大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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さあ、ピクニックですよ!
(某モロッコの恐怖からの引用)


55 ヤ号作戦

1月16日 深夜 フィンランド湾 カレリア地峡沿岸

 

旗艦比叡艦橋

 

 

「長官、時間です」

 

時計の針が11時を指したのを確認し、士官が報告した。

 

 

「うむ……では、予定通り、『ヤ号作戦』を開始する」

 

 

「はい。艦隊、撃ち方始め!!」

 

その指示の下、比叡、霧島、妙高、那智、足柄、羽黒が艦砲射撃を開始する。

また、フィンランド海軍から海防戦艦のイルマリネンとヴァイナモイネンもこの艦砲射撃に参加している。

第二水雷戦隊と朝顔は周辺警戒である。

 

 

 

朝顔艦橋

 

 

「旗艦比叡をはじめ、艦砲射撃を開始しました」

 

 

「あぁ…しかし、夜だから余計に砲火が目立つな」

 

警戒中にも関わらず、運用長の報告に場違い感たっぷりな感想を述べる滝崎。

 

 

「まったく、そんな間抜けな感想を言ってる暇があるなら、しっかり警戒しろ。漂流してる機雷や、潜水艦の魚雷をくらいたくなければな」

 

それを横で聞いていた松島宮が呆れながら言った。

 

 

「そろそろ、陸攻隊が合流する時間ですが…あっ、来ましたな」

 

運用長が腕時計を見ながら言った瞬間、タイミングを合わせたかの様に96陸攻隊と護衛の零戦隊が飛来する。

そして、天城や赤城から第二次攻撃隊が発艦し、合流しながら一路レニングラードへ飛んでいく。

 

 

 

同時刻 レニングラード ソ連軍司令部

 

 

 

「なんだ!? この電話の騒がしさは!!」

 

 

「あっ、ティモシェンコ将軍!!」

 

就寝中を起こされた為か、周囲の電話の呼び出し音で更に不機嫌になったティモシェンコが悪態を吐きながら訊く。

 

 

「そ、それが…日本軍とフィンランド軍による攻勢が…」

 

 

「なに!? 嫌がらせの夜襲ではなかったのか!?」

 

 

「まったく違います! カレリア地峡で総攻撃が開始されました!! マンネルヘイム線からの制圧射撃だけでなく、フィンランド湾からの日本艦隊からの艦砲射撃、並びに航空攻撃とそれに合わせた地上部隊の一大攻勢です!!」

 

報告する士官の叫びにティモシェンコは事態の深刻さを理解し、周囲を見渡す。

 

 

「じゃ、じゃあ…この電話の嵐は…」

 

 

「指示を請うものばかりです! 既に幾つか途絶しています!!」

 

この言葉にティモシェンコの顔は青くなる。

なにせ、防御側のフィンランド軍が攻め手に転じるなど『専守防衛』と認識していたソ連軍司令部は想定外であったからだ。

しかも、更に追い討ちが発生する。

突如、レニングラードにサイレンが響き渡る。

 

 

「な、なんだ!? 今度はなんだ!?」

 

 

「大変です!! ひ、飛行場が…空襲を…!!」

 

『予想外』の連続にティモシェンコはフリーズするしかなかった。

 

 

 

 

少し前 レニングラードの飛行場

 

 

『前線が空襲を受けている』と言う事で叩き起こされた整備兵とパイロットは戦闘機の発進準備を慌て行っていた。

だが、夜間空襲を想定していなかった事、更に今が冬の1月である事から、『エンジン周囲を焚き火等で暖め』ながら整備しないとダメな事から、この場合の緊急発進は不可能に近い。

故に氷解と照明の為に相当な火や明かりが点在し、手元に注意が注がれていた為、誰も寸前まで『気付かなかった』。

気付いた時には天城、赤城の第一次攻撃隊制空隊の96艦戦や零戦が銃爆撃を開始する寸前であった。

 

 

「に、逃げろ!!!」

 

その絶叫を皮切りに飛行場はあちこちで火災が乱発する。

以前も書いた通り、飛行場にはソ連軍の攻勢の為に航空戦力が集結し、収容施設に入りきらない物はシートを掛け、或いはそのままで置かれていた物ばかりだ。

故に銃撃や小型爆弾で燃料が漏れ、何かしらが原因で引火してしまえば……後は大規模火災の出来上がりである。

 

 

「ぶ、無事な機体を避難させろ!!」

 

 

「無茶言うな! 火に巻かれるぞ!!」

 

 

「なら、火を消せ!!」

 

 

「無理だ、諦めろ! 消火するより、延焼が早い!!」

 

 

「避難しろ! もうダメだ!!」

 

空襲に慌て起きた対空火器要員も現状を見て、持ち場に就くことを諦め、整備兵やパイロット共に避難する。

しかも、これで終わりではない。

何故なら、『本命』の艦爆、艦攻の攻撃はこれからなのである。

 

 

 

 

暫くして レニングラード上空 陸攻隊

 

 

「あの様子だと、飛行場に注意がいってるな」

 

近くの窓から飛行場の方を見ながら大西少将はニヤリとする。

飛行場がある空は赤く染まりつつある。

 

 

「あぁ…さあ、いよいよ、俺達の出番だ」

 

同じく乗り込んでいた山口少将が同じく視線を向けながら言った。

2人は編隊最後尾の機体(鴨番機)に乗り組み、『予備対空監視員』として参加していた。

 

 

「うむ、全員無事に帰還したら、一杯やる約束もあるしな」

 

 

「やれやれ……彼らも誘ってやらねばならんな」

 

親友の言葉に周囲の搭乗員がガッツポーズをやり、それを苦笑いを浮かべて見る山口少将。

そして、概要とは言え、素案を作り、いまは自分の任務を果たす2人の『若者』のことも忘れない。

 

 

『目標に接近。爆撃準備!』

 

中隊ごとに割り当てられた爆撃目標に向かう。

2人の居る中隊はレニングラードの軍需工場が目標である。

 

 

『ちょい右……ズレた、ちょい左……そのまま、そのまま…よし、爆撃よーい!!』

 

爆撃の為に微調整を行う無線の声と共に進む陸攻隊。

そんな中、目標の工場は今頃になって電気が消える。

 

 

「今頃消したか…もう遅い」

 

それを見た山口少将がポツリと呟く。

 

 

『そのまま…よーい、てぇぇ!!』

 

その指示の下、陸攻隊は腹に抱えていた60キロ爆弾を次々に投下する。

 

 

『爆撃成功、帰還するぞ! まだまだ、俺達の仕事は終わってないからな!』

 

……そう、まだ『事』は終わっていないのだ。

 

 

 

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