LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回はOVAのお話です。

久しぶりに原作沿いを書きましたが、やはりこちらの方が筆が早いし物語も長いですね。

感想お待ちしております。


間話
メモリーデイズ


 

 

 

 

 

784年……妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

ギルドの酒場ではメンバーたちが酒を飲んだり暴れ回ったりと、いつも通りかなり賑わっていた。

 

そんな中、キョロキョロと誰かを探すように辺りを見回しているウェンディとキャロとシャルルの3人。

 

 

「あれー?」

 

 

「ナツさん、いないね」

 

 

「こっちの方にはいないみたいね」

 

 

どうやら3人はナツを探しているらしく、しばらく辺りを見回していると、そんな3人にミラジェーンがカウンター越しに声を掛けた。

 

 

「ナツならエルザたちと倉庫の片づけをしてるわよ」

 

 

「これ…ギルドの入り口に落ちてたから」

 

 

「届けようと思ってたんですけど……」

 

 

そう言ってウェンディが差し出したのは、ナツがいつも首に巻いている鱗のようなマフラーであった。

 

 

「珍しいわね、こんな大切なマフラーを落としちゃうなんて」

 

 

「よほどボーっとしてたんじゃない?」

 

 

シャルルのその言葉に、ミラジェーンは「フフッ」と微笑んだのであった

 

 

一方、ギルドの倉庫では……

 

 

「ボーーーー…」

 

 

ナツは本当にボーっとしていた。

 

 

「もぉ~~!!! 何であたしまでこんな事しなきゃいけないの~!!!」

 

 

すると、ハシゴの上で倉庫整理をしていたルーシィが腕をバタバタを振るいながら叫ぶ。

 

 

「暴れると危ないよー」

 

 

「つーか、パンツ丸見えだぞ」

 

 

「じーーー」

 

 

「見てんじゃないのエロナツ」

 

 

そう言って持っていた本でナツの頭を軽く叩くティアナ。それと同時に、倉庫の本を大量に抱えたエルザが口を開く。

 

 

「仕方なかろう、町の建物をあれだけ豪快に壊したんだ。むしろ倉庫の片付けくらいで済んでよかったではないか」

 

 

「壊したのは全部あんたたち!!!」

 

 

ルーシィは抗議の言葉を口にするが、誰も取り合わなかった。

 

 

「んーーー…」

 

 

「アンタはいつまでボーっとしてんのよ?」

 

 

「何か足りねえ」

 

 

「ア?」

 

 

「仕事量だ。マジメにやれ」

 

 

「んーーーー…」

 

 

「ナツ、マフラーじゃない?」

 

 

「それだっ!!!」

 

 

ハッピーの指摘にナツは合点がいったように叫ぶ。

 

 

「そう言えばいつも身に着けてるのに今日はしてないのね」

 

 

「上に置いて来たか~、今日は朝からボーっとしてたからな~」

 

 

「!」

 

 

ナツが頭を掻きながらそう言うと、彼の首に刻まれた一筋の傷跡がルーシィの目に入る。

 

 

「前から気になってたんだけど、ナツのそのキズって何のキズ?」

 

 

「そういやぁオレも知らねえなぁ」

 

 

「私もだ」

 

 

「私も知らないわ」

 

 

「ナツ…もしかして話せない事?」

 

 

ナツの首のキズについて全員がそう言うと、その瞬間……ナツの表情がぐもっと歪む。

 

 

「お…思い出したくもねえ…」

 

 

「ナツが沈んだーー!!!」

 

 

「ちょっ…ナツ!!? どうしたのよ!!?」

 

 

そしてそのまま蹲りながら頭を抱えて、怯えるように震え始めるナツ。

 

 

「あいつは悪魔だ…オレはあんな恐ろしい奴には会った事がねえ……」

 

 

「何!?」

 

 

「ナツがビビる程の奴だと!?」

 

 

「それって──あっ」

 

 

ナツの言葉に全員が反応する中、ルーシィが乗っていたハシゴがゆっくりと後ろに傾き始める。

 

 

「ルーシィ危ないっ!!!」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

「きゃあぁーーーーっ!!!」

 

 

落下するルーシィを全員が一斉に飛び込んで助けようとする。しかし全員がまったくの同じタイミングで飛び込んだ為……

 

 

ゴチーン!!!

 

 

全員そろって頭を打ってしまい、さらにその上にルーシィが落下する。結果的にルーシィは助かったのだが、倉庫はさらに散らかってしまった。

 

 

パサリ…

 

 

するとその際に、落ちて来た1冊の本のページが開かれ、その瞬間その本が光を放ち始める。

 

 

「えっ!?」

 

 

「何だ!!?」

 

 

「本が…!!!」

 

 

「光り出した!!?」

 

 

「うおっ!!?」

 

 

ナツたちが驚愕している間にも、その光はどんどん強くなり……

 

 

「「「うわぁぁああああああああ!!!!」」」

 

 

そのままナツたちを包み込んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百一話

『メモリーデイズ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が消え、本に纏わりつくような煙が霧散していく。

 

 

「何だったんだ一体…」

 

 

体を起こしながらそう呟くエルザ。

 

 

「ん? んん!!?」

 

 

「あれ?」

 

 

「ここって……」

 

 

「外~~~!!?」

 

 

先程まで倉庫にいたハズのナツたちは、いつの間にかギルドの外へと飛ばされていた。

 

