八咫烏は勘違う(旧版)   作:マスクドライダー

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唐 突 な 番 外 篇。
いきなりで本当に申し訳ないです。
まぁアレです、少し息抜きですよ……イコールで本篇が行き詰まってるって事ですが。

記念すべき1発目では、弾が黒乃を好きになった理由を補完します。
番外篇と言う事で、勘違い要素は全くないですがご了承ください。


番外篇 サイドストーリー
キミを好きになったワケ


 俗に言うゴールデンタイムの五反田家リビングでは、赤髪の兄妹がボケーッとした様子でテレビの画面を眺めていた。画面の中では、勢いだけで流行ったようなお笑い芸人が必死に持ちネタを披露している。この兄妹からすればどうでも良いようなネタなのか、微塵も頬がつり上がりはしない。

 

「お兄さぁ。結局いつお姉の事好きになったの?」

「……なんで蘭にんなこと話さないとなんねぇんだよ。」

「妹としては兄の恋愛事情が気になるもんなんです~。」

「別にいいだろ、いつだってよ。始まる前から終わってる恋なんだから。」

 

 藪から棒に蘭がそう質問すると、弾は少し不機嫌な声色で返した。お互いに見向きもしないでこんな会話を繰り広げる辺り、どうにも仲が良いのか悪いのか解からない兄妹である。しかし、どちらにせよ弾に答える気なんてさらさらなかった。だが……やはり蘭の方が1枚上手のようだ。

 

「ふ~ん……?じゃ、この間お姉のブラジャー見てたの言いふらそっか?鈴さんあたりに。」

「なっ……てめっ!?汚ねーぞ蘭!」

「身から出た錆でしょ?話してくれたらチャラにしてあげるから。」

「ぐ……ぐぬぬ……!」

 

 本人ではなく鈴音に言うと脅すあたり、蘭は兄の事を良く解っている。黒乃に話したところで……許される事なんて一目瞭然だ。しかし、あの鈴音がそんな事を聞かされて黙っていられるはずもない……。弾は机を叩いて抗議するが、そう言われては立つ瀬がなかった。

 

「だぁ~くっそ……!なんで暇つぶしにんなこっ恥ずかしい話をせにゃならんのだ!」

「アハハ、ばれた?」

「良いか!?断っとくがこればっかりは誰にも言いふらすなよ!」

「大丈夫だって、妹を信じなさい。」

 

 観念するしかないと悟った弾だが、やはり納得はいかないようで。男にしては長い赤髪を豪快に掻き毟りながら不満を漏らした。必死の形相で蘭に詰め寄ると、本当に仕方がないから話すという旨を伝える。いまいち信用ならないような返答をされたせいか、弾は調子の良い奴……なんて呟く。すると少し間を開けて、弾は語りだした。

 

「あ~……ホラ、俺が中1ん時の冬休み前くらいに風邪ひいた時あったろ。」

「そう……だっけ。ん~……あんまり覚えてないかも。」

「とにかくあったんだ。まぁ……そん時だな……。」

 

 

 

 

 

 

(だっる……。)

 

 寒さも厳しいとある日の日曜日。弾は日曜日だというのに、体調を崩して寝込んでしまっていた。金曜日あたりに少し違和感を感じていたものの、油断が祟ってこの有様である。冬休みに入り、貴重な連休を潰すのよりかはマシか……なんて思いつつも、気だるさのせいか目が覚めてから1歩もベッドから移動してはいなかった。

 

『ピーンポーン!』

(はぁ……マジかよ……。)

 

 そんな折に、家を訪ねる者が居た。インターホンが鳴ったという事は、食堂の方では無く五反田家に用事があるという事だ。最悪なのが……現在は家に弾の他に誰も居ないという現状。食堂は定休日で、厳はたまの休みを満喫している、恐らくパチンコか麻雀で。両親と蘭は揃って何処かへと出かけてしまった。息子が風邪なのに出かけるかね普通……なんて思いながら弾は立ち上がった。

 

