IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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ラストイベント 中

 

 

 

とある鳥天狗が会場で逃げ回り、同じ鳥天狗であり生贄要員の2名が罪袋のBとCと共に実況、解説をするという なぜこうなった? というべき状態である頃、イベントにまとも参加し逃げ回っている生贄要員たちは校内のある場所で隠れていた。

 

「それで? 一体どうするわけ? 時間制限があると言っても相手が多すぎるし、このままここに隠れていてもいずれ見つかるわ。とは言っても全員がバラバラに逃げても追い詰められて捕まってゲーム・オーバー」

「確かに、しかし我々にできる事と言えば『捕まらない』事だ。遠坂嬢が言ったようにココにいてもいずれ見つかり逃げ切れなくなるだろう」

 

 遠坂凛と氷室鐘は打つ手が無いことに少しばかり絶望感を味わいながらため息を吐く。

 蒔寺楓は2人の様子を見て罰ゲームは目前である事を悟り、藤田文にブツブツと呪いの呪文を唱え始める。

 

「アヤノヤツ、ゼッテーニアトデヨワミニギッテショウテンガイノスイーツゼンシュオオメデオゴラセテヤル」

「手伝うぞ、蒔寺。アイツは束並に逃げるのが早いからな」

「タノンダゼオリムラ、ブンカサイガオワッテアイツガガッコウニキタラツカマエテヤラァ」

「そうだな、それでだ。皆が無傷でゲームをクリアするための作戦が1つある」

 

 織斑千冬の言葉に全員が顔を向ける。

 全員驚きの顔をしながらも頭のどこかでは不可能の文字が浮かんでいるのは当たり前だろう。

 しかし織斑千冬はゆっくりと先ほど藤田文から教えてもらった秘策を語り始める。話すたびに顔色が悪くなってはいくが、藤田文が作ったイベントでそのクリア方法を語る様なもの、勝率は高いと織斑千冬は思っている。

 

「それは流石に難しいんじゃないか? いくら織斑でもそんな漫画みたいな事出来るのか?」

「やろうと思えばやれる。寧ろ剣道、剣術での対決の際には必須技能と言ってもいい」

「なるほどね。確かに出来ればあとは場所の確保だけで済むけど、場所はどこにするのかしら?」

「1年と図書室の所にするつもりだ。ここからなら遠くはないし、最悪見つかっても逃げ切れるだろう」

 

 織斑千冬の言葉に遠坂凛は少し考え始める――とは言ってもすでに答えは出ているようなものだ。なにせ隠れるを選んでも大人数の中隠れきれるとは限らない。校舎なら兎も角、外なら尚更だ。

 逃げるを選ぶとすればそれは時間と体力がモノを言う、織斑千冬ならば逃げ切れるだろうが、他のメンバーはそうでもない。確かに運動神経が良い生徒ばかりだが、それは相手も同じ。

 逃げ切れず、大人数に囲まれればゲームセット。隠れるより勝率は低いと言えるだろう。

 

「私は織斑嬢の案に賛成だ。正直他に手はないと思っている。逃げる隠れるよりは確率は高いだろう」

「おいおい! 出来なかったら全員ゲームセットで罰ゲームだぜ!? 他に良いのが有るかもしれねーしさ!」

「無いでしょうね。さっきも言ったと思うけど、逃げるなら隠れるより勝率は低いし、隠れるとしたら見つかれば最後、さらに言えばあの大人数の中で隠れきれるとは思えないわ」

 

 真剣な顔で語る遠坂凛の言葉に蒔寺楓は肩を落としながら大きくため息を吐いた。

 そして全員が顔を見合わせて頷く。ここにドリームチームが完成し、ゲームの攻略へと足を動かす。

 

 茂みから全員が飛び出し、グラウンドへ向かえばそれは当たり前のように見つかる。参加者の誰かが大声で声を張り上げても、実況者と解説者が戸惑いの声で話し合って今後の展開に期待させ、テレビを見ている見物人がおぉと驚きの声を出してしまうほどに彼女たちはグランドを突っ切り、真っすぐ目的地へ向かっている。