 

「それだけじゃないよ!!! 見て!!!」

 

 

「「「!!」」」

 

 

ハッピーの指摘に、全員が指差す方向へと視線を向ける。そしてその光景を見た瞬間、全員が目を見開いて驚愕した。

 

 

そこにあったのはナツたちのギルド……妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

そこまではいい。問題なのはそのギルドの外観である。

 

 

「ギ…ギルドが昔に戻ってるーーーー!!!?」

 

 

そう……ギルドの外観が、ファントム戦以前の姿……つまり改築される前の姿になっているのである。

 

 

「どうなってんだ一体!?」

 

 

「この本のせいなのか…」

 

 

先程の本を手にしながらそう呟くエルザ。

 

 

すると、ギルドの扉が開き、そこから3人の人影が見えてくる。

 

 

「誰か出て来たわ、ひとまず隠れるわよ!」

 

 

「何で!?」

 

 

「いいから!!!」

 

 

ナツの背中を押しながらそう言うティアナ。そして全員が近くの物陰に隠れて様子を窺う。

 

 

そしてギルドから現れたのは……何と幼い姿のナツとグレイとエルザの3人であった。

 

 

「「「!!!」」」

 

 

当然その光景に全員が驚愕する。

 

そうしている間に、子供のエルザが口を開く。

 

 

「今日は2人がかりか?」

 

 

「オレ1人で十分だよ!!!」

 

 

「そりゃこっちのセリフだ!!!」

 

 

「オレは今日こそ!!!」

 

 

「エルザに勝ぁあつ!!!」

 

 

「……フッ」

 

 

自分に向かって襲い掛かってくるナツ(子)とグレイ(子)を見据えながら、エルザは微笑を浮かべると……

 

 

ドカッバキッドスッドカカッ!!!

 

 

次の瞬間には、すでに2人は地面に沈んでいた。

 

 

そしてその光景を見ていたルーシィは、唇を震わせながら口を開いた。

 

 

「な…何コレ……小さいエルザに、ナツにグレイ……」

 

 

「オイラたち…もしかして……」

 

 

「な…何よ…?」

 

 

「過去の世界に来ちゃったのかもしれない!!!」

 

 

「えーー!!?」

 

 

ハッピーの言葉に驚愕し、声を上げるルーシィ。

 

 

「過去……? ここは過去の世界って事? どうしよう…少し整理しなきゃ……」

 

 

そう言ってルーシィが他のメンバーに視線を向けると……

 

 

「「小さいオレに何しやがるエルザーー!!!」」

 

 

「相変わらずの瞬殺だったわね。今も昔も変わらない光景だわ」

 

 

「うわっ!! もう順応してる!!!」

 

 

他のメンバーは特に気にした様子もなく順応していた。

 

 

「私はこの日を覚えているぞ」

 

 

すると、エルザが子供の自分たちを見ながら、優しい表情で語り始める。

 

 

「立て…立ち上がるんだ……幼い私がこの直後に言う言葉だ」

 

 

「「え?」」

 

 

それを聞いたナツとグレイも、どこか感動したかのような表情で幼い自分たちを見据える。

 

 

そしてエルザ(子)は、倒れている2人へと視線を向けると……

 

 

 

「立てーーー!!! 立ち上がるんだーーー!!!」

 

 

「「ぎゃあーーーーっ!!!!」」

 

 

 

2人を思いっきり蹴り飛ばしながら、そのセリフを吐いた。

 

 

「「全然イントネーションが違うじゃねーか!!!!」」

 

 

「う…うむ……」

 

 

自分たちの予想とは180度違った光景に、ナツとグレイはツッコミ、エルザも何とも言えない表情をしていた。因みにティアナは口元を押さえて笑うのを必死に堪えていた。

 

 

「私のケーキを食べたのはどっちだ!!?」

 

 

「オレじゃねえよ!!!」

 

 

「ナツだ!!!」

 

 

「グレイだろ!!!」

 

 

「あれは私が楽しみにとっておいたんだぞー!!!」

 

 

「「知らねーよ!!!」」

 

 

「待てー!!!」

 

 

「「うわぁぁああ!!!」」

 

 

そう言って逃げるナツ(子)とグレイ(子)を追いかけ始めるエルザ(子)。その姿はまさに歳相応の子供であった。

 

その光景を見て、ルーシィはクスリと笑みを浮かべる。

 

 

「なんだかかわいーね、みんな」

 

 

「そうね。やってる事は今と全然変わらないけど……」

 

 

「あんなに小さい時から凶暴だったのかエルザは」

 

 

「忘れてたのかよ」

 

 

「逃げてー! ナツー!」

 

 

「暢気な事を言ってる場合ではないぞ」

 

 

ケンカしている子供達の姿を見ながらのほほんとしてると、エルザがピシャリと言う。

 

 

「元の世界に戻る方法を探さねば」

 

 

「何でぇ? いーじゃん別に。面白そうだからもう少し見てこーぜ」

 

 

「そいつはいい」

 

 

「バカモノ!! タイムパラドックスと言う言葉を知らんのか!!」

 

 

「タイムパラドックス?」

 

 

エルザが口にしたタイムパラドックスと言う言葉に、ハッピーが首を傾げ、その疑問にティアナが答える。

 

 

「過去は未来…現代に影響を与えると言われている逆説の理論よ。過去に遡って何かをすると、それによって未来が変わってしまう危険性があるって言われているの」

 

