大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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皆さん、お待たせして申し訳ありませんでした。
今回は感想から出たリメイク版オリジナルです。
まあ、オリジナルでは作中の期間が随分空いていましたからね。
では、どうぞ。


14 陸軍三羽烏

6月18日 舞鶴 松島宮邸

 

 

舞鶴の松島宮邸に珍しく東久邇宮殿下が来訪した。

 

 

「やあ、元気そうだね。本当なら手紙でもよかったのかもしれないが、事が事なんで私が様子見を兼ねて来てしまったよ」

 

 

「わざわざすみません。それで要件とは?」

 

居間に通され、東久邇宮殿下の話を松島宮と共に聞く滝崎。

 

 

「うむ、君は小畑敏四郎中将を知ってるかな?」

 

 

「永田中将を筆頭とした『陸軍三羽烏』と『バーデン=バーデンの密約』の1人ですね。確か皇道派で永田中将とは対露・対支那路線の対立もあって疎遠になっていた筈ですが?」

 

 

「うむ、その小畑中将を中央に戻そうと思う。永田中将も三羽烏の1人、岡村寧次中将もこれには賛成している。どうやら、永田中将はこの機会に関係を修復したいと考えている様だしな」

 

 

「なるほど、対露路線への切り替えなら、小畑中将は是非とも必要ですね。ちなみに岡村中将はどちらに?」

 

 

「今は第2師団師団長だが、何れ支那方面に異動してもらうよ。それで、この案件について意見を聞きたいのだが?」

 

 

「殿下、幾度も申し上げていますが、確かに表向きは統制派主導で内部闘争を収めた形ですが、実態は統制派・皇道派の分解・再統一です。確かに過去の確執などで色々とありましたが、これから来る策略と陰謀、米ソ二大大国との戦いを勝ち抜くには過去の派閥を越えた各個の能力とそれを引き出す柔軟な組織運用が不可欠。皇道派などの過去はこれから来る災厄の前には取るに足らない事ですよ」

 

 

「…ふむ、やはり、君はそう言うか。いや、すまない。わかってはいたが、事が事だけにな」

 

 

「それは仕方無いでしょう。ですが、これは良い機会かも知れません。永田中将と小畑中将の関係修復が上手くいけば、元皇道派の不安感払拭にもなりますし、改めて陸軍内部統一統制のキッカケにもなりますから」

 

 

「うむ。そこでだ、君に小畑中将に会ってもらえないかな?」

 

 

「……えっ、自分がですか?」

 

 

「ふむ、未来を知るお主なら、小畑中将も納得させる事も出来よう。私も賛成だ。あっ、私も同行するからな」

 

東久邇宮殿下の言葉に滝崎が唖然とする中、今まで話に入れなかった松島宮が入ってきた。

 

 

「もちろん、松島宮殿下もご同行してもらいます。なにせ、名目上は貴女と小畑中将が会う事にしていますので」

 

 

「ふむふむ、それなら私も行かなければな。そうだろ、滝崎?」

 

 

「えっ、あっ、あぁ、そうだな……うん、そうだな……(あれ? なんで知らない内に話が進んでいるんだ?)」

 

勝手に話が進んでいる事に滝崎は心中で微妙なツッコミを入れていた。

 

 

7月6日 高知県 小畑中将の実家

 

 

 

「ふむ……君の未来の話は対ソ路線支持した者からすれば悪夢な結果だな」

 

松島宮・滝崎の来訪に快く応じた小畑敏四郎中将は滝崎の『未来』の話を聞いて頷きながら言った。

 

 

「しかし…まさか、支那国民党を使った支那共産党とソ連の絡め技と言うのは皮肉だな」

 

 

「国力の無い日本がリソース選択においてどれかに集中すると言うのは仕方の無い事です。しかし、後から見てみればどちらの主張も間違っていなかった、と言うのはザラにある事でしょう。まあ、未来から来た人間が言えば後知恵で語る傲慢と受け取れるでしょうけど」

 

 

「だが、事実は事実だ。しかも、その第一段階が迫りつつある。だから、君は伝を使って陸軍部内統一を図っているのだろう?」

 

 

「言い出しっぺが何も動いていませんがね。そして、何時までも派閥闘争の事を引き摺っていては、二大大国相手に裏表で互角に戦う事など不可能。しかも、負ければ取り返しもつかない一回勝負ですから」

 

自虐を挟みながら事情を語る滝崎。

そこへ唐突に松島宮が小畑中将に向かって口を開いた。

 

 

「小畑中将閣下、中将閣下が永田中将らと共に『バーデン=バーデンの密約』を交わしたのはそれが未来の為に陸軍を変えようとして行動したのならば、この者の言葉や行動は解る筈です。確かに此奴は言い出しっぺで動いていない。だが、動ける時には命を掛けるし、そもそも、未来の悲劇を知ってるからこそ動いている。先も言いましたが、このまま別個で対応したのでは最終的に日本は焦土化、臣民300万人、内100万人を超える民間人が空襲と実験の様な原爆投下などで屍の山を築く事になる。既にこの事は陛下もご存知の事です。もし、不満とあればこの松島宮徳正王が陛下に直接お聴き出来る様に取り計いますが…如何ですか?」

 

滝崎も唖然とする中、松島宮は小畑中将に対して挑戦とも取れる眼光で見る。

それに対して小畑中将は……

 

 

「……はっはっは、あの事を出されては私も何も言えません。しかし、国の未来が掛かるとなれば軍人である以上、協力しましょう。まずは永田と仲直りしなければなりませんな」

 

 

 

………暫く経ち、小畑中将はかつての盟友永田中将・岡村中将と会合を行い、此処に皇道派・統制派の正式な和解と『陸軍三羽烏』の再結成となった。

そして、陸軍内の統制が図られ、密かに対支那共産党・対ソ連を主眼とした方針が固められるのであった。

 

 

 

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