昨日、これを書き上げ、次号を書いてたら、昨日1日で書き上がったので、お昼頃に投稿予定。
12月19日 ロンドンタイムズ号外
『フィンランド湾にて海戦! 日本海軍勝利!!』
(勝利の影に勇敢な駆逐艦の存在!!)
本日午前1時頃(現地時間)、フィンランド湾を哨戒中の日本海軍駆逐艦『朝顔』がソ連海軍巡洋艦『キーロフ』、並びに同海軍戦艦『ガングート』と遭遇・交戦した。
『朝顔』は『ガングート』に魚雷を発射、命中後も執拗に追撃し、救援到着まで接触を続けた。
その後、『キーロフ』は日本海軍巡洋艦『妙高』『那智』、『ガングート』は日本海軍戦艦『比叡』とそれぞれ交戦、2隻は沈没を避ける為、座礁・放棄された。なお、『ガングート』は放棄後、大爆発をおこしている。
なお、『朝顔』には日本の皇族が艦長として乗り込んいる。
同ロンドンタイムズ 夕刊 チャーチル卿へのインタビュー
『今回の『フィンランド湾海戦』はこの『冬戦争』の縮図の様な戦いであった。(中略)いま戦う勇者達に幸があらん事を』
12月22日……『トルヴァヤルヴィの戦い』が終結。フィンランド軍の大勝利に終わる。
なお、この戦いで『フィンランド湾海戦』のフィンランドの号外を宣伝ビラ代わりにばら蒔き、ソ連軍兵士の戦意・士気低下の一因となった。
12月24日 トゥルク近郊の飛行場
この日、豊田中将、小澤少将と共に松島宮と滝崎は防寒服姿で来る筈の面々を待っていた。
「来ましたね」
双眼鏡で飛来を確認した滝崎が報せる。
視線の先にはポツリポツリと黒い点…接近と共にそれが『空の貴婦人』と呼ばれる96式陸上攻撃機の編隊だと解る。
その編隊が次々と着陸し、編隊最後の機体からこの陸攻隊の司令と参謀兼親友が降りてきた。
「おう、多聞丸、大西、待っていたぞ」
降りてきたのは飛行服姿の山口多聞少将と大西瀧治郎少将。
2人はイギリスを経由してこの陸攻隊を率いてやって来た。
「イギリスではどうだったかな?」
「フィンランド海戦の一件もあり、日本のお株は日々上がっております」
「我々と一緒だった陸軍航空隊も随分歓迎されましたよ。それと陸軍航空隊ですが、ストックホルムに到着し、近日中に展開する予定です」
山口・大西両少将が豊田中将、小澤少将と話している間に近寄って来た松島宮と滝崎に大西少将が何かを思い出したのか、2人に話を振る。
「おぉ、そうだ、そうだ。君達2人にチャーチル卿から伝言を預かっているよ」
「はあ…伝言ですか?」
「うむ、『暴れるのは構わんが、姫様が興奮するから程々にな』だそうだ」
「「あはは……」」
大西少将の言葉に意味を察した2人は苦笑いを浮かべるしかなかった。
暫くして トゥルク 日本海軍臨時司令部
フィンランド政府から貸し出されたホテルの臨時司令部へと移動した一行は今後の話を始めた。
「昨日、マンネルハイム元帥に会ってきた。先のフィンランド湾海戦の勝利に対する賛辞と、今までの協力を感謝された。特にフィンランド湾海戦での勝利と戦果は前線での将兵のみならず、国民を奮い立たせる事になり、また、ソ連軍に大きな動揺を与えた、と言う事もあってな」
豊田中将の言葉に他の5人も一斉に頷いた。
「しかし、先の見えない中での光明とは言え、現実的な状況はどうなのでしょうか?」
そんな中で山口少将は真剣な表情で質問した。
これに豊田中将は苦い顔になりながら答える。
「うむ、山口君の言う通りだ。マンネルハイム元帥も仰っていたが、確かに前線はフィンランド軍の奮闘もあって、ソ連軍相手に互角以上に戦っている。だが、この状況がいつまで続くか、或いはこの状況がいつまでも続くのは不味いのは確かだ。我が国より国力で劣るフィンランドとしては、我が国はもちろん、近隣ヨーロッパ諸国の援助が必要なのだが…」
「ドイツの直接・間接的圧力によってヨーロッパ諸国の援助が届かない、これがフィンランドの頭痛の種の一つ、と?」
豊田中将の言葉に滝崎が続ける形で口を出す。
「そうだ……そう言えば、君はこの先を知っているんだったな。君なりの打開策はあるのかな?」
豊田中将が滝崎に話を振る。
「正直に申しますと、ドイツからの圧力はフィンランドや我々より、日本政府が対処する案件ですので…まさか、『圧力を中止しろ』と言って、キール軍港を襲撃する訳にもいきませんし」
「お前は一言多すぎだ」
そう言って松島宮が夫婦漫才の様にツッコミがてらに頭を叩く。
それに豊田中将らがニヤニヤと笑い出す。
「とりあえず、我々派遣部隊がやれる事は今の攻勢を防ぎきる事です。このまま何もなければ、フィンランド軍はソ連軍の攻勢に勝利し、一旦ソ連軍は大規模攻勢の為の準備期間に入ります」
「だが、その大規模攻勢が始まれば、フィンランド軍に勝機はあるのかね? どれ程かは解らんが、それこそ、数十万や百万の兵力や戦力をぶつけられれば、しかも、冬が終わってしまえば、地の利があるフィンランド軍と言えど、最終的に押し潰されてしまうぞ?」
大西少将の発言に皆の視線が滝崎に集まる。
「例えばですが…その準備期間中、ソ連側に大きな『トラブル』が発生し、集積されていた物資、弾薬が消失したとしたら…どうでしょうか?」
「「「「「!?」」」」」
さすがの発言に意を突かれたのか、豊田中将達が驚愕の表情を浮かべる。
「さらに、サンクトペテルブルク…あ、いや、今はレニングラードですね。そこの軍需関係生産施設や鉄道施設にも『トラブル』が発生し、『短期間での復旧が困難』になれば……ソ連側の焦りはどれ程のものでしょうか?」
「そりゃあ…面白い事じゃないか」
「スターリンは怒り心頭。ソ連軍は事態と独裁者の怒りに大いに焦るだろうね」
「だが、それ程上手くいくのかね? 特に施設の復旧ならば、人海戦術でどうにかしそうだが?」
滝崎の言葉にニヤニヤと笑いながら小澤少将と山口少将が言い、大西少将は疑問を提示する。
「それについては…皆様、お耳を拝借」
そう言われ、面々が顔を寄せ合わせ、滝崎がボソボソと説明すると、皆ニヤリと笑う。
「ほほう、面白そうだな」
「なるほど、それならば『短期間』は難しいな」
「お前はホントに時々悪事めいた事を考えるな」
納得した様に豊田中将、大西少将、松島宮が言った。
「無論、これは素人の素案なので、専門家の意見が必要ですが…」
「そこは心配するな。よし、早速、艦隊や陸軍、フィンランド軍に話をしよう。地元の事なら、フィンランドは色々と情報があるだろうし、彼らもこの事には乗るだろう」
「では、我々航空隊も内々に準備を進めましょう」
この場の全員の賛成により、滝崎の『素案の策』は動き始めた。
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