 

「もしここが本当に過去の世界だとしたら、私たちが何かをした事で未来が…歴史が変わってしまう可能性があるんだ。いいか、ナツ、グレイ!!」

 

 

そう説明しながらエルザはナツとグレイに視線を向けるが……すでにそこに2人の姿はなかった。

 

 

「もういない…ってかハッピーまで!!?」

 

 

「いつの間に……」

 

 

「あ…あいつら……ここまでバカモノとは思ってなかったぞー!!!」

 

 

「「ひいっ!!!」」

 

 

怒りの形相で怒鳴るエルザに、ティアナとルーシィは悲鳴を上げる。

 

 

「お前たち!!! あいつらを探してくるんだ!!! 私はここで本の解読をする!!!!」

 

 

「「は…はいい!!! 行って来ます!!!」」

 

 

「待て!!!」

 

 

エルザの指示通り2人がナツたちを探しに行こうとすると、その前にエルザが2人を引き止めた。

 

 

そしてその後……何故かルーシィはバニーガールの姿を強要された。

 

 

「うん、これなら誰もルーシィとは気付くまい」

 

 

「よけー目立つわよ!!! ってネコーー!!?」

 

 

「そうだ……にゃー」

 

 

変装のつもりなのか、バニーガールと大差ないネコの格好をしているエルザ。

 

 

「アンタも大変ね」

 

 

「人事みたいに言わないで!! ってか何でティアナはフツーの格好なの!!?」

 

 

ルーシィの言う通り、ティアナは私服にツインテールを下ろした姿の普通の格好(リリなのStsに登場した私服)である。

 

 

「私は幻影魔法でその気になれば、どんな姿にでも変装できるもの」

 

 

ルーシィの疑問にしれっとそう答えるティアナ。

 

 

「ってか、この時代ってあたし妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいないじゃん」

 

 

「だがいずれ出会う事になる。私たちと接触するのは危険だ」

 

 

「もっとまともな服はないの? すごく恥ずかしいんだけど……」

 

 

「時代が違うせいか…私の換装空間の調子が悪く、この2着しか取り出せなかった」

 

 

「何でそんなもの入れてたんですか?」

 

 

「ネコと交換するか?」

 

 

「いえ…元の服がいいです」

 

 

「スマン……捨てた」

 

 

「えーーー!!!?」

 

 

結局……ルーシィはバニー姿のままで、ティアナと手分けしてナツたちの捜索を行なったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後…まずルーシィが足を運んだのは、目の前にあった妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド。そこではギルドメンバーたちがいつものようにお祭り騒ぎをしていた。

 

 

「わぁ……!!!」

 

 

建物は違うが、すでにルーシィにとっては見慣れていた光景。それでも新鮮さを感じたルーシィは、感嘆の声を上げた。

 

すると、1つのテーブルからとある会話が聞こえた。

 

 

「オレは決めたぞ」

 

 

「あ? 何が?」

 

 

「(マカオとワカバだ!! 若ーい!!!)」

 

 

その会話の主は、若かりし頃のマカオとワカバであった。

 

 

「決めたんだ!!!」

 

 

「だから何がだよ!!?」

 

 

「オレは今から──メロウに告る!!!」

 

 

「何ーーー!!?」

 

 

マカオの発言に驚愕するワカバ。その視線の先には、メンバーたちの前で踊りを踊っているキレイな女性の姿があった。

 

 

「やめとけ!!! どんだけ狙ってる奴がいると思ってんだ!!?」

 

 

「いや…オレには勝算があるんだ」

 

 

「勝算?」

 

 

マカオの言う勝算の意味はわからないが……後に2人は結ばれ、息子のロメオが生まれるのは、もう少し先の話である。

 

そしてマカオとワカバがそんな会話をしていると……

 

 

「どりゃあ!!!」

 

 

「「ぶほっ!!!」」

 

 

1人の少女がそんな2人の後頭部を踏みつけるかのように乗っかった。

 

 

「勝算なら私にもあるよ、エルザに勝つ勝算がね……けど肝心のエルザはどこにいるんだ?」

 

 

「(も…もしかしてアレ……ミラさん!!?)」

 

 

その少女こそ、幼い頃のミラジェーン……まだ凶暴だった頃の彼女である。

 

 

「(じゃああっちの2人は……エルフマンとリサーナ?)」

 

 

そんなミラジェーンの側には、大人しい少年だった頃のエルフマンと、今は亡きリサーナの姿があった。

 

 

「さっきナツとグレイを追い掛け回してたよ」

 

 

「何!? せっかくエルザのとっておきのケーキを食って火種を蒔いてあげたのに」

 

 

「うわぁ…ミラ姉ひどい……」

 

 

どうやら先程ナツとグレイが追い掛け回されていた元々の原因はミラジェーンだったようである。

 

 

「逃げたか…じゃあこの勝負は私の勝ちって事で、ワハハハハ!!」

 

 

「勝負って…」

 

 

「もうケンカはやめなよ姉ちゃん…」

 

 

ミラジェーンのメチャクチャな理論に2人は呆れたような表情を浮かべる。するとそこへ、また新たな少女が現れた。

 

 

「スカーレットの代わりではないが、私でよければ相手になるぞ……ミラジェーン」

 

 

「あん? シグナムか」

 

 