振り向けば文鳥天狗を追いかけている罪袋以外が集まっており、その光景はまるでコッコに追いかけられる某緑の勇者の様である。あの恐怖はやった者にしかわからないだろう。

 

彼女達が向かう先はこの穂群原学園では1年A組と図書室は学園の真上から見れば凹の様な形をしており、座れるようにベンチがいくつか置いてある。影もできるので涼みながら男子の弁当組はそこで持参の弁当を食して部活へ向かう生徒が多い。女子生徒は昼休憩時に行くことが多い。

そう。凹の様な形、織斑千冬一行は自ら追い込まれるように走っているのだ。鬼ごっこと同じ様なルールのイベントでは正気とは思えない選択である。それでも彼女たちは助かる唯一と信じながら、走っている。

 

 

 全員が奥にあるベンチまで付く頃には罪袋達は歩みをゆるやかにし両手で己のネクタイを締め直しながら余裕な雰囲気を醸し、哀れな子羊の元へ向かおうとしていた。

 そんな中、1人織斑千冬は立ち上がり、

 

「あとは任せろ」

 

 そう言って罪袋達の方に少し歩み、すぅーっと息を吸い込み―――

 

「覇ッッッ!!」

 

 気合を入れる。だが、ただの気合ではなかった。気合の籠った声は罪袋達の歩みを完全に止めた。いや、止まらせたのだ。

 今、彼ら全員の背中は冷や汗で冷たくなり、覆面が無ければ彼らの顔に大量の汗が流れている事を知れただろう。

 恐怖――。それは唐突に現れる格上の捕食者に出会う時、己の生命が失うだろう瞬間に現れる。それは地球上のどの生物にも言える事だ。食い、食われる。食物連鎖の頂点に立つものでさえも免れきれぬ心の奥底に眠る原点の感情。

 それは誰もが足を止め、体を震わせるほどに、彼らの目の前に立つ『織斑千冬』という絶対者は格上という事を明確に表していた。

 

「す、すげっ「シッ!」

 

 その後ろで蒔寺楓はその凄さに声を出そうと瞬間、隣にいた氷室鐘によって口を押えられ、自分の口元に指を当てジャスチャーの「しゃべるな」をしながら歩みを止めた罪袋達を見て、腕時計の時間を見ながら冷静に事の次第を見守る。

 

完全に罪袋達の足は止まった。いやむしろ後ずさりする者すらいる。中には地面に倒れこみ『死んだふり』をする者もいれば片手を上げて気絶する者すらいるほどだ。

 

時間が刻々と進み、この場にいる罪袋達にはすで『時間』の事すら考えられない。あるのはこの恐怖とどう立ち向かうかだ。

 

氷室鐘は安堵のため息吐く。時間はすでに秒読み、あとは藤田文にO・GO・RA・SE・RUだけだ。

そう、油断をしたのだろう。真正面ではなく、横の壁側から走ってくる者がいるとは思わず、集中し殺気、ごほん。気合を入れていた織斑千冬は気が付かなかった。いや、気が付いてはいたがそちらを無事は出来ないし、藤田文との『約束』があったからだ。

 

残り1秒で織斑千冬は罪袋にタックルの要領で捕まえられた。

 

「ぬわーー!」

 

『ピィィィィィ!! ゲームセットで~す!! 参加者と鳥天狗は会場にお戻りください!』

 

こうして捕獲された鳥天狗は1名という驚異の数字は今後の文化祭では罰ゲームも簡易になり、第1回でのイベントは『伝説』と呼ばれ鳥天狗たちの事を天狗の上位である天魔からとり『ザ・ミス天魔』と呼ばれる様になるとは今の彼女たちは知らぬことである。

 

 




学園祭でのイベント終了です。
捕まったのは我らが姉御、ちふゆ姉でした。

あと1話で学園祭編終了予定です。


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