オーバーロード ―さまよう死霊―   作:スペシャルティアイス

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はよナザリック無双したい……


第九話

“彼”は勇気に溢れるわけでなく、かといって知恵に秀でているわけではなかった。

部族“鋭き尻尾”(レイザー・テール)に属する平均的な蜥蜴人の若いオスであり、戦士階級のように武器を持って戦うのではなく、

狩猟班として食料の調達を日々こなしていた。

生まれつきの臆病さで周りにからかわれることがあったが、その臆病さが、外敵に遭遇する事が多い狩猟では役に立った。

人一倍物音と気配に敏感であり、決して欲をかかず程々で村に戻るため怪我らしい怪我もなかった。

ある意味、普通の蜥蜴人よりも野生生物に近かったのかもしれない。

 

『―――伏して耳を傾けよ。我は偉大なる御方の先触れ也』

 

ある日、群れの中に謎のアンデッド、黒い靄に無数の苦悶の貌が浮かぶモンスターが現れた。

“彼”はそれの最も近く、正面からそれを視てしまった。

 

『汝らに逃れられぬ“死”を宣告する。至高の御方の軍により、貴様らは塵藁のごとく蹂躙されよう。

 今より数えて八度の日が昇りたる時、貴様らの慟哭がこの絶望の篇首となろう』

 

“彼”は尻餅をつき、感情の抜け落ちたかのように真っ白な表情でそのモンスターの言葉に当たる。

遠巻きにモンスターを取り囲む蜥蜴人は震え怯えるか、敵意をもって睨みつけるかのどちらかであった。

断末摩の輪唱のような、悲哀と絶望が綯い交ぜのその声を“彼”は浴び続ける。

 

『忘れることなかれ。貴様らにできることは、無為な抵抗で御方を興じさせることと』

 

再び八日後に攻撃する旨を告げたモンスターは空へと昇り、森へと飛んでいった。

その姿が見えなくなり、危機が去ったことに安堵の声が漏れた時、絶叫が響いた。

それはモンスターの真正面で強い影響を受けた、一人の蜥蜴人が恐慌に堕ちたものだった。

 

それからの“彼”は家に閉じこもり、寝床の柔らかな草に包まり恐怖に咽び震えた。

その姿を多くの者は臆病者、戦支度に加わらぬ愚か者と詰ったが、“彼”自身もここで震えてどうすると己に発破をかけた。

しかしあのモンスターの声と姿を思い出すと、体験したはずのない死を感じ、彼は動くことが出来なかった。

 

「戦が始まる」

「二日後、あのモンスターの軍勢が攻めてくる」

「五部族の長がこの砦で話し合っているらしい」

 

そんな声が家の周りから聞こえ、“彼”の身体が再び震え始める。

その日の夜、一匹の痩せた蜥蜴人が群れから抜け出た。

警戒態勢のその群れを抜け出たという事実は、彼が隠密の才能をもっていた証左だったが、そのことに気づいたものは自身を含めいなかった。

走る、走る、そしていつしか四つん這いで駆けていた。その胸中は死への恐怖に塗りつぶされ、人にある筈の理性は抜け落ち、原始的な野生生物に“彼”は先祖返りしたようであった。

再び人たる理性を得たのは皮肉なことに、あれほど逃れたいと思った死を自覚した時だった。

体中に傷が刻まれ、二本ある腕の片方は根本からなくなり、血を失いひどく寒かったが、幸か不幸か痛みはもはや感じなかった。

自分を追ってきた同族に攻撃されたか、野生のモンスターに喰われかけたか。いずれにしろ己の命が尽きかけていることはわかる。

“彼”の胸に去来したのは後悔だった、逃げずに戦っていれば、と。

逃げ出した身で実に都合がいい話だ。しかし彼は真剣だった、それこそお伽話に縋ってしまうほど。

 

“悪霊よ、悪霊よ。どうか、俺の魂を使い潰させてくれ”

 

そして彼は、幸運にも望みを果たした。

胸に刀が押し入る感触を感じ意識が途切れ、次に感じたのは感情の奔流。

 