「(あれがシグナム!!? ちっさっ!!!)」

 

 

その少女はピンク色の長髪をポニーテールにし、まだ背も胸も小さい頃の幼いシグナムであった。

 

 

「お前私に勝てるつもりかよ?」

 

 

「ならばやめるか? そうなれば私の不戦勝だな」

 

 

「上等じゃねえか……行くぞコラァ!!!」

 

 

「来いっ!!!」

 

 

そしてそのままケンカを始めるミラジェーンとシグナム。

 

 

「うわー……ん?」

 

 

ルーシィはその光景を引き気味で眺めていると、カウンターの方へと視線を移す。そこには5人の集団が集まっていた。

 

 

「はやてー、おなかすいたー!」

 

 

「そうか? ほんならギルドのキッチンと材料を借りて何か作ろか」

 

 

「主、手伝います」

 

 

「うん、お願いなリインフォース♪」

 

 

「あ、はやてちゃん! シャマルも手伝いま──」

 

 

「「「結構です」」」

 

 

「うわーん!!! ザフィーラ!!! みんながイジメるー!!!」

 

 

「オレに言うな」

 

 

「(うわぁ~ヴォルケンリッターのみんなもちっちゃーい……っていうかヴィータ全然変わってない!!?)」

 

 

その集団とは幼き頃のヴォルケンリッターであり、当然全員昔の姿である。

 

はやては現代の姿をそのまま小さくした(A's編のまんま)姿で、リインフォースは現代での凛々しい顔付きではなく、歳相応の幼く可愛らしい顔付きになっている。シャマルもどこにでも居そうな明るく天真爛漫な可愛らしい少女となっており、ザフィーラは現代の筋骨隆々とした姿からは想像できないほど華奢な体付きをしており、この時代のナツやグレイと変わらない背丈であった。

 

ただ1人ヴィータだけは、現代の背丈とまったく変わらず、少々しゃべり方が幼くなった位である。

 

 

そんなヴォルケンリッターをしばらく観察していたルーシィは、別のテーブルへと視線を移す。そこには何やらボードゲームをしている2人の少女と、それを見守る1人の少女の姿がある。

 

 

「これだっ!!」

 

 

「あ…あぁ……!!」

 

 

「カナちゃんの勝ちー!!」

 

 

「ズルイよカナ!! 今魔法使った!!!」

 

 

「使ってないって」

 

 

「もう1回やろっ、今度は魔法なしで」

 

 

「にゃはは…フェイトちゃんは負けず嫌いだねー」

 

 

「(あれはカナとフェイトになのは? か…かわいい)」

 

 

ボードゲームをしている幼い姿のカナとフェイトとなのはを見て、うっとりとした表情を見せるルーシィ。

 

 

「つまり…立体文字(ソリッドスクリプト)を極めるなら、文字の意味や性能を理解する必要があるんだ。だから本好きのレビィにはピッタリの魔法だと思うよ」

 

 

「へー…さすがユーノ!!」

 

 

「(あっちにいるのはレビィちゃんにユーノ!!? うわぁ…ユーノ男の子なのにかわいい!!!)」

 

 

また別の場所で会話をしていた幼いレビィとユーノを見つけ、見惚れるルーシィ。

 

 

そうしてまた別の場所へと視線を移動させると、そこには柱によりかかっている1人の青年の姿があった。

 

 

「だりィなぁ~…何か面白ェ事ねぇかなぁ~」

 

 

「(あれはラクサス?)」

 

 

その青年……ラクサスはぼやきながら退屈そうに天上を眺める。すると、ふと床に落ちていた紙クズが彼の視界に入る。

 

 

「……ナツでもからかってくるかな」

 

 

「(紙クズからナツを連想したのかしら?)」

 

 

そう言って歩き去っていくラクサスを見送りながら、ルーシィは改めてギルドを見回す。

 

 

「みんなの若い頃……あたしの知らない妖精の尻尾(フェアリーテイル)……」

 

 

その光景を眺めながら嬉しそうな笑顔を浮かべるルーシィ。

 

 

『いいかルーシィ?』

 

 

「!」

 

 

するとその瞬間、彼女の脳裏にエルザの言葉が思い浮かぶ。

 

 

『誰と話しても、誰と接触してもいかん。すみやかにナツたちを見つけて来い』

 

 

「そうだ…こんな事してる場合じゃなかった…」

 

 

当初の目的を思い出し、ルーシィはすぐにナツたちを探しに行こうとしたその時……

 

 

「おっ、バニーガールじゃ!」

 

 

「(さっそくアウトーーー!!!)」

 

 

後ろから現れたマカロフに声をかけられ、心の中で絶叫するルーシィ。するとマカロフの声に反応して、ルーシィはすぐさま他の男性メンバーの注目を浴びてしまう。

 

 

「まあまあ、こっちに来なさい」

 

 

「ああ…」

 

 

「バニーちゃんじゃーー!!」

 

 

「マスターはしゃぎすぎだろ」

 

 

結局ルーシィはマカロフに手を引かれて、店の奥へと連れて行かれてしまったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方ティアナは、消えたナツたちを探して街を歩き回っていた。しかし、一向にそれらしい影は見つからない。

 

 

「まったくあのバカ……どこ行ったのかしら?」

 

 

小さくボヤきながら街の中を歩いて行くティアナ。

 

 

