欲望にはチュウジツに!   作:猫毛布

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ないです。

遅れました。申し訳ありません。

息抜き(7000字

徐々に穂次を解いていきます。


夏野攻めは、ありまぁす!

 さて、戦闘実習ともあり、専用機持ちである俺や一夏、シャルルにセシリアさんと鈴音さん。そしてボーデヴィッヒさんが各班に分かれてチームリーダーとして補助をする形になる。

 

「えー、夏野君かぁ」

「ま、夏野くんでも男だし」

「夏野君は織斑君とセットで輝くっていうか……」

「でも、ほら、新しくデュノア君も来たじゃない?」

「夏野君が攻めになる可能性も……」

 

 しっかりと出席簿の順で分けられたクラスメイト達は俺を見ながらしっかりとそんな事を言うのだ。俺でも流石に頭を抱える事はある。

 

「あのさ。美少女達。いくら相手が俺だからって、そういう話を本人の目の前で、しかも聞こえる様に言うのはどうかと思うゾ☆」

「あはは~、でもなつのんだしねぇ~」

「つーか、俺が攻めって……よく考えてくれよ。我ながら結構劣等生なんだから、貴公子シャルル・デュノアに攻められるってのもまた乙なんじゃね?」

「ハッ……貴様が天才か……!」

「残念、凡人デス☆」

「なつのんって馬鹿だもんねぇ~」

「布仏さんも容赦ないッスね……ま、いいけど。ほら、ささっと実習を始めようか。俺だって好きで織斑先生を怒らせてないんだから」

「え? そうなの?」

「てっきりそういう趣味なんだと……」

「あのさぁ。あれだけの美人さんに責められたり、罵られたり、挙句の果てに踏まれたりしても感謝しかわかねぇけど、説教はまた別だから」

「ねぇねぇ、なつのんなつのん」

「どうしたのかな、布仏さん。あ、もしかして俺が格好良すぎてホレちゃいましたか?」

「織斑先生が凄い睨んでますよー?」

「……サッ、スグに始めようか! 放課後に職員室に呼ばれてるのは俺だけでいいんだゼ☆」

 

 冷や汗をダラダラと流しながらカラカラ笑う。俺だって好きで説教を受けたい訳でもない。時間は短いに限る……でも短くなった時間はオシゴトに費やされるんだよな。俺に人権はあるのだろうか? あ、なかったね。

 専用機持ちだからってチームリーダーに任されるのはいい。可愛い女の子たちが俺の事を虐めるのも構わない。なんせ、可愛いし、露出高いし、おっぱいもそれなりにあるんだ。何も文句なんてないな! あれ? なんでだろ、涙が出てきそう。

 遠くを見て涙を抑えていると、別の方向から歓声が聞こえた。ソチラを見れば織斑一夏が女生徒、相坂さんをお姫様抱っこしてる。どういう経緯かわからないけれど、ただただ死ね、という感情が溢れてきた俺は悪くないと思う。

 

