その場にいた少女、女性達は心に、いや「女のプライド」に多大なダメージを受けていた。少女たちは自分の同級生が、女性達は自分より年下に、衛宮冬士の紅茶を飲んだ瞬間に『負けた』と確信してしまったのだ。認めてしまったのだ。
自 分 よ り も で き る ! っ と (料理が)
「冬士、アンタ士郎さんに「落第点」って言われたのよね?」
「ん? そうだけど?」
「えっとね? 及第点の間違えじゃないのかな?」
「いや、父さんは結構真剣な顔でらくだいてんって言ってたから間違いないけど?」
瞬間、その場にいた女性達は一気に距離を取り、ひそひそ話をする、その中に妹の衛宮秋菜がなぜか何度も頭を下げている。しかし行き成り距離を取られたことに疑問を持ったのか、近づこうとする。
すると、
「待った。今は行かない方がいいぞ」
「なのはの兄さん」
「いいか? 女性達がああいう風にひそひそ話をしたら、絶対に聞いたらダメだ」
「? なんで?」
「……地獄をみrッ!!! いや! そう! 男に聞かれたくないからだ!」
なぜか一瞬だけ高町恭弥は体を震わせ、早口で衛宮冬士に言う。距離を取った女性陣から高町恭弥へりゅうおうのいてつくはどう級の威圧感を襲ったという事実はない。
ないったら、無いのだ。女性がそのような威圧感など出せないのだから! うん!
高町恭弥の説明に未だ解らない衛宮冬士は衛宮士郎から伝えられる「漢の心得 その3」に記されている事を思い出した。
「えーっと、確か。じょせいは、りふじんな事が沢山ある。けれどそれを認め、口をとじよ。だっけ?」
「む? なんだ? その言葉」
「父さんから教えてもらった「漢の心得」の1つ!」
「ほう、そういえばうちの父さんも男の心得が言っていたな、今度聞いてみるか」
男は男で話しているとひそひそ話を終えて女性陣が元の位置に戻る。そして、ようやく再開するティーパーティー、皆話すことがあるのだろう、和気藹々と最近の出来事や昔の話をする中、突然、月村邸に設置されている防犯道具の数々が起動した。
タタタタタタというオート式連続弓矢が気に刺さる音
どーん!という小型爆弾という爆発音
どぉぉぉんんんという金タライが落ちる音
ほかにもぼぉわーん、ばよえぇぇん! やら、鼻毛真拳! ばたぁん、きゅぅぅやら摩訶不思議な音が鳴り響いた。全員が緊張の中に包まれる中、高町恭弥はゆっくり立ち上がり、音がする方向、月村邸の森を見つめる。すると、様々なワナを通り抜け、ここまで来たのだろう、森の方からガサゴソという木々をかき分ける音が聞こえる。
「みんな、此処にいてくれ、此処は俺がっ!!」
木々をかき分け、1人の影が森から出て来た。
ただし、とっても小さい。
しかも高町恭弥は物凄く見覚えのある姿であった、全体的に黒い軍服のようなモノを着て、赤いマント、そして装飾の花飾りがよく似合うつばのついた帽子をかぶった数年前から高町家にいる人間? いや人間ではないだろう、だって
「ノブノブ―!!」
とても小さく、成長の兆しはないのだから
「の、ノッブ!? なんでここにいるのぉぉぉぉ!!?」
高町なのはの叫び声は緊張を一気に消し去り、ノッブと呼ばれた不思議生物は高町なのはに飛びつく。
初めて不思議生物、ノッブを見た月村すずかとアリサ・バンニグス、衛宮冬士と衛宮秋菜はノッブをただ茫然と見ている事しかできなかった。
その後30分の時間をかけて全員が落ち着くことに成功し、衛宮冬士が淹れた紅茶を飲んでいる。そのおいしさはとてもとても落第点とは思えない。
「で? この子はなのはは知ってるのよね?」
「う、ウン……」
「なんで、私たちに教えてくれなかったのかしら?」
「え、えーっとね?」
「まさか私たちが好き勝手にしゃべると?」
「だ、だからね?
「ああ、悲しい、悲しいわね。まさかこんな事でアンタを裏切るとか思っていたのかしら?」
「そ、そうじゃなくてね!?」
「さっさと答えなさい」
「ハイ」
まるで尋問の様なティーパーティーで無事なのはアリサ・バンニグスの膝の上で座り焼き菓子を美味しそうに食べているノッブと高町なのはの方に乗っているフェレット、そしておろおろと2人を見る月村すずか、給仕の様にお茶を足す衛宮冬士、すでにこの場を離脱している衛宮秋菜、部屋に戻りバカップルとかしている2人だけである。
ちなみに離脱している衛宮秋菜な1人で特製ケーキを食べている。
ティーパーティーのテーブルの上にかつ丼が乗っているようにも見えるが見間違いだろう、外にいる筈なのに、取調室の様な部屋の中にいるのも勘違いに違いない。
なぜかアリサ・バンニグスの服がいつの間にかスーツになり、高町なのはの服はなぜか囚人服になっているのも、たぶん気のせい。
さて、取調室には刑事のアリサ・バンニグスがタバコ(シガレット)を口に含みながら目の前で目を背けている囚人、高町なのはを見る。目をキョロキョロさせている。
アリサ刑事は一度、タバコ(シガレット)を口から離し、ため息を一つ吐いて、タバコをもう1度口に含み、高町なのはをにらみつける。
するとどうだろう、今まで渋っていたのに、ゆっくりと口を開き始めた。
「え、えーっとね? 私がノッブと初めて会ったのはクリスマスの時だったの」
ハイ、ちょっと変えてノッブの登場です。
これからこの章でノッブが出るでしょう、頑張ります。目指せ闇の書解決!
さて、衛宮家の執事教育として紅茶を淹れるのは当たり前です。
しかし、その壁は遥かに高いという設定です。
落第点は間違ってません、合格点がはるかに高いと言うだけです。
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