 家が食堂な都合上、大事な客である可能性も捨てきれない。スルーも考えた弾だが、根が真面目なだけにそれを選択させなかった。重い足取りで何とか玄関まで辿り着くと、マスクを装着して戸を開く。するとそこに居たのは、弾からすれば予想外の人物だった。

 

「どなた様……って、おう……黒乃か……。」

(あり……弾くん風邪ー?良かったじゃん、馬鹿じゃなかったらしいじゃん……ハッハッハ。)

 

 これが一夏なら即帰れと言っていたであろう弾だったが、身体が辛い状況では黒乃は良い薬となるらしい。一方の黒乃は、誰にも聞こえないのに軽い冗談を飛ばして笑う。馬鹿は風邪を引かないという迷信だが、この馬鹿は本当に風邪を引かなさそうで怖い。

 

「ゲーム……この前貸した奴か。そか、わざわざ返しに来てくれて……ゴホッゴホッ!」

(わっ……あんま大丈夫じゃ無さそうだねぇ……。お家の人……誰も居ないんだ。よしっ、それならオジサンが看病したげるよ!)

「ちょっ、黒乃……?」

 

 黒乃が手に携えている物を見て、どういう用事で訪ねて来たのか察した。それは弾が数か月前に貸したゲームで、それの返却に黒乃はやって来た。どちらにせよ暇で遊ぶついでに返しに来たので、時間は有り余っている。そうと決まればと、黒乃は弾を回れ右させて優しく部屋まで誘導させた。

 

「なんか悪りぃな……。ほら、風邪移っちまうとだし……今日は大人しく帰っときな。」

(いや、馬鹿は風邪ひかないから大丈夫。ん~……見た限り、昨日は風呂に入ってなさそうだな。だったら……。)

「おい……黒乃?」

 

 自室に戻して貰った弾は、あくまで黒乃を気遣って帰る事を勧めた。しかしだ……黒乃は1度決めたらなかなか曲げない。弾が余りの辛さに風呂へ入っていない事を察すると、静かに階段を降り……しばらくすると戻って来た。その手には、ホカホカのタオルが握られていた。

 

(お湯に浸して絞ったタオル!んじゃぁ身体拭くからね~。)

「いや黒乃……お前さっきから何やって……うぁ!?」

 

 黒乃は強引に弾の服を脱がせようとするが、いきなり過ぎて抵抗される。普通にやっても男以上の怪力の持ち主だ……今の弾の抵抗など可愛い物。上半身を裸にさせると、タオルが冷たくならない内に弾の身体を拭き始める。これでようやく現状を理解した弾だが……?

 

(え……何これ……?もしかして看病イベント的な!?い、いやいやいや……黒乃だぞ?校内の男の大半を虜にしてる黒乃だぞ……?こんな美味しい事あって良いのか……!?)

(うわぁ……結構汗かいちゃってるな……。コレは服を変えた方が良いね。)

 

 至ってマイペースな黒乃に対して、弾の頭は軽くパニックの状態に陥っていた。そう……弾はとてつもなく美味しい。黒乃に看病されるなど、可能性があるとすれば一夏くらいのものだ。それがこうして看病されているのだから、奇跡にも近いと言っていい。

 

 弾の身体の隅々を拭き終えた黒乃は、乾いたタオルで水滴を拭き取る。そして室内のクローゼットを物色すると、寝巻きらしい服を取り出して弾へと渡した。あまりに至れり尽くせりの始末に、申し訳なさを感じはするが……幸福感の方が勝っているらしい。弾は悟られぬよう取り繕った。

 

(時間帯的に……そろそろお昼か。じゃあ弾くん、少し寝ててな。)

「お、おう……ありがとう。」

 

 ベッドへ横になるのを手伝えば、黒乃は再度階段を下りていく。弾の身体を拭いたタオルと着ていた服を洗濯機の中へ突っ込むと、五反田家リビングの台所へと立つ。冷蔵庫に向かって手を合わせ、スミマセン……勝手に覗きますと謝る。そして、冷蔵庫の扉を開いて中を覗く。

 

(お粥……が良いよな、多分だけど。でもただ白米を炊くだけじゃクオリティが……。ん〜……よしっ、そ・れ・じゃ・あ〜っと。)

