大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

54 / 63
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

本来なら、昨年中や元旦、1月頃に投稿する予定だったのですが、運営のスパムメール等の除去作業で前作投稿から今月までの約3ヶ月ほどマイページにログイン出来なかった為、本日になってしまいました。

申し訳ありませんでした。


54 コッラー河の戦い

1月15日 ラドガ湖北部 フィンランド軍司令部

 

 

「各防衛線より報告! ソ連軍の攻撃が始まりました!」

 

血相を変えた士官が駆け込みながら報告する。

この報告にこの地域の防衛を担当するフィンランド軍司令官ユハン・ヴォルデマル・ハッグルンド少将と増援として来た栗林少将がテーブルに拡げられた地図に視線を向ける。

 

 

「閣下の増援により、間一髪で防衛線の増強が出来ました」

 

 

「いえいえ。逆に到着が遅れて申し訳ない」

 

 

「仕方ありません。カレリア地峡の防衛は最重要課題。緒戦の勝利で一旦落ち着いたとは言え、予断を許さぬ中、マンネルハイム元帥が切り札に等しい貴殿方を派遣していただいた事は英断です。また、ハルヒン・ゴールの戦いなど、ソ連軍に苦杯を舐めさせて来た貴殿方の来援は、防衛にあたる兵士達を奮い立たせるきっかけになります」

 

 

「それは過大評価と言うものですよ。しかし、こうして我々が居る事によって、お役に立てている。今はそれだけで充分ですよ」

 

方針の検討とは真反対な称賛と謙遜な会話をしているが、それはそれをする余裕があるからだ。

ラドガ湖北部はコッラー河を中心にした防衛線の固守であり、防御一辺倒である。

故に栗林少将の一個歩兵師団の増援で現地の一個師団がカバーしきれなかった場所の防衛と予備兵力の確保に重点を置いていた。

故に後は状況の推移を見極めて対応すれば、まず崩れる事はない。

 

 

「地形的に戦車の機動力は活かせません。せっかくの戦車部隊も予備兵力以外は戦車隠蔽壕で固定砲台となります」

 

 

「かの『バロン西』には酷な事になりましたな」

 

 

「大丈夫でしょう。まあ、それを言ってしまえば、私も騎兵の出ですから、暴れたいところですが…説得には苦労しましたが、西君も上手い具合にやりますよ」

 

そう言って栗林少将は地図の一点を見つめる。

そこはこのコッラー河防衛線の要にして、防衛線の自信の現れとも言える場所だからだった。

 

 

 

コッラー河防衛線の一つ 小高い丘

 

 

 

「いいか、何時も通りだ。まだ撃つな。引き付けろ」

 

この防衛陣地の指揮官である第6中隊(カワウ中隊)アーネル・エドヴァルド・ユーティライネン中尉は指揮下の約30名の兵士に指示を出す。

何時も通りの砲兵による事前制圧射撃後に大兵力の集団で接近してくるソ連兵の群れ。

ユーティライネン中尉の部隊と増援の日本軍からの2個歩兵中隊は向ける火器を向けて待ち構える。

 

 

「ニシ、戦車と狙える奴は頼む」

 

 

『わかっている。そっちもしくじるな』

 

有線の野戦電話で戦車隠蔽壕にダックインしている戦車隊を指揮している西少佐。

何かの波長が合ったのか、ツーカーで話していた。

 

 

「よーし……いいか、ハユハの狙撃が合図だ。それまで絶対に撃つな」

 

ジリジリと近付くソ連軍兵士の群れ。

そんな中、指揮官とおぼしき士官が一発の銃声と共に倒れる。

 

 

「今だ! 撃て! 撃て!!」

 

その狙撃が合図であったかの様にフィンランド軍、並びに日本軍も射撃を開始する。

 

 

 

 

「伏せろ! 伏せろ!! 狙撃だ!!」

 

先頭の士官がヘッドショットされた瞬間、古参兵が慌て伏せさせる。

 

 

「間違いねえ! ヘイヘの仕業だ!」

 

 

