大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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さあ、海戦ですよ!
(もちろん、主人公ら参加)


48 フィンランド湾海戦 前編

12月7日~……フィンランド中部で『スオムッサルミの戦い』が始まる。(翌年1月8日まで続く)

 

12月12日~……ラドガ湖北岸で『トルヴァヤルヴィの戦い』が始まる。(22日にフィンランド軍勝利で終結)

 

(冬戦争非関連事項)

12月12日……第一回欧州諸国巡回大西洋航路船『新田丸』がウルグアイ沖でドイツ海軍艦艇の臨検を受ける。

なお、ドイツ海軍艦艇は接触時の誰何で日本船と判明すると、艦長自らが新田丸へ謝罪に赴いた事もあり、日本側もそれ以上問題にする事はなかった。(一応、双方本国へ報告はしている)

 

 

 

その最中……12月18日 午後11時頃 フィンランド湾 朝顔艦橋

 

 

「うへ~、凄い霧だな~。吹雪がおさまって、北極圏の星空が見えると思ってたのにな~」

 

 

「まったく、夜間哨戒任務1日目に何を言ってるんだ、お前は?」

 

朝顔の露天艦橋で防寒着で着膨れした滝崎が濃霧で白一色な空と海を見ながらそう呟くと、隣で聞いていた松島宮が呆れながら言った。

 

 

「いや、せっかくだから、そんな楽しみでも持って哨戒任務にあたろうとしただけなんだけど」

 

 

「なるほど、ものは考えようですな。しかし、北方で経験があるとはいえ、この濃霧は厄介ですな」

 

滝崎の言葉に運用長が肯定しつつ、周囲を見ながら愚痴る。

現在、朝顔は単独でフィンランド湾の哨戒・警戒中であり、艦橋を含めた上甲板にいる人間全員が周囲を警戒しているのだが、濃霧と言う事もあり、難儀している。

 

 

「こんな時にレ…電波探信儀があればな」

 

 

「無い物ねだりをするな、馬鹿」

 

ついつい言いなれた名称を口にしそうになり、日本語名称に言い直す滝崎に松島宮は呆れながら注意する。

 

 

(で、史実のソ連海軍の動きは?)

 

 

(残念ながら…奴ら、目立った動きをしていないんだ。侵攻支援はしていたんだろうけど、余りに情報が少ないんだ)

 

そして、松島宮が滝崎に近付き、ヒソヒソと史実の確認をする。

 

 

(なら、何か動きぐらいあるだろう?)

 

 

(と言ってもね…知っているのは明日19日にフィンランド湾封鎖を開始する事と、巡洋艦キーロフが沿岸砲台の逆襲を受けて逃げたぐらいさ。多分、適当に対地支援砲撃はしてたんだろうけど、具体的な話はさっき言った2つのみだ)

 

 

(なんだ、それは……よほど、役に立たなかったのか)

 

滝崎の話に松島宮は呆れていた。

 

 

2時間後 19日 午前1時頃

 

 

「相も変わらず、霧が深いですな」

 

 

「僚艦がいないから、船同士での接触事故の心配はしなくていいんだがな」

 

運用長のぼやきに松島宮が呟く。

朝顔は晴れない霧の中で哨戒を続けていた。

が、そんな平穏な時間は突如終わりを迎えた。

 

 

「前方正面! 何かいます!」

 

前方監視の水兵の叫びに誰もが前方に視線を向けて注視する。

そして、霧を切り裂くかの様に艦首が出てきた。

 

 

「衝突するぞ! 面舵!!」

 

艦首の向く先が自分達だと解った松島宮が叫ぶ。

操舵手が慌てながら冷静に操舵輪を面舵(右側)へ回す。

衝突を避けた朝顔は手空きの乗組員が衝突未遂を犯した相手を確認する。

 

 

「あれは…キーロフ型か!?」

 

 

「…はい、間違いありません。キーロフ型ですな」

 

声を抑えながら叫ぶ滝崎に運用長も声を抑え気味に答える。

が、これだけでは終わらなかった。

 

 

「後ろに続いてデカブツが来ます!」

 

 

「デカブツ……まさか…」

 

 

「…この付近でソ連のデカブツとなれば……ガングート型かと」

 

水兵の報告と滝崎、運用長の会話に艦橋どころか、艦橋の空気を読み取った朝顔全体が実に『不味い』状況を認識した。

後ろにキーロフ型巡洋艦、前にガングート型戦艦、格上のサンドイッチでは800トンの二等駆逐艦などボロ雑巾にする事など容易い事だ。

しかし、である……

 

 

「総員戦闘配置! 水雷長、魚雷発射管用意! 砲術長、各銃砲射撃用意!」

 

この状況下ながら、松島宮は闘志を剥き出しで指示を出す。

 

 

「…まさかと思うが、喧嘩を売るつもりかい?」

 

 

「ほう? 衝突されそうになったから、とおめおめ逃げて泣き寝入りするか? 一言文句を言っても罰は当たらんだろう」

 

 

「うーん、『一言文句』が銃砲弾と魚雷を撃ち込む、物騒なはなしなんだかね」

 

松島宮の答えに滝崎は苦笑いを浮かべる。

だが、滝崎自身は止める気はなかった。

 

 

「では、やりますか。通信長、頼む」

 

 

「わかりました」

 

やる気を確認した運用長は通信長に『敵艦発見』の通報を行わさせる。

乗組員達も目の前の獲物に嬉々しながら戦闘用意を行う。

特に魚雷発射管を降ろされ、出番が無いと思っていた水雷科員は思わぬ出番と『槍一番』の獲物と興奮もあり、本当に嬉しそうに準備を行う。

 

 

「敵戦艦の方はどうだ?」

 

 

「気付いておりません。ホントに間抜けな連中ですな」

 

 

「うーん、なんか盗っ人みたい」

 

こそこそと近付く朝顔。

だが、流石に……

 

 

「あ、目標の甲板に人が…艦長、気付かれました!」

 

此方に気付いたソ連海軍水兵が艦内に入るのを目撃した見張りの水兵が叫ぶ。

 

 

「砲術長! 牽制でもよい、やたらめったらで撃ちまくれ!!」

 

 

「はい! 相手はデカブツだ! 目を瞑っても当たるぞ! 撃ち方始め!」

 

砲術長の指示に各銃砲座から射撃が始まり、たちまち戦艦に命中を続発させる。

 

 

 

「艦長! 何時でもどうぞ!!」

 

 

「よし! 発射!!」

 

 

「てぇー!!!」

 

水雷長の報告に松島宮は発射指示を出す。

そして、水雷長の気迫の入った発射命令に応えるかの様に朝顔唯一の6年式53cm連装魚雷発射管から53cm魚雷が発射される。

 

 

「時間です!」

 

至近距離から全速力で逃げる朝顔。

そんな中、水雷長はストップウォッチを眺めながら叫んだ。

 

 

 

 

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