「それにしても、やっぱり過去の世界だけあって街並みはずいぶん違うわね。今はもう潰れちゃったお店も残ってるし……」

 

 

懐かしむような表情を浮かべながら街を見回すティアナ。すると……

 

 

『おーい! 向こうの広場で妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士がケンカしてるぞー!!』

 

 

『マジかよ!! 見に行こうぜ!!!』

 

 

そんな声が聞こえ、ティアナは軽く嘆息する。

 

 

「ハァ……まったく、いつの時代も変わらないんだから」

 

 

呆れたような口調でそう言うと、再び声が聞こえてくる。

 

 

『今度は誰がケンカしてんだ?』

 

 

『あいつらだよ、ラクサスとティーダ』

 

 

「!!?」

 

 

『またかよ、あいつらも懲りねーなぁ』

 

 

そんな声を聞きながら、ティアナは考えるより先に広場へと向かって走り出した。出せるだけのスピードを出し、人を避けながらただ走る。

 

 

すると、広場にはすでに多くの野次馬が集まっており、ティアナはその野次馬を掻き分けながら先頭へと躍り出た。

 

 

そしてそこには……

 

 

「よォ、ティーダ。ナツを探してたら、まさかお前と会うとはなぁ」

 

 

「何だよラクサス……何か用か?」

 

 

ラクサスと相対するように立っている1人の青年……

 

 

「(兄…さん……!!!)」

 

 

その青年こそ……今は亡きティアナの最愛の兄……ティーダ・ランスターであった。

 

 

「退屈なんだよ、ちょっとツラぁ貸せや」

 

 

「悪いが今日は妹と大事な約束があるんでな、お前に付き合ってる暇はない」

 

 

「ケッ、相変わらずだな……このシスコン」

 

 

「テメェこそ人の事言えねえだろうが……このジジコン」

 

 

「アァ? 訳わかんねー事言ってんじゃねえぞヘッポコ狙撃手!!」

 

 

「ジジイコンプレックスって意味だよ反抗期の雷小僧!!」

 

 

そう言ってお互いを罵り合いながらほぼゼロ距離で睨み合うラクサスとティーダ。

 

 

「「やんのかコラァア!!!!」」

 

 

そしてついにお互い我慢の限界に達し、そのまま殴り合いのケンカが勃発した。

 

 

その光景に周囲の野次馬が『やれやれー!』とはやし立てる中、ティアナだけは呆然と……ティーダを見つめていた。

 

 

「(兄さんが……生きてる……私の目の前に…いる……兄さん…兄さん!!!)」

 

 

目の前にいるティーダに向かって手を伸ばし、ヨロヨロとした足取りで歩き出そうとするティアナ。だがすぐにハッと我に帰る。

 

 

「(ダメッ!! ここは過去の世界……今ここで私が兄さんに会ったら、未来に影響が……未来に……)」

 

 

自制しようと自分に言い聞かせているティアナ。だがその時……

 

 

 

「危ないっ!!!」

 

 

 

「えっ?」

 

 

突然聞こえてきた声に顔を上げると、ティアナの目の前にはラクサスが放ったであろう雷の魔法が迫ってきていた。

 

 

「(魔法を……間に合わないっ!!!)」

 

 

ティアナはこれから来るであろう衝撃に覚悟して身構えるティアナ。

 

その瞬間……

 

 

バチィン!!!

 

 

「!!」

 

 

ティアナと雷の間に割って入ってきたティーダが、思いっきり振るった手で雷を弾き飛ばしたのだった。

 

 

「ふう……おいラクサス、もうやめにしないか? さすがにこれ以上やったら街の住民に被害が出る。それはお前も本意じゃないだろう?」

 

 

「……チッ、しゃーねえなぁ。ま、退屈しのぎにはなったからいいか。じゃあなティーダ、またやろうぜ」

 

 

「もうゴメンだ」

 

 

そう言い残して去っていくラクサスを、呆れたような表情で見送るティーダ。そしてそれを見ていた野次馬達も、段々と散っていく。

 

 

「……………」

 

 

「大丈夫だったか?」

 

 

「えっ!? あ…はい……ありがとうございます」

 

 

未だに呆然としていたティアナはティーダの呼びかけにより、ハッと我に帰る。

 

 

「悪かったなぁ、さっきの奴も悪気があったわけじゃねえんだ。許してやってくれ」

 

 

「はい……」

 

 

ティーダの言葉に答えながら、ティアナは俯く。

 

 

「(行かなきゃ……これ以上兄さんと話してたら、本当に未来が……)」

 

 

そう考えながらも、そんなティアナの考えとは裏腹に、彼女の体はまったく動かない。

 

 

「おっと」

 

 

すると、ティーダが懐から何かを落とす。

 

 

「あっ……」

 

 

それは……ティアナがいつも髪を縛るのに使っている2本のリボンであった。

 

 

「そのリボン……」

 

 

「ん? あぁ、これか…妹へのプレゼントなんだ」

 

 

落ちたリボンを拾いながらそう答えるティーダ。

 

 

「いつも仕事ばかりであまり構ってやれないから、何かプレゼントでもと思ってね。あいつには本当に寂しい思いばかりさせてしまって……兄貴失格だな」

 

 

「そんな事ありません!!!」

 

 

「え?」

 

 

「あ…」

 

 

ティーダの言葉に、ティアナはつい声を張り上げてしまい、ティーダ共々目を丸くする。それでも今更後に引けなくなったティアナは、たどたどしくも言葉を口にする。

 