「ココは俺もお姫様抱っことかしとくべきなのか?」

「いやぁ、夏野君じゃダメかなー、って」

「夏野君だしねー……」

「おっと、そこまでだ。それ以上は俺の心が崩壊してしまう」

「なつのんはずっとヘラヘラ笑ってるからねぇ~。真面目な顔してればそれなりにカッコいいのに」

「ムリムリ。俺が真面目な顔したって、俺に得がねぇもの」

「女の子にモテるよぉ?」

「…………いやいや、そんな事で俺が乗せれるなんて思ってるのか? ヤダナァ、この俺がそんな冗談で本気にする訳ないじゃないかー」

「そうなのぉ?」

「……さ、お嬢様方。俺がエスコートしてあげよう。何、全てを俺に任せてくれ。君たちの安全は俺が盾に誓って守ろう」

「…………」

「ほら、布仏さん。みんな固まってるじゃん……俺泣いちゃうぞ」

「キザっぽい事言ってるのに変に様になってたからじゃないかなぁ」

「いや、ともかく、ほら、ちょっとは反応してくれよ。無反応が一番辛いんだぞー」

「夏野君。もうずっと真面目でいいんじゃない?」

「夏野君攻め。あります!」

「ありね!」

「また世界を広げてしまったか……」

「いけない世界だねぇ~」

「お、そうだな……さって、美少女達。俺を真面目にしたけりゃ、実習を消化していこうぜ」

「えー、煽てればチャンスが……」

「夏野君はチョロイ。薄い本にも書いてる」

「織斑先生が睨んでるからサクッと終わらせようぜー」

「そうね!」

「急がなきゃ!」

「夏野君が準備遅いのが悪いんですよー!」

「なつのんが原因ですよぉ~」

「……ん? いや、まあ色々言いたい事があるけどいいや」

 

 果たして織斑先生の実力、というか恐怖教育が凄いのか。それとも俺の扱いがただ単に酷いだけなのか……両方だな!

 ともあれ、お姫様抱っこなんてするタイミングもなく、淡々と授業は終わっていく。当然、俺がおっぱいを触るタイミングなんてない。つーか、そもそもおっぱいに価値なんてない。あんなモノ、単なる脂肪の塊に過ぎない。

 数分前に至宝のおっぱいに包まれてやけに思考がクリアになった俺が言うんだ。間違いなんてある訳がない。

 

 

 それにしても、眼鏡を直している時にスゲー揺れる山田先生のアレは何なのだろうか……実に、素晴らしい。ISスーツという事もあって、実に揺れているのが良く分かる。

 なるほど、やっぱりおっぱいが一番なんだなって。

 

 

◆◆

 

 

 実習も終わり。訓練機をIS専用のカートで四台ほど運んだ。一台は当然、俺のチームのモノだ。ある種の賢者モードに入っていた真面目を装っていた俺は煽てに煽てられて調子に乗って、いつの間にかチーム全員で仲良く運ぶ筈だったカートを一人で運んでいたのだ。いったいどういう事か俺にも分からない。空間回帰とか時間停止の方がまだ分かると思う。いや、どっちもわかんねーけど。

 さて、残りの三台。コレは「デュノア君にそんな事させられない!」と言って体育会系の方々が運ぼうとしている所をヘラヘラ笑いながら譲ってもらったのだ。もし殴れるのならあの調子に乗っていた俺をぶん殴りたい。

 ソレを見た鬼が何を思ったのか。「丁度いい。では、片付けはそこの阿呆に全て任せておけ」という一言を放ったのだ。そこで俺はようやく覚醒した。いや、ある種の覚醒から解けたのだけれど。

 セシリアさんはいい。当然だ。美人系の美少女で可愛いし、何の問題もない。

 鈴音さんもいい。可愛いし何かと言って優しいし、何よりも可愛い。何の問題もない。

 ボーデヴィッヒさんもいい。そもそも喋った事はないけれど、可愛いをそのまま詰め込んだ容姿にキツイ眼光。是非とも可愛い服とかを着させて顔を真っ赤にさせてやりたい。

 

「だが、一夏。テメェはダメだ! 自分で運べ! つーか、一つ手伝って下さい!」

「貸し(イチ)な」

「ヒッ……カラダで払います……」

「貸しが二つに増えたな。コノヤロウ」

「ハッハッ。ツケといてくれ、大将」

「払う気ないな、コイツ……」

「つーか、色々考えるとトントンだと思うんだけど?」

「どこがだよ」

「鈴音さんの関係改善」

「ぐっ……」

「フッフッフッ! これぁ、耳揃えて返してもらわなあきませんなぁ、織斑ハン!」

「ま、待て、待ってくれ。明日、明日までには必ず返済する! だから」

「あきまへんなぁ。その言葉、昨日も聞いたデンガナ……まあコレ一つでチャラにしたらん事もヤイヤデ?」

「ッ! ありがとうございます!」

「つーか、こんな小芝居挟んでる間にお互い二つ目運んでるんだけどなー」

「まあ、何かと穂次には迷惑掛けてるからな……。友達だから、手伝うのも当然だろ!」

「一夏……!」

「あ、そういえば今月の友達料金の徴収なんだが」

「ヒエッ……俺よりもキツい冗談はやめてもらえますかね」

 