 

 黒乃が選んだ材料は……人参、大根、ネギなど具沢山。長い事一夏と半2人暮らしの生活をしてきたおかげか、地味に……どころか相当に料理の腕は立つ。食材を見ただけで完成品が思いつくほどだ。黒乃は残り必要そうな調味料を取り出すと、早速料理を開始した。

 

(野菜は……食べやすいように小さく切ろうか。)

 

 人参は粗みじん切り、大根は擂りおろし、ネギは小さめの輪切りに手早く処理する。それぞれ異なる食感を楽しむ為に変化をつけたのだろう。トントンと、包丁とまな板のかち合う音がしばらく響く。全て切り終えた黒乃は、これまたそこかしこを物色し、1人前用の土鍋を発見した。

 

(いつまでもアツアツで食べられるだろうし……。)

 

 食べ手に対する気遣いを忘れないあたり、黒乃らしいといえばらしい。そのらしさが多くの男を虜にしているのだが……。土鍋に適量の水を入れ、切った人参も突っ込んで火にかける。沸騰するまで待つ必要があるのだが、随分と黒乃は暇そうだ。小さな欠伸が漏れる頃、ようやく土鍋の水がグツグツと音を立てる。

 

(よぅし、味付けだね。白だしと……そうだ!アクセントに生姜も擂りおろして入れとこ〜っと。)

 

 ふとした思いつきが良いアイデアなら即採用、黒乃の料理におけるスタイルだ。始めたばかりの頃はそれで失敗する事もあったが、最近は良い方へ転ぶ傾向が強い。沸騰した土鍋の中に調味料を入れると、軽く混ぜてオタマで一掬いして口へ運ぶ。すると黒乃は、心の中でイマイチな顔を浮かべる。

 

(不味くはない……むしろ美味しいけど、なんか一味足りないな……。……最後に溶き卵と醤油でも入れてみよ。)

 

 再び浮かんだアイデアにウンウンと首を頷かせると、米やら切った野菜やらを入れて一煮立ちさせる。ちょうどいい具合に米がふやけると、先ほど思いついた通りに溶き卵を投入。固まらないうちに醤油を回しかけると、もう1度味見をしてみる。今度は納得のいく出来らしい。

 

(うん、美味しい!フフフ……我ながら完璧。)

 

 なんやかんやで料理を楽しんでいる様子の黒乃は、上機嫌で土鍋を盆にのせた。時計を見てみると、時刻は計算通りに昼時だ。後片付けは弾に料理を振舞ってからにしようと、スプーンとスポーツドリンクを片手に階段を登る。そして静か〜にドアを開けた。

 

「……なんかいい匂い。黒乃……もしかして、飯作ってくれたのか!?」

(どうぇい!?テンション高いよ、落ち着こう……?身体に毒だし。ほら、とりあえず水分補給。)

「お、おう……サンキュー。」

 

 黒乃が手料理を振舞ってくれると理解した瞬間、弾は歓喜のあまりに声を張り上げた。あまりに突然の事だったので、黒乃はビクリと身体を反応させた。スポーツドリンクをズイッと差し出すと、部屋の適当な椅子を引っ張って腰掛ける。弾がペットボトルのキャップを閉めたのを確認すると、スプーンに粥を掬って口元へと運ぶ。

 

(はい、あ〜ん。)

「…………。」

(え゛……何その反応……もしかして嫌だった?)

「わーっ!?違う違う!す、少し驚いただけだから……その……た、食べさせてくれると有難いかな〜……って……。」

 

 やはり目の前で発生している奇跡に実感が湧かないようで、弾は呆然と粥を眺める事しかできないでいた。それをあ〜ん拒否と捉えたらしい黒乃は、しょんぼりしながらスプーンを下げる。弾が自分から食べさせてくれと頼んできた事から、それなら良いんだけどと気を取り直して……。

 

(どうかな?自信作なんだけど……。)

「う、美味い……!3種の野菜は違う食感を楽しめ、白だしベースの汁にアクセントに生姜!更には全体のバランスを纏めるために卵閉じにしてトドメに醤油ときたか……!?」

(……グルメ番組かな?)