 

「その…確かに妹さんは…お兄さんと一緒に居られなくて、寂しい思いをしていると思います……でもそれ以上に、妹さんはお兄さんの事を…誇りに思ってる…んだと思います。だから決して…兄失格なんかじゃ……」

 

 

そんなティアナの言葉を聞いたティーダは、口元にクスリと笑みを浮かべ……

 

 

「ありがとな、そう言ってもらえると少しは気が楽になったよ」

 

 

と言って、ティアナの頭を優しく撫でた。

 

 

「あ…あうぅ……!!!」

 

 

彼女にとって6年ぶりにティーダに頭を撫でられ、嬉しさと懐かしさと気恥ずかしさ、ティアナは顔を真っ赤に染める。

 

 

「えっと…その……し、失礼します!!!!」

 

 

「あ……」

 

 

そしてそのまま、ティアナは一目散にその場を去っていった。しかしその顔は、とても嬉しそうであった。

 

 

そして、その場に残されたティーダは呆然としながら口を開く。

 

 

「……名前聞きそびれたな。でも……んー……どっかで会ったような……?」

 

 

ティーダが後頭部をボリボリと掻きながらそう呟いていると……

 

 

「兄さん!!!」

 

 

「ん? あ、ティア」

 

 

「あ、ティア……じゃない!!! 広場が騒がしいから来てみればやっぱり兄さんだった!!! どうせまたケンカしてたんでしょ!!! 今日は私に魔法を教えてくれる約束だったのに!!!」

 

 

「ス…スマン! ラクサスの奴がしつこくてついな……謝るから許してくれっ」

 

 

「やっ!! 今日と言う今日は許さない!!!」

 

 

「そう言うなって~……」

 

 

結局その後……ティーダはプレゼントを渡すその時まで、幼い妹であるティアナに謝り倒していたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃、消えたナツとグレイとハッピーは思う存分昔の街を探索していた。

 

因みにちゃんと変装はしており、ナツは黒髪のカツラに黒のロングコート姿。グレイは金髪のカツラにバンダナを巻き、スカジャンを羽織ったカジュアル風の姿。ハッピーはクマの着ぐるみ姿である。

 

そして3人は現在、夕暮れの土手を歩いていた。

 

 

「そういやここって何年前のマグノリアだろーな?」

 

 

「さっき新聞をみたら、778年だとよ」

 

 

「オイラが生まれた年だ!」

 

 

「778年!!? オレがギルドに入って1年くれーか…つー事はアレか、イグニールがいなくなってまだ1年…こうしちゃいられねえ!!! イグニールはまだ近くにいるかもしれねーじゃねえか!!! 探しに行くぞ!!!!」

 

 

そう言ってナツは慌てて走り出そうとするが……

 

 

「落ち着けよ」

 

 

「んがっ!!」

 

 

それをグレイに襟首を掴まれて止められる。

 

 

「覚えてねーのか? お前はこの時期、いつもそうやってイグニールを探してた…だけど手がかりは1つもなかった」

 

 

「……………」

 

 

グレイの言葉に、ナツは何も言い返せずに黙り込む。

 

 

ゴンッ

 

 

「いてっ」

 

 

「そんな顔すんなよ。見ろ」

 

 

そう言うグレイの視線の先には、大きくてキレイな川が流れていた。

 

 

「この川…今はもうねえ川だ。もう一度この目で見られるとは思ってもなかったよ」

 

 

そう言って懐かしそうに語るグレイ。

 

 

「懐かしくねーか? 昔…ここでよくケンカしただろ?」

 

 

「…………」

 

 

そう言って3人が目の前を流れる川を眺めていると……

 

 

ガンッ

 

 

「あだっ」

 

 

突然ナツがグレイを殴った。

 

 

「何すんだテメェ!?」

 

 

「さっき殴ったろ?」

 

 

「そんなに強く殴ってねえよ!!!」

 

 

「ぶほっ!! グレイてめぇ!!!」

 

 

「始まった」

 

 

そうして殴り合いのケンカを始めたナツとグレイを見て、呆れたように呟くハッピー。

 

 

「!」

 

 

すると、何かを見つけたハッピーは土手の下へと視線を向ける。そこには……

 

 

「今日こそお前と決着をつける!!!」

 

 

「強ェのは…オレの方だ!!!」

 

 

「なんだとー!!!」

 

 

なんと…殴り合いのケンカをしている、子供の頃のナツとグレイであった。

 

 

「うおおおお!」

 

 

「うああああ!」

 

 

互いに負けじと殴りあうナツ(子)とグレイ(子)。そんな2人を見ながら、ハッピーはゆっくりと視線を横に移す。

 

 

「いってぇなコノヤロウ!!!」

 

 

「テメェこそムキになりやがって!!!」

 

 

こちらでも、負けじと殴りあっているナツとグレイ。そんな2組を見たハッピーは「ぷっ…」笑みを零し……

 

 

「ナツもグレイも昔から変わってないなぁ」

 

 

と、呆れたように…だけどもどこか嬉しそうに言ったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

それからさらに時は流れ、日はすっかり沈んで辺りは夜となった。

 

ナツとグレイはすでにケンカを止め、子供の頃の自分たちのケンカの観戦に回っていた。そしてハッピーを含めた3人の視線の先には、ナツ(子)とグレイ(子)が倒れ伏している光景があった。