 そんなやり取りを笑いながら続け、三つ目に手を掛けた一夏をやんわりと断って、残りの二つを運び終わった。

「大丈夫か? 手伝うぞ?」

 と不思議そうな顔をしていた一夏だったけれど、何も問題がない事と、織斑先生の説教までの時間稼ぎをさせてほしいと言えば何とも言えない顔で「頑張れ」と言われた。その頑張れはカート運びの事を言っているのか、折檻の事を言っているのか、俺にはさっぱりわからなかった。きっと前者だろう。そうに決まってる。

 カート運びの終わった俺は疲れた身体に鞭を打ち、俺は教鞭を振るわれに行くのだ……コレは比喩表現ではない。

 いっそ教鞭がバラ鞭だったらよかったと、きっとこの時以上に思った事はこれから先もない事だろう……というか、その状況が特殊すぎるんだよなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が折檻されようが、のんびりと過ごそうが時間は進むもので、時は昼休みに変わる。

 呼び出しを喰らっていた俺は肩を落としながら指導室へと向かう。授業中に山田先生のおっぱいを凝視して何が悪いのか。そもそもあのおっぱいがあるのがいけないのだ。しかも凝視してると両手で隠すのだ。むぎゅう、である。 むぎゅう。

 

 開いた扉の先は小さな個室で、織斑先生が腕を組みながら机に凭れていた。

 閉じられた瞼が緩やかに開き、鋭い瞳が俺を貫く。

 

「夏野、来たな」

「そりゃぁ、呼び出されたら来るでしょ。無視したらあの世に呼び出されそうですし」

「よくわかってるじゃないか」

「……今、ここに居てスゲーよかったって心の底から思ったッスよ」

「よかったな」

「織斑先生が大凡の原因だと思うんですが、ソレハ……」

「生の感動を私で得るとは。お前、実は私の事を神様か何かだと思ってたのか?」

「修羅って神様でしたよね? なら間ちがガガガガガガガガガ! 頭壊れる!」

「阿修羅の一撃で死ねるんだ。本望だろう」

「マジで壊れますから! それほど重要でもない俺の頭壊れちゃいます!」

「換えの頭なら今度用意してやろう」

「俺は愛も勇気も友達じゃないッスよ!!」

「む、そうか。愛も勇気もお前を友達だとは思ってないからな」

「ひっ……順番逆にするだけでスゲー悲惨なんですけど」

 

 俺の頭から手を離した織斑先生は肩を落としている俺を見て少しだけ目を細めた。

 

「さて、呼び出した本題を言うぞ」

「あ、今日は手伝いはいいんスね」

「放課後に回している」

「ないって事はないんですね……」

「デュノアはお前と同じ部屋になる」

「は? いやいや、どういう事ッスか」

「そういう事だ。察しろ」

「あー……政府ッスか? それとも学園?」

「……ドチラもだ。尤も、政府が言ったから、という理由立ては出来るがな」

「そうッスねぇ……。ま、得体の知れない奴をファーストと一緒にするのはリスク高いですからねぇ……。その為のセカンドって事ですか」

「……不満か?」

「まさか。これでも結構ムリ聞いてもらってるんで。つーか、俺の部屋ってベッドが一つしかねェんですけど?」

「お前が廊下で寝れば問題なかろう」

「打開案が酷くないッスかね……ま、了解です。探りを入れれる程器用じゃないッスけど、そこそこには頑張ってみます」

 

 変わらずにヘラリと笑って見せれば織斑先生もニヒルに笑い返す。スグにそれは真剣な顔付きへと変わる。

 

「……夏野」

「なんスか、織斑先生」

「お前は少し後、恐らく数日後に私に感謝することだろう。だが、ソレを私に伝えるなよ?」

「? 感謝なら毎日してますよ」

「……そうか。分からなければいい。が、その調子で私に常に感謝していろ」

「へいへい。了解しましたよー」

「では戻ってよし」

「ういーっす」

 

 随分と意味深なことを言っていた織斑先生だったけれど、一体なんだと言うのだろうか。

 何か面白い事を黙っている様な顔をしていたけれど、まあ彼女にとって面白い事の一部に俺の不幸というのがあるから俺にとってイイ事だとは思わない方がいいだろう。

 

