ナノハ・スタークス

 

 

王国軍

魔戦部隊総隊長側近

〝雷刃の襲撃者〟

フェイト・ラッセル

 

 

 

「エルザ達が……敵!!!?」

 

 

アースランドにおける妖精の尻尾(フェアリーテイル)の最強女魔導士の4人全てが、エドラスでは敵として君臨している事に……ナツたちは戦慄を覚えたのであった。

 

 

 

 

 

つづく




エドラスにおけるリリカルキャラを簡単に説明しておきます。


スバル→勉強大好きなガリ勉少女。運動は苦手。

ユーノ→不真面目で軽い性格。難しい本などが大嫌い。一人称は「オレ」

エリオ→ガラが悪くケンカっ早い高身長の青年。アースランドのナツのような性格。一人称は「オレ」

キャロ→高身長でグラマーな体型の女性。いつも不機嫌そうな表情。ほとんど無口で、ひとたび口を開けば毒を吐く。

なのは→シュテル

フェイト→レヴィ

はやて→ディアーチェ


リリカルキャラって基本いい子ばっかりだから性格反転させるとスゴイ性格悪い子ばっかりになった。

これからもまだまだ登場します。

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