 

 

「どうやら決着がついたみたいだよ」

 

 

「オレの勝ちだろ!」

 

 

「いーや、この日はオレの勝ちだ! 憶えてる!」

 

 

先程まで殴り合っていた為、すっかり顔が腫れ上がり別人のような顔になっているナツとグレイ。

 

すると、倒れていた2人のうち1人が、ゆっくりと起き上がる。

 

 

「「「!」」」

 

 

それを見た3人はその人物を確認する為、ゴクリと生唾を飲み込みながら覗き込む。そして立ち上がったのは……

 

 

 

「オレの勝ちだーー!!! ナツーーー!!!」

 

 

 

グレイ(子)であった。

 

 

その瞬間、ナツはガクリと両手を地面につき、対照的にグレイは「おっしゃー!!」とガッツポーズで喜んだ。

 

 

「そ…そんなバカな…オレがグレイに負けたのか……」

 

 

「どうだナツ!!! 小せぇ頃からオレの方が強かったんだ!!!」

 

 

未だに倒れているナツ(子)と、フラフラとした足取りでその場を去っていくグレイ(子)を見ながらそう言う2人。

 

 

「さてと…オレはもう満足したし、エルザの所に戻るかな」

 

 

「オイラもお腹減っちゃった~」

 

 

そう言ってグレイとハッピーは街の方へと戻っていき、その場には未だに信じられず呆然としているナツのみが取り残されたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ぐるるるるる…

 

 

「ハッピー、腹うるせえぞ」

 

 

「仕方ないじゃないか…朝から何も食べてないんだから」

 

 

そんな会話をしながらグレイとハッピーはエルザがいるであろう場所へと歩みを進めていた。すると……

 

 

「グレーイ!! ハッピー!!!」

 

 

そのエルザが恐ろしい形相で走ってきた。

 

 

「エルザ!!?」

 

 

「何だその格好!!?」

 

 

「もう逃がさんぞォーーー!!!」

 

 

バコォーン!!!

 

 

「うわあー!!」

 

 

「ぎゃうっ!!」

 

 

エルザが投げた本がクリーンヒットし、グレイとハッピーは一発KOされた。

 

するとそこへ、すでにエルザと合流していたティアナとルーシィが駆け寄ってくる。

 

 

「あれ? ナツは一緒じゃないの?」

 

 

「グレイさん、ナツは?」

 

 

「ナツならまだ土手にいるんじゃねーのか? つーかルーシィまでその服…」

 

 

グレイの言葉を聞いた女性3人は、焦ったように顔をしかめる。

 

 

「マズイぞ!! 時間がない!!!」

 

 

「急いでナツの所へ行かなきゃ!!」

 

 

「このままじゃ私たち、元に時代に戻れなくなる!!!」

 

 

「何だと!!?」

 

 

そう言うと全員は急いでナツのいる土手へと走り出す。

 

その途中で、エルザは今回の件の原因となった本について説明する。

 

 

「この本は〝メモリーデイズ〟と言って、本を開いた時、一番思い出そうとしてる時間へと飛んでしまうのだ」

 

 

「あの時は、ナツは自分の首のキズの事を思い出そうとしていた……それがこの時代、6年前のマグノリアなのよ」

 

 

「だから私たちはナツの思い出の時間に飛ばされてしまったという訳だ」

 

 

「それと帰れなくなるのはどういう関係があるんだよ?」

 

 

「本来この魔法は思い出した本人…つまりナツだけをその時代へと飛ばしてしまうものなのだ」

 

 

「でもその際に、本人に触れていた者がいればその人にも影響が及ぶんです」

 

 

「この本の効果は6時間しかないの。6時間経ったら、自動的に思い出は終了」

 

 

「ナツだけが元の時代に強制的に戻される」

 

 

「「!!!」」

 

 

それを聞いたグレイとハッピーは目を見開いて驚愕する。

 

 

「ちょ…ちょっと待て!!! オレたちはどうなるんだ!!?」

 

 

「言った通り…このままじゃ元の時代に戻れない!」

 

 

「ナツの思い出が終わる前に、来た時と同じようにナツに触れていないといけないんです!」

 

 

「どわーー!!!」

 

 

「そんなーー!!!」

 

 

「急げ!!! 時間がないぞ!!!」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方、そうとは知らないナツは……未だに呆然とした様子で倒れている子供の自分を見つめていた。

 

 

「オ…オレが…グレイに負けただと……納得いかねーぞコラァァアアア!!!!」

 

 

そう叫びながらナツは土手を駆け下り、子供時分へと駆け寄る。

 

 

「起きろオレーー!!! お前はまだ負けてねえ!!! 追うんだ!!! ここで諦めていいのか!!? あ? もう一度戦え!!! グレイに勝てオレーー!!!」

 

 

必死に子供の自分の体を揺すりながら叫ぶナツだが、ナツ(子)は一向に起きる気配を見せない。

 

 

「オレが気合を入れなおしてやるァーーーー!!!!」

 

 

見かねたナツは手を思いっきり振り上げ、そのまま平手打ちをナツに叩き込んだ。

 

 

「起きろォーーーー!!!!」

 

 

鬼のような表情で子供の自分に平手打ちを連続で叩き込んでいくナツ。

 

 

「ん…んん……」

 

 