 

 さて、織斑先生のお話も終わった。確か一夏達は屋上で飯を食ってるんだけっか。

 

「お、いるじゃーん」

「穂次。早かったな」

「アンタ、また何かしたの?」

「いやぁ、山田先生のおっぱい見てたら呼び出しくらってさー」

「あ、私の視界に入らないでもらえる?」

「無茶な事を言う……」

 

 そんなチッパイでも需要はあるんだぜ……鈴音さん! あ、スゲー睨まれた。コレダメな思考だ。ともあれ、昼食時という事もあってコチラを殴ろうとしない辺りは流石鈴音さんだろう。その慎ましやかな性格がおっぱいに表れている。

 

「んで、なんで一夏は酢豚を……あぁ、なるほど」

「な、なによ……!」

「べっつにぃー。美味しそうな酢豚ですなぁ、一夏くん?」

「美味いぞ? お前も食べるか?」

「……いや、実は酢豚アレルギーなんだ。食べると発狂しておっぱいを揉まないと戻らなくなる」

「それはアレルギーじゃないだろ。アレルギーに託けたお前の趣味だろ」

「カッコつけた趣味だからな!」

「アッハッハッ! やるな、穂次!」

「ハッハッハッ! だろう?」

「アンタら、食事時ぐらい黙れないの?」

 

 そもそも一夏が俺に酢豚を渡そうとした時に睨んできた鈴音さんが悪いと思うんだ。いや、原因で言えば一夏が圧倒的に悪いんだけど。

 シャルルの隣に座った俺はシャルルの方をチラリと向く。しかし、得体の知れないとは言ったけれど、何か危害を加える様には見えない。俺の人物鑑定眼なんて物はないに等しいけど。それこそ、実はシャルルがシリアルキラーなんて事があったら怖いが……ないだろう。たぶん。映画じゃねぇんだし。

 織斑先生も一夏からコイツを離したかった、ってのを考えるとやっぱそれなりに警戒とかしとくべきなのだろうか?

 

「どうかした? 僕の顔に何か付いてる?」

「目と鼻と口。よく整っているのが実にいいと思う。美形だな!」

「そ、そうかな?」

「照れた顔もいいッスね!」

 

 コイツが何か危害を加えるとは思えない。つーか、ムリだろ。良心がイケメンの皮を被って歩いているようなモンだぞ……。ないない。

 へらへら笑っている俺と照れるシャルル。そんな俺たちを睨むセシリアさん。

 

「む、セシリアさん。俺がシャルルに取られて嫉妬かな?」

「なっ!? だ、誰が――」

「まあ、美人で何でも出来るセシリアさんも俺の魅力でイ、チ、コ、ロ、だったからな!」

「穂次、凄いオルコットさんが睨んでるよ?」

「恥ずかしがってるんだよ。アッハッハッ……ゴメンナサイ。スイマセンでした。調子乗りました」

「わかれば、いいですわ」

「なるほど、コレがジャパニーズドゲザって奴なんだ」

「あら、デュノアさん。今ならハラキリも見れるかもしれませんわよ?」

「いや、セシリアさん? それって俺死ぬよね? 死んじゃうよね?」

「そうですわね」

「ほら、カッコいい俺が死んじゃうんですよ……? こう、もっと、あるでしょう?」

「ああ。汚れるといけませんので、ブルーシートの上でお願い致しますわ」

「そこじゃないんだよなぁ……」

「えっと、ブルーシートは用務室で貰って来ればいいのかな?」

「シャルルは天然。ハッキリわかんだね」

 

 かなり真面目な顔で立ち上がってブルーシートを貰いに行こうとしていたシャルルを止める。ハラキリがそれほど見たかったのだろうか……。シリアルキラーの比率が高くなってくるんだからやめて下さい! シャルルくん!