 

 どういうふうに粥を作ったのかを見抜かれたのが意外なのか、黒乃は目をパチクリさせながら弾を見た。とにかく、口に合ったのならなんだって良い。黒乃は弾の様子を伺いながら、小気味好く粥を食べさせる。しかし、弾は終始照れっぱなしなようだったが……。

 

「黒乃、作って貰っといてなんなんだが……もうこれ以上は食えなさそうだ。」

(そう?じゃあ残りは俺がもらうよ。)

「ぶふぁ!?く、黒乃……それはか、かかかか間接キ……。」

(大丈夫大丈夫、俺ってホントに頑丈だからさ。)

 

 余った粥をおもむろに食べ進めると、弾は盛大に吹き出した。何故なら、それはさっきまで弾が使っていたスプーンだからだ。黒乃は風邪がうつる指摘したいのだろうと考えていたが、そんな事は弾の頭からはすっぽ抜けている。単に……黒乃と間接キスをしている事で頭がいっぱいなのだから。

 

(御馳走さん!じゃ、ちょっと片づけてくるから。)

「あ、あぁ……解かった。」

 

 ほんの少し残っていた粥は、速攻で黒乃の腹へと収まる。両手を合わせて会釈をした後、空になった土鍋やらを指差した。食器を片づけるという旨が伝わったのか、弾は了承の返事をする。降りたり昇ったり忙しい事だが、してもらっている手前で何も言えない。

 

(本当……夢なんじゃねぇのか……?)

 

 ベッドに倒れ込んだ弾は、額に手を当てながらそんな事を思った。学校の裏マドンナと言っても過言では無い黒乃に、甲斐甲斐しく世話をされている。この事実がどうにも信じがたい。身体を拭いて貰い、手料理を作ってもらい、あまつさえ『あ~ん』ときた。

 

(これじゃまるで……。)

 

 まるで黒乃が、俺の彼女みたいじゃないか。……思わずそんな考えが浮かんだ弾だったが、すぐさまそれを否定した。多分だが黒乃は、誰にだってこうする……と。それはある種で正解だが、黒乃と言えど箸にも棒にもかからないような輩にここまでの事はしない。もう少し自分に自信を持って良い物だと思うが。

 

(戻ったよ~。……ありゃ、てっきり寝てると思ってたんだけどなぁ。弾くん、俺が居るからって相手しなくたっていいんだよ?)

「おう終わったか?なんもかもやらせちまって―――」

(ほら、そうやって俺に気ぃ遣う。良いから取りあえず寝よっか。オジサン今日は一緒に居てあげるからさ。)

「……黒乃。」

 

 先ほどまで座っていた椅子に腰かけると、黒乃は片方の手で弾の手を取り、片方の手で優しく弾の頭を撫でた。瞬間、自らの顔が熱くなるのを弾は感じる。もちろん風邪のそれとは違う、どこか甘く、切ないような熱が……心臓の鼓動と共に全身へ走った。

 

(黒乃の手……あったけぇ……。)

 

 これもまた触覚で温かいと感じているのでなく、弾は心でそう感じていた。ずっと握っていたいような、癖になるような温もりだ。足りない、もっとだ。そう思ってしまった弾は、無意識の内に手に力を籠めてしまう。一瞬だけ強張った黒乃の手だったが、後は……同じように強く握り返す。

 

(あぁ……畜生。なんだよ、こんなの……こんなの……好きになっちまうに決まってんじゃねぇか……。)

 

 決して黒乃を何とも思っていなかったわけでは無かった。しかし、黒乃には一夏が居た。だからこそ、黒乃だけは好きになってはいけないと……弾はそう心に決めていたのだ。だが、風邪で心身共に弱っているところへ、こうも男心をくすぐられるような出来事を連発されてはどうしようもない。

 

 黒乃の放つ香り、かすかに聞こえる息遣い、黒乃の柔らかい手……。今の弾にとっては、何もかもが愛おしくて堪らなかった、独占したくて堪らなかった、自分だけの黒乃であってほしいと思っていた。考えれば考えるほど、今まで友人として接してきた黒乃が簡単に崩壊してしまう。

