文化祭が終了し、捕獲された鳥天狗――織斑千冬は1人、制服に着替えた後、罰ゲーム用の教室へとやって来た。少しため息を吐きながら先ほどのイベントで捕まったことに関して嫌な気持ちになりながら、自分を捕まえた罪袋の参加者の到着をイスに座り、ただじっと待ちながらこうなって、本当によかったのか? と考え始める。
隠れれば大人数故に時間の問題、逃げれば体力と時間の問題という逃げる側としては無理難題のイベントであった。藤田文の写真により参加をほぼ強制的に行われた事が悔しさを覚える。いや、なぜ「アレ」を取られてしまったのかと何度も思うほどだ。
私が、織斑千冬が3年前にデパートのテディベア売り場で人形をギューっと抱きしめながら微笑むというイメージ崩壊間違いなしの場面を取られてしまうとは……!!
いや、むしろなぜあの場に居た? 見られない様にデパートを1階から屋上まで顔見知りが居ないかを隈なく探し周り、安全を確認したはずなのに……!
そういえばなぜ藤田はあの時、私に交渉を持ちかけたのだろうか?
ふと思い込めば考えてしまう。アイツはこう言っていた。
『いえいえ、私も鳥天狗なんですよ? つまりこの状況は私にとっても良くはありません』っと。
だが、普通に考えても参加者に花を持たせるのが普通ではないか? 正直我々スペシャルゲスト達は生贄のようなモノだったのだから。人数が多すぎてスグに捕まると呆気ないから?
いや、だとしてもだ。それならば半数は捕まる様な策にするだろう。
『いいですか? 秘策とはーー。
アナタが殺気を出して参加者の足を止めてしまえばいいのですよ』
『なに?』
『ふっふふ、だから殺気で相手を威圧するんですよ、威圧ならばルール上、問題ありませんから!!』
『ふむ……』
『とは言っても、後ろからくる相手には難しいですから、1年生と図書室の、ほら凹字になっているところがあるじゃないですか、あそこを使って背水の陣でやればOKですよ!』
ああ、問題はないだろうな。剣術での試合も殺気を使ったモノが多いし、慣れている。
しかし、あの時に聞けばよかった。「そんなことをして大丈夫なのか?」と。
実際、私はアイツの要求通りに1人に捕まり、ゲームセット。他のメンバーは無事だ。イベントを盛り上げるのならばもっとギリギリを要求するだろう。
しかし、なぜ?
っと考えている時、ガラガラと教室の扉が開く音がした。ソチラを向くと赤い髪に見なれば顔をした男子生徒。意外と背が低くそこがコンプレックスらしいが、それを上回るほどにコイツの料理は美味い。
「え、みや?」
「えっと、罰ゲームの教室ってここでいいよな?」
士郎はそう言って少し恥ずかしそうに後頭部を掻きながら私にそう言って来た。私は「あ、ああ」としか言えず、呆然とした。
なぜ、士郎がここにいる? なぜ、罰ゲームの教室の事を知っている?
「士郎、なんでお前が、此処に?」
「何でって、俺がお前を捕まえたからだろ?」
捕まえた? TU・KA・ME・TA? 士郎が私を?
私の頭が理解し始めると同時に顔がだんだんと熱くなるのが解る。あのタックルのような捕まえ方をしたのが、士郎だとは知らなかった。あの時はこれでイベントが終わりだなという事しか考えて無かったし、模擬戦の後に士郎が参加するなんて思ってもいなかった。
「それで、罰ゲームなんだけどさ」
む、そういえばここには罰ゲームで来ていたんだったな。
相手が士郎だと思うとなんだか気が抜けるというか、肩の力が抜けた気がした。
士郎は扉を閉めて、私の前にあるイスを反対にして座った。机一個分が私と士郎との距離だ。そう思うと恥ずかしくなってくるな。
「えっとさ。最近あんまり話出来なかったから、話でもしないか?」
ああ、捕まえてくれたのが、お前で良かったよ。他のやつだと文字道理罰ゲームの要求をしてくるだろう。だけど、士郎なら安心できる。
私たちはこの日 あの日以来話せなかった事を喋り尽した。すでに私の頭には藤田の事は忘れて……。
「あやぁぁ~、いやぁ上手くいきましたね」
校舎の屋上で望遠鏡でとある教室を見ながら藤田文は2人の男女を微笑ましく思いながら事の次第を伺っていると隣に立っている2人の女性が未だに鳥天狗の服装を着ながらため息を吐いていた。
「文、アンタが変な事をするなぁとは思ったけど、まさかあの2人の為?」
「おーいえーす」
「そのために遠坂さん達を脅したんですか?」
「あははは~。仕方ないじゃないですか。なぜかあの二人、距離が離れたみたいで学校では話をしてないんですよ? プライベートでは中々会えないのでわかりませんけど」
藤田文は織斑千冬に作戦、策をしえた後、更衣室へ向かった。『男子更衣室に』。
そこにいるのは模擬戦が終わり制服に着替えようとしていた衛宮士郎が1人。残り2人には前に実況、解説として写真をコストにしてお願いしていたので、衛宮士郎だけがこの時間に制服へ着替えようとするのは解っていたことだ。
無論、衛宮士郎が更衣室に入る直前に彼を止めたのは言うまでもない。
「えっみやく~ん!」
「藤田? なんでここに?」
衛宮士郎は急に現れた藤田文を怪しみながら問いかけると藤田文はニコニコとした普通ならば「ぶひっぃぃぃ!! もえもえだぁぁ!!」と言うべき愛らしい顔なのだが、散々振り回された衛宮士郎にはただの怪しい顔にしか思えない。
「いえいえ、衛宮君にお願いがありまして」
「お願い?」
そして藤田文は織斑千冬に伝えた作戦を衛宮士郎に言った。無論、条件の事も伝えて。
衛宮士郎は条件を聞いたとき、怒りながらも藤田文の「お願い」に乗った。いや、乗るしか衛宮士郎の中には存在しない。
「ありがとうございます。あ、織斑さんを捕まえるのはタイムオーバーギリギリにしてくださいね?」
「解った。代わりに」
「交換条件として成功時にはゲストの全員に写真をネガごとお渡しするってのはどうです?」
「ああ、それでいい」
こうして衛宮士郎と藤田文の交渉と言う名の話し合いは終わった。そして見事に恐怖にかられながらも衛宮士郎は織斑千冬を捕まえることに成功し、後日ゲスト達+罪袋ABCにはポストに写真とネガが入っており、各家の家族に見られたとか無いとか。
「アンタ、馬鹿じゃないの? アンタがあの2人にそこまでする必要あるの?」
「ふふふ、ほたて。あの2人はお互い意地っ張りなんですよ。だから外野が動かないとあの2人は動きません」
「織斑先輩に関しては意地っ張りとは思えません。衛宮先輩は意地っ張りと言うより優しい人だと思いますけど」
「あやや、紅葉もまだまだ洞察眼が甘いですね。意地っ張りですよ。あの2人は」
立川紅葉は首を傾げ、葛城はやては微笑む藤田文を見ながらため息を吐く。
3人は教室から2人が出て行くまでその場にとどまり、次の日3人は風邪で寝込むこととなる。
学園祭編終了です。
とりあえず、学園祭で書きたいことは書き終わりました。
誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等もお願いします。