(微妙に時事ネタですが)いよいよ、冬戦争へ。
12月1日……フィンランド国境の都市テリヨキ(現ゼレノブルスク)にて、オットー・クーシネン首班の『フィンランド民主共和国』を樹立。
ソ連は共和国を『フィンランドの正統的な政府』として、現フィンランド政府との交渉を一切拒否した。
2時間後、大日本帝国政府は『我が国はソ連のフィンランド進攻、並びに傀儡政権を容認しない。正統的な現フィンランド政府を支持し、フィンランドに対し、出来得る限りの全面支援を行う』と発表。
と同時に、動向を見守っていた表敬艦隊がソ連軍航空隊の攻撃を受けた事を表明し、ソ連政府に抗議した。
更に2時間後、ソ連政府はこの抗議を受け付けず、両国関係は悪化した。
なお、この件についてイギリスは『フィンランドと日本を支持する』とチャーチル卿がイギリス代表としてコメントするのみだった。
12月2日……ストックホルムで待機していた帝国陸軍派遣部隊を乗せた輸送船団がフィンランドのトゥルク港に到着。
その後、鉄道にてヘルシンキに移動。
なお、陸軍派遣部隊は二個歩兵師団、一個増強戦車連隊(二個中隊増)、一個野戦高射砲連隊、衛生・通信・補給・防疫給水などの後方支援部隊を加えた編成である。
12月3日 ミッケリ
ヘルシンキより前線に近いミッケリに司令部を移したマンネルヘイム元帥を追い掛ける形でやって来た陸軍派遣部隊司令部を元帥は温かく出迎えた。
「派遣部隊を預かっております、山下奉文中将です。よろしくお願いします、マンネルヘイム元帥」
「頭を上げてほしい、山下将軍。我が国は孤立無援に等しい中、こうして駆け付けてくれた貴官ら日本帝国軍に、此方が頭を下げたいぐらいだ。しかも、マニイラでの件の直後、日本大使館から『開戦後、直ぐに部隊を派遣します』と言われた時には驚いたが、まさかこれ程早く来てくれた事に更に驚いたくらいだ」
「それに関しましては…まあ、あちこちに情報の網を張っておりましたし、ソ連の動きは例え自国以外の工作とは言え、注意を払っておりました結果ですので」
……実のところ、山下中将は派遣部隊司令拝命の際に永田次長から『裏話』を聞かされているのだが、『秘中の秘』である為、今のところは出さないでいる、
「いやいや、それでもありがたい。私はかつて日露戦役に参加していた。また、近年貴国はソ連に対し、国境紛争で幾度も勝利している。君達が来ただけで、我が軍の士気も大いにあがるだろう」
「いえいえ、我々としましても、フィンランド軍の脚を引っ張る事にならない様に致します。それよりも元帥。状況を確認したいのですが?」
「おっと、すまない。では、状況を説明しよう」
そう言ってマンネルヘイム元帥は山下中将ら派遣部隊司令部の面々に地図を見せながら説明する。
「既に開戦からソ連軍は国境部より10㎞程前進している。我が方は防戦しながら後退している。なお、この防戦は焦土作戦の準備の為の時間稼ぎも入っており、今のところは順調にソ連軍を引き込んでいる」
「なるほど…そして、時期をみて引き込んだソ連軍に対し、反撃を仕掛ける、と」
「うむ。気象予報ではあと数日すれば天気が崩れ、冬の嵐が発生する。そうなれば、航空偵察はもちろん、地上部隊も慣れてない限り、一切の偵察活動が低調になる。その間に戦力を移動させ、ソ連軍に痛打をくわえる予定だ」
「わかりました。此方も直ぐに動ける様に準備致します」
「もし、何かあれば言ってくれたまえ。我々も其方の準備に出来る限り協力しよう」
……こうして、本格的な『日本の支援』が開始された。
大日本帝国陸軍派遣部隊(第一陣)
二個歩兵師団
一個増強戦車連隊 72輌
(第9戦車連隊+二個中隊)
一個野戦高射砲連隊 32門
通信・衛生などの後方支援諸部隊
主要将校
派遣部隊司令
山下奉文中将
歩兵師団長
栗林 忠道少将
宮崎繁三郎少将
(双方特別戦時昇進)
戦車連隊
重見伊三雄大佐
西 竹一少佐
戦車連隊編成
本部隊
97式中戦車チハ(改)×1(注1)
98式軽戦車ケニ(改)×2(注2)
第一~第五中隊
97式中戦車チハ(改)×10
第六中隊(増加配備)
98式対戦車自走砲改×10
97式中戦車チハ(改)×3
第七中隊(増加配備)
99式機動山砲×10(注3)
※注1……史実のチハ改(新砲塔チハ)の正面装甲に25㎜増加装甲を装着。それ以外は史実のチハ改と同様。
※注2……95式軽戦車ハ号の改良・後継型として開発された98式軽戦車に史実では計画のみに終わったチハ改の砲塔を搭載し、更に25㎜増加装甲を装着。
※注3……95式軽戦車の車体をベースに94式山砲をオープントップ式で固定配置した火力支援車輌。自走砲開発・運用ノウハウの獲得と山砲運用力向上の為に開発。
野戦高射砲連隊装備
ドイツ製8.8㎝ Flak18高射砲 32門(ドイツより購入)
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