大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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戦後処理と講和、そして、イタリア…。


60 名残惜しきフィンランド・イタリア寄港

2月5日深夜~6日早朝 ソ連軍攻勢、並びに氷上侵攻作戦失敗。

 

カレリア地峡を中心としたフィンランド軍防衛線に対する総攻撃、並びに奥の手であった凍結したフィンランド湾からの氷上侵攻はその主攻である氷上侵攻が阻止・失敗した為にソ連軍の総攻撃は頓挫、夜が明ける前にソ連軍は攻勢を諦め撤退した。

 

同6日昼頃 フィンランド政府、講和を決定。

 

上記のソ連軍総攻撃を防ぎきったマンネルハイム元帥はフィンランド政府に対して講和を打診。

これを受けフィンランド政府は必要のない戦争の長期化を避ける為(更に今までの戦闘で充分な成果があった為)、打診を受けいれ講和を決定した。

なお、日本政府は『当事者はフィンランド政府であり、その決定に従う』とし、日本側も受け入れる方針であった。

 

2月13日 フィンランド・ソ連講和交渉開始。

  20日 両国講和交渉完了。

  21日 フィンランド・ソ連講和条約締結。

 

ドイツの仲介により、ベルリンにてフィンランド・ソ連の講和交渉が開始された。

フィンランド側はカレリア地峡の占領地を含めた国境線の認定を求め、ソ連側はそれの否定と領土割譲を求めた。

だが、いくら日本の介入と各国の支援があったからとは言え、ソ連側が一方的に叩かれ、終始フィンランドの有利に進んだ以上、ソ連側の要求など聞く必要もなく、最初から不利を自覚していたソ連側は最終的にフィンランド側の要求を受け入れ、講和条約が締結された。

なお、フィンランド側は賠償の一環として、フィンランド湾海戦で座礁・破棄された(撃沈扱い)巡洋艦キーロフをサルベージしている。

 

2月22日 日本政府、フィンランド派遣軍、並びに英国表敬艦隊に帰還命令を通達。

 

 

 

一週間後 2月29日 トゥルク冲 朝顔艦橋

 

 

「異国の地と言えど、4ヶ月近く居た為か、愛執が付きまといますな」

 

 

「なに、また来る事は出来る。まあ、その時は親善航海の様に平和な時であれば良いのだがな」

 

少しづつ遠くなっていくトゥルクを見ながら運用長と松島宮が話していた。

帰還命令を受けた表敬艦隊は陸軍・陸戦隊を載せた輸送船団と共に出港した。

トゥルクの街の方に視線を向けると、埠頭近辺はマンネルハイム元帥やフィンランド政府首脳陣を中心に人が溢れんばかりに集まり、艦隊と部隊へ感謝と別れを惜しみ、艦隊と部隊では手空きの人員達が手を振り、それに応えている。

 

 

「……ソ連はこのまま引き下がりますかな?」

 

 

「『否』だな。目的や面子もあるから、いずれ戦力を整えて再侵攻を企むだろう。だが、明日や明後日ではないから、この一時的な平和を謳歌しつつ、フィンランドも備えるだろう」

 

運用長の問いに滝崎が答える。

実際、今回の戦争により、史実以上に消耗している上、ソ連国内並びに勢力圏内に不穏な空気が漂っている。

故にソ連は仕掛けるのに時間が必要なのだ。

 

 

「そうなりますと…また、我々が行く事になるので?」

 

 

「それは解らん。その時に我々や我が国がどうなっているかわらんしな」

 

運用長のぼやきに松島宮はそう答えるしかなかった。

 

 

 

 

3月7日 表敬艦隊・輸送船団、イギリスのプリマスに到着

同地にて大歓迎を受ける。

 

3月9日 表敬艦隊・輸送船団 プリマスより出港

 

 

 

3月27日 イタリア ナポリ 比叡艦内 長官公室

 

プリマスより出港した艦隊と輸送船団は数度の寄港後、イタリアのナポリに燃料等の補給の為に寄港した。

そんな中、松島宮と滝崎は比叡の豊田中将に招集された。

 

 

「失礼します。豊田中将、何か問題が発生しましたか?」

 

 

「あぁ、すまない。なかなか厄介な問題が発生した」

 

入室直ぐの滝崎の問いに豊田中将が答える。

なお、長官公室には小澤少将と山下中将も居た。

 

 

「厄介…それは外交的にですか? それとも艦隊的に?」

 

 

「両方だな。実はムッソリーニ統領が『冬戦争に参加した我々現場首脳陣と会いたい』と要請してきたんだ」

 

松島宮の質問に豊田中将の代わりに山下中将が答える。

 

 

「確かにそれは…厄介ですね」

 

 

「冬戦争ならともかく、下手に我々が他国の政治と絡むのは避けたいのだが…滝崎君、君のムッソリーニ評はどうかね?」

 

 

滝崎の呟きに小澤少将が訊いてくる。

 

 

「そうですね…ヒトラーやスターリンと強烈な独裁者がいる中でですと、ムッソリーニは『逆に何をした?』と問いたくなる程、地味で目立たない独裁者ですね」

 

 

「なんだそりゃ?」

 

滝崎の返答に皆が思った事を松島宮がツッコミ代わりに言った。

 

 

「いや、確かにエチオピア侵攻とか、スペイン内戦介入とかあるよ。でもね、それ以外ってなると、ファシズムの発端者とか、まあ、地味と言うか、微妙と言うか…ただ、教皇領帰属問題や、イタリアマフィア摘発など、イタリア国内の問題解決に尽力したり、為政者として後世のイタリアでは評価されています。また、ドイツと防共協定を結んではいますが、彼とファシスト党はヒトラーに同調せず、国内のユダヤ人保護に努めた、と後年に言われています」

 

 

「あー、つまり、今回の件は…」

 

 

「本人に政治的意図はなく、人気取りか、単純に本人が会いたいのが理由かな」

 

滝崎の返答に松島宮だけでなく、豊田中将ら3人も苦笑いを浮かべる。

 

 

「政治的意図がないのはわかったが…さて、我々も忙しい身だ。断るにしても、体裁は整えんとな」

 

多分、本音としては『ややこしい事になりそうだから、会いたくない』と言うオーラが見え隠れしているが、大人として『断り方』を模索しようとする豊田中将。

それを解決したのは松島宮だった。

 

 

「なら、豊田中将。私が行きましょうか?」

 

 

「「「「えっ!?」」」」

 

流石の提案に滝崎含めて4人が驚く。

 

 

「首脳陣の代替としてなら、皇族である私が行けば無下には出来ません」

 

 

「いや、そうだが…それはそれで本土に帰った後が…」

 

困り顔の小澤少将。

 

 

「もちろん、条件をつけます。『ローマ法皇とイタリア国王に謁見してから』と。皇族が他国の元首を無視するのは無礼ですので」

 

ニヤリと微笑みながら松島宮が言う。

これに意図を察した豊田中将が頷く。

 

 

「わかった、そう先方には伝えよう。滝崎君、同行は頼むよ」

 

 

「わかりました」

 

 

 

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