子供たちを起こした私は自分の部屋へ向かう。青のジャージに着替えて廊下を歩いていると士郎が家で飼っている白い狼の白野威(シラヌイ)(命名:千冬&士郎)に餌を上げて頭を撫でていた。
白野威は中学のころに士郎が拾ってきた雌犬、いや雌狼でネームセンスゼロの私たちが考えた末に公園で拾ったという事で白(体が白いので)野(公園で拾った)威(士郎がカッコイイ漢字が良いとのことで)という名になった。
「士郎、白野威!」
「ち、千冬か、さ、散歩か?」
「ああ、白野威、リードと袋持ってこい」
〈ワン!〉
白野威は頭がよく、リードや芸などもすぐ覚えた。犬かきも得意で夏に海日和の際には必ず連れていく。 狼のくせに人が好きみたいで人懐きがよくぶつかってスグに顔をなめるのが欠点だな。
しかし、士郎はなんで顔が赤いんだ?
「かーさん! とうさん!」
「おかあさん、おとうさん」
冬士と秋菜、ラウラがそれぞれ黒、赤、ウサギのジャージを着て来た。白野威もリードを持ってきたみたいだ。3人が士郎に朝の挨拶をしている間に私は白野威にリードを付ける。
「おとうさん、おはよう!」
「おはよー! とーさん!」
「ん。今日も元気だな、毎朝こんな早くに散歩行くのはつらくないか?」
「「んーんー。平気!」」
「おはようございます、士郎殿」
「ああ、ラウラもおはよう」
「よし、今日も朝の散歩(ランニング)にいくぞ。行ってくる、士郎」
「ああ、行ってらっしゃい、いつもの時間に帰ってくるんだろ?」
「ああ」
門を4人で出る。
そして3人に振り向いて言った
「今日は海鳴山公園まで行くぞ」
そこからは話すことなどない、走るだけだ。最近秋菜と冬士は藤村さんから音楽プレイヤーを貰ったようで、ヘッドホンやイヤホンを付けて走る、このことに関しては別にいい、むしろ聴覚が防がれているから嗅覚と視覚が鍛えられるだろう、その内に聴覚を鍛え始めるが、な。
早朝だからか、道に人はほとんどいない、いるのは散歩しているおじいさん、おばあさんか、ランニグしている若者、あとは車が数台ほど通るだけだ。
冷たい風が喉を冷たくし、お腹も冷たくなる感覚がする、冬木市は冬のように寒い気候だ。10月にもなれば初雪が降るほどで4月まで食い込むほどだ。しかし、寒いからこそ、鍛えれば『心』は鍛えられ、『体』は締め上げられ、『技』は鋭くなる。後ろをふと見ればまだまだ余裕そうな冬士と秋菜の姿がある。ラウラは言わずともわかる、5分もたてば新都の大橋へ着く、まだまだ体力も余裕そうだ。
新都の大橋を越えて冬木市、新都へ入る。っといっても今日は隣の市にある山公園の為、新都は横断するように走る、海鳴市に入るころには冬士と秋菜は息を少し切らしつつある、ラウラはまだまだ大丈夫だな、白野威は狼だからか余裕の表情だ。
海鳴市の小さな公園まで走ってくると、横断歩道で信号が赤になった。一時休憩だなと思っていると、見覚えのある3人がこちらへ走ってくる。
「おや、おはようございます。衛宮さん。みなさんもランニングですか?」
「ええ、高町さん、犬、いえ白野威の散歩ついでに。高町さんたちもランニングですか?」
海鳴市で有名な洋菓子店を経営している高町家のみなさんだった。大黒柱の高町士郎さんは士郎と同じ名前の為、間際らしい。しかも料理の腕もなかなかのモノ。私には遠く及ばないが、かなりの戦闘能力を持っており、ラウラだけでは倒すことはできないだろう。
「冬士くんに秋菜ちゃんも、朝から凄いな。隣の市からここまで走って来ているんだろ?」
「はぁ、はぁ……うん! だけどラウラ姉ちゃんに勝ちたいから!」
「むっ? 私に勝とうなどあと10年たってから言うのだな」
「はぁ、はぁ……高町のお兄さんも朝からランニングで疲れないの?」
「俺は鍛えているからな、大切なものを守れるように」
高町家長男の高町恭也、戦闘能力は士郎さんにはまだ追いついていないが、伸びしろはかなりある。将来有望の剣客だ。現在私立風芽丘学園の3年生で家では家業を手伝いながら、「古武術」の師範代であるが、高町さんに鍛えてもらっている。足を怪我しているのだろう、重心が少しぶれているのがわかる。
「冬士君、ウチのなのはとは仲良くしてくれている?」
「なのは? なのはとは友達だけど?」
「美由希のお姉さん、冬士はとうさんと同じくらいぼくねんじんっていうのだから、わかってない」
「あははは~、まぁまだ小学生だし、わからないよね~」
