校庭に集まるは己の信念を掛けた熱き思いを胸に抱く者たち――罪袋――。
己の顔を『罪』と書かれし白き覆面を被り、上半身は男の肉体美を晒しだし、下半身は男の勝負下着である褌、ただし大きな葉っぱ付いている。首には紳士の様にキュっと綺麗に結ばれたネクタイを付ける。まさにダンディー。今宵(夜ではないが)、男たちは戦場へと踊りだす。
己の欲、男としての思い、感情……それらすべてが彼らに訴えるのだ。
『捕まえよ、そしてイチャつくのだ』っと――。
『ふふふ、では始めましょう……』
静かく、落ち着いた声がマイクを通して大きく聞こえる。
舞台の上に立つ烏天狗・藤田文は真剣な顔つきで罪袋達を見下ろす、傍から見ればその光景はまるで女王と愚民の様な光景に見えて仕方がないのはどういう事だろうか。
罪袋達から離れて立つ数人の鳥天狗たちはこれから起こる、いや起こってしまうイベントを阻止できなかったことに己に対し悔しさを覚え、「アレ」を取られてしまった自分に対して殴りつけたい思いで一杯であった。寧ろ過去に戻り藤田文を殴りたいし、終わり次第殴る予定があることは当然ともいえる。
そんな姿を藤田文は見ながら心の中で思う、『成功してくださいね』っと。
でなければ何のためにこのイベントを起こしたのか解らないし、アソコへ戻ってもあまりネタにはならないだろう。
故に藤田文は思う。
『罪袋達よ、汝ら己の奇跡を欲するのなら、自らの力を以って、最強を証明せよ』
「「「「「ウォォォォォォォォォ!!!!」」」」」
『お願いだから成功してください』っと。
歓声が鳴り響く中、心の中の声はどこか寂しそうに、けれども神様や仏さまに願う。もし失敗すれば変わらないかもしれないし、例え成功しても変わる事は無いかもしれない。
しかしこうでもしなければ少しも変わることはないと確信できる。
『では、レディィィィィィ・ゴォォォオォ!』
一番罪袋達から近い藤田文はその言葉を最後に先ほど模擬戦で戦った罪袋の2人に解説と実況を任せてステージをゆっくりと降りようとする。だが、藤田文もまた鳥天狗という事を忘れてはいけない。
すでに舞台へ上がってくる罪袋達、約20人が藤田文という鳥天狗を捕まえるためにスタート開始と共に詰め寄り包囲網を作り上げたのだ。逃げ道を作らせはしない。
罪袋達は女の子とイチャつきて―――!! という本能を止める事すら見せず、全員で両手を広げながら二重、三重に円状の陣形で詰めよれば逃げる事は出来ない。文鳥天狗へ掴みかかる。
「「「「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
「「「「藤田文覚悟おぉぉ!!」」」」
「あやや、こちらに来ますか」
一斉に襲い掛かってくる罪袋達を見ながら藤田文はフッと罪袋達に笑いかけニヤッっと哂い、己の最高の最速を魅せる。
一歩、たった一歩踏み出しただけなのだが、二歩目にはフルスピードで罪袋へ走り出していた。向かってくる藤田文に罪袋達も負けじとタイミングを計り捕まえようとする。
だが、罪袋達は知らなかった。藤田文と言う存在がどれほどまでに理不尽か。いや、情報力は鬼畜だろう。しかしそれを上回るほどに藤田文という人間は過去、鳥天狗として歴戦の戦士と言っても過言ではないほどに『経験』と『場数』を踏んでいるという事を。
藤田文は鳥天狗として数百年生き、そして現代へ来て早十数年、人間の妄想は幻想をも超えるという事を藤田文はつくづく思い知った。まさか過剰表現されている行動が本当に出来るとは自身も思ってはいなかったほどだ。
たかが漫画、たかがアニメだと己に笑った。だが、現実として出来てしまった。
己が最も自信に持つ最速のスピードと現代でスポーツとして作り上げられてきたステップの組み合わせ技―――名を『疾風:黒き幻影の翼(ブラックバートゴースト)』という。
捕まえ様と飛びかかってくる罪袋達には藤田文の姿は瞳にすら捕らえきれない。その眼に映るのは背中についている作り物のハズのカラスの黒い羽根が空から舞い散る幻想的な美しき光景。
それは本能と煩悩の塊である罪袋達でさえ一瞬、足を緩めてしまうほどの美しさに力を抜いてしまう。