「死神だ! 『白い死神』が現れた!!」

 

狙撃にソ連兵達に動揺がはしる。

特に『白い死神』ことシモン・ヘイヘの狙撃である事に恐怖心が沸き立ち、それが拡がってしまえばどれ程の大兵力と武器・弾薬、そして、新兵器があったとしても、『烏合の衆』になるのは古今東西変わらぬ『結果』なのだ。

 

 

「何をしている! 早く…」

 

伏せたまま前進しない歩兵を前進させようとした政治将校がシモン・ヘイヘの狙撃に倒れる。

 

 

「くそ! こんなんで進めるか!」

 

 

「それより、なんだよ!? この弾幕は!? 明らかに人数が増えてるぞ!!」

 

元の人数に2個中隊の増員であるので、その弾幕は今までとは比べるものではない。

 

 

「標的、歩兵後方のT-26…撃て!」

 

西少佐の指示にチハ改の47㎜砲から徹甲弾が発射され、T-26を撃破する。

 

 

「ある程度捌いたら、弾種を榴弾に変更。露助に浴びせろ」

 

 

「はい」

 

敵情を見ながら西少佐が方針を定める。

実際、ここで全て撃破しなくても、フィンランド軍・日本軍の対戦車砲や無反動砲(日本側が供与)がある為、問題はない。

そんな中……

 

 

「…………」

 

『白い死神』シモン・ヘイヘは静かに次の標的に銃口を向ける。

反射光を嫌い、スコープを付けずに狙う次の標的はT-26の車長だ。

そして、車長ハッチから身を乗り出していた車長は次の瞬間、ハッチ周辺を血に染め、物言わぬ骸になっていた。

 

 

「くそ! 前と状況が違い過ぎる!! おい! 他所の状況は!?」

 

誰が指揮権を継承してるかも解らない中、兵士と共に伏せてやり過ごしていた少尉が手近にいた通信兵に状況を訊く。

 

 

「ダメです! 他の所も似たり寄ったりです! しかも…」

 

 

「しかも? なんだ!?」

 

 

「不確定も含めて…ヤポンスキーが居ます!」

 

その一言に少尉を含めた周囲の空気が別の意味で凍る。

 

 

「…撤退だ! 撤退するぞ!」

 

 

「いいんですかい、少尉殿?」

 

ベテランの古参軍曹が少尉に訊く。

 

 

「ふん、こんな場所で死ぬ気ない。しかも、今までと状況が違う…死神のスナイパーに疫病神な日本軍が居るなんて、魔女の婆さんの呪いだ! それとも、軍曹。こんな、焚き火に氷を投げ込む様な状況に打開策はあるか?」

 

 

「いやー、悪知恵に自信がある私も、流石に…」

 

苦笑いを浮かべながら言う軍曹に少尉も呆れる。

 

 

「真面目に返すな…日本軍が居るだけで言い分としては充分だ! 撤退!!」

 

この指示に少尉が率いる部隊が撤退すると、他の部隊もつられる様に撤退していく。

これを止めようとする士官や政治将校はシモン・ヘイヘが狙撃で処理していく。

後に『キラーヒル(殺戮の丘)』と呼ばれるこの防衛地点のこの日の攻撃はこれで終了した。

 

 

 

結局、この日のコッラー河防衛線に対する攻撃はソ連軍の失敗に終わった。

しかし、普段とは違ったのは参加部隊から『日本軍がいた』と言う情報が届けられ、この地域の攻略を担当していた前線司令部は前線からの『情報』とそれを基にした『推測』により、日本軍が同地の増援に『最低でも2個歩兵師団と1個戦車連隊が展開している』とフィンランド侵攻軍司令部に報告していた。

(実際は1個歩兵師団と2個戦車中隊、1個機動山砲中隊)

この報告にレニングラードの侵攻軍司令部はラドガ湖方面への増強も必要になった事から、攻勢準備の修正と調整が必要になり、頭を抱える事になった。

 

……まあ、そんな修正や調整すら吹っ飛ぶ事になるのだが。

 

 

 

 

次号へ




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。