大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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今回はリメイク版オリジナルです。
(まあ、人物自体は旧作でも一回ですが、出たんですよね)
そろそろ、人物の再評価が必要かと。



24 忠臣者

11月15日 1800 東京 とある料亭

 

 

 

「君の噂はよく聞いてるよ。あちこちで随分と動き回っている様だね」

 

開口一番に非友好気味な言葉を発言しつつ、ジロリと眼鏡越しにその眼光で睨むその人物を散々『写真』で見て、更にその人物の一端を知る滝崎でさえも内心びびらざるおえない。

 

 

「陸軍には御迷惑をお掛けしない様に努めておりますが…私も人ですので、配慮が足りない部分があるのは謝罪します。東條閣下」

 

そう言って、今回山本次官を通じて会談を申し出てきた本人、対峙する東條英機中将(現関東軍参謀長)に謝罪する。

 

 

「あぁ、ハッキリ言って迷惑しとるよ。海軍軍人の癖に陸軍の事にまで口を出しているからな。更に言うなら、末席とは言え、皇族である松島宮殿下を誑かしている様に見えてる事もな」

 

『カミソリ東條』の渾名通りにスッパリと言い切る東條中将。

色々と刺々しい言葉に滝崎は苦笑いを浮かべ、隣に居る松島宮は怒っていいのか解らず微妙な表情を浮かべる。

 

 

「…だが、永田閣下を救い、更に陸軍のゴタゴタを鎮めてくれたのは事実だ。当事者の1人として礼を述べたい」

 

そう言って頭を下げる東條中将。

 

 

「東條閣下、自分は『歴史改変』の為に行動したまでで、それも完成した訳ではありません。頭を下げて頂く段階では…」

 

 

「そう、今回、こうして会ったのはその真意を問うためだ」

 

下げていた頭を上げる、メモ帳を開きながら言った。

 

 

「君の世界でのこれからは永田閣下から聞いている。もちろん、内容から見ても由々しき事態だ……先に断っておくが、私は戦犯として裁かれる事に関してはどうこう言うつもりはない。アメリカやソ連の暗躍があったとは言え、陛下のご意志に添えず、日米開戦に至った時点で、その謗りを受け、後ろ指を指されるのは覚悟の上だ」

 

そう力強く言った直後、少し目を伏せ、物悲しげな表情になる。

 

 

「だが、だ…陛下を御守りする為に被った汚名が数十年先の未来で足枷になるのは容認できん」

 

その言葉の後、暫く沈黙の間が流れる。

それを変えたのは滝崎だった。

 

 

「閣下にはご息女が居られましたよね?」

 

 

「あぁ…それが?」

 

 

「戦犯だ、敗戦国だの前提は無しとして話ます。もし、年端のいかないご息女が外国に拉致された場合…それを閣下は容認出来ますか?」

 

明らかに地雷的な発言に松島宮は戸惑いの表情を浮かべながら、ぎこちなく東條中将の方に視線を向ける。

もちろん、先程とは比較にならない眼光でギロリと睨み、額の皺が怒りの為かピクピクしている。

 

 

「更にその拉致が当事国政府容認な上、目的も潜入工作員育成の為。しかし、その理由を『過去の侵略の賠償』と面の皮が厚い事を言ってきましたら…」

 

 

「あー、滝崎、もう、その下りはいいと思うぞ」

 

いつの間にか腕組みまでしていた東條中将の様子を見ていた松島宮がヤバいと思い、声を震わせながら止めに入る。

 

 

「……それが、君の世界の日本の現状だと?」

 

 

「国家の義務は国民を守る事です。無論、時にはそう出来ない時はあるでしょう。ですが、明らかな国民への侵害行為に対して対処出来ない。拉致被害自体の認定が遅かったと言え、発生から半世紀近く経過しつつある中、全員を取り返せていない上に、『死亡した』と言われて渡された遺骨を鑑定してみれば別人だった……これは国家国民に対する侮辱もいいところではないでしょうか?」

 

暫く沈黙が流れる。

そして、口を開いたのは東條中将からだった。

 

 

「君の言いたい事はわかった。この話はここまでにしよう。次に戦車開発の件だ。君の事だから、言いたい事は解るな?」

 

 

「本来、統制派は航空戦力の整備・強化が主眼。であるのも関わらず、戦車開発にも力を入れる様に進言した事ですね?」

 

 

「そうだ。お陰で各部署の調整でてんやわんやだ。しかも、陸海軍共同採用の『小型汎用装軌輸送車』、これはイギリスのガーデンロイド系列のユニバーサル・キャリアーの事だそうだな?」

 

メモ帳に目を配りながら、明らかな不満顔の東條中将。

 

 

「はい。それが何か?」

 

 

「イギリスとの関係改善もあるが、何故採用するのかね? 君はチハの量産を勧めていたのなら、チハを汎用化すればよいのではないか?」

 

 

「確かにそうです。ですが、これまた様々な状況的を考えた結果です。まず、小型で小回りも取り回しもよく、日本でも量産出来るのはユニバーサル・キャリアーがほぼ唯一と言っていいでしょう。何より、その姿形から見て解る通り、単純な構造ですから」

 

 

「チハを転用する事への空白期間への対処と稼働率向上か…歩兵、工兵、砲兵、輜重兵等、戦車以外に幅広く採用するのは、機械化による機動力の増強だな。だが、君の事だ、もう一考していそうだが?」

 

 

「戦後の事を考えて、です。戦争が終われば、軍備は縮小され、代わりに日本の国土整備、各種生活必需設備整備の公共工事が増えるでしょうし、農業の機械化も始まります。そうなった場合、企業や工場は生産・整備経験を小型土木・農業機材の開発に活かせる。更に人に関しては兵役中に運転や整備をした経験を活かせる…ほら、御互いに利益がありますよ?」

 

ニコリと笑顔で答えた滝崎にメモを取りながら東條中将は頷くだけだった。

 

 

 

暫くして

 

 

2人が帰り、東條中将のみが残っていた。

しかし、襖が開き、隣の部屋にいた人物が入ってきた。

 

 

「やれやれ、一瞬ヒヤリとしたよ。まさか、あんな事を言うとはね」

 

 

「君が是非に会ってほしい、と言う程はあったな。わざわざ此方を怒らす様に絡めて話題にする胆力もあるとは…にしても、君が慌てるとはな、石原」

 

隣にいたのは石原少将だった。

彼は東條中将が滝崎に対して理不尽な事をした場合のストッパーとして来ていた。

 

 

「で、どうですかな?」

 

 

「ふん、永田閣下が信じるなら、私も信じるしかないさ」

 

そう言って、松島宮の前であった事もあって我慢していた煙草に火をつける東條中将。

しかし、大きく吸い、同じだけ空気と煙を吐くと呟いた。

 

 

「いかんな……まったくもって、いかんな」

 

 

 

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