だが、気が付く頃にはもう遅い。すでに目の前にいる筈の藤田文の姿はなく、自分たちの後ろ御走り去っているのだから。
「な、なんだったんだ、今のは……」
『ふむ、我々から見ればただ避けながら走り切ったように見えたが、罪袋達はそうではないようだな。どう思う?』
『さぁね、ただ解るとすれば藤田は走りながら難しそうなステップを踏んでいた。何が起こったかはあとで藤田か罪袋に聞けばいいだろ』
『えっ!? 罪袋さん見えたんですか?』
『ふん、僕にかかればあれくらい見切れるさ』
『先ほどの模擬戦では使わなかったのはこの本番の為か……』
『文のやつ、何時の間にあんなこと出来る様になったのかしら?』
各場所にセットされているカメラによってイベントを見ている観客たちは驚きの声を上げながら実況に耳を傾ける。
なぜか罪袋Aが居ない事に不思議に思いながら学校で使うもんじゃないだろっと思う位の大きさをもつテレビを見つめながら各場所にセットされているカメラの映像をスローモーションにし解説を罪袋CとB。あと同じ鳥天狗なのに解説席にいる葛城颯と立川紅葉は実況し始める。
私こと藤田文は『速さ』が好きです。
雨雲を追い越し、嵐を切り裂きながら空を飛びながら様々な光景を見ることが好きでした。今は飛べないので仕方ありませんが、もし飛ぶことが出来るのであれば現代の都市にあるすべてのビルの間を通り抜くという事をしたいですね! 飛ぶことが出来たとしても私は『現実の常識』によって私自身は消え去るでしょう。
昔は一日中飛び回り全速力で山の木々を避けながら木に当たると言うスリルを味わいながら飛ぶのが好きでした。
海の水面ギリギリで飛びながら潮風と波に当たって体を濡らすことが好きでした。
空を飛び他の天狗たちを追い越し雷雲の中で雷に当らずに飛ぶのが好きでした。
激しい雨の中を視界も悪い中、飛びながら現代のシャワーの様に体を濡らすことが好きでした。
上空から勢いよく湖の中へ飛び込み、落ちるスリルを味わいつつ魚を取ることが好きでした。
人里で突風と共に一目に見つからず子供を攫い、いろんな空の景色を見せるのが好きでした。たまに弟子にしておくれと言う強引な子がいますが今のところはほぼ100%断っているので問題ないでしょう。
天狗として大幅に力を失いましたが、それでも速さだけは誰にも負けたくはない。
何が言いたいかと言うと私は『速さ』を愛しているという事ですね。
だからこれが出来たとき、私は新たな『スリル』を感らじれる。いかにして人に体を触られず避けきれるか。『飛ぶ』とは違い『走る』という新しい『速さ』が私にはドキドキワクワクで一杯あるのです。
妖怪としては力を90%失った事で『妖怪の魂を持つ人間』という99%人間になりましたが、新しい『速さ』を見付けられるチャンスであり、改めて『人間』の事を知る事が出来るでしょう。
例外を除いて肉体的、精神的に貧弱な人間は妖怪にとってはただの餌であり、存在理由。
しかし時代が進めば人間は妖怪を『倒すこと』が可能になった。
面白い、同じ人間というステージの上でどれだけ出来るか楽しみでならない。
ならば『人間』のステージで『速さ』がどれほどまでに差が出来るのか。
思えば幻想郷に新聞が来て以来、『速さ比べ』をとすることはせず情報の取得を誰よりも早く得る事が趣味になった。
今回の異変に巻き込まれて良かったと思いながらいずれ幻想郷へ戻ればあと200年はつまみにしながら楽しめる。
幻想郷の賢者にも接触出来た今なら機械類以外なら幻想郷へ持っていける。ふぅ、霊夢さん。先代巫女様、ありがとうございます。
貴方達の寝顔写真と鏡の前でコンプレックスに悩むお姿や幼い頃の写真のお陰で私は現代で好きなことが出来ます。それもこれも霊夢さん達の写真のお陰です。
これを機に幻想郷へ戻った際には差し上げた写真以外は火につけて燃やす、事はしませんが、アルバムに載せて河童技術で永久保存して思い出として残させてもらいますね。
藤田文の速さとしてのプライドぽいの書いてみました。
学園祭としてはイベントラスト、
出来ればあと中、下で終わらせたいですね。
誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等もお願いします。