IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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罪袋は青春の一ページを飾ったようです

 

ゆっくりと舞台の上から舞い降り立つ1人の美少女、彼女は3倍ほどの高さを持つ高下駄を履いる状態にも関わらず、まるで普通の靴と同じように歩くさまはまるで現代に蘇った天狗。 それほどまでに練習を積んだのだろう。全く危なげもなく着地から彼らが待つフィールドに行くまでの間、全く問題が無かった。

 フィールドで待ち受けるのは3人の男たち、罪と書かれている覆面で素顔を隠し、紳士にネクタイを着用し、これが男の象徴だ! と言わんばかりの大きな葉っぱを付けた褌と学校指定の靴だけというまさに正々堂々とかかってくるがいいと言わんばかりの男の戦闘服。

 そんな様子を同じ部の後輩たち、呼ばれた援軍は全力で男たちを応援する。

 いや、がんばれ! お前らが頑張れば私たちの『アレ』も消すことが出来るかもしれん! 死んでもいいから勝て。いや勝てるまでやり続けろ! と言わんばかりの心温まる瞳は男たちの背筋を凍らせるほどであり、少し集中力が乱れたカナー?

 

『では模擬戦を始める前に確認としてフィールドの範囲はこのカラーコーンの内側のみ、勝利条件はこの私、清く正しく美しい『鳥天狗』藤田文を捕まえられれば勝利となります。時間制限として30分とします。第1ラウンドが有りますからね。

わかりましたか? つ・み・ぶ・く・ろさん?』

 

 藤田文の悪戯をするかのような笑みは男たち、罪袋達のこれから起こる未来をすでに解っているかの様であり、見方を変えれば勝利宣言している様に思えてならない。

 だがその様な事は男たち、罪袋達には無意味だ。男たちもまた勝利の文字を手に入れるためにこの場に立っているのだから。

 

「それくらいわかっておる。コッチはさっさとやって終わらせたいのだ。こちらの勝利でな」

「全くだね、今回は取られた僕が悪いと言っても折角の文化祭で時間を取られたくないんだ。藤田、ネガごと渡してもらうぜ?」

「おやおや、ゲームはまだ始めってませんよ? ふふふ、そんなに焦っては勝てるとこで「うっかり」してしまいますよ? ねー? 遠坂さん?」

 

 なぜか飛び火した遠坂凛はその言葉で『アレ』のことを言っているのだとすぐに理解し、怒鳴りたくても怒鳴れないというジレンマ。右手はすでに握り潰してくれる! とばかりに手をぐーっと力を込めながらこの時ばかりは「優等生などにならなければ良かった」っと後に語る。

 そんな様子を見て藤田はさらに面白がりながら持っていたマイクを後輩の女子生徒に渡して、扇でパタパタと優雅に、エレガ~ントに扇ぐ。

 

「今回ばかりは本気でやるぞ、フィールドも限られるし、3対1だ。囲えば勝てるぞ」

「甘いね。さっき見ただろ? コイツ高下駄なのに普通の靴のように歩いていたんだ。それに元々藤田は足が速い。囲むじゃなくて逃げる場所を限定させていけば捕まえられる」

「ふむ、それには一理有りだな」

「むぅ、ならどうする?」

「作戦Dで行くぞ」

「今回は付き合ってやるよ」

「わかった。ならやるぞ!」

 

 男たちの作戦会議は終わりそれぞれ藤田あy、ゲフンゲフン。今回の元凶である烏天狗を捕まえ己の弱点を過去、現在、未来から消し去るため、今ここに仲が悪い2名が手を組んだ同盟、『藤田いい加減にしろ同盟』は今か今かと開始の合図を待つ。

 観客は面白そうに見つめ、生にe、ゲフンゲフン。スペシャルゲスト達は殺す様な眼差しで清く正しく美しい鳥天狗を見つめ、男たちには絶対零度の様な冷たさの眼差しで『勝て』と言う意味を込めて込めて込めつくした眼差しは外部からの観客からは「なんて熱い眼差しだろうか」「誰か好きな人がいるのかな?」と思わせ、生徒からは「生贄にささげられる瞬間の子羊の様だ」と男たちに不憫な想いを込め、ひそかに「ドナドナ」を歌いながら正体が解ったら優しくしようと決心した。

 

「そ、それでは模擬戦を始めようと思います、審判はこの私、剣道部兼新聞部幽霊部員の立川紅葉がいたします。タイムリミットは30分なので罪袋さん、頑張ってください。ぜひとも部長の鼻をへし折って全部のネガを燃やし尽くしてください。いいですね?