“生きタい、寂シイ、サムイ”

 

己の感情とは思えないほどの質量が溢れだし、“彼”を相応しいモノに作り変えんとする。

しかしそれもすぐに凪へと変わり、己の意識が目の前の存在を感じ取る。

彼は平伏した。意に先んじて今の身体が動いたのだ。

闇に溶かしたような靄の姿、赫炎に燃ゆる眼窩をもつ死霊。烙印を頭上に浮かばせたその姿から、意外にも若い男の声が届く。

 

「お前のやりたいことをやれ。今度は後悔を残さず、その身体を使い尽くしな」

 

優しく背を押すような、そんな声音だった。

死霊に“彼”は魂から咆哮した。感謝を、ただただ感謝を伝えたかった。

この恩霊は言った、“やりたいことをやれ”と。ならばその気持ちに応え、胸の意に沿い、己の新たな身体を使うのみ。

信じられぬほどに軽くなった身体で疾駆する。それこそ風になったかのように、木をすりぬけ一直線に。

不定形アンデッドの《透過》スキルを駆使し、“彼”はひたすらに向かう。己が逃げ出した、戦場へと。

 

 

 

白き鎧を纏う彼の心中は諦め、しかし全てを投げ出すことは出来ない。

 

「かの戦いを乗り越えた我らに、怖れるものなどあろうか?」

 

篝火の間の壇上にて、“緑の爪”(グリーン・クロー)の族長シャースーリュー・シャシャは威言を発している。それを見やる蜥蜴人の戦士らの顔には、自信と戦意が見て取れた。

それも当然であろう。何故ならば、つい昨日にこの蜥蜴人たちは激戦を制し、強大な軍勢(アンデッド)を跳ね除けたのだから。

犠牲が皆無だったわけではない。嘆きを噛み締め、憂惧を踏破し、勇威を胸に戦士たちは前へと進み、そして勝利した。

 

「全てはこの一戦、この一戦にあるのだ!大いなる祖霊も、我らとともに戦おう」

 

その言葉に次ぐように、白い蜥蜴人を先頭に祭司らしい数人が進み出る。

 

「聞くのです!大きな一つの部族の子供たちよ!我らは先の戦いに打ち勝ち、大きな災いを打ち払いました」

 

滔々と語るのは“朱の瞳”(レッド・アイ)の族長であるメスの蜥蜴人だ。

名はクルシュ・ルールー、その肌は雪のように真白く、彼女が先天的に肌の色素を欠いていることが伺える。

しかし滑らかな白肌に篝火の朱が照り、ある種の神秘的な艷が、彼女を見る蜥蜴人の瞳に反射した。

 

「あなただけで戦えぬ言うのなら、隣の同胞が共に戦いましょう。立てない者がいれば肩を貸しともに立ち向かいましょう。

我々には心強き仲間が、祖霊がいます!……そして守るべき者がいるのだから、負けることはあってはならない!!」

 

アルビノの蜥蜴人のわずかな逡巡の意味は、少ない者らが理解できた。

 

「(せっかく、つがえたのにー……)」

 

彼女とその想い人を知る鋭き尻尾の族長は目を閉じる。容易に予想できる戦の結果と、自分たちの結末を思って。

儀式は佳境に差し掛かっていた。

集まった戦士たちは宙空に視線を縫い止め、熱を帯びた声が周囲から上がる。

ある者は同じ蜥蜴人の姿を、ある者は卵、魚など。己に見える祖霊の姿に全く同じものはなく、祖霊を眼に収めそれが身体に降りてくる光景に歓声が上がる。

誰もが、自分たちが信仰する祖霊と一体となる感覚に陶酔と、軒昂とした漲りを覚えていた。

祖霊信仰は原始宗教ではポピュラーなものであり、狭い生活圏の中で連帯感を強め、秩序維持の役目を持つことが知られている。

こうした宗教儀式によってそれを高め、戦意高揚の手段にするというのは上手い手段である。

その絡繰りを知らなければ、であるが。

 

「(それい、いるなら、どうしてこない。このーいくさで、ほほとんどしぬ)」

 