 

 今までだって、それなりに世話にはなってきた。それら全てが、一気に特別な意味を孕んでいるような気さえしてくる。しかし……やはり弾は何処までいっても五反田 弾だった。この男、黒乃に恋心を抱いた途端に……黒乃の為に身を退く覚悟をし始めているのだから。

 

(黒乃には……アイツが居るもんな。だから俺は……。でも黒乃……今だけは、今だけはで良い……俺の黒乃で居てくれ……。)

(いたたたた……。ま、まぁうん……病気の時って不安だよね……解かる解かる……。)

 

 弾は今……いや、今だけの幸せを噛み締めるかのように、黒乃の手を更に力強く握った。普通に痛いせいで内心顔をしかめる黒乃だったが、今回ばっかりは仕方がないとされるがままでいた。その事が、弾を自分と言う沼に深く絡め取っているという事にも気付かずに……。

 

 

 

 

 

 

「……とまぁこんな感じか。アレだ……簡単に言うと母性だよ母性。よほど特殊な性癖じゃなけりゃ黒乃のアレには抗えねぇ。」

「お姉にそんなのされたらねぇ。私でも好きになっちゃってるかも。」

 

 弾は髪色と同じくらいに顔を赤くしながら、黒乃の母性に惹かれたのだと語る。最後の方はヤケクソだったのか、かなりつらつらと思っていたことが口に出てきた。母性……。女尊男卑の世の中である以上は、それを持ち合わせている女性は貴重だろう。もっとも、黒乃の場合はそんな気はさらさらないのだが。

 

「でも……意外とちゃんとした理由があったんだ。なんか安心したよ。」

「俺が単に黒乃を容姿やスタイルで評価してるとでも?数馬じゃあるまいし……。」

「今の数馬さんとかに知れたら……。」

「ああ、間違いなく俺はお陀仏になる。だからこれだけは黙ってろつったんだ。」

 

 今の話がもし御手洗 数馬に知られたとすれば、話はあっという間に黒乃を好きだった勢に広がり……弾の明日は消え失せるだろう。自分の中で留めておきたい思い出と言うのもあるが、他に知られたくない理由はそこでもあったりする。思わず弾は深い溜息を吐いた。

 

「で……もう良いか?これ以上兄を苛めんな。」

「そもそも妹に苛められる兄ってどうなの。」

「うるせぇ……そこは言うな。はぁ、何か疲れた……。風呂入ってくる。」

「あ、ねぇ……お兄。」

「なんだよ?」

「……ごめん、やっぱり何でもない。」

 

 自身の身の上話をしたせいで疲れたのか、弾は少しゲッソリとした顔つきで風呂に入ると脱衣所へと向かう。そんな兄の背を引き留めた妹は、何か言いかけて……止めた。兄はなんじゃそりゃとでも言いたげな表情を見せると、今度こそ足を止める事無く扉の向こうへ消えた。

 

「……お兄が思ってる以上にチャンスってあると思うよ。……なんて言えないよね。」

 

 妹が言おうとしていたのはそれだった。これが数馬ならば100%脈ナシと妹は判断するはず。だが、なんとなく……なんとなくではあるが、黒乃は兄に対して気があるのでは?……と思わせる行動を見かけた気がするのだ。しかし、そんな無責任な事を妹は言えなかった。

 

 兄が……想像以上に黒乃に焦がれていたから。好きな理由なんて、しょうもない物だと思っていただけに……振られる覚悟が出来ている兄に何も言えない。今度は妹が深い溜息を吐く。自分の恋は勿論の事……兄の恋もどうにかしてあげたいと悩む……なんだかんだで兄想いな妹であった。

 

 

 




黒乃ちゃんマジ良妻。
冗談抜きで、黒乃を雌に堕とした野郎は無条件で幸せでしょう。
何気に一途で尽くすタイプなのでね……。








皆様からは、番外篇のネタを随時募集しております。
詳しくは最新の活動報告に載せておりますので、ふるってご応募下さい。

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