すると、ナツ(子)がゆっくりと目を覚ます。そんな彼の目に飛び込んできたのは……

 

 

「オラオラオラオラオラーーー!!!!」

 

 

凶暴なケモノのような恐ろしい形相で自分に平手打ちを叩き込んでくる男の姿であった。

 

 

「うわああああああ!!! バケモノーーーー!!!」

 

 

当然子供のナツは恐怖し、悲鳴を上げる。

 

 

「自分に向かってバケモノとは何じゃコリャー!!!」

 

 

「何言ってるかわかんねー!!!」

 

 

あまりの恐怖に後ずさるナツ(子)。その際に、首に巻いていたマフラーが地面に落ちる。

 

 

「か…か…か…火竜の……砕牙!!!!」

 

 

そして立ち上がったナツ(子)は震えながらも炎を手に纏い、それをそのままナツに向かって振るうが……

 

 

「効くかバカ」

 

 

パシンとナツに軽々と弾かれる。

 

 

すると、その弾かれた手がそのままナツ(子)の首へと向かって行き……

 

 

ガリッ

 

 

「あ」

 

 

ナツ(子)の首に一筋のキズが出来上がった。

 

 

「ぎゃあああああああ!!!!」

 

 

ナツ(子)の悲鳴が周囲に響き渡る。すると……

 

 

「「「「ナツーーーー!!!」」」」

 

 

「そこを動くなーーー!!!」

 

 

エルザたちが必死の形相で土手を走ってきていた。

 

 

「ぬ?」

 

 

「誰なんだお前らー!!? うわぁ~!!!」

 

 

それを見たナツ(子)は慌ててマフラーを拾い、そのまま逃げて行った。

 

 

そして駆け寄ってきた全員がそのままの勢いでナツに飛びかかる。

 

 

「な…何だ!!?」

 

 

全員に押し潰されながら困惑するナツ。

 

するとその瞬間…制限時間の6時間が経過し、周囲が来た時と同様光に包まれた。

 

 

「「「うわぁぁあああああああ!!!!」」」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そして784年、妖精の尻尾(フェアリーテイル)……現代。

 

 

「はい、ナツさんマフラー」

 

 

「大事なものなんでしょ?」

 

 

「一応洗っておきました」

 

 

「おお! サンキューな」

 

 

無事に元の時代へと帰ってきたナツは、ウェンディからマフラーを受け取って首に巻く。

 

 

「じゃあ…ナツの首のキズって、結局自分でつけたキズだったの?」

 

 

「らしいな」

 

 

「アホくさ」

 

 

呆れたようにそう言い放つグレイとティアナ。

 

 

「でも戻って来られてよかったねー」

 

 

「全くだ…何であんな恐ろしい本がギルドにあったのだ」

 

 

「そういえばあの本…どうなっちゃったの?」

 

 

「さあな…戻ってくる時に消えてしまった」

 

 

「あーん、もったいない!! 確かに危険な本だけどさ、使い方によっては過去を変えられちゃうすごい魔法じゃない」

 

 

「過去を変える必要なんてねえさ」

 

 

残念そうに言うルーシィに、グレイがそう言い放つ。

 

 

「過去があるから、今のオレたちがあるんだ」

 

 

「今までの私たちの1つ1つの行動が、今この瞬間の私たちに繋がっているのよ」

 

 

「……それもそうだね♪」

 

 

グレイに続いてティアナがそう言うと、その場にいた全員が笑顔を浮かべる。

 

 

「さぁみんな、倉庫の片付け終わらせちゃって!!」

 

 

「えー!! まだやるのかよ……」

 

 

「もうクタクタなんですけど……」

 

 

「こればっかりは仕方ないな……」

 

 

「オイラ、お腹減って動けない……モグモグ」

 

 

「魚食べながら何言ってんのよ」

 

 

「あ…私も手伝います!」

 

 

「私も!!」

 

 

「本当!! ありがとう!」

 

 

 

 

 

こうして……ナツたちの不思議な体験は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

……778年

 

 

「ん? 何じゃコレは?」

 

 

偶然土手を通りかかったマカロフが拾い上げたのは、その時代に取り残されたメモリーデイズの本であった。

 

 

「ふむ……ギルドにでも持って帰るかのう」

 

 

そしてマカロフは深く考えずに、その本をギルドへと持ち帰り、その後それは倉庫へと仕舞われた。

 

 

その本が再び開かれることになるのは……今から6年後の事である。

 

 

 

 

 

つづく




今回登場した子供の頃のリリなのメンバーたちの容姿を詳しく書いておきます。


なのは&フェイト&はやて&ユーノ→無印、A's編と同じ。


シグナム→今より幼い顔付きに、肩に掛かる位の短いポニーテール。当時のエルザと同じくらいの背丈で、胸は小さい。バトルマニアは相変わらず。


シャマル→今より明るく天真爛漫な女の子。イメージはモバゲーのリリなのイノセントに登場する「神楽井ゆずこ」


ザフィーラ→今の筋骨隆々とした姿からは想像が付かないほど華奢な体付きで、犬耳と尻尾、そして褐色の肌が特徴の少年。背丈はナツたちと同じくらい。


リインフォース→見た目は完全に原作のツヴァイ。違うのは髪と目の色くらい。


ヴィータ→現代とまったく変わらず。しゃべり方が少し幼いくらい。


基本的に変化があったのはヴォルケンズの面々だけでしたね(笑)

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