戦士たちに見えているのは幻覚だ。戦いの儀式の前に振る舞われた飲み物による幻覚と覚醒作用によるもの、それがこの祖霊の正体だ。

しかしその事実も、本人が真実とすれば真実なのである。事実、祖霊の加護を得たと思う者たちの戦意は天を衝かんばかりだ。

指揮する側の彼はそれを口にしていないが、口にしていても祖霊を是としなかっただろう。

真に祖霊が存在するのなら、なぜ自分たちは食料や縄張りを同族で奪い合い、外敵にここまで脅かされなければならぬ、と。

長であり続け部族の存続を第一に考え、外敵に抗うために、呪いを身に受ける彼は目に見えぬ怪力乱神ではなく、実利こそを信じていた。

故に、いま目の前に現れた存在に対して彼が考えたことは、利益か不利益かの二者択一であった。

 

誰かの叫び声が聞こえた。その音源に目を向けた者には驚きが、そして敵意と戸惑いが見て取れた。

 

「あく、りょう?」

「なんだ?!奴らの手先か!?」

「フライングするような連中には見えなかったが、マジならずいぶんと悪趣味なこった」

 

身構える小さき牙(スモール・ファング)の族長と、胡散臭げな視線をそれに向けたのは“竜牙”(ドラゴン・タスク)の族長、ゼンベル・ググーだった。

その眼前に突如と出現したのは、蜥蜴人を模したかのような靄だった。

足のない下半分は地面から浮き、その顔は蜥蜴人の骸骨に見える。それと似たアンデッドの大軍を迎え撃った昨日の今日の蜥蜴人にとっては、警戒して当然の姿だった。

そしてある一角からは囁くように、「悪霊……」「罪を犯した……咎人だ」と聞こえた。

 

「クルシュ、あれが何かわかるか?」

「ザ、ザリュース。……どうやらアンデッド、みたいだわ」

 

彼女を庇うように前に出たのは、一人の蜥蜴人だった。

引き締まった肉体と、正体不明の存在を見る眼光は誰よりも鋭く、その心を表すように腰の氷の刀身の武器が煌めいた。

蜥蜴人の四至宝フロスト・ペインを持つ戦士、ザリュース・シャシャが彼の名前だ。緑の爪の長は彼の兄である。

 

「奴らの仲間、なのかしら?」

「……その可能性は低い、筈だ。あの圧倒的な力を持つ敵が、いまさらこんな手段に出る意味がわからない」

「ならアイツは、何者だっつうんだよ」

「それがわかれば苦労はしない。今のところ敵意は感じられないが。さて」

 

問いかけるゼンベルをザリュースはいなす。彼自身、その答えを誰かに教えてもらいたいくらいだ。

その考えに反応したのか、幽霊が進み出る。その動きにより、蜥蜴人の包囲に歪みが生じた。

そしてまた数歩、それは宙を滑るように進む。その先にいたのは、鋭き尻尾の長であった。

それを察知した戦士たちが動き出し、幽霊の眼前にてそれぞれが武器を構える。

張り詰めた空気の中で、あと一歩で激突、という間合いで幽霊は止まった。

 

「なっ!?」

「どういう、なにをしているんだこいつは」

 

その幽霊は、膝を折って頭を垂れたのだ。その姿は子供の蜥蜴人でもわかる、詫び・謝罪・平伏といえる態勢だった。

この光景の真意は知恵深き祭司にも、見聞を広めた旅人であるザリュースやゼンベルにも理解できるものではなかった。

戸惑う集団から進み出たのは、守られる形になっていた鋭き尻尾の長だった。その行動を幾人かが止めようとしたが、意に介さず彼は幽霊に歩み寄る。

伏せたままの幽霊を視界に収めた彼は口を開いた。

 

「おまえだれ、わから、らない。もしかしたら、あーくりょうか?」

 

微動だにしない幽霊を見やり、鋭き尻尾の族長はくぐもった笑いをこぼす。

 

「おまーえ、たたかうあいて、ここのみんな?やつらと?……しめせッ!!」

 