「むぅ、秋菜、なんだよ、僕年神って」
「ないしょ。なのはと約束したからね」
高町家長女の高町美由紀、恭也の妹で私立風芽丘学園2年生。「古武術」を現在学んでおり戦闘能力はなかなかで才能もあるが、覚えが悪い。しかしこのまま成長すれば高町さんを超えるだろう。恭也の腕次第といったところか。ラウラとは互角の実力を持っているし、あと2,3年もすれば冬士と秋菜の組手相手にちょうどいいだろう。
「衛宮さん、今日はどこまで?」
「ええ、冬木山公園まで行こうと思います」
「そうですか、おろしければ一緒にどうです?」
「うむ、少しスピードを上げますがいいですか?」
「ほう、いいでしょう。 恭也、美由紀いけるな?」
「ああ」
「うん、わかった」
「冬士、秋菜。スピードを上げるぞ」
「おかーさん、どれくらい?」
「3倍だ」
冬士と秋菜の瞳から涙が出ているようにも見えるが気のせいだろう。チラっと白野威を見るとワンという心強い鳴声を出した。
高町家を含み、我々は走り出した。途中で自動車を数台越したがのろのろとした運転をする者もいるものだ。と想いながら山を走り、登る。
公園の高台へ到着してゆっくりと歩く。走ってスグに座るより歩く方がいい。クールダウンして、自動販売機に硬貨を投下しスポーツドリンクを全員分出し、投げ渡す。白野威には持ってきた犬用のスポーツドリンクを器に流しいれる。待ての状態でハァ、ハァと言っている白野威によしと言うと素早く飲み始めた。
「すみません、衛宮さん」
「気にしなくていいですよ」
ふと見ると冬士と秋菜はもうダウン状態だ。時間を見ればもうすぐで朝食の時間だ。このままでは間に合わない。白野威のリードを外し、バッグに入れる。ちょうど飲み終わったようで器も片づける。
白野威はなぜか家以外では糞尿はしない、医者にも相談してもわからないとのことだ。まぁ、おそらく家がテリトリーだと思っているからではないか?という回答だったが。
「すみませんが高町さん私たちはそろそろ」
「そうですか、私たちはもう少し上ってからにします」
「では、恭也、美由紀またな」
「はい、千冬さんもまた」
「千冬さん! また今度士郎さんに教えてもらいに行くのでお願いしますね!」
「ああ。 行くぞ。ラウラ冬士をおんぶしろ」
「はい! 教官!」
「よし、では5倍で行くぞ」
ラウラに冬士をおんぶしてもらい、秋菜は私がおんぶする。
ん、また重くなったな。 この重みがなぜかうれしく思う、一夏はおんぶしたがらなかったからな。さて私とラウラ、白野威は走り出した。先ほど走った時の半分以下の時間で家に着くのは当たり前だろう。
家に着くころには冬士と秋菜は復活した。
「ただいま」
「ああ、お帰り、ほらシャワー浴びて来いよ。タオルと着替えは置いてあるからな」
「すまない」
「気にするな、朝食もできてる、早く来ないと虎が全部食べるぞ?」
「ふっ、そうだな」
冬士と秋菜を先にシャワーさせてから私とラウラがシャワーを浴びる。描写? 何故その様な事をしなければならない。私たちが上がるころには冬士と秋菜は藤村大河さんを挟むように横に座ってしゃべっていた。
「あ、遅いぞー! 千冬! 士郎! もういいよね? んじゃ! いっただきまーす!」
藤村大河さん,士郎と同じく私の恩人の一人で極道藤村組の一人娘であり教師。どこかのドラマにあった「ご○せん」と同じような境遇だが、ドラマとは違い極道の一人娘だとしても警察からも商店街からも生徒からも信頼されている。
私がここに居座りつく前からここで朝食、夕食を士郎と共に食べている腹ペコであり、士郎にとっては姉のような存在だ。また冬士と秋菜が懐いている相手でもある。
ちなみに左手の薬指には銀色に輝くシンプルな指輪がある。
「藤姉ぇ、がっつくのはやめろって前から言ってるだろ?」
「むっふふー! 士郎の料理がおいしいのがいけないのだ! ねー? 冬士くん、秋菜ちゃん!」
「うん! とうさんの料理はうめぇー!」
「おいしいよ! おとうさん」
「むっ、そ、そうか」
こんな風に朝をみんなで食べられるというのは心が晴れやかになるのだな。
「士郎、お代わりだ」
「ああ。ほら」
今日も士郎の料理は美味い。
お散歩から朝ごはんまでの時間でした。
衛宮家は士郎以外体を鍛えるためにみんなで散歩へ出かけます。
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