大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

39 / 63
新キャラあり。


39 アラビア海海上

9月25日 アラビア海 朝顔艦橋

 

 

「このアラビア海を抜ければ、いよいよ、アフリカ大陸です」

 

 

「そして、その先にはスエズ運河があり、その向こうが地中海と」

 

 

「わかってはいるが、スエズを抜けるにしても、やはりイギリスは遠いな」

 

艦橋にて海図を拡げて運用長と滝崎が話し、隣で聞いていた松島宮がぼやく。

朝顔ら『英国表敬派遣艦隊』は呉を出港後、高雄➡️シンガポール➡️コロンボの順に寄港、給油・給水等を行いながら、今はアラビア海を航行していた。

 

 

「8日前、ソ連がポーランドに侵攻しましたが…艦隊上層部は何か言ってきましたか?」

 

 

「艦隊司令部は何も言わんさ。其方は本国がやる部類だからな。まあ、予定変更はあるかもしれんとは思ったが、別に何もない」

 

運用長の問いに松島宮は答える。

だが、何度も言う様に今回の派遣は『わかった上での派遣』なので、変わる事はほぼ無いのである。

 

 

「まあ、何をするにしても、現状の我々は直接…」

 

そう言っていた滝崎の言葉を切ったのは装備装換により主砲となった艦首の単装10年式12糎高角砲が操作・射撃訓練の為に上空へ空砲を撃ったからである。

 

 

「……そう言えば、スコールが来そうですな」

 

空砲射撃を見ていた運用長がそう言ってある雲を指差す。

その意図を読み取った2人は頷くと松島宮は言った。

 

 

「砲術は訓練終了。総員『風呂』準備。あっ、私の事は気にせんでいいからな」

 

艦船の大小を問わず、真水が貴重であり、特に小型な駆逐艦ではこうしたスコールを利用した『スコール風呂』をする事は日本帝国海軍ではよくある話であった。

 

 

 

暫くして

 

 

 

「にしても、難儀ですな」

 

 

 

「はい?」

 

他の乗組員に混じり、『スコール風呂』で体を洗う滝崎の横で運用長の呟きを聞いて反応する。

 

 

「いえ、艦長が風呂を楽しめないのが残念だと…えっと、なんでしたっけ? 過去の『精神的外傷』? でしたか?」

 

松島宮が女性である事は秘密な為、こうした場合の言い訳として、運用長をはじめとした乗組員には『幼少期に雨の中、下着一枚で走り回り、父親から激怒され、風呂禁止一週間を言い渡された過去が原因』と説明していた。

(この言い訳に『あの父上を知っていたら、絶対にあり得ない出来事と言えるな』と松島宮は苦笑いしていた)

 

 

「まあ、うん……そこは色々と、な」

 

 

「…副長も言われましたが、やはり、皇族の宮様とは大変ですな」

 

こうして、『皇族』と言う事があまり事情を深く訊かれない事になってるのは正直ありがたかった。

 

 

 

 

暫くして 艦内副長室

 

 

「ふう……」

 

松島宮から「このまま艦橋に立つから、お前は休んでおけ」とスコール風呂後に言われた為、何かあったら呼ぶ様に運用長らに言って、自室へと戻ってきた滝崎。

濡れた髪をタオルで拭き、窓にある干し紐に掛けて干すと、ひと息吐いて椅子に座る。

 

 

「さて…ヨーロッパはまだ遠いし、松島宮の方は何とか隠せてるし…安心していいのか、どうなのやら…な」

 

 

「自分は安全圏内だから、他人の心配してるの?」

 

滝崎の呟きに背後から声が掛かる。

振り向くと、滝崎の使っているハンモックからひょっこりと顔を出す少女。

彼女はこの『朝顔』の艦魂である『朝顔』である。

そして、彼女は『松島宮と滝崎の正体を知る』数少ない者である。

 

 

「…あのー、朝顔さん。そこ、私のハンモックなんですが?」

 

 

「いいじゃん、いいじゃん。今は使ってない訳だし…そもそも、魚雷発射管外したり、主砲換えたりして、勝手に弄ってるのは何処の誰かな~?」

 

 

「あの、その件に関して、私は直接関与してないので、文句言われても困ります」

 

なお、本当に滝崎は朝顔の装備換装については『意見は出したが、どれに何をやるかは指定してない。まさか、朝顔にやるとも知らなかった』ので、偶々である。

また、滝崎は普段、ハンモックを使っており、副長室にある備え付けのベッドは使っていない。

理由はベッドで寝れない……ではなく、貧乏性が出て『使うのが贅沢に思えて』使えていないからだ。(つまり、ごく個人心理的な問題である)

 

 

「それよりー、随分と余裕ね?」

 

 

「余裕? いやいや、不安いっぱい、心配いっぱい、心理的にはいっぱいいっぱいだよ」

 

そう言って滝崎は降参ポーズで両手を挙げる。

確かに『結果』は変わってはいる。しかし、それは『日本のみが関連する結果』であって、今から行う『外国の結果すら変える』となると『史実通りになるか』どうかは解らない。

今のところ、『今回を除き』日本として表立った行動は日米開戦まで基本的に取らないつもりだ。

しかし、そもそもとして、今の時点でも『自分の知る推移通りにいくかどうか』に関しては、『良くて確率七割五分』と言いたいし、気が抜けない以上、滝崎の心理的には半分参っている状態だ。

 

 

「それで陸軍でも参謀やれそうな副長なのよね」

 

 

「おだてても何も出ないよ。それに、それも後世のあと知恵ってもんだし…自慢も威張れる事でもないよ」

 

 

「ふ~ん」

 

滝崎の返答に「そんなものかしら?」とも言いたげに返事をする朝顔。

 

 

「まあ、直接的に動くのはもう少し先だし…少しくらいは肩の力を抜いてもいいかもね」

 

自虐的にも聞こえる事を言って延びをする滝崎だった。

 

 

 

 

次号へ

 




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。