常の間延びした調子から、落雷のような大喝が響いた。その声に多くの蜥蜴人が身を竦ませ、彼のそのような姿を初めて見た者らは目を丸くする。

その声に、幽霊は跳ね上がるように飛び起き、鋭き尻尾の族長へ進む。

彼の部族の者たちがついに我慢できなくなりその幽霊を止めようとするも、その幽姿は族長へと溶けるように消えた。

 

「大丈夫かね?!」

「……し、しんぱい、いらない」

「正直、ここまでのことで心配するなは無理があるが……」

 

駆け寄る小さき牙の族長に返答する。そこへ祭司長であるクルシュとザリュースが近づく。

 

「憑かれた、のか?」

「疲れた?何を言っているのザリュース?」

「……今と同じものを見たことがある。アンデッド、レイスやゴーストは他者に取り憑くんだ。そして宿主を凶暴化、強化したりする」

 

《憑依》を知っていたザリュースだったが、にわかには信じられない。表面上は鋭き尻尾の族長が狂っているようには見えないが。

 

「あくりょう、じょりょくにきた。い、いっしょにたたかーう」

「どういうことなの?」

「まあ、いいんじゃね?正直、奴らの仲間っていうには最初の靄顔より弱い雰囲気だったし、油断を誘ってグサリってするには、どう考えても悪手だろ。

 それに、向うも出張ってきたようだしよ」

 

そう口にしたゼンベルが親指で、敵の陣地を指し示す。その先には、湿地の中央に陣取る蒼透の異形がいた。

仁王立ちのままに向ける視線は、間違いなく蜥蜴人達を捉えていた。

 

 

 

それは氷の氷像に見えた。しかしその表面は氷と言うには硬質で、頑強な鎧を思わせるものだった。

二メートルを優に超える巨体と四本の腕、その内の一対を腕組みし、その視線は一点に固定され微動だにしない。

氷像と述べたのは、その表皮に纏う可視化した冷気にある。凍気とでも言おうか、近づく全てを打ち砕く闘気と言おうか。

ナザリック守護者、コキュートスである。

広い湿地にただ一人、蜥蜴人の群れに相対する。その背後にはナザリックの軍勢六千、不死の軍勢が控えていた。

しかしそれは戦力として期待されていない。敵を威圧し、逃さぬようにする“網”であり“舞台”にすぎない。

国を落とすことも可能な大戦力を実に贅沢な使い方だが、それを許される存在がコキュートスの主人であった。

その主人からの伝言、直接ではなかったがその意を心中で反芻した。

 

「(憑イタ幽霊ヲ捕エヨ、カ)」

 

不可解だが、己の立会いに微塵も障碍と成り得ないが、可能な限りは傷つけないほうがよいのだろうか。

しかし不死兵ナザリック・オールドガーダーで築かれた闘技場へ入る戦士を見、その思いをひとまずのものとする。

 

「(良イ目、良イ戦士ダ。ユエニ惜シイ)」

 

無粋と知りつつも、コキュートスは《氷柱》の魔法を唱える。

こちらへ進む蜥蜴人の眼前、コキュートスとの間に双つの氷柱がそそり立つ。

 

「アラカジメ告ゲテオク。その氷の門ヨリ先ハ死、以外ノ結果ハナイ。ソレデモ進ムカ」

 

その問いに蜥蜴人たちは足を止めた。先頭の二人、氷剣と大剣をそれぞれ背負う兄弟らしい者らが振り返る。

しかし、その視線を受けた319人の瞳は揺るがなかった。

それから、その二人を含んだ目がコキュートスを射抜く。これを見ては、問答はもはや無用であった。

蒼き絶対強者は腕を伸ばし、昆虫じみた指を内側に曲げる。

 

“カカッテ来イ”

 

大剣を持つ蜥蜴人が吼える。彼の持つ剣の先が僅かに震えていることを、コキュートスは慮外へ放る。

 

「突撃ぃぃいいいっ!」

『『オオォォォ!!』』

 