それでは、と、『鳥天狗を捕まえろ』模擬戦、開始いぃぃぃぃ!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 生贄の1人、立川紅葉の開始宣言と共に罪袋Aが鳥天狗を捕まえる為、疾走する。その速さは通常の1.5倍ほどであろう。見ている体育専門教師もびっくりの走りだが、藤田文はそれをニヤニヤとする笑みを扇で隠しながら近づいて来る罪袋Aを待つ。

 罪袋Aが手を伸ばし捕まえようとする、しかし当然ながらその手は空を切る。

 この時、驚いたのは罪袋達だけではない。観客も生贄達も驚きの眼差しで『鳥天狗』を見つめる。

 

「おやおや、どうしました? 何をそんなに驚いた顔をしているのですか?

 

 早い。

 いや、ただ早いのではない。この女、鳥天狗はバック走で後ろへ走って逃げたのだ。

 流石の罪袋達も予想外過ぎて唖然としてしまった。

 これでは普通に走るときはどれほどまでに早いのか見当がつかない。絶望が心の中で広まりながらも、罪袋達は駆けるしかない。

 それしか道がないのだ。

 

 そこからはたった30分という短い時間なのにも関わらず一本の青春映画の様に体中が綱だらけになりながらも美しく、男の意地、諦めないど根性があった。

 

「ふはははは!! アナタ達に足りないもの! それは! 友情、努力、熱血、知性、筋力、体力、夢、憧れ、脚力、そして速さ! さらに何よりも!! 『決意』が足りなぁぁい!!」

「ハン! 構わないね! 足りない? ならボク達3人で補うだけだ!」

「全くだな、お前の言葉でむしろ、諦めるという言葉はとうの昔に無くした」

「憧れならある! 夢もある! 『正義の味方』になると、俺は爺さんに言ったんだ。例え全ての人たちが救えなくても良い。俺には守るべきものがあるんだぁぁぁ!!」

 

 無駄に煽ってくる鳥天狗に人中を下すため、男たちは吼える。諦めない。諦めたくない。

 無駄になる? 構わない!

 この身がズタボロになろうとも友の為に戦おう、男として、いや『日本男児』として誰かのために戦い、死んでいった過去の英雄たちの様に。

 今、男たちの頭はただ真っ白に、余計な事を考えず真っすぐ鳥天狗を捕まえる為に走るのだ。

 

 だが、刻々と短い、とても短い時間は減っていく。

 

「もう、ダメだ……! おしまいだ……!!」

「何を寝ぼけたことを言っておる! 不貞腐れている暇があるのならば走れ!」

 

 1人の罪袋が絶望の淵に追われ、体中の力が抜ける。だが忘れてはならない。自分が弱くなるほど、他の者が力を貸してくれるのだ。戦ってくれるのだ。ならば諦めてはいけない。

絶望に堕ちるものには手を差し伸べる。例えその手が傷つけられても、彼は歩むことを忘れないだろう。

 その姿はさながら『正義の味方』の様に。

 

「慎二はそこで休んでいてくれ。俺がお前の分まで戦うから……」

「……!」

「行こう、一成」

「ああ、衛宮。必ずあの悪の元凶を捕まえるぞ」

 

 この時置いて行かれた、いや諦めてしまった間桐慎二の心は何を思っただろうか?

 追わなくていいという重圧から免れてよかったと思うだろうか?

 諦めてしまった自分を恥じて終わるのか?

 

「僕はまだ、諦めるわけには、行かないよな」

 

 こうして男は再び立ち上がる。

 何かを思い出したかのように、あるいは観客に『彼女』が居たからだろうか? 『彼女』の前でこの様な姿は見せられない。見せてはいけない。

 今立ち上がったその姿は屈辱という砂を落とした1人の騎士の様にかの鳥天狗を捕まえるべく、再び走り出す。

 

「衛宮ぁぁ! 右から攻めろ! 柳洞! お前はプランAだ! 僕はプランBで行く!!」

「わかった! 任せろ!」

「やれやれ、ようやく来たか、遅いぞ!」

「ふん、悪かったね、少しばかり体力を回復させていたのさ」

 

 不貞腐れながらそう答えながら走る。

 

 そして……彼らは

 

 

 

「試合終了~!

 

 

 

 鳥天狗の勝ちです!」

 

 

 負けた。

 




お久しぶりです。
なかなかアイディアが纏らずずるずると伸びてしまいました。
学園祭は上中下となりますので、あと1話書きます。

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