 さて、一夏とイチャイチャしている篠ノ之さんと鈴音さんはいいとしよう。アレに口を出して怪我をするのは勘弁願いたい。そして俺に助けを求めるような視線を送るな、一夏。俺はお前を助けられん。

 そんな一夏から視線を逸らしていれば自然と対面に座っていたセシリアさんの胸に視線が集中する。相変わらずいいおっぱいだぁ……。さりとて見つめすぎるとスターライトmkⅢをドコかにぶち込まれるかも知れないので更に視線を下げる。肉付きのいい太股が……、見えない。スカートに邪魔されて、という訳じゃない。その上に乗っているサンドイッチが悪いのだ。しかもそれほど減っていない。

 

「ん? セシリアさんって体調悪いとか?」

「? どうしましたの?」

「いや、サンドイッチが全然減ってないし」

「あ、」

 

 鈴音さんの声が聞こえた。チラリと視線を向ければ一夏も何か残念そうな顔をしている。いったいなんだと言うんだ。

 疑問を感じながらセシリアさんに視線を戻せば、なんとも言えないキラキラした顔をしていた。

 

「そ、そうなのです。今朝から少し体調が悪くて」

「へ、へぇ」

「それで今朝たまたま偶然何の因果か目が覚めてしまって、つい作ってしまったのです」

「お、おう……」

 

 キラキラしているのに体調が悪くて、そして今朝起きてしまったのにサンドイッチを作った、と。体調が悪かったのに。

 ココは寝ろよ、とツッコミを入れるべきなのだろうか。鈴音さんを見れば首を横に振っている。つまりツッコムべきではないのだろう。流石、鈴音さんだ、ナイスサポート。

 

「よ、よろしければ、お一つどうぞ」

「こりゃどうも。じゃあ頂くよ。いやー美少女の料理ってだけで素晴らしいのに、才女であるセシリアさんの料理かー」

 

 きっと素晴らしい出来なのだろう。なんせセシリアさんだ。俺は口を開き、サンドイッチを噛んだ。

 

「おい、穂次が停止したぞ……」

「流石にムリだったのかしら?」

「アレは……流石の夏野も反応出来まい」

 

 ―――っ。

 

「なあ、セシリアさん。是非とも俺に料理を教えてくれないか?」

「へ?」

「こんな美味しい料理を作れるセシリアさんに是非とも教えてほしい」

「そ、そうですか。ま、まあ時間が空けば考えてあげなくもないですわ」

 

「おい、穂次が可笑しくなったぞ……」

「よもやセシリアの料理にそんな効果があるなんて」

「待った。コレは、違うわ。あたしにはよく分かる」

 

「是非頼むよ。出来るなら次回セシリアさんが作る時にでも片手間で教えてもらえたら嬉しい」

 

「あ、これは修正する気だな……」

「出来るのか? 夏野に……」

 

 そこの外野三人、聞こえてるぞ。俺だって料理は出来ない。でも言える。コレよりも美味しい料理は作ることが出来る。意識が飛ぶ料理ってなんだよ……サンドイッチだな!

 サンドイッチはちょっとしたオクスリなのかも知れない。いっそ隠語か何かかも知れない。つーか、何これスゲー。もう言葉がマズイ以外の言葉が出てこない。

 

「そ、そこまで言うのでしたら、このサンドイッチを全部食べてもよろしくてよ?」

「マジでか!? イヤーウレシイーナー! 涙が出てくるほどウレシイーナー!」

「そうですかそうですか。ふふふ」

 

 なるべく美味しそうに食べよう。うん。何かといってセシリアさんの笑顔が可愛いんだから。しょうがない。

 でも出来る事ならば、この料理が美味しければもっとよかった。せめて普通に食べれる程度なら誇張表現も出来た。ヘラヘラ笑いながら、冗談を混ぜて褒めることが出来ただろう。

 コレは、無理。一瞬、罰ゲームか何かだと思った。

 セシリアさんの舌がオカシイ、という事はないだろうから、きっと味見をしていない。そしてサンドイッチの減り具合、つーか俺が食べるまで減ってなかったサンドイッチを見ると食べてない事は分かる。この時点での俺の仕事はセシリアさんに次の料理を作らせない事、そして俺がコレを処理しなくてはいけない事だろう。

 

 購買部って胃薬売ってたっけなぁ……。


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