追従し蜥蜴人が走りだす。鈍器、剣、槍、徒手など、それぞれの得物を振りかざし、互いに互いを鼓舞して進む。

叫び声が曇天の湿地に響く。しかしそれが自然を、大地を揺るがそうとも、決して揺るがぬ者が目の前にいた。

無言のコキュートスの周りに冷気が集まり、それは少しずつ渦巻き、逆巻き、極低温の凍気が具現される。

可能ならば、全ての戦士と剣を合わせ、戦場の礼をもって切り伏せたい。

しかしこの戦場は彼だけのものではない。今の彼はナザリックという名を後ろにこの場に立っている。

故に、相応しきものを厳選するため、彼は冥府が騎士の戦技を解き放つ。

 

「《フロスト・オーラ》」

 

瞬間、コキュートスを中心に冷気の壁が広がった。

半球状に広がるそれに蜥蜴人たちが呑まれると、大多数の者はその場で凍死し湿地に倒れこんだ。

 

「……死ヲ前ニシテモ、ソノ歩ミヲ止メヌカ」

 

しかしその絶対零度の中を、60程の蜥蜴人が全身を凍てつかせながらも進み、立ったまま息絶えた。その眼に闘志を映して。

そして残ったのは四人。

氷の剣を構える、勇猛果敢な剣士がいた。巨大な豪腕を持つ、獰猛な者がいた。戦場全体を見渡す、戦巧者がいた。

そして先陣を切って進む、白き鎧の戦士がいた。

 

「(アノ鎧姿ニ、カノ幽霊が宿ルカ。ナラバ)」

 

コキュートスは宙空に手を差し込み、一本の大太刀を取り出す。顕れたのは、刀身が彼の背丈に迫る長物、銘は“斬神刀皇”。

コキュートスを創造した一柱が生み出した、鋭さに並び立つモノなき業物だ。

 

「(憑依シタ者ヲ表出サセルニハ、宿主ヲ倒スガ最良)」

 

彼の持つスキルでもそれは可能であったが、やり過ぎて対象のゴーストを殺すことは避けたい。

そのためにコキュートスが選択したのは、まず物理攻撃で鎧姿を倒し幽霊をあぶり出すことだった。

本来であれば最速の一閃となるその一撃は、常の彼からは考えられぬほどの遅さで空を切る。

しかしこの地に生きる生物にとっては、それは目にも写らぬ神速の一撃であった。

現状でそれを避けるには、持って生まれた才覚と幸運が最低条件である

 

「ナニ?」

 

一刀にて鎧姿を断たんと振った攻撃へ、鎧姿から抜け出た幽霊が跳び込んだ。

その勢いで刀は幽霊に触れ進むも、刃先に僅かな感触を覚えるのみだった。おそらく幽霊の宿主を傷つけたものだろうが、その手応えは浅かった。

 

「(自ラ憑依ヲ解除シタ、ダト?)」

 

コキュートスが知る憑依を使うアンデッドは、憑依したままで戦うのが普通だ。それをわざわざ解除して戦うなど、初めて見るものだった。

それはある意味仕方のないことである。

かつてのユグドラシルでも、多彩な行動を起こす敵モンスターのAIであっても、わざわざ強化(バフ)を解除するAIはそうあるものではなかった。

ならば戦術を駆使するプレイヤーならどうかというと、凄まじく人気のなかった不定形アンデッドを使う者はほとんどおらず、

それとの戦闘経験が豊富なものは稀という事実があった。

ゆえに一箇の、特殊な敵との経験値不足、それがこの奇跡ともいえる刹那を作り上げた要因の一つであった。

そして特殊なスキルを発動していないがため、いくら絶大な一撃であろうと物理耐性に優れる不定形アンデッドには有効足り得ない。

跳び込んだ勢いのまま、幽霊はコキュートスへ迫る。

靄の口を目一杯に開きそのまま喉笛に迫る姿は、まさしく力持たざる者の反撃と呼べるものだった。

 




ここまで書いてて蜥蜴人の勝ち筋が見えない……

そして次回で蜥蜴人編を終わらせて